ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~
第39話 壊して作って
通行止めにされた静かなサリトール大橋は、ベリーチェを閉じ込めた五メートルほどの大きさの透明な氷の出す、冷気が周囲をひんやりとした空気に包んでいた。背負っていた杖を取り出したロックは、杖の先端を地面につけ、引きずりながらベリーチェを閉じ込めた氷を一周する。ゆっくりと氷の正面に戻ってきたロック、彼はベリーチェの顔を見て小さくうなずく。
「よし…… アイリス! みんなを集めてくれ」
「はーい」
振り返って彼の背後五メートルくらいにいたアイリスに声をかける。アイリスは手を振ってロックに返事をし、コロン、ポロン、クローネ、グレゴリウスの四人を集めに行った。
すぐにロックの前に五人が並んだ。彼らの前で頭をかきながらロックは話しを始める。
「族長と姫さんを前に言うことじゃないが。今から行うことは他言無用だ。絶対にここで起きたことは言うなよ」
「わかったのだ」
ポロンが元気をよく返事をする。コロンはポロンに顔を向け微笑みながらうなずく、二人の横に居たアイリスは正面に立つロックに向かって静かにうなずく。クローネとグレゴリウスだけは、突然の口止めに釈然としない顔をしている。
「なぜですか?」
グレゴリウスの質問にロックは気まずそうに答える。
「なぜかって…… この国で禁止されてることをするからさ。その場にお前らが居たらまずいだろ?」
「そうですね。わかりました。黙ります」
右手を口に当てる仕草をして笑うグレゴリウス。ロックは彼の隣にいるクローネに続いて尋ねる。
「クローネはいいか?」
「どうせわたくしが止めても強行するんですよね。だったらはいでいいです」
「はははっ。まぁな。お前も俺達のやり方に慣れた来たみたいだな」
笑うロックに腕を組んで口を尖らせ、不満そうにするクローネだった。
「じゃあ離れたところに居て俺が良いって言うまでみんな近づくなよ」
ロックはみんな十分に離れたことを確認すると振り向いた。
彼は透明な冷たい氷の中で、泣きながら凍りついてるベリーチェに話しかける。
「失敗しても恨むなよ。殺せってお前だからな」
ロックは笑うと大きく息を吸った。彼の口がゆっくりと動き出す。
「母なる海よ。偉大なるその力で、たもとを別れた者たちを受け入れ、繁栄の礎とせよ……」
激しく大きな冷気が、ロックを中心に吹き抜けていった。
離れていたところにいた、アイリス達は思わず顔の前に腕をだす。静かにロックは、右手に持った杖の先端を、ベリーチェへと向け叫ぶ。
「オーシャンインターセクト!!」
ロックが杖で円を描いた地面から、光る青い水流のような物が天に向かって上っていく。
「くっ!」
顔をゆがめてロックが声をあげる。勢いよく天へと上る水流は、衝撃と冷気を周囲に飛ばす、彼は杖を先端に向けたまま必死に踏ん張って耐えていたのだ。水流が天に上って十分ほどの時間が過ぎた。水流はすべて空へと上った……
「氷とベリーチェさんが…… 消えた……」
呆然と橋の中央を見つめるクローネ、そこにあったはずの氷とベリーチェが居なくなっていた。固まって前を見つめ続けるクローネに、彼女の横に立つアイリスが得意げに答える。
「ロックが使ったのはオーシャンインターセクト。物体を分解して再構成する魔法よ」
「再構成?」
首をかしげたクローネにアイリスは話しを続けていく。
「例えばあなたを助けた時、ロックは破れた服を魔法で元に戻したでしょ? あれはオーシャンインターセクトの下位魔法シーツと服を一緒に分解し合成したのよ」
「えっ!?」
自分の体に手を当て少し恥ずかしそうに、頬を赤らめるクローネだった。彼女は自分の裸をロックに見られたと思い頬を赤くした。アイリスはクローネの様子に、彼女が何を考えていることを理解した。
「大丈夫よ。物体の構成が複雑になれば時間がかかるけど服なんてロックにかかれば、ほぼ一瞬で再構成できるから誰にも見られてないわよ。覗かないように私も見てたしね」
「ほっ……」
クローネは安堵の表情を浮かべる。
「じゃあロックさんはベリーチェさんを分解したんですか?」
