ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~
第53話 何度負けても
ロックが目覚めた翌日。ポールの家の畑の脇に小さな林がある。林には小さな泉から小川が村に向かって流れて出ていた。
泉へと続く小道をアイリスは一人歩いていた。草原のさわやかな風が吹き抜ける、柔らかな木漏れ日照らされた気持ちのいい道を、アイリスは泉へと向かって歩く。少し歩くと木々がなくなり開けた場所へ出た。そこには透明な綺麗な水がわく小さな泉があり。泉の脇でロックは胡坐をかいて座り、両手を膝の上に置いた姿勢で目をつむっている。
アイリスはロックを見つけるとすぐに駆け寄った。
「ロックー! やっと見つけた! もう探したわよ!」
「……」
どうやらアイリスはロックに用事がありずっと探していたようだ。少し大きな声でアイリスは、ロックに話しかけるが、彼は反応せず微動だにしない。
まったく反応しないロックに、アイリスは意地になりさらに大きな声で呼びかける。
「聞こえてるー? ロックー! 私だよ!」
「ちゃんと聞こえてるよ! 瞑想中に騒ぐなよ」
アイリスの言葉が聞こえたロックは、迷惑そうに片目をあけ彼女に答えた。アイリスは彼の態度に少しムッとして嫌味を言う。
「あら!? 瞑想なんて珍しいわね。でも、精神統一したくらいじゃレースの予想は当たらないわよ」
「ちげえよ!!! 精霊と新しい魔法の契約をしていたんだよ!!!」
必死に叫ぶロックを見て満足そうに笑うアイリスだった。
「ごめんねぇ。それでなんの魔法を契約したの?」
「土属性の上級魔法。サンドホールとダートリフレクターと水属性の上級魔法ダークフリアティクだ」
「どんな魔法なの?」
首をかしげたアイリスに、ロックは少し得意げに話をする。
「サンドホールは行動疎外で、ダートリフレクターは障壁と反撃を兼ねた魔法かな。ダークフリアティクは攻撃魔法だな。サンドホールとダートリフレクターは手足に刻む予定だ」
「へぇ。すごいじゃない」
「本当はもっと簡単に契約できるんだがな…… 学校のやつらがケチだから苦労するぜ」
この世界での既存魔法の習得方法は主に二つ、魔法学校に習得したい魔法を告げ精霊と契約をもらう方法。
もう一つはロックのように直接精霊と交信し契約する方法だ。ちなみに魔法学校の生徒は在学中に、教わりながらほぼすべての既存魔法を契約するのが通例である。ロックの言葉にアイリスはあきれた顔した。
「ケチじゃなくて途中で退学したから属性上級魔法を水以外契約できなかっただけでしょう?」
「うるせえな。あと、退学じゃねえから。自主休学だから!」
退学じゃないと必死になる、ロックをアイリスは適当にあしらう。
「はいはい。ジラルディ教頭から二度と魔法学校の敷居跨がせないって言われてるくせに」
「チっ! あのハゲ…… やっぱりあの時にギチギチに締めて毛を全部剃ってやるべきだったな」
舌打ちをしたロックは、ぶつぶつといいながら立ち上がった。
「そういや…… うちに来た直後は戻ってこいって手紙や使者が来てたけど最近は来ないわね」
「当たり前だろ。一人が辞めたくらいの影響なんてそんなもんだ。どこからかいい人材が来て穴なんか自然と埋まるさ。いつまでも自分が必要とされて、残ったやつらが困ってるなんてのは自己評価の高い馬鹿野郎の妄想だ」
「なるほど! わかるわ。あなたもわりと自己評価高いわよね。外れるレースの時にかぎって自信満々でさ、当たった後にお金をどう使うか妄想がしてるもんね」
「うっうるせえ!!」
アイリスはにこにこと笑っている。笑っている彼女を見ながらロックは不機嫌そうに尋ねる。
「なんか俺に用があったんじゃねえのか?」
