わたしの祈りは毒をも溶かす!
5話 あ、聞こえるよう。でもこれが現実なのか…⑤
お屋敷のホールで週一回、ダンスのレッスンを受けている。勿論、メインは妹のイービル。わたしはオマケだ。
キース先生は黒髪の短髪で眼光鋭く、とっても怖い存在。聴覚障害のわたしにスパルタで指導なさるので正直、憂鬱な時間でもあります。
でも妹にはかなりの甘め。きっとお母様が『お手柔らかに』と頼んでるのに違いない。
たぶん、お母様とキース先生は恋仲だと思う。いつも香水ぷんぷん振りまいて入念なお化粧施しているし、やたらとベタベタしてるの。子供の前で見せないでよって、言う場面が多々あるのだ。
まぁそれはさておき、妹の前座でわたしの指導が始まった。
「ねぇ、せんせ~い。オリビアは近々高貴な御方とダンスするから厳しく指導なさってね~ぇん」
「かしこまりました、マダム」
高貴な御方ってフレディ伯爵様かな?
「では、本番さながらの演奏をつけましょう」
演奏ーー!?
愛人のこと思い出して『やだ』と思ってる暇もなくミニオーケストラが楽器を奏でた。いつもは妹の時にしかやらない演奏だ。わたしにとっては苦痛の騒音……
「おい、何をぼさっとしてるんだ」
……のはずだけど?
この音って!?
生まれて初めて聞いたと言っても過言ではない、素敵なメロディーが耳に響いた。
す、凄い。凄いよ、この音楽。こんなメロディーだったんだ。とっても優雅なワルツだよ。あぁ、ココロに染みるうーー。
「オリビア、音に驚くな! いつもの感覚で踊るんだ!」
あ、は、はいーーっ。
キース先生から強引に右手を握られ、彼の右手がわたしの左肩甲骨の上へ添えられる『ホールド』と言う基本姿勢をとられた。
イービルはニヤニヤ笑ってる。彼女は明らかに面白がっていた。今まで優しい目を向けていると思ってたけどそうじゃない。悲しいけど今日一日で彼女の腹の底が見えてしまったのだ。
「オリビア!」
いかん、集中せねば。
わたしは目を閉じて深呼吸した。そして軽快なリズムに合わせステップを踏んでみる。
あ、できる、できるよう。
「……む? いいぞ、オリビア。その調子だ。いいか、騒音と感じようが相手の動きに合わせて身体で感じとれ!」
これまで先生から習ったナチュラルスピンターンやリバースターンを上手に繰り返す。とても楽しく美しいダンスを踊ることができたのだ。
「うん、いいぞ」
余りにも上出来なダンスにキース先生が驚いてる。明らかに妹よりも上手だったのでニヤついてた彼女も余裕がなくなり真剣な顔つきとなっていた。
「よしよし、上手く踊れた。マダム、これなら心配ない」
「あ~ら、良かったわぁ。これで伯爵様との顔合わせも大丈夫の様ねぇ~」
「それにしても演奏した方が上手いとは……?」
キース先生は少々疑いの目を向けてこられた。
これはいかん。上手くやり過ぎたかもしれないな。
「あー、あー、……」
ここは聞こえない演技をするしかなかった。バレては元も子もないからね。
と、後方から鋭い視線を感じる。イービルが鬼の形相で睨んでいるのだ。自分より上手だと嫉妬してるかの様に。
ーーわたしは再び彼女にロックオンされた。(本日二度目)
キース先生は黒髪の短髪で眼光鋭く、とっても怖い存在。聴覚障害のわたしにスパルタで指導なさるので正直、憂鬱な時間でもあります。
でも妹にはかなりの甘め。きっとお母様が『お手柔らかに』と頼んでるのに違いない。
たぶん、お母様とキース先生は恋仲だと思う。いつも香水ぷんぷん振りまいて入念なお化粧施しているし、やたらとベタベタしてるの。子供の前で見せないでよって、言う場面が多々あるのだ。
まぁそれはさておき、妹の前座でわたしの指導が始まった。
「ねぇ、せんせ~い。オリビアは近々高貴な御方とダンスするから厳しく指導なさってね~ぇん」
「かしこまりました、マダム」
高貴な御方ってフレディ伯爵様かな?
「では、本番さながらの演奏をつけましょう」
演奏ーー!?
愛人のこと思い出して『やだ』と思ってる暇もなくミニオーケストラが楽器を奏でた。いつもは妹の時にしかやらない演奏だ。わたしにとっては苦痛の騒音……
「おい、何をぼさっとしてるんだ」
……のはずだけど?
この音って!?
生まれて初めて聞いたと言っても過言ではない、素敵なメロディーが耳に響いた。
す、凄い。凄いよ、この音楽。こんなメロディーだったんだ。とっても優雅なワルツだよ。あぁ、ココロに染みるうーー。
「オリビア、音に驚くな! いつもの感覚で踊るんだ!」
あ、は、はいーーっ。
キース先生から強引に右手を握られ、彼の右手がわたしの左肩甲骨の上へ添えられる『ホールド』と言う基本姿勢をとられた。
イービルはニヤニヤ笑ってる。彼女は明らかに面白がっていた。今まで優しい目を向けていると思ってたけどそうじゃない。悲しいけど今日一日で彼女の腹の底が見えてしまったのだ。
「オリビア!」
いかん、集中せねば。
わたしは目を閉じて深呼吸した。そして軽快なリズムに合わせステップを踏んでみる。
あ、できる、できるよう。
「……む? いいぞ、オリビア。その調子だ。いいか、騒音と感じようが相手の動きに合わせて身体で感じとれ!」
これまで先生から習ったナチュラルスピンターンやリバースターンを上手に繰り返す。とても楽しく美しいダンスを踊ることができたのだ。
「うん、いいぞ」
余りにも上出来なダンスにキース先生が驚いてる。明らかに妹よりも上手だったのでニヤついてた彼女も余裕がなくなり真剣な顔つきとなっていた。
「よしよし、上手く踊れた。マダム、これなら心配ない」
「あ~ら、良かったわぁ。これで伯爵様との顔合わせも大丈夫の様ねぇ~」
「それにしても演奏した方が上手いとは……?」
キース先生は少々疑いの目を向けてこられた。
これはいかん。上手くやり過ぎたかもしれないな。
「あー、あー、……」
ここは聞こえない演技をするしかなかった。バレては元も子もないからね。
と、後方から鋭い視線を感じる。イービルが鬼の形相で睨んでいるのだ。自分より上手だと嫉妬してるかの様に。
ーーわたしは再び彼女にロックオンされた。(本日二度目)
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1
コメント
激しく補助席希望
読ませていだだきました。とても素敵な物語だと思います。聞きたくない事が聞こえてしまう辛さがとても伝わってきて切なくなりました。ありがとうございます