ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~
第38話 朝日に照らされて
町へと向かう航路の途中…… 空が白み夜が明けようするのを、ロックとアイリスの二人はヴィクトリアの頭の上で眺めていた。
「ねえ…… ロック」
並んで立っていたロックの腕に頭を乗せるアイリスだった。ロックは黙って彼女の肩を抱く。
肩にロックの温もりをうけた、アイリスはいたずらに笑う。
「なんで助けに来てくれたの? クローネさんと仲良く馬に乗ってた方が楽しかったんじゃない?」
「うるせえな。あれは仕事だ! 楽しいわけねえだろ。だいたい俺には……」
「?」
ロックは少しだけ間をあけ、恥ずかしそうに頬を赤くしてから言葉を続ける。
「お前が居なきゃダメなんだよ。お前に管理されなきゃすぐに借金しちまうからな」
「ふふふ」
嬉しそうに自分の肩にかかったロックの手をぎゅっと握るアイリス。いたずらに笑った彼女はロックの前に出て見上げた。
「知ってる? お姉ちゃんの頭の上ってお姉ちゃんには見えないんだよ」
「えっ!? おっおい……」
「いいから! 恥をかかせないでよ!」
顔を上に向けたまま、静かに目をつむり背伸びするアイリスだった。ロックはアイリスの行動に少し戸惑ったが、彼女に促されてぎこちなくそして丁寧に彼女の頬に手を置く。
ゆっくりとロックはアイリスの顔に自分の顔を近づける…… 二人の唇と唇が重なり合う。ロックとアイリスの唇は柔らか温もりに包まれていく。口づけをする二人を、祝福するかのように輝く朝日が照らすのだった。
草原を眼下に望みながら、雄大に翼を広げて飛ぶエンシェントドラゴンのヴィクトリア。荘厳な姿に見る者は圧倒されひれ伏……
「(頭の上は見えないけど…… 音ははっきりと聞こえるし、頭の上の感触で二人がなにかしてるかもだいたい分かるのよね。まぁいいわ。黙っててあげましょう。あの奥手の二人がやっとここまで来たんだし!)」
空を飛びながら視線を上に向け、ヴィクトリアは独り言でぼやく。アイリストロックのやり取りは彼女に筒抜けだったのだ。
「(それにしても急接近よね。二人の気持ちはみんなわかってたけど。やっぱりクローネちゃんがいい刺激に……)」
ヴィクトリアの独り言が徐々に早くなっていく、なんとなく彼女はは楽しそうである。続けてヴィクトリアは上の二人の様子に聞き耳を立てる。
「あん! もう…… 乱暴だよぉ。優しくしてよぉ」
「わりぃ! だってよぉ」
「そう。ゆっくりだよ…… 嬉しい…… ロック!」
「あぁ。俺もだ。アイリス……」
アイリスの甘い声と、普段はあまり見えない紳士的で、やさしいロックの声が聞こえてくる。二人の息遣いが荒くなり、出る声は甘く時折唇を重ねる音が聞こえ激しさをましていく。
ヴィクトリアは目を大きく見開き、動揺した様子で視線を上に向ける。
「(えっ!? ちょっと!? 人の頭の上で何をおっ始めてんのよ! もう!!! これだから盛のついた若者はいやなのよ!)」
しばらく聞こえる二人の甘いやり取りにヴィクトリアはため息をつく。
「(はぁ。まぁいいわ。やっとだもんねぇ。少し遠回りしてあげましょうか……)」
翼を広げたヴィクトリアは、南へ迂回しながら町へと向かうのだった。
数十分後…… 朝日に照らされるヴィクトリアの頭上でアイリスとロックは並んで横になっている。草原の心地よいそよ風が、二人の上をゆっくりと過ぎていっていた。
眼鏡を外した姿のアイリスは、枕にしたロックの左胸の、まだ早い鼓動を聞きながら、幸せそうに下から彼を覗き込んでいた。