「あぁ! そうだったわ。ごめんなさい。これから客が来るから一緒に来て」
ロックの手を引っ張り、どこかへと連れて行こうとするアイリスだった。急に引っ張られたロックは驚くのだった。
「おっおい!? 客って誰だよ?」
「ミーティアよ。彼女から船を借りようと思ってね」
「えっ!? ミーティアからか? あいつから船を借りると高くつくぞ?」
「そりゃあ痛い出費だけど…… 船がなきゃクローネを助けに行けないしね。急がないといけないみたいだし……」
暗い顔したアイリスが立ち止まり、鞄の中から羊皮紙を取り出してロックに差し出した。
「なんだこれ?」
羊皮紙を受け取ったロックは首をかしげる。
「さっき村長さんがポールさんの家に来ておいていった王都からの知らせよ」
「王都からだと……」
文字と絵が描かれていた羊皮紙をロックは、読み終わるとすぐに羊皮紙をクシャっと握りつぶした。
「姐さんとクローネを処刑するだと!? クソ!」
ロックが見た知らせにはヴィクトリアとクローネの処刑日時が書いてあった。
「しかも国家反逆罪ですって…… 各地の豪族をだまして王位継承を勝手に進めたことになってるみたい。そしてそれに協力したお姉ちゃんと私たちも同様ってことらしいわね」
「俺たちも?」
「裏を見てごらんなさい。私たちの似顔絵が描いてあるわよ」
くしゃくしゃになった羊皮紙を伸ばしてロックは裏面を見た。
裏には彼女の言葉通り、二人の似顔絵が描かれていた。二人とも実物より目つきが悪くあくどく書かれていた。
二人はクローネに協力したとして、お尋ね者になったのだった。
「なっ!? もう少し俺は人相がいいぞ! クソが!」
「ねぇ。失礼しちゃうわ。私だってこんな悪人面じゃないのに……」
ロックは知らせを地面に投げして踏んづけるのだった。
二人は泉から村から少し離れた平原へとやってきた。平原にはポールを含めた全員が集まっていた。
しばらく待っていると空を見上げいたロックがつぶやく。
「あいつ…… 自分の船で来たのか?」
三角形の大きな翼を持つ、赤い流線型の機体を持つ魔導飛空船が、猛スピードで飛んできた。
流線型の船尾に大きなプロペラがついた、この魔導飛空船の名はレッドファルコン。この魔導飛空船はミーティアが所有し、船長を務める自称大陸一速い魔導飛空船だ。
ゆっくりと平原に着陸したレッドファルコン、船首がせり上がり折れ曲がったように開くと中から、平べったい板のタラップが下りて来た
出迎えるために、フラッシュファルコンの船首にならぶ、ロック達だった。
「ロックちゃーーーん!!!!」
優しくおっとりした声がして、直後にロックの視界が真っ白になった。
「うわ!!!!」
「ヴィクトリアちゃんとクローネちゃんが捕まっちゃったのよねぇ。大丈夫?」
船から飛び出しのはミーティアではなくフローラだった。彼女はロックを抱きしめてたくさんなで始めた。
「悲しかったわよねぇ。悔しかったわよねぇ。さぁ! いっぱいマンマの胸で泣いていいからね!」
「うわっぷ!? フロー……」
フローラはロックの頭を自分の胸に強くくっつける。
ロックはフローラの肩をつかんではなそうとするが圧力が強くはなれない。必死になんとかしゃべれるようにフローラの胸から口だけをずらす。
「フローラ!? なんで!? あんたが…… うわ!」
「いいのよ。気にしないで今はマンマの胸で泣きなさい。いっぱい。いーーーーっぱい!!!!!」
「くっくるしい……」
力強くロックをつかまえたフローラは強引に自分に彼を引き寄せた。ロックは苦しみ顔を青くしていく。
ぐったりするロックを見たフローラは心配そうに声をかける。
「あーあ。こんなによわっちゃって…… マンマのおっぱい飲む? 元気になるわよ!」
