黄泉への階段踏み外した男
黄泉への階段踏み外した男
北風が吹く一段と寒さが増した夜、空から雪がちらほら降りてきた。
誠二は行きつけの居酒屋で酒を飲み、一人ため息をついていた。
3日前、妻の和美が子供を連れて家を出て行ったのだ。
誠二と和美は、誠二が20歳、和美が18歳から同棲して和美が20歳の時、結婚した。
あれから20年、2人の子供に恵まれ幸せに暮らしていた・・・としたら、こんなことには、なっていない。
誠二は仕事が長続きせず、転々と仕事を変え、一向に仕事が安定しない。
よって、収入も安定しない。
そのくせ、ギャンブル好きで、ギャンブルに入れ込んで借金まで作ってしまった。
借金の事は、和美には内緒にしていたが3日前に、とうとう和美にバレてしまい、和美は激怒して子供を連れて家を出て行ったのだ。
誠二は、和美と子供達がいなくなり、改めて自分の不甲斐なさと失望感を味わっていた。
お勘定を済ませ、店を出てフラフラ歩いていると、突然、目の前に車のヘッドライトと急ブレーキの音!
どれほど時間が経ったのだろう・・誠二は気が付いた。
辺りを見渡すと、白いモヤがかかっていて先がよく見えない。
しばらくすると、だんだんモヤは消えていき周りの景色が見えてきた。
目の前には長く続く階段があった。
誠二は、ここがどこなのか?この階段を上って高い所から見てみれば、わかるかもしれない・・・と思い階段を上り始めた。
一段、一段上っていくうちに、誠二は今までの事をいろいろ思い出した。
和美と出会った時の事、一緒に行った海、一緒に見た夕日、一緒に行った夏祭りや花火大会・・・
思い出すのは、和美との思い出ばかり・・・そして子供達との思いで・・・
誠二は、階段を上りながら、泣いていた。
あんなに、あんなに、幸せだったのに・・・何でオレは、もっと大切にしなかったんだろう・・・
何で、自分が幸せだった事に気づかなかったのだろう・・・
ごめんな和美、ごめんな優香、賢人・・・
オレが悪かった・・・だから、お願いだから戻ってきてほしい・・オレ、生まれ変わって、今度こそ絶対お前たちを幸せにするから
和美~優香~賢人~戻ってきてくれ~
誠二は階段を見上げ、泣きながら叫んだ。
すると、どこからか、和美の声がした「誠二」
誠二は、和美の声に後ろを振り返った!
そのとたん、誠二はよろけて階段を踏み外し転げ落ちていった・・・
「誠二!!誠二!!」
誠二は、もうろうとした意識の中で見たものは、一番大切な人の泣き顔だった・・・
ごめんな、もう、泣かせないから・・・
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コメント
amegahare
この物語のように、走馬灯は階段を登りながら見るのかもしれないと思いました。生死の境目では人は色々なことを回想するけど、家族の繋がりはやはり生きる糧に繋がっているのだと感じました。家族の思い出が次々と出てくるシーンに心打たれました。
ノベルバユーザー598104
黄泉へのみちがエスカレーターでなくてよかった