左手で彼女の髪を優しくなで、ロックは静かに口を開く。
「アイリス。ベリーチェは……」
「そうだ! あの子はどうなったの? あの子はクロウに魔物にされて……」
ハッという顔したアイリスは、ロックの胸の下辺りに手をあて彼の服を強く握った。その上からロックは優しくて手を置く。
「急いでたから魔物のまま凍らせて橋の上に置いて来た。ポロン達に守っとけ言っといたぜ」
「そっか」
ロックの言葉にアイリスはホッとした表情を浮かべる。
「あいつの正体は知ってるのか?」
「えぇ…… クロウ達が喋ってるのが聞こえたわ。砂蛇の一人だったんでしょ」
問いかけに悲しげに答えるアイリス、彼女は少し間をあけて言葉を続ける。
「でも…… でもね。あの子とは友達になったの。私と会った時はひどい目にあってて…… きっと砂蛇に居たのには事情があると思うんだ。だから……」
「わかってる。ポロンもあいつのこと友達だって言ってたからな」
泣きそうに声を震わせて必死にはなすアイリス、ロックは彼女の手を強く握った。
ロックに目を向け目をうるませるアイリスだった。
「助けられる?」
「さぁな。ただ…… あいつなんだ。お前がクロウに連れさられって教えてくれたのは…… あぁ!」
両手を上にあげて面倒くさそうにするロック、アイリスの表情が和らぐ。長い付き合いの彼女は知っている。横の幼なじみが面倒そうにしているということはやる気になったんだということを……
「そっか。借りができたわけね。だったら……」
「あぁ。そういうわけだからやれることはやってやるよ。面倒だけどな」
「ふふふ。はいはい」
微笑んだアイリスはロックの体をつかんでギュッとつかむ。アイリスは最後に少しだけ、彼の体温の温もりを味わいたかったようだ。
すぐに立ち上がったアイリスは、鞄から眼鏡を取り出しかける。彼女は口元に手をあてヴィクトリアを呼び出す。
「お姉ちゃーん!」
「(はいはーい。もう終わったの? 早かったわね。ポロンちゃん達もたまに景色を見に来るからちゃんと掃除を……)」
「えっ!? 終わったって……」
死角のはずなのに何もかも把握しているような、ヴィクトリアの言葉にアイリスは、眼鏡の縁に手をあて目を見開き驚いた顔をする。
「(なっなんでもないわ。何も知らない!」
「うっう……」
必死にごまかすヴィクトリア、アイリスは恥ずかしそうにうつむく。
「(そっそれで用事はなあに?)」
「サリトール大橋に向かって……」
「(わっわかった! スピード上げるから中に戻って来てね)」
ヴィクトリアとの会話が終わった。二人の会話が聞こえなかったロックは、うつむいたままでいるアイリスに首をかしげていた。
「わっ!? なっなんだ!? どうした?」
顔を真っ赤にしアイリスはロックに抱きつくのだった。急に抱きつかれたロックは戸惑っていた。
ヴィクトリアはサリトール大橋へ向けて大きく翼を広げ飛んでいくのだった。
迂回していたヴィクトリア号南の方角から、クロスオーバー川を上りサリトール大橋へと近づく。
朝焼けに照らされるサリトール大橋が見えてきた。ヴィクトリアは橋の中心くらい位置に翼を広げ停止した。
ヴィクトリアは顔を橋の真ん中付近に、置かれたベリーチェに向かって伸ばし口を開けた。
舌に乗ったアイリスとロックは橋の上へと下りた。
「おぉ! アイリスなのだ! よかったのだ」
「お帰りなさい。無事で何よりです」
コロンとポロンがすぐに駆け寄ってきた。
二人はずっと寝ないで待っていたのか目の下にクマが出来ていた。ロックはそれを見て呆れた顔をする。
「おい。お前ら寝てないのか? 何やってんだよ」