「ふぇ!? おっぱいって!? なっなにを?」
「そんな恥ずかしがらないで! ほーら! マンマのおいちいまんまですよぉ」
服の上から自分の乳房をつかみ、ロックの顔に強引に近づけるフローラだった。
顔を真っ赤にしてロックが抵抗する。にこっと笑いフローラは神官服をはだけせよう服のボタンをはずそうと手をかけた。
「フローラ! あんたはもう…… いい加減しな!」
「そうよ! 早くロックから離れて!」
フラッシュファルコンからミーティアが、慌てて降りてきてフローラの手をつかまえた。
ほぼ同時に、アイリスがロックの手を引っ張って、フローラから逃がすのだった。離れていくロックをフローラが名残惜しそうに見つめ、ロックは肩で息をして額の汗をぬぐう。
「はあはあ…… ひどい目にあったぜ」
「ふーん。それにしちゃあ。大きな胸に挟まれて嬉しそうに顔がにやけてたけど?」
「うるせえ! おい! フローラ! アイリスも悲しいってさ」
右手に親指でアイリスをさしてロックはフローラに声をかけた。
にこっと笑い嬉しそうにアイリスを見たフローラ。
「そうなの? アイリスちゃんもおっぱい飲む?」
「やめな! あんたはもう! ロック! 余計なことするんじゃないよ」
アイリスに向かって行こうとするフローラの襟をミーティアがつかんで止めた。止められた下唇を出して不満そうにするのだった。
「はははっ。相変わらずですな。フローラ様は……」
ポールが笑いながらフローラとミーティアのもとへ向かう。
彼を見たフローラは嬉しそうに笑った。
「ポールちゃん! そっかぁ。今はここにいるんだよねぇ」
「はい。お久しぶりです」
親しげに話すポールとフローラ、二人の様子を見たロックが驚きの声をあげる。
「えっ!? ポッポールちゃんだって!?」
「フローラ様とポールさんって知り合いだったんですか?」
笑顔でうなずくポールとフローラだった。
「うん。ポールちゃんは王族付の執事だったのよね」
「はい。幼少期のクローネにお仕えしました。お懐かしいです」
かつて仕えたクローネに思いをはせ、目を潤ませるポールだった。
「そっか。だから私たちをすんなりここでかくまってくれたのね」
「あぁ。そうだな」
アイリスの言葉にロックは小さくうなずくのだった。
ポールはやはり最初はアイリス達を賊なのではと、疑っていたがクローネの名前を出すとアイリス達を快く受け入れた。フローラとポールが昔話に花を咲かせるのを、アイリスとロック二人は笑顔で見つめていた。二人の背後にそっとミーティアが近づく。
「それで…… あんたらはこれからどうするつもりだい?」
振り向いて笑い右拳を前にだし、ロックがミーティアの質問に答える。
「決まってるだろ。俺を怒らせたことを後悔させてやるよ」
「船もなくて追い詰められてるのかい?」
「はん!? いくら追い詰められもまだ生きてる。レースで何度も負けようが最終レースで取り返せば負けはなくなるからな」
ロックの言葉にミーティアが小さくうなずいた。しかし…… ロックの横にいたアイリスが彼の言葉につっこむ。
「あのさぁ。あなたものすごいくいいこと言ってるつもりかも知れないけど…… あなたはだいたいその最終レースでも負けるじゃない。んで、だいたいその後、最後やめておきゃあって泣き言うでしょ」
「うっうるせえな! 今それいう必要ないだろ!!!」
顔を真っ赤にするロック。アイリスの指摘は正しいレースで負けが続き最後に逆転を狙った、ロックはだいたい失敗し翌月は小遣いのないさみしい生活を送っている。二人の様子を見たミーティアが笑った。
「ははは。その通りだ。まだ死んでない。いいよ。あたしの船に乗りな。王都まで連れてってあげる」
「はーい。わたしも協力するからね」
