わたしの祈りは毒をも溶かす!
1話 あ、聞こえるよう。でもこれが現実なのか…①
わたしは毎晩寝室で今日一日の嬉しかったこと、楽しかったことを一つ二つ思い浮かべてお話する習慣があるの。そのルーティンをやらないと寝てはいけない約束なのだ。
「オリビア、今日も幸せだったか?」
「うん、みーんな笑顔でいい一日だったよ」
「では一番嬉しかったことは何だ?」
「そうねぇ。お食事の時、お父様もお母様も妹も楽しそうに会話されてたことかなぁ」
いつも友達の妖精とお話ししながら眠りにつく。妖精と言ってもね、自分が勝手に想像して創り出した男の子。ちょっと生意気だけどとっても可愛いのよ。
「ねぇねぇアプレン、今日は一つしかないの。だからいつものように何かお話してーー!」
「あぁいいぜ。だが今晩は真面目な話をしよう」
「何のお話かなーー? うふふ」
目を閉じて期待した。
夜は静かで落ち着くよ。ベッドの上で寛ぐこの時間が一番の楽しみだ。
「お前、十六歳になるよな」
「うん、もう直ぐね」
「まぁ、誕生日プレゼントじゃないけど、一つ夢を叶えてやろうと思ってな」
「えー、なになに?」
期待に胸が膨らむ。
「お前、音が聞きたいだろ?」
「えっ!?」
「だから音や声が聞きたいだろ? 前から言ってたじゃないか」
思わずハッとした。
わたし、実は聴覚障害を持ってるの。ただ、全く聞こえない訳ではないけど、ほぼほぼ聞こえない。全て解読不明な雑音だ。時には騒音に感じて不快な気分になるの。
『重度な難聴』
幼い頃に突然罹患した。原因不明だった。ただ高熱で生死を彷徨ったらしいのでその後遺症かもしれない。
ーーでも、わたしは幸せだと思っているよ。
地方の領主である子爵家に生まれ、なに不自由なく生活してるの。家族も侍女も使用人もみーんな優しくて笑顔に包まれてる。『だから今のままで充分幸せ』と言いたいけれど……
「そりゃ聞こえるもんなら聞いてみたいよ。どんな楽しい会話してるのか、いっつも気になるもん!」
「……あまり期待すんな」
「そうなの? それは兄上さまのこと?」
今は一緒に暮らしてないけどわたしには五つ上の兄がいる。彼は昔からあまり笑顔を見せない。週末に帰ってくるけど、ちょっと苦手な存在なのです。
「いや、彼のことじゃなくて」
「アプレンあのね、お父様やお母様、妹のイービル、それに侍女や使用人たちに『ありがとう』ってはっきり伝えたいよ」
「おい、勘違いするな。聞こえるようにしてやると言っても条件付きだ」
「じょうけん?」
「いいか、よく聞け。俺の魔力で耳を治してやる。但し、健常者のように喋ってはならない。あー、うー、とかこれまで通りの振る舞いをするんだ。聞こえても聞こえないフリをする。いいか?」
「な、何で?」
「言葉を発したら魔力が消えるのさ。元に戻るぞ。そしたらどうなると思う? 実は聞こえていたと思われるだろ。今まで騙してたのかってね。でもその頃にはもう聞こえない。だから一生、誤解されながら生きていく事になるんだ」
「……ずっと聞こえないフリするの?」
「あぁ、それに耐えられる自信があるなら叶えてやる。どうだ?」
これは迷うな。今まで何となくその場の雰囲気や口の形を視覚で感じて愛想笑いしたり、意味も分からずしんみりしてたけど、聞こえた上で演技しないといけないのか。うーん……でも。
「でも、言葉が聞きたいよ。素敵な音楽を聴いてみたい。川のせせらぎ、鳥の鳴き声……やっぱり聞こえたい!」
「分かった。さぁ、もう眠るのだ。朝が来たら夢は叶っている。おやすみ、オリビア……」
もう既に半分夢の中にいた。アプレンの話を聞きながらいつも途中で寝てしまうのだ。
そして半信半疑のまま朝を迎えたーー
