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ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~

ノベルバユーザー602564

第42話 野望

 薄暗くじんわりとした湿気とホコリの臭いが充満している。
 狭い塔のような場所で、螺旋状に下へ向かう階段が、真っ暗な空間へと伸びている。ここリオティネシア王城の地下へと続く螺旋階段だ。
 一人の女性がランタンで足元を照らしながら地下へと向かって歩いていた。女性は腰まで届く栗色のキレイな長い髪に、頭の左側にバラの花束をあしらった髪飾りをつけている。
 服装は薄い黄色の足元まで隠れるスカートのドレスに身を包んでいる。細長い眉毛に目はぱっちりとして瞳は黄色く輝き、鼻は高くスラット伸びて口は少し大きく唇はうすピンクで細い、高貴で美しい女性。彼女の名前はリリシア。年齢は三十歳で現リオティネシア王オルドアの妃でクローネの継母だ。
 リリシアはリオティネシア南にあるクプという、町の下級貴族で本来なら王妃となれるような立場でなかった。
 だが、クローネの母が妊娠した際に十二歳で王宮へと召し抱えられた、その時に献身的に妻の面倒を見る彼女の姿を国王のオルドアが気に入り見初められ妾となった。クローネの母が彼女を出産時に死去すると、以後はオルドアの寵愛を受けクローネが六歳の時に正式な王妃となる。
 階段を下りきると狭く暗い廊下が続く。リリシアは慣れた様子で廊下を進む。ここは地下牢だったのか、廊下の左右には厚く目線の高さに鉄格子がついた扉が並んでいる。一分もせずに、廊下は壁に突き当たり、そこには廊下に並ぶの同じ木製の扉がある。
 リリシアは中を見て扉を開ける。キーというきしむ音が地下に響く。

「アレサンドロ。なんですのこんなところにわたくしを呼び出すなんて……」

 部屋には小さなベッドだけが置かれ、その横に一人の男が立っていた。男は水色の甲冑に身を包み腰に剣をさした、金髪のやや長い髪をした背が高く、目つきのやや鋭いスラッとした中年の男性だった。彼の名前はアレサンドロ、年齢は四十歳。アレサンドロは国王の弟でリオティネシア王国魔導飛空船軍の提督だ。
 アレサンドロはリリシアの質問に答えず、リリシアの元へ歩みより左手を腰にまわす。

「んっ」

 アレサンドロはリリシアを抱き寄せ口づけをする。アレサンドロにリリシアは抵抗することなく、目をトロンとさせた彼女は彼の口づけを受け入れる。
 少ししてアレサンドロが口をはなすと、リリシアはそっと彼の胸に手を置いて身を寄せる。

「もう…… わたくしはまだオルドアの妻なのよ」
「ふん。ここは誰も来ないようにしてある。それに兄上はもう起き上がることはないさ」
「んっ」

 アレサンドロはまたやや強引に、リリシアに口づけをし彼女はそれを自然と受け入れる。
 しばらくリリシアの唇を堪能したアレサンドロが口をはなした。二人は見つめ合いながら微笑む。腰に手を回したアレサンドロが少し眉毛を下げた。

「残念だけどクローネはもうリオポリスへ向かっている」
「そう…… サリトールでの妨害も失敗したんですのね。やっぱり帝国出身者はあてになりませんでしたわ」

 真顔になったリリシアは眉間にシワを寄せ、不機嫌そうな顔に変わる。

「砂蛇とは契約を打ち切った方がよろしいですわね」
「その心配はない。彼らは船ごと紫海に沈んだ」
「なんですって!? まずいはあれを回収しないと……」

 アレサンドロ言葉に慌てるリリシア、彼は微笑みかけてうなずく。

「大丈夫だ。もう回収して保管してある」
「ほっ」

 胸に手を当て安堵の表情を浮かべた笑うリリシアだった。

「じゃあ。後はこちらへ向かってくるクローネに対処しませんとね」
「あぁ。おい!」

 アレサンドロが呼びかけると入り口の扉がすっと開く。
 扉から黒ずくめで仮面をつけた、背中に幅広のサーベルを男が一人部屋へと入って来た。

「あいつを連れて来い」

 黙って男はうなずくと部屋から出ていった。男は青い布にくるまれた物体をもってすぐに戻ってきた。部屋の真ん中に布にくるまれた物体を男が置く。リリシアは置かれた物を見て首をかしげた。