ミーティアは胸をたたいた。彼女の横でフローラは手をあげるのだった。ロックとアイリスは少し困惑した様子で、顔を見合わせるのだった。
泉へと続く小道をアイリスは一人歩いていた。草原のさわやかな風が吹き抜ける、柔らかな木漏れ日照らされた気持ちのいい道を、アイリスは泉へと向かって歩く。少し歩くと木々がなくなり開けた場所へ出た。そこには透明な綺麗な水がわく小さな泉があり。泉の脇でロックは胡坐をかいて座り、両手を膝の上に置いた姿勢で目をつむっている。
アイリスはロックを見つけるとすぐに駆け寄った。
「ロックー! やっと見つけた! もう探したわよ!」
「……」
どうやらアイリスはロックに用事がありずっと探していたようだ。少し大きな声でアイリスは、ロックに話しかけるが、彼は反応せず微動だにしない。
まったく反応しないロックに、アイリスは意地になりさらに大きな声で呼びかける。
「聞こえてるー? ロックー! 私だよ!」
「ちゃんと聞こえてるよ! 瞑想中に騒ぐなよ」
アイリスの言葉が聞こえたロックは、迷惑そうに片目をあけ彼女に答えた。アイリスは彼の態度に少しムッとして嫌味を言う。
「あら!? 瞑想なんて珍しいわね。でも、精神統一したくらいじゃレースの予想は当たらないわよ」
「ちげえよ!!! 精霊と新しい魔法の契約をしていたんだよ!!!」
必死に叫ぶロックを見て満足そうに笑うアイリスだった。
「ごめんねぇ。それでなんの魔法を契約したの?」
「土属性の上級魔法。サンドホールとダートリフレクターと水属性の上級魔法ダークフリアティクだ」
「どんな魔法なの?」
首をかしげたアイリスに、ロックは少し得意げに話をする。
「サンドホールは行動疎外で、ダートリフレクターは障壁と反撃を兼ねた魔法かな。ダークフリアティクは攻撃魔法だな。サンドホールとダートリフレクターは手足に刻む予定だ」
「へぇ。すごいじゃない」
「本当はもっと簡単に契約できるんだがな…… 学校のやつらがケチだから苦労するぜ」
この世界での既存魔法の習得方法は主に二つ、魔法学校に習得したい魔法を告げ精霊と契約をもらう方法。
もう一つはロックのように直接精霊と交信し契約する方法だ。ちなみに魔法学校の生徒は在学中に、教わりながらほぼすべての既存魔法を契約するのが通例である。ロックの言葉にアイリスはあきれた顔した。
「ケチじゃなくて途中で退学したから属性上級魔法を水以外契約できなかっただけでしょう?」
「うるせえな。あと、退学じゃねえから。自主休学だから!」
退学じゃないと必死になる、ロックをアイリスは適当にあしらう。
「はいはい。ジラルディ教頭から二度と魔法学校の敷居跨がせないって言われてるくせに」
「チっ! あのハゲ…… やっぱりあの時にギチギチに締めて毛を全部剃ってやるべきだったな」
舌打ちをしたロックは、ぶつぶつといいながら立ち上がった。
「そういや…… うちに来た直後は戻ってこいって手紙や使者が来てたけど最近は来ないわね」
「当たり前だろ。一人が辞めたくらいの影響なんてそんなもんだ。どこからかいい人材が来て穴なんか自然と埋まるさ。いつまでも自分が必要とされて、残ったやつらが困ってるなんてのは自己評価の高い馬鹿野郎の妄想だ」
「なるほど! わかるわ。あなたもわりと自己評価高いわよね。外れるレースの時にかぎって自信満々でさ、当たった後にお金をどう使うか妄想がしてるもんね」
「うっうるせえ!!」
アイリスはにこにこと笑っている。笑っている彼女を見ながらロックは不機嫌そうに尋ねる。
「なんか俺に用があったんじゃねえのか?」
「あぁ! そうだったわ。ごめんなさい。これから客が来るから一緒に来て」