「うん。ロックはベリーチェとハープライドを別に再構築するつもりなのよ。そうすればベリーチェは元通り……」
「そんなこと出来るんですか? 人間を再構築なんて」
やや食い気味にアイリスに尋ねるクローネ、アイリスは彼女の様子に少し戸惑いながらも質問に答える。
「出来ないわよ。魔力で生命を分解してまた構築するなんて…… キメラみたいな魔力で生まれた生命体あるけど、あれは元からあるものを切り貼りしただけでしょ。でも……」
アイリスは少し間を開けてからまた口を開く。
「ロックなら出来る。彼は特別だから!」
自慢気に答えるアイリス、クローネはベリーチェが居た場所に、杖を向けたままのロックを見つめながらつぶやく。
「もしかしてロックさんなら死人…… ううん。紫海の瘴気にあてられた人だって…… そしたら世界は……」
「やるだけならね。でも、魔力による死体蘇生は死霊術になるからリオティネシアとか他の大体の国で禁止されてるからね。まぁ合法でもロックはやらないと思うけどね」
アイリスは確信した様子で、クローネの続く言葉を否定する。
「どうして!? 世界が救われるかも知れないのに!」
声をやや荒らげるクローネだった。アイリスはあごに右手の人差し指を置き、少し考えてからクローネの言葉に答える。
「うーん。面倒だからじゃない? 疲れるしね。それに……」
言葉の感覚をあげクローネの方に顔を向けるアイリス、彼女は表情は優しく微笑んでいたが、悲しげな雰囲気をまとっている。
「ロックのことは誰も治せないのよ…… だから彼はここで起きたことを誰にも言うなって言ったのよ」
「えっ!?」
「さぁ。これからまだ時間はかかるからね。見てる方は疲れないように休憩しなさいね」
手を叩いてアイリスは、クローネとの会話を終わらせる合図をした。すぐに体を斜めして、クローネの横に立つポロン達に声をかけるのだった。ベリーチェが消えてからロックは目をつむり、右手に持った杖をベリーチェが居た場所に向けたまま黙って立っていた。
時間が過ぎていく。やがて日は空を上りきり、傾きはじめ赤みを帯びてくる。ロックは目をつむり姿勢を変えずにずっと立ったままだった。
「終わった……」
急にロックが目を開けつぶやいた。直後に天に登っていた水が橋の上に戻ってきた。勢いよく流れて水は橋に落ちると水しぶきをあげ消えていった。水は十分ほど落ち続けた。
すべての水が落ちきった、最後に一筋の水が天から落ちてくる。
その水滴が橋へと近づき最後にベリーチェの額に当たる。水が落ちた橋の上にはベリーチェが横たわり、彼女の胸の近くにまだらなハープライドが転がっていた。
「へっ……」
ベリーチェを見たロックは、満足そうに笑って杖を下ろした。
何時間にも渡り魔力を、放出し続けた彼の体は限界だった。
「おっと!」
「キャッ!」
ふらついたロックの体が事切れた人形のように、ストンと膝をつくと同時に悲鳴のような声が聞こえた。仰向けに倒れそうになる彼を、アイリスが支えたのだ。だが支えきれずに、彼女も尻もちをついた。
ロックとアイリスは重なるようにして座り、ロックがアイリスを背もたれにしているようなっていた。後ろを向いてロックは不満そうに口を開く。
「あぶねえな。近づくなって言ったろ」
「だって…… 倒れるって思ったから…… そしたら勝手に体が……」
「チっ…… ありがとうな」
少し恥ずかしそうに礼を言うロック、アイリスは嬉しそうに笑う。
「やれることはやったぜ」
「えぇ。わかってるわ。お疲れ様……」
「後はこいつの体力次第だ」
「ありがとう…… ロック……」
目に涙をためアイリスは、ロックを後ろから抱きしめた。ロックの鼻先にアイリスの髪の匂いが漂う。ほほえみロックはアイリスの頭に、手を伸ばし耳の当たりを撫でるのだった。
「前よりも仲良しなのだ!」
「そうですねぇ」
「「はっ!?」」
ポロンとコロンの二人が、アイリスの背後に現れ微笑ましく二人を見守る。急に恥ずかしくなった二人は慌てて離れる。
「ロック! ベリーチェを見に行こう」
「おぉ」
恥ずかしそうにロックとアイリスは立ち上がり、その場から逃げるようにベリーチェの元へと駆けていった。逃げる二人の手はしっかりと握られていた。