「オリビア、今日も幸せだったか?」
「うん、みーんな笑顔でいい一日だったよ」
「では一番嬉しかったことは何だ?」
「そうねぇ。お食事の時、お父様もお母様も妹も楽しそうに会話されてたことかなぁ」
いつも友達の妖精とお話ししながら眠りにつく。妖精と言ってもね、自分が勝手に想像して創り出した男の子。ちょっと生意気だけどとっても可愛いのよ。
「ねぇねぇアプレン、今日は一つしかないの。だからいつものように何かお話してーー!」
「あぁいいぜ。だが今晩は真面目な話をしよう」
「何のお話かなーー? うふふ」
目を閉じて期待した。
夜は静かで落ち着くよ。ベッドの上で寛ぐこの時間が一番の楽しみだ。
「お前、十六歳になるよな」
「うん、もう直ぐね」
「まぁ、誕生日プレゼントじゃないけど、一つ夢を叶えてやろうと思ってな」
「えー、なになに?」
期待に胸が膨らむ。
「お前、音が聞きたいだろ?」
「えっ!?」
「だから音や声が聞きたいだろ? 前から言ってたじゃないか」
思わずハッとした。
わたし、実は聴覚障害を持ってるの。ただ、全く聞こえない訳ではないけど、ほぼほぼ聞こえない。全て解読不明な雑音だ。時には騒音に感じて不快な気分になるの。
『重度な難聴』
幼い頃に突然罹患した。原因不明だった。ただ高熱で生死を彷徨ったらしいのでその後遺症かもしれない。
ーーでも、わたしは幸せだと思っているよ。
地方の領主である子爵家に生まれ、なに不自由なく生活してるの。家族も侍女も使用人もみーんな優しくて笑顔に包まれてる。『だから今のままで充分幸せ』と言いたいけれど……
「そりゃ聞こえるもんなら聞いてみたいよ。どんな楽しい会話してるのか、いっつも気になるもん!」
「……あまり期待すんな」
「そうなの? それは兄上さまのこと?」
今は一緒に暮らしてないけどわたしには五つ上の兄がいる。彼は昔からあまり笑顔を見せない。週末に帰ってくるけど、ちょっと苦手な存在なのです。
「いや、彼のことじゃなくて」
「アプレンあのね、お父様やお母様、妹のイービル、それに侍女や使用人たちに『ありがとう』ってはっきり伝えたいよ」
「おい、勘違いするな。聞こえるようにしてやると言っても条件付きだ」
「じょうけん?」
「いいか、よく聞け。俺の魔力で耳を治してやる。但し、健常者のように喋ってはならない。あー、うー、とかこれまで通りの振る舞いをするんだ。聞こえても聞こえないフリをする。いいか?」
「な、何で?」
「言葉を発したら魔力が消えるのさ。元に戻るぞ。そしたらどうなると思う? 実は聞こえていたと思われるだろ。今まで騙してたのかってね。でもその頃にはもう聞こえない。だから一生、誤解されながら生きていく事になるんだ」
「……ずっと聞こえないフリするの?」
「あぁ、それに耐えられる自信があるなら叶えてやる。どうだ?」
これは迷うな。今まで何となくその場の雰囲気や口の形を視覚で感じて愛想笑いしたり、意味も分からずしんみりしてたけど、聞こえた上で演技しないといけないのか。うーん……でも。
「でも、言葉が聞きたいよ。素敵な音楽を聴いてみたい。川のせせらぎ、鳥の鳴き声……やっぱり聞こえたい!」
「分かった。さぁ、もう眠るのだ。朝が来たら夢は叶っている。おやすみ、オリビア……」
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そして半信半疑のまま朝を迎えたーー
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コメント
ノベルバユーザー601444
妖精大好きなので出てきてトキメキました(^^)
続きが楽しみですー♪