ロックの手を引っ張り、どこかへと連れて行こうとするアイリスだった。急に引っ張られたロックは驚くのだった。
「おっおい!? 客って誰だよ?」
「ミーティアよ。彼女から船を借りようと思ってね」
「えっ!? ミーティアからか? あいつから船を借りると高くつくぞ?」
「そりゃあ痛い出費だけど…… 船がなきゃクローネを助けに行けないしね。急がないといけないみたいだし……」
暗い顔したアイリスが立ち止まり、鞄の中から羊皮紙を取り出してロックに差し出した。
「なんだこれ?」
羊皮紙を受け取ったロックは首をかしげる。
「さっき村長さんがポールさんの家に来ておいていった王都からの知らせよ」
「王都からだと……」
文字と絵が描かれていた羊皮紙をロックは、読み終わるとすぐに羊皮紙をクシャっと握りつぶした。
「姐さんとクローネを処刑するだと!? クソ!」
ロックが見た知らせにはヴィクトリアとクローネの処刑日時が書いてあった。
「しかも国家反逆罪ですって…… 各地の豪族をだまして王位継承を勝手に進めたことになってるみたい。そしてそれに協力したお姉ちゃんと私たちも同様ってことらしいわね」
「俺たちも?」
「裏を見てごらんなさい。私たちの似顔絵が描いてあるわよ」
くしゃくしゃになった羊皮紙を伸ばしてロックは裏面を見た。
裏には彼女の言葉通り、二人の似顔絵が描かれていた。二人とも実物より目つきが悪くあくどく書かれていた。
二人はクローネに協力したとして、お尋ね者になったのだった。
「なっ!? もう少し俺は人相がいいぞ! クソが!」
「ねぇ。失礼しちゃうわ。私だってこんな悪人面じゃないのに……」
ロックは知らせを地面に投げして踏んづけるのだった。
二人は泉から村から少し離れた平原へとやってきた。平原にはポールを含めた全員が集まっていた。
しばらく待っていると空を見上げいたロックがつぶやく。
「あいつ…… 自分の船で来たのか?」
三角形の大きな翼を持つ、赤い流線型の機体を持つ魔導飛空船が、猛スピードで飛んできた。
流線型の船尾に大きなプロペラがついた、この魔導飛空船の名はレッドファルコン。この魔導飛空船はミーティアが所有し、船長を務める自称大陸一速い魔導飛空船だ。
ゆっくりと平原に着陸したレッドファルコン、船首がせり上がり折れ曲がったように開くと中から、平べったい板のタラップが下りて来た
出迎えるために、フラッシュファルコンの船首にならぶ、ロック達だった。
「ロックちゃーーーん!!!!」
優しくおっとりした声がして、直後にロックの視界が真っ白になった。
「うわ!!!!」
「ヴィクトリアちゃんとクローネちゃんが捕まっちゃったのよねぇ。大丈夫?」
船から飛び出しのはミーティアではなくフローラだった。彼女はロックを抱きしめてたくさんなで始めた。
「悲しかったわよねぇ。悔しかったわよねぇ。さぁ! いっぱいマンマの胸で泣いていいからね!」
「うわっぷ!? フロー……」
フローラはロックの頭を自分の胸に強くくっつける。
ロックはフローラの肩をつかんではなそうとするが圧力が強くはなれない。必死になんとかしゃべれるようにフローラの胸から口だけをずらす。
「フローラ!? なんで!? あんたが…… うわ!」
「いいのよ。気にしないで今はマンマの胸で泣きなさい。いっぱい。いーーーーっぱい!!!!!」
「くっくるしい……」
力強くロックをつかまえたフローラは強引に自分に彼を引き寄せた。ロックは苦しみ顔を青くしていく。
ぐったりするロックを見たフローラは心配そうに声をかける。
「あーあ。こんなによわっちゃって…… マンマのおっぱい飲む? 元気になるわよ!」
「ふぇ!? おっぱいって!? なっなにを?」
「そんな恥ずかしがらないで! ほーら! マンマのおいちいまんまですよぉ」