「これは…… なんですの?」

 アレサンドロは笑うと物体を包む布をつかんで引っ張り上げた。

「砂蛇のクロウだ」
「ひっ!?」

 リリシアが悲鳴に近い声をあげた。リリシアの反応の満足そうにうなずくアレサンドロ、彼の足元に物体を包んでいた布が落ちる。布にくるまれていたのは、ロックによって両手足を切り落とされ、四肢と顔の半分が凍りついたクロウだった。
 手足の先は凍傷で黒ずんでいる。意識があるのかないのかわからないがうつろな顔で二人を見つめている。
 彼には申し訳ないが、今のクロウの姿は異様で、この世のものとは思えなかった。

「アッアレサンドロ!? なんですかこれは?」
「あれを回収しに行った部隊がついでにもってきたんだ。見てみろこの状態でも生きてるんだぞ。クローネについてる魔法使いは相当な賢者だ」
「そうじゃありませんわ! なんでこんな不気味な物をもってきたんですの?」

 リリシアが声を少し荒らげてアレサンドロにつめよる。アレサンドロがクロウに視線を向けた、クロウは頭を左右に動かしている。
 アレサンドロはクロウを雑に指さして口を開く。

「あの方から預かった物を試すのにちょうどいいと思ったんだ?」
「えっ!? でもあれはいざとなったらオルドアに使えって…… あのお方が……」

 何かを恐れているのか、不安そうに目がおよぐリリシア、アレサンドロはそんな彼女に向けて親指を立てて笑う。

「なーに。クローネをちゃんと消せば問題ない」

 アレサンドロがリリシアから離れてクロウの元へと向かう。彼の前にしゃがんみ目を見つめる。頭を軽く左右に振りながら、光を失った瞳でクロウはアレサンドロを見つめている。

「お前は選ばれし者となった。紫海とともにあらんことを」

 クロウの肩に手を置いて言葉をかけたアレサンドロは立ち上がった。近くに立っていた黒ずくめの男にアレサンドロは顔を向けた。

「メンバーにこいつを大事に保管しておけと伝えろ」
「はっ」

 返事をした黒ずくめの男は布を拾い、クロウを包むと彼を抱えて部屋から出ていった。リリシアは男が出ていき閉められた扉をジッと見つめている。彼女の瞳から一抹の寂しさがにじみ出ている。アレサンドロは心配そうに彼女に声をかける。

「不安なのか?」

 顔をアレサンドロに向けたリリシアは彼の胸に飛び込んだ。アレサンドロはそっと彼女を抱きしめる。

「違うわ。クローネのことね…… もっとなんとかならなかったかなって……」
「そうだな。帝国との停戦時に向こうの皇太子との無理やり結婚させてやればこんなことにはならなかった。残念だよ」
「オルドアが長子継承の伝統に拘ったからね。本当に馬鹿な人だわ。その決断が娘を苦しめることになるのにね……」

 首を横に振ってリリシアが、吐き捨てるように言葉をはなつ。

「おいおい。俺の兄貴を馬鹿にするなよ」
「ふん。いいのよ。あいつはあなたと違って守ってくれなかった。それにあなただって…… ん」

 アレサンドロは強引にリリシアの唇をうばった。しばらく口づけを続けた二人の顔を離れる。

「もう……」

 口を尖らせリリシアが、少し不満げにアレサンドロに視線を向けている。不満げな態度とは裏腹にもれた声はどこか嬉しそうだった。
 アレサンドロはリリシアの両肩をつかんだ。

「兄貴とクローネのことはもういいだろう。もうすぐ終わるそして……」
「えぇ。あなたの息子がリオティネシア王となるのよ」

 ニヤリと笑ったアレサンドロ、手に力を込めてリリシアに背中を向けさせる。肩をつかんだままベッドの前に彼女をつれていく。

「王にはたくさんの兄弟を作ってやるか」
「やん!」

 アレサンドロは背中を押して、ベッドにリリシアの両手をつけさせた。彼女の足の間に自分の足をいれ強引に開かせた。開かれた彼女の足首に、ドレスと同じ色の下着が落ちる。

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