彼らが去った後には、嬉しそうなポロンとにやつくコロン、二人の後ろで不服そうなクローネと気まずそうなグレゴリウスが居るのだった。ロックとアイリスはベリーチェの体を静かに動かして彼女を仰向けにする。二人に少し遅れてやってきたコロンが、手を当てて彼女の様子を確認する。
「あぁ。大丈夫ですね。気を失ってるだけです」
「よかった…… ベリーチェ」
声をあげ涙を目にためアイリスが喜ぶ、他の四人もほっと安堵の表情を浮かべる。目をぬぐったアイリスは鞄に手を突っ込んだ。きっと目を拭くハンカチを……
「じゃーん!」
「おまえ!? それは……」
「ゲロマズな薬なのだ!」
「こら! ポロン。はしたない言葉を使わないの」
アイリスが鞄から出したのはミリンに飲ませた気付け薬だ。
グレゴリウス以外の者は、その威力を知っているため苦い顔をする。
「いいじゃない。気付けにはこれが一番よ」
「確かにそうだが…… 刺激が…… おっおい!? あーあ…… そんなに」
手慣れた様子でアイリスは、強引にベリーチェの口を開け気付け薬を注ぎ込む。ロックは振り向いて、コロン達にその場から離れるように合図を送った。
アイリス以外の者が、ベリーチェを遠巻きにする。その直後だった。
「ぎゃーあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
断末魔のような叫び声をあげながら、目を見開いてベリーチェが飛び上がった。
「キャ!」
アイリスを突き飛ばし、目を大きく見開いて橋の上を走り回る。
「水! 水!!! みーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーずうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「向こうだ! 下にたっぷりあるぞ!」
ロックが橋の柵を指して叫ぶ。ベリーチェの耳にその声が届くと、彼女は走って橋の柵を飛び越えていった……
「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ベリーチェの叫び声がサリトール大橋に響き渡る。数十秒後ドボンという音が、かすかにみんなに届くのだった。
「よし…… アイリス! みんなを集めてくれ」
「はーい」
振り返って彼の背後五メートルくらいにいたアイリスに声をかける。アイリスは手を振ってロックに返事をし、コロン、ポロン、クローネ、グレゴリウスの四人を集めに行った。
すぐにロックの前に五人が並んだ。彼らの前で頭をかきながらロックは話しを始める。
「族長と姫さんを前に言うことじゃないが。今から行うことは他言無用だ。絶対にここで起きたことは言うなよ」
「わかったのだ」
ポロンが元気をよく返事をする。コロンはポロンに顔を向け微笑みながらうなずく、二人の横に居たアイリスは正面に立つロックに向かって静かにうなずく。クローネとグレゴリウスだけは、突然の口止めに釈然としない顔をしている。
「なぜですか?」
グレゴリウスの質問にロックは気まずそうに答える。
「なぜかって…… この国で禁止されてることをするからさ。その場にお前らが居たらまずいだろ?」
「そうですね。わかりました。黙ります」
右手を口に当てる仕草をして笑うグレゴリウス。ロックは彼の隣にいるクローネに続いて尋ねる。
「クローネはいいか?」
「どうせわたくしが止めても強行するんですよね。だったらはいでいいです」
「はははっ。まぁな。お前も俺達のやり方に慣れた来たみたいだな」
笑うロックに腕を組んで口を尖らせ、不満そうにするクローネだった。
「じゃあ離れたところに居て俺が良いって言うまでみんな近づくなよ」
ロックはみんな十分に離れたことを確認すると振り向いた。
彼は透明な冷たい氷の中で、泣きながら凍りついてるベリーチェに話しかける。
「失敗しても恨むなよ。殺せってお前だからな」
ロックは笑うと大きく息を吸った。彼の口がゆっくりと動き出す。
「母なる海よ。偉大なるその力で、たもとを別れた者たちを受け入れ、繁栄の礎とせよ……」
