わたしの祈りは毒をも溶かす!
16話 ああっ、聞こえなくなってる!③
「そうさ。俺はお前の兄、ゲーニウスだよ」
「や、やはり兄上さまだったのね……。わたしの想像した妖精じゃなかったんだ」
「うん、俺は生まれつき特殊な能力があってな。幼少の頃にお前が病気で難聴になった時、どうにか助けられないか試行錯誤した結果、アプレンって少年になってお前の思考に入り、話し相手が出来る様になったのさ」
「とても信じられないけど今もお話してるし、それは本当なんだね。でも兄上さまは今、大怪我してるよね? 大丈夫なの?」
「うーん、昏睡してるな。だがお陰でアプレンになれた。俺はお前の思考の中で生けていけるかもしれないな」
「暴走した馬車から助けてくれてありがとう。でも死んじゃいやよ。何にもしてあげられないけど生きて! 兄上さま!」
「あぁ、頑張るよ。ここで死ぬ訳にはいかない」
「わたしね、音が、声が聞こえて嬉しかった。その反面、辛いこともあったの」
「皆んながロクなこと言わなかったからか? それとも伯爵の愛人にさせられそうになったことか? あぁ、もっとあるな。我が子爵家が違法な阿片を作って売ってることを知ったからか?」
「全部よう! ねえ、キース先生に伝えろって言ったよね? 先生って何者なの?」
「それはまだ言えない。だがお前の味方になってくれるだろう。取り敢えずここから出られる様にしないとな……」
「うん……そうね」
わたしはまだまだ知りたいことがあった。でもいつの間にか眠ってしまう。アプレンとお話するといつもこうだ。
***
翌朝、モッペルに起こされた。いい匂いがする。
「オリビア様、朝食を持ってきたよ。ちょっと多めに注いできたから、たんとお食べ」
ムクっと起きて会釈した。一瞬、自分のお部屋と勘違いしたけど景色を見て直ぐに思い出す。ここは地下の監禁部屋だ。家族と朝食をともにする筈もない。なので朝の支度を整える必要もなかった。
「今日ね、尋問があるらしいよ。悪いこと言わないから正直に答えた方が良いわ。身のためだからね。演技する様だったら確かめる術があるって言ってたの。気をつけて、オリビア様」
わたしは差し出された朝食を黙々と食べる。
「何も話してくれないか。……アタシに怒ってるんだね。お荷物令嬢とか言ったし。まさか聞こえてたなんて思ってなかったからゴメンなさい」
モッペルはよくお話をしてる様だけど、全て雑音だからニコッと笑ってやり過ごした。やがて彼女は朝食の後片付けで部屋を後にする。
それから間もなくのことだ。護衛とともにお母様とイービルが監禁部屋に入ってきた。
「あ~ら、お姉様。思ったよりお元気そうだこと」
ふん、何言ってるのやら。なーんにも聞こえないわよう。
「さてと、オリビア。聞こえてるんでしょ? これから私の質問に全て答えなさい。いいこと?」
今度はお母様が何か仰ってる。
「その前にお母様。私、意味もなくお姉様に殴られたんですけど。とっても痛かったわ」
「あぁ、そうだったわね。お好きにしなさい」
「ふふふ。おい、お前ら。……やれ」
ごっついカラダつきの護衛の者が、わたしの前に立ちはだかった。
いかん。仕返しされる……
「や、やはり兄上さまだったのね……。わたしの想像した妖精じゃなかったんだ」
「うん、俺は生まれつき特殊な能力があってな。幼少の頃にお前が病気で難聴になった時、どうにか助けられないか試行錯誤した結果、アプレンって少年になってお前の思考に入り、話し相手が出来る様になったのさ」
「とても信じられないけど今もお話してるし、それは本当なんだね。でも兄上さまは今、大怪我してるよね? 大丈夫なの?」
「うーん、昏睡してるな。だがお陰でアプレンになれた。俺はお前の思考の中で生けていけるかもしれないな」
「暴走した馬車から助けてくれてありがとう。でも死んじゃいやよ。何にもしてあげられないけど生きて! 兄上さま!」
「あぁ、頑張るよ。ここで死ぬ訳にはいかない」
「わたしね、音が、声が聞こえて嬉しかった。その反面、辛いこともあったの」
「皆んながロクなこと言わなかったからか? それとも伯爵の愛人にさせられそうになったことか? あぁ、もっとあるな。我が子爵家が違法な阿片を作って売ってることを知ったからか?」
「全部よう! ねえ、キース先生に伝えろって言ったよね? 先生って何者なの?」
「それはまだ言えない。だがお前の味方になってくれるだろう。取り敢えずここから出られる様にしないとな……」
「うん……そうね」
わたしはまだまだ知りたいことがあった。でもいつの間にか眠ってしまう。アプレンとお話するといつもこうだ。
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翌朝、モッペルに起こされた。いい匂いがする。
「オリビア様、朝食を持ってきたよ。ちょっと多めに注いできたから、たんとお食べ」
ムクっと起きて会釈した。一瞬、自分のお部屋と勘違いしたけど景色を見て直ぐに思い出す。ここは地下の監禁部屋だ。家族と朝食をともにする筈もない。なので朝の支度を整える必要もなかった。
「今日ね、尋問があるらしいよ。悪いこと言わないから正直に答えた方が良いわ。身のためだからね。演技する様だったら確かめる術があるって言ってたの。気をつけて、オリビア様」
わたしは差し出された朝食を黙々と食べる。
「何も話してくれないか。……アタシに怒ってるんだね。お荷物令嬢とか言ったし。まさか聞こえてたなんて思ってなかったからゴメンなさい」
モッペルはよくお話をしてる様だけど、全て雑音だからニコッと笑ってやり過ごした。やがて彼女は朝食の後片付けで部屋を後にする。
それから間もなくのことだ。護衛とともにお母様とイービルが監禁部屋に入ってきた。
「あ~ら、お姉様。思ったよりお元気そうだこと」
ふん、何言ってるのやら。なーんにも聞こえないわよう。
「さてと、オリビア。聞こえてるんでしょ? これから私の質問に全て答えなさい。いいこと?」
今度はお母様が何か仰ってる。
「その前にお母様。私、意味もなくお姉様に殴られたんですけど。とっても痛かったわ」
「あぁ、そうだったわね。お好きにしなさい」
「ふふふ。おい、お前ら。……やれ」
ごっついカラダつきの護衛の者が、わたしの前に立ちはだかった。
いかん。仕返しされる……
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