ロックの言葉にムッとした表情に変わるポロン、両手を上にあげロックに向かって叫ぶ。
「守っとけって言ったのはロックなのだ!」
「そうですよ。まったく……」
ポロンの横にいたコロンも、不服そうな顔をして首を横に振った。ロックは頭をかいている。
二人に続いてクローネとグレゴリウスがやってきた。
「ロックさん……」
クローネが小さく申し訳無さそうにロックに声をかけた。
声が聞こえたロックは、コロンとポロンの背後に立った、グレゴリウスとクローネに気づき首をかしげる。
「なんでグレゴリウスにクローネまでいるんだよ?」
「申し訳ない。クローネがどうしてもここで待つと言って聞かなくてな」
「えっ!? クローネが?」
ロックは驚いてクローネの方を向く。グレゴリウスがクローネの肩に手をかけた。グレゴリウスに顔を向けるクローネ、彼は優しく微笑んでうなずいた。
クローネに視線を向けるロック、彼女はロックの前に出てきた。
「あなたに謝らないといけなから…… ごめんなさい」
目をうるませクローネは深々と頭を下げた。広場で彼を止めたことを彼女は一晩中後悔していようだ。
頭を下げるクローネを見ながら、ロックは気まずそうに頭をかく。横にいたアイリスが彼を肘で小突く。
ロックは頭をかきながら少し恥ずかしそうにクローネに声をかける。
「気にするな。俺は俺のすべきことをしたそれだけだ……」
「はい……」
頭をあげたクローネは、涙を脱ぐながらホッとした表情をするのだった。
「さぁて…… じゃあ始めますか」
ロックは首を横に動かすと氷ついたベリーチェの方を向く。顔だけがベリーチェの魔物が氷の中で静かに立っている。
クローネが彼の背中のすぐ後ろに立つ。
「彼女を元に戻せるんですか?」
「いやわからん。やれるだけのことはやる」
「そうですか……」
不安そうにするクローネ、彼女からしてみたらベリーチェは自分を狙った傭兵の一人だ。
ロックは彼女の気持ちに気づいた。
「悪いな。俺はこいつに借りが出来たんだ。貸したまんまってわけにはいかねえんだな」
小さくうなずくクローネ、彼女の横にいたグレゴリウスが口を開く。
「ロックさん」
「なんだ? お前も文句があるのか?」
「いえ。何かお手伝いできることがあればいってください」
首を横にふったグレゴリウス、ロックは彼の提案に即座に答える。
「かなりの時間が必要だ。この橋の通行っていつまでだ?」
「大丈夫ですよ。ロックさんの頼みであればいつまでだって止めて置きます」
胸を叩くグレゴリウスにロックは満足そうに笑ってうなずく。
彼の態度にクローネは驚きすぐにたずねる。
「グレゴリウス様!? よっよろしいのですか?」
「えぇ。私達は彼に借りがあります。こんなことでは返したことにはなりませんが少しでも役に立てればそれで」
笑って答えると、グレゴリウスは東側の砦に向かって走っていく。
クローネは黙って走り去る彼の背中を見つめるのだった。
「ねえ…… ロック」
並んで立っていたロックの腕に頭を乗せるアイリスだった。ロックは黙って彼女の肩を抱く。
肩にロックの温もりをうけた、アイリスはいたずらに笑う。
「なんで助けに来てくれたの? クローネさんと仲良く馬に乗ってた方が楽しかったんじゃない?」
「うるせえな。あれは仕事だ! 楽しいわけねえだろ。だいたい俺には……」
「?」
ロックは少しだけ間をあけ、恥ずかしそうに頬を赤くしてから言葉を続ける。
「お前が居なきゃダメなんだよ。お前に管理されなきゃすぐに借金しちまうからな」
「ふふふ」
嬉しそうに自分の肩にかかったロックの手をぎゅっと握るアイリス。いたずらに笑った彼女はロックの前に出て見上げた。
