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ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~

ノベルバユーザー602564

第55話 どうでもいい親離れ

 木製の壁に囲まれて小さな部屋。四角いテーブルが真ん中に置かれ、テーブルの一辺ごとに四脚の椅子が配置されている。
 壁にある小さな窓の外は、光る粒子が輝く紫の霧が流れている。ここはミーティアが持つレッドファルコンの一室だ。体内で浄火が作れるヴィクトリアと違い、つるされたランタンから発する聖油を燃やした青白い光が、部屋全体を照らしていた。
 ロック、アイリスとフローラ、ミーティアの四人がテーブルを囲み話をしている。四人の前にあるテーブルの上には王都レオポリス周辺の広げられていた。

「二人の処刑会場はここ…… 王都の南にある砦の岩山処刑場だよ」

 難しい顔でミーティアが地図の南にある砦と書かれた場所に、二代目国王の顔が刻印された百デナ金貨を置く。地図を見たロックは少し考えてから口を開く。

「あそこだと火あぶりだな」
「そうだね。反逆者は火あぶりにするのはリオティネシアの伝統だ。それにヴィクトリアも一緒だからね。あの巨体の処理を考えれば燃やすのがいいんだろう」

 リオポリスの南の砦の近くに高さ十メートルの岩山がある。岩山は高さはないがすごく広い。その面積だけであれば砦よりも広い岩山をすり鉢状に切り出し、地上よりも低くして処刑場として運用している。すり鉢状にした岩山の中心に杭をうち、囚人を縛り付け火矢やもしくは魔法で火をつけて火あぶりにするのだ。
 また、処刑場はその形状から魔物や人間同士を戦わせる闘技場としても使用されており、すり鉢状の岩山には観客席が設置され数万人が観覧できるようになっている。ちなみに南の砦は紫海から近いため現在は闘技場としては運用していない。

「あの岩山くりぬいてレース場にした方が楽しいのにな……」

 ミーティアの話を聞いていたロックがボソッとつぶやいた。彼の声が聞こえたミーティアは、あきれた顔をしフローラはあらあらと言った様子で優しく見持っている。アイリスはロックの背中をたたいた。

「だったらクローネを助けだして陳情しなさい。彼女は時期女王なんだから!」
「だな。そうするわ」

 ロックはアイリスのほうを向いて笑った。二人の会話を聞いたミーティアはため息をつくのだった。

「はぁ。あんた達はもう…… いいかい。明日の処刑の時に見物客に紛れて会場に潜入してヴィクトリアとクローネを助けるんだ」
「任せておけ。視界に入れれば俺はいつでも魔法で姐さんの体の中へ入れる! でも…… 俺達は警戒されているだろう。どうやって会場へ入る?」

 ミーティアはロックの問いかけににっこりと笑い、船体後部にある貨物室を指した。

「船にフローラ様からの贈り物がたっぷりと積んである。全部処刑会場に運ぶ予定だからそれに紛れな」
「わかった。でもフローラ達は大丈夫か? クローネを俺たちに頼んだし……」

 心配そうにするロックにフローラはにこっと笑って答える。

「マンマの心配しなくてもいいわよ。いざとなったらロックちゃん達に襲われたことにするからね」
「「なっ!?」」

 驚いて声をあげるロックとアイリス、フローラはにこにこと笑っている。ロックはため息をついてまた口を開く。

「失敗したら容赦なく切り捨てるつもりかよ」
「あたしはただの荷運びだからね。荷物は責任もって運ぶけどそこから先はあんたらの問題ってだけだよ」
「わたくしも何も知りません。ただ国家転覆を狙う反逆者を捕まえたことへの謝意を示してるだけですわ」

 力強くうなずくミーティアとフローラだった。ロックは二人の態度を見て不敵に笑った。

「つまりは処刑場でどんなに暴れてもおとがめはなしでいいんだな?」
「さぁ知らないよ。あたしはしがない物流連盟の会長だからね」
「えぇ。教会も王位継承には口をだしません。生き残った強い王についていくだけです」

 両手を広げたフローラは少し間をあけて笑顔で口を開く。

「ただ…… それがクローネちゃんであればいいと思うだけですわ」
「そうだね。あの子は今の王様と一緒で信頼できそうだ」

 ロックはアイリスへ視線を向けた彼女は笑って右手を彼の前にだした。

「勝てば官軍ってわけね。やるわよ」
「あぁ。まかせておけ」

 左手でロックはアイリスの手を上からたたく。パチンいう音が室内に響く。フローラは目の前のやり取りを笑顔で見つめていた。

「でもね。ただ一つだけ気になることがあってね……」

 顎に手をおいてミーティアが話を始めた。

「王都にいる知り合いからの情報だとオルドア様が処刑会場に来るらしい」
「「えぇ!?」」

 フローラとアイリスがすごく驚いた顔をする。オルドアと聞いて誰かわからないのか、二人の顔を交互に見ながら、ロックが気まずそうにアイリスの耳元で、聞こえないように小声でたずねる。

「なぁ。オルドアって…… 誰だ?」

 目を見開きひどくあきれた顔をするアイリスだった。

「ロック…… リオティネシアの王様よ。クローネのお父さん!」
「おぉ! そっか! クローネの親父さんか……」

 胸の前で右拳を左手にうちつけ納得したようにうなずくロック。彼はすぐに何かを思い出し、目を大きく見開いてハッとした顔をする。

「えっ!? 待てよ! そいつは確か病気でだからクローネが王位継承の儀式をしにいったんだろ?」
「だからみんな驚いてるんでしょうが!」
「そっそっか。悪いな」

 ごかますように頭をかくしぐさをするロック、アイリスは大きく息を吐く。ミーティアはおどこに手をあて首を横に振っていた。フローラだけはにこにこと笑っている。気を取り直して真剣な表情をしてミーティアが話を続ける。