激しく大きな冷気が、ロックを中心に吹き抜けていった。
離れていたところにいた、アイリス達は思わず顔の前に腕をだす。静かにロックは、右手に持った杖の先端を、ベリーチェへと向け叫ぶ。
「オーシャンインターセクト!!」
ロックが杖で円を描いた地面から、光る青い水流のような物が天に向かって上っていく。
「くっ!」
顔をゆがめてロックが声をあげる。勢いよく天へと上る水流は、衝撃と冷気を周囲に飛ばす、彼は杖を先端に向けたまま必死に踏ん張って耐えていたのだ。水流が天に上って十分ほどの時間が過ぎた。水流はすべて空へと上った……
「氷とベリーチェさんが…… 消えた……」
呆然と橋の中央を見つめるクローネ、そこにあったはずの氷とベリーチェが居なくなっていた。固まって前を見つめ続けるクローネに、彼女の横に立つアイリスが得意げに答える。
「ロックが使ったのはオーシャンインターセクト。物体を分解して再構成する魔法よ」
「再構成?」
首をかしげたクローネにアイリスは話しを続けていく。
「例えばあなたを助けた時、ロックは破れた服を魔法で元に戻したでしょ? あれはオーシャンインターセクトの下位魔法シーツと服を一緒に分解し合成したのよ」
「えっ!?」
自分の体に手を当て少し恥ずかしそうに、頬を赤らめるクローネだった。彼女は自分の裸をロックに見られたと思い頬を赤くした。アイリスはクローネの様子に、彼女が何を考えていることを理解した。
「大丈夫よ。物体の構成が複雑になれば時間がかかるけど服なんてロックにかかれば、ほぼ一瞬で再構成できるから誰にも見られてないわよ。覗かないように私も見てたしね」
「ほっ……」
クローネは安堵の表情を浮かべる。
「じゃあロックさんはベリーチェさんを分解したんですか?」
「うん。ロックはベリーチェとハープライドを別に再構築するつもりなのよ。そうすればベリーチェは元通り……」
「そんなこと出来るんですか? 人間を再構築なんて」
やや食い気味にアイリスに尋ねるクローネ、アイリスは彼女の様子に少し戸惑いながらも質問に答える。
「出来ないわよ。魔力で生命を分解してまた構築するなんて…… キメラみたいな魔力で生まれた生命体あるけど、あれは元からあるものを切り貼りしただけでしょ。でも……」
アイリスは少し間を開けてからまた口を開く。
「ロックなら出来る。彼は特別だから!」
自慢気に答えるアイリス、クローネはベリーチェが居た場所に、杖を向けたままのロックを見つめながらつぶやく。
「もしかしてロックさんなら死人…… ううん。紫海の瘴気にあてられた人だって…… そしたら世界は……」
「やるだけならね。でも、魔力による死体蘇生は死霊術になるからリオティネシアとか他の大体の国で禁止されてるからね。まぁ合法でもロックはやらないと思うけどね」
アイリスは確信した様子で、クローネの続く言葉を否定する。
「どうして!? 世界が救われるかも知れないのに!」
声をやや荒らげるクローネだった。アイリスはあごに右手の人差し指を置き、少し考えてからクローネの言葉に答える。
「うーん。面倒だからじゃない? 疲れるしね。それに……」
言葉の感覚をあげクローネの方に顔を向けるアイリス、彼女は表情は優しく微笑んでいたが、悲しげな雰囲気をまとっている。
「ロックのことは誰も治せないのよ…… だから彼はここで起きたことを誰にも言うなって言ったのよ」
「えっ!?」
「さぁ。これからまだ時間はかかるからね。見てる方は疲れないように休憩しなさいね」
手を叩いてアイリスは、クローネとの会話を終わらせる合図をした。すぐに体を斜めして、クローネの横に立つポロン達に声をかけるのだった。ベリーチェが消えてからロックは目をつむり、右手に持った杖をベリーチェが居た場所に向けたまま黙って立っていた。
時間が過ぎていく。やがて日は空を上りきり、傾きはじめ赤みを帯びてくる。ロックは目をつむり姿勢を変えずにずっと立ったままだった。
「終わった……」
急にロックが目を開けつぶやいた。直後に天に登っていた水が橋の上に戻ってきた。勢いよく流れて水は橋に落ちると水しぶきをあげ消えていった。水は十分ほど落ち続けた。
すべての水が落ちきった、最後に一筋の水が天から落ちてくる。