「知ってる? お姉ちゃんの頭の上ってお姉ちゃんには見えないんだよ」
「えっ!? おっおい……」
「いいから! 恥をかかせないでよ!」
顔を上に向けたまま、静かに目をつむり背伸びするアイリスだった。ロックはアイリスの行動に少し戸惑ったが、彼女に促されてぎこちなくそして丁寧に彼女の頬に手を置く。
ゆっくりとロックはアイリスの顔に自分の顔を近づける…… 二人の唇と唇が重なり合う。ロックとアイリスの唇は柔らか温もりに包まれていく。口づけをする二人を、祝福するかのように輝く朝日が照らすのだった。
草原を眼下に望みながら、雄大に翼を広げて飛ぶエンシェントドラゴンのヴィクトリア。荘厳な姿に見る者は圧倒されひれ伏……
「(頭の上は見えないけど…… 音ははっきりと聞こえるし、頭の上の感触で二人がなにかしてるかもだいたい分かるのよね。まぁいいわ。黙っててあげましょう。あの奥手の二人がやっとここまで来たんだし!)」
空を飛びながら視線を上に向け、ヴィクトリアは独り言でぼやく。アイリストロックのやり取りは彼女に筒抜けだったのだ。
「(それにしても急接近よね。二人の気持ちはみんなわかってたけど。やっぱりクローネちゃんがいい刺激に……)」
ヴィクトリアの独り言が徐々に早くなっていく、なんとなく彼女はは楽しそうである。続けてヴィクトリアは上の二人の様子に聞き耳を立てる。
「あん! もう…… 乱暴だよぉ。優しくしてよぉ」
「わりぃ! だってよぉ」
「そう。ゆっくりだよ…… 嬉しい…… ロック!」
「あぁ。俺もだ。アイリス……」
アイリスの甘い声と、普段はあまり見えない紳士的で、やさしいロックの声が聞こえてくる。二人の息遣いが荒くなり、出る声は甘く時折唇を重ねる音が聞こえ激しさをましていく。
ヴィクトリアは目を大きく見開き、動揺した様子で視線を上に向ける。
「(えっ!? ちょっと!? 人の頭の上で何をおっ始めてんのよ! もう!!! これだから盛のついた若者はいやなのよ!)」
しばらく聞こえる二人の甘いやり取りにヴィクトリアはため息をつく。
「(はぁ。まぁいいわ。やっとだもんねぇ。少し遠回りしてあげましょうか……)」
翼を広げたヴィクトリアは、南へ迂回しながら町へと向かうのだった。
数十分後…… 朝日に照らされるヴィクトリアの頭上でアイリスとロックは並んで横になっている。草原の心地よいそよ風が、二人の上をゆっくりと過ぎていっていた。
眼鏡を外した姿のアイリスは、枕にしたロックの左胸の、まだ早い鼓動を聞きながら、幸せそうに下から彼を覗き込んでいた。
左手で彼女の髪を優しくなで、ロックは静かに口を開く。
「アイリス。ベリーチェは……」
「そうだ! あの子はどうなったの? あの子はクロウに魔物にされて……」
ハッという顔したアイリスは、ロックの胸の下辺りに手をあて彼の服を強く握った。その上からロックは優しくて手を置く。
「急いでたから魔物のまま凍らせて橋の上に置いて来た。ポロン達に守っとけ言っといたぜ」
「そっか」
ロックの言葉にアイリスはホッとした表情を浮かべる。
「あいつの正体は知ってるのか?」
「えぇ…… クロウ達が喋ってるのが聞こえたわ。砂蛇の一人だったんでしょ」
問いかけに悲しげに答えるアイリス、彼女は少し間をあけて言葉を続ける。
「でも…… でもね。あの子とは友達になったの。私と会った時はひどい目にあってて…… きっと砂蛇に居たのには事情があると思うんだ。だから……」
「わかってる。ポロンもあいつのこと友達だって言ってたからな」
泣きそうに声を震わせて必死にはなすアイリス、ロックは彼女の手を強く握った。