服の上から自分の乳房をつかみ、ロックの顔に強引に近づけるフローラだった。
顔を真っ赤にしてロックが抵抗する。にこっと笑いフローラは神官服をはだけせよう服のボタンをはずそうと手をかけた。
「フローラ! あんたはもう…… いい加減しな!」
「そうよ! 早くロックから離れて!」
フラッシュファルコンからミーティアが、慌てて降りてきてフローラの手をつかまえた。
ほぼ同時に、アイリスがロックの手を引っ張って、フローラから逃がすのだった。離れていくロックをフローラが名残惜しそうに見つめ、ロックは肩で息をして額の汗をぬぐう。
「はあはあ…… ひどい目にあったぜ」
「ふーん。それにしちゃあ。大きな胸に挟まれて嬉しそうに顔がにやけてたけど?」
「うるせえ! おい! フローラ! アイリスも悲しいってさ」
右手に親指でアイリスをさしてロックはフローラに声をかけた。
にこっと笑い嬉しそうにアイリスを見たフローラ。
「そうなの? アイリスちゃんもおっぱい飲む?」
「やめな! あんたはもう! ロック! 余計なことするんじゃないよ」
アイリスに向かって行こうとするフローラの襟をミーティアがつかんで止めた。止められた下唇を出して不満そうにするのだった。
「はははっ。相変わらずですな。フローラ様は……」
ポールが笑いながらフローラとミーティアのもとへ向かう。
彼を見たフローラは嬉しそうに笑った。
「ポールちゃん! そっかぁ。今はここにいるんだよねぇ」
「はい。お久しぶりです」
親しげに話すポールとフローラ、二人の様子を見たロックが驚きの声をあげる。
「えっ!? ポッポールちゃんだって!?」
「フローラ様とポールさんって知り合いだったんですか?」
笑顔でうなずくポールとフローラだった。
「うん。ポールちゃんは王族付の執事だったのよね」
「はい。幼少期のクローネにお仕えしました。お懐かしいです」
かつて仕えたクローネに思いをはせ、目を潤ませるポールだった。
「そっか。だから私たちをすんなりここでかくまってくれたのね」
「あぁ。そうだな」
アイリスの言葉にロックは小さくうなずくのだった。
ポールはやはり最初はアイリス達を賊なのではと、疑っていたがクローネの名前を出すとアイリス達を快く受け入れた。フローラとポールが昔話に花を咲かせるのを、アイリスとロック二人は笑顔で見つめていた。二人の背後にそっとミーティアが近づく。
「それで…… あんたらはこれからどうするつもりだい?」
振り向いて笑い右拳を前にだし、ロックがミーティアの質問に答える。
「決まってるだろ。俺を怒らせたことを後悔させてやるよ」
「船もなくて追い詰められてるのかい?」
「はん!? いくら追い詰められもまだ生きてる。レースで何度も負けようが最終レースで取り返せば負けはなくなるからな」
ロックの言葉にミーティアが小さくうなずいた。しかし…… ロックの横にいたアイリスが彼の言葉につっこむ。
「あのさぁ。あなたものすごいくいいこと言ってるつもりかも知れないけど…… あなたはだいたいその最終レースでも負けるじゃない。んで、だいたいその後、最後やめておきゃあって泣き言うでしょ」
「うっうるせえな! 今それいう必要ないだろ!!!」
顔を真っ赤にするロック。アイリスの指摘は正しいレースで負けが続き最後に逆転を狙った、ロックはだいたい失敗し翌月は小遣いのないさみしい生活を送っている。二人の様子を見たミーティアが笑った。
「ははは。その通りだ。まだ死んでない。いいよ。あたしの船に乗りな。王都まで連れてってあげる」
「はーい。わたしも協力するからね」
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