「まあ。十中八九影武者だろうね。クローネが反逆者だとみんなに印象付けるためのものだろう」
「クローネが見たらバレんじゃないのか? 親子だろ?」
「さぁね。ただそんな危険を冒しても呼ぶってことは勝算があるんだろうよ」

 難しい顔するミーティア、ロックは顎に手を置いて考え込んでいた。彼は静かに考えている、もし処刑会場でオルドアが偽物だということを暴ければ、一気に形勢ひっくりかえせるかもしれないと……
 考え込むロックをちらっと見た、ミーティアはアイリスに視線を向けた。

「ほかのやつらはどうするんだい? 連れて行くのか?」
「ポロンとコロンは船に待機させます。もし私たちに何かあれば……」
「知らないよ」

 不満そうに表情をきつくし、ミーティアは首を横に振った。

「二人を責任もって預かったんだろ? 戻ってきてキチンと最後まで面倒みな。あたしゃ許さないからね」
「はい。わかりました」

 ミーティアは強い口調でアイリスに言葉をぶつける。彼女なりのやさしさで絶対かえって来いというメッセージだ。
 アイリスはミーティアの言葉を理解し、嬉しそうにうなずくのだった。

「あと…… べリーチェには手伝ってもらいます」
「いいのかい? あいつは元々傭兵で向こう側の人間だろ?」
「大丈夫です。きっと手伝ってくれるはずです」

 力強くうなずくアイリス、ミーティアはそれ以上は何も言わなかった。四人は黙り静かになった、少ししてからミーティアが口を開く。

「じゃあ後は任せたよ。砦に着くまではゆっくり休みな」

 ミーティアの言葉で四人は解散するのだった。廊下に出た四人、部屋の前でアイリスがふとクローネに尋ねる。

「フローラ様ってクローネさんの子供のころから知ってるんですか?」
「えぇ。クローネちゃんは小さい頃に王都にある教会の修道院に居たことがあってね。その時によく会っていたのよ」

 立ち止まったフローラは視線を上に向け懐かしそうに話を続ける。

「小さい頃から真面目で融通が利かないけどかわいいのよぉ。この間会った時も変わらなくて懐かしかったわぁ」
「はは……」
「だからクローネちゃんも私の子みたいなものよ。きっとマンマに会えなくてさみしがっていると思うから助け出されたらいっぱいいっぱいいーーーーーーーーーーーーーーーっぱいかわいがってあげるの!」

 両手を胸の前で交差させ、抱きしめるようなしぐさをするフローラだった。
 フローラの様子に怪訝そうな顔で、ロックはミーティアに苦情をいれる。

「なぁ…… なんで連れて来たんだよ」
「しょうがないだろ。連れて行かないと出航許可出さないっていうんだからさ」
「はぁ!? もうさっさとあいつから町の代表権を誰かうばえよ」

 首を横に振るロック、彼の背後にそっと誰かが忍び寄って来る。

「聞こえたわよ。ロックちゃん……」
「うわああ!」

 振り向くとフローラが両手の腰に手をついて頬を膨らませている。フローラは目を潤ませてロックに顔を近づける。

「マンマに生意気言ってメーですよ。悪いことする子はおっぱい飲ませていうことを聞かせないといけないわね」
「はぁ!?」

 左胸に両手を添えたフローラはロックを見てにっこりと笑う。優しい本当の聖母のように笑うフローラ、慈愛に満ちた笑顔だったが、ロックにはひどく不気味に見えた。ロックはアイリスの手をつかんで叫ぶ。

「逃げるぞ!」
「えっ!? あっ!? ちょっと!?」
「あっ待ちなさい! 廊下を走ったらメーですよ。やっぱりおっぱいを……」

 ロックの背中に向かって手を伸ばし、さみしそうにするフローラだった。数メートル先に行ったロックが振り返って叫ぶ。

「うるせえ! おい! ミーティア連れて来た責任取ってなんとかしろよ」
「はいはい。わかったよ。ったく。ほらフローラ! こっちにおいで」
 
 ミーティアはロックに向かって返事をすると、フローラの腕をつかんで部屋へと連れて行くのだった。
 歩き出してもフローラの機嫌はなおらず口をとがらせて頬を膨らませている。

「プクーーーーーー」
「何をそんなにむくれてるんだい? ロックが憎まれ口をたたくのはいつものことだろ」
「違うの! 見たでしょ?」
「なっなにを? 見たっていうんだい」

 首をかしげるミーティアに、フローラが悲しそうに目に手を当てる。

「アイリスちゃんとロックちゃんが手をつないでたのよ! もうあの二人が…… マンマとしてうれしいけどさみしいのよ!!!!」

 二人のちょっとした変化に旅に出て関係を深めたことをフローラは気づいたのだ。かわいい子供たちの成長がうれしくもさみしいとミーティアに向かってなげくフローラだった。ミーティアは大きなため息をつく。

「はああああああああ…… 別に二人ともいい大人なんだからそれくらい」
「そうよ。わかってるわよ。でも! やっぱりさみしいの! いつまでもマンマーって甘えてほしいじゃない」
「いや…… ごめん…… 心底どうでもいいわ」
「キッ!!!」

 フローラはミーティアをにらむ。ミーティアは首を横に振って困った顔で、フローラの手を引いて部屋へと戻るのだった。

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