その水滴が橋へと近づき最後にベリーチェの額に当たる。水が落ちた橋の上にはベリーチェが横たわり、彼女の胸の近くにまだらなハープライドが転がっていた。
「へっ……」
ベリーチェを見たロックは、満足そうに笑って杖を下ろした。
何時間にも渡り魔力を、放出し続けた彼の体は限界だった。
「おっと!」
「キャッ!」
ふらついたロックの体が事切れた人形のように、ストンと膝をつくと同時に悲鳴のような声が聞こえた。仰向けに倒れそうになる彼を、アイリスが支えたのだ。だが支えきれずに、彼女も尻もちをついた。
ロックとアイリスは重なるようにして座り、ロックがアイリスを背もたれにしているようなっていた。後ろを向いてロックは不満そうに口を開く。
「あぶねえな。近づくなって言ったろ」
「だって…… 倒れるって思ったから…… そしたら勝手に体が……」
「チっ…… ありがとうな」
少し恥ずかしそうに礼を言うロック、アイリスは嬉しそうに笑う。
「やれることはやったぜ」
「えぇ。わかってるわ。お疲れ様……」
「後はこいつの体力次第だ」
「ありがとう…… ロック……」
目に涙をためアイリスは、ロックを後ろから抱きしめた。ロックの鼻先にアイリスの髪の匂いが漂う。ほほえみロックはアイリスの頭に、手を伸ばし耳の当たりを撫でるのだった。
「前よりも仲良しなのだ!」
「そうですねぇ」
「「はっ!?」」
ポロンとコロンの二人が、アイリスの背後に現れ微笑ましく二人を見守る。急に恥ずかしくなった二人は慌てて離れる。
「ロック! ベリーチェを見に行こう」
「おぉ」
恥ずかしそうにロックとアイリスは立ち上がり、その場から逃げるようにベリーチェの元へと駆けていった。逃げる二人の手はしっかりと握られていた。
彼らが去った後には、嬉しそうなポロンとにやつくコロン、二人の後ろで不服そうなクローネと気まずそうなグレゴリウスが居るのだった。ロックとアイリスはベリーチェの体を静かに動かして彼女を仰向けにする。二人に少し遅れてやってきたコロンが、手を当てて彼女の様子を確認する。
「あぁ。大丈夫ですね。気を失ってるだけです」
「よかった…… ベリーチェ」
声をあげ涙を目にためアイリスが喜ぶ、他の四人もほっと安堵の表情を浮かべる。目をぬぐったアイリスは鞄に手を突っ込んだ。きっと目を拭くハンカチを……
「じゃーん!」
「おまえ!? それは……」
「ゲロマズな薬なのだ!」
「こら! ポロン。はしたない言葉を使わないの」
アイリスが鞄から出したのはミリンに飲ませた気付け薬だ。
グレゴリウス以外の者は、その威力を知っているため苦い顔をする。
「いいじゃない。気付けにはこれが一番よ」
「確かにそうだが…… 刺激が…… おっおい!? あーあ…… そんなに」
手慣れた様子でアイリスは、強引にベリーチェの口を開け気付け薬を注ぎ込む。ロックは振り向いて、コロン達にその場から離れるように合図を送った。
アイリス以外の者が、ベリーチェを遠巻きにする。その直後だった。
「ぎゃーあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
断末魔のような叫び声をあげながら、目を見開いてベリーチェが飛び上がった。
「キャ!」
アイリスを突き飛ばし、目を大きく見開いて橋の上を走り回る。
「水! 水!!! みーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーずうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「向こうだ! 下にたっぷりあるぞ!」
ロックが橋の柵を指して叫ぶ。ベリーチェの耳にその声が届くと、彼女は走って橋の柵を飛び越えていった……
「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ベリーチェの叫び声がサリトール大橋に響き渡る。数十秒後ドボンという音が、かすかにみんなに届くのだった。
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