ロックに目を向け目をうるませるアイリスだった。
「助けられる?」
「さぁな。ただ…… あいつなんだ。お前がクロウに連れさられって教えてくれたのは…… あぁ!」
両手を上にあげて面倒くさそうにするロック、アイリスの表情が和らぐ。長い付き合いの彼女は知っている。横の幼なじみが面倒そうにしているということはやる気になったんだということを……
「そっか。借りができたわけね。だったら……」
「あぁ。そういうわけだからやれることはやってやるよ。面倒だけどな」
「ふふふ。はいはい」
微笑んだアイリスはロックの体をつかんでギュッとつかむ。アイリスは最後に少しだけ、彼の体温の温もりを味わいたかったようだ。
すぐに立ち上がったアイリスは、鞄から眼鏡を取り出しかける。彼女は口元に手をあてヴィクトリアを呼び出す。
「お姉ちゃーん!」
「(はいはーい。もう終わったの? 早かったわね。ポロンちゃん達もたまに景色を見に来るからちゃんと掃除を……)」
「えっ!? 終わったって……」
死角のはずなのに何もかも把握しているような、ヴィクトリアの言葉にアイリスは、眼鏡の縁に手をあて目を見開き驚いた顔をする。
「(なっなんでもないわ。何も知らない!」
「うっう……」
必死にごまかすヴィクトリア、アイリスは恥ずかしそうにうつむく。
「(そっそれで用事はなあに?)」
「サリトール大橋に向かって……」
「(わっわかった! スピード上げるから中に戻って来てね)」
ヴィクトリアとの会話が終わった。二人の会話が聞こえなかったロックは、うつむいたままでいるアイリスに首をかしげていた。
「わっ!? なっなんだ!? どうした?」
顔を真っ赤にしアイリスはロックに抱きつくのだった。急に抱きつかれたロックは戸惑っていた。
ヴィクトリアはサリトール大橋へ向けて大きく翼を広げ飛んでいくのだった。
迂回していたヴィクトリア号南の方角から、クロスオーバー川を上りサリトール大橋へと近づく。
朝焼けに照らされるサリトール大橋が見えてきた。ヴィクトリアは橋の中心くらい位置に翼を広げ停止した。
ヴィクトリアは顔を橋の真ん中付近に、置かれたベリーチェに向かって伸ばし口を開けた。
舌に乗ったアイリスとロックは橋の上へと下りた。
「おぉ! アイリスなのだ! よかったのだ」
「お帰りなさい。無事で何よりです」
コロンとポロンがすぐに駆け寄ってきた。
二人はずっと寝ないで待っていたのか目の下にクマが出来ていた。ロックはそれを見て呆れた顔をする。
「おい。お前ら寝てないのか? 何やってんだよ」
ロックの言葉にムッとした表情に変わるポロン、両手を上にあげロックに向かって叫ぶ。
「守っとけって言ったのはロックなのだ!」
「そうですよ。まったく……」
ポロンの横にいたコロンも、不服そうな顔をして首を横に振った。ロックは頭をかいている。
二人に続いてクローネとグレゴリウスがやってきた。
「ロックさん……」
クローネが小さく申し訳無さそうにロックに声をかけた。
声が聞こえたロックは、コロンとポロンの背後に立った、グレゴリウスとクローネに気づき首をかしげる。
「なんでグレゴリウスにクローネまでいるんだよ?」
「申し訳ない。クローネがどうしてもここで待つと言って聞かなくてな」
「えっ!? クローネが?」
ロックは驚いてクローネの方を向く。グレゴリウスがクローネの肩に手をかけた。グレゴリウスに顔を向けるクローネ、彼は優しく微笑んでうなずいた。
クローネに視線を向けるロック、彼女はロックの前に出てきた。
「あなたに謝らないといけなから…… ごめんