わたしの祈りは毒をも溶かす!
3話 あ、聞こえるよう。でもこれが現実なのか…③
「あらあら、お姉様も驚いてるわ! うふふ」
イービルが場を茶化した。すかさずモッペルが現れ、新しいフォークに取り替えてくれたので御礼の会釈をする。
わたしは何も聞こえてないと誰もが思い込んでいるから、まるで気にもされてなかった。それよりお母様はお父様の発言が気に入らない様だ。
「まぁ、貴方も若いお妾さん沢山抱えてらっしゃるようだから、伯爵様のお気持ちが分かるのでしょうねぇ!」
「おいおい、そう言う君だって……いや、話の論点がズレている。子供の前で話す内容じゃない。いいか、耳の聞こえないオリビアが高く売れそうだって話をしてるんだ」
「ふん。そーですわね。まぁ、傷物にしちゃ伯爵家だなんて上出来ですこと。よくやったわねー、オリビア? おーほほほほほほ……!」
お母様はわたくしに笑顔を向けた。
優しい笑顔だとこれまで勘違いしてたけど、今までこんなひどい会話してたなんてショックだなぁ。それにわたしは傷物なのね。でも辛い素振りは見せられないよ、バレるから。あぁ、早く夜が来ないかなー。アプレンに会いたいよう。
音のある世界に憧れていたけど現実は悲しかった。しんみりしたいのを我慢して必殺の愛想笑いで気づかぬふりをし続けるしかない。
ーーと、その時だった。
「いい加減にしてくれ!」
兄上さま?
「あら、やっと喋ったと思ったら何なの? ゲーニウス?」
「本人の居る前で売るとか傷物とか、よくそんなこと言えるよな?」
「聞こえてないから大丈夫よ? まぁ妹想いだこと。どうせならイービルを可愛がって頂戴な」
「うん、お母様の言う通りですわ。兄上さまン」
バンッと机を叩いて兄は立ち上がった。
「ご馳走さまでした。用事があるので俺はこれで……」
ご立腹の兄がホールから出て行かれた。
「全く、愛想のない堅物な息子ねぇ。誰に似たんだか!」
お父様は知らん顔をしている。実は兄上さまとわたしはお妾さんの子。お母様が産んだのは妹のイービルだけなのです。
でも怖いって思ってた兄上さまは、わたしのことを心配してたなんて意外だった。ちょっと見方が変わったな。今日一番の嬉しい出来事だ!
***
「お姉様も一緒に参加しましょうねぇ」
お昼過ぎにイービルのクラスメートが集まってお茶会が始まった。時々イービルはわたしを連れて庭園のベンチに座らせる。寂しい日常を過ごしてると同情され、好意で誘ってくれてるものだとこれまで思っていたけど、どうも違うみたいだ。
「いいこと? 私はお荷物お姉様に優しく接するココロの美しい子爵令嬢だからねー」
イービルは笑顔を向けてひどいことを口にした。つまりアレだ。わたしをカモにしてリュメル様に素敵な印象を与えようとの演出だったのだ。
あー、また裏切られた気がするう。
残念だけどそれでもいいよ。だって皆んなが楽しそうに会話してるとこ見たいもん。特にリュメル様はわたしに気遣ってくださるし。
広々としたオープンデッキで年頃の男女が十人くらい集まって賑わっている。少し離れた木陰の下でわたしはそれを眺めていた。余り近くには行けない。解読不明な騒音が苦になるからだ。でも今は聞こえる。全然苦じゃない。
わたしも一緒になって笑ってみたいなー!
ーーそうココロの中で叫んだ。
イービルが場を茶化した。すかさずモッペルが現れ、新しいフォークに取り替えてくれたので御礼の会釈をする。
わたしは何も聞こえてないと誰もが思い込んでいるから、まるで気にもされてなかった。それよりお母様はお父様の発言が気に入らない様だ。
「まぁ、貴方も若いお妾さん沢山抱えてらっしゃるようだから、伯爵様のお気持ちが分かるのでしょうねぇ!」
「おいおい、そう言う君だって……いや、話の論点がズレている。子供の前で話す内容じゃない。いいか、耳の聞こえないオリビアが高く売れそうだって話をしてるんだ」
「ふん。そーですわね。まぁ、傷物にしちゃ伯爵家だなんて上出来ですこと。よくやったわねー、オリビア? おーほほほほほほ……!」
お母様はわたくしに笑顔を向けた。
優しい笑顔だとこれまで勘違いしてたけど、今までこんなひどい会話してたなんてショックだなぁ。それにわたしは傷物なのね。でも辛い素振りは見せられないよ、バレるから。あぁ、早く夜が来ないかなー。アプレンに会いたいよう。
音のある世界に憧れていたけど現実は悲しかった。しんみりしたいのを我慢して必殺の愛想笑いで気づかぬふりをし続けるしかない。
ーーと、その時だった。
「いい加減にしてくれ!」
兄上さま?
「あら、やっと喋ったと思ったら何なの? ゲーニウス?」
「本人の居る前で売るとか傷物とか、よくそんなこと言えるよな?」
「聞こえてないから大丈夫よ? まぁ妹想いだこと。どうせならイービルを可愛がって頂戴な」
「うん、お母様の言う通りですわ。兄上さまン」
バンッと机を叩いて兄は立ち上がった。
「ご馳走さまでした。用事があるので俺はこれで……」
ご立腹の兄がホールから出て行かれた。
「全く、愛想のない堅物な息子ねぇ。誰に似たんだか!」
お父様は知らん顔をしている。実は兄上さまとわたしはお妾さんの子。お母様が産んだのは妹のイービルだけなのです。
でも怖いって思ってた兄上さまは、わたしのことを心配してたなんて意外だった。ちょっと見方が変わったな。今日一番の嬉しい出来事だ!
***
「お姉様も一緒に参加しましょうねぇ」
お昼過ぎにイービルのクラスメートが集まってお茶会が始まった。時々イービルはわたしを連れて庭園のベンチに座らせる。寂しい日常を過ごしてると同情され、好意で誘ってくれてるものだとこれまで思っていたけど、どうも違うみたいだ。
「いいこと? 私はお荷物お姉様に優しく接するココロの美しい子爵令嬢だからねー」
イービルは笑顔を向けてひどいことを口にした。つまりアレだ。わたしをカモにしてリュメル様に素敵な印象を与えようとの演出だったのだ。
あー、また裏切られた気がするう。
残念だけどそれでもいいよ。だって皆んなが楽しそうに会話してるとこ見たいもん。特にリュメル様はわたしに気遣ってくださるし。
広々としたオープンデッキで年頃の男女が十人くらい集まって賑わっている。少し離れた木陰の下でわたしはそれを眺めていた。余り近くには行けない。解読不明な騒音が苦になるからだ。でも今は聞こえる。全然苦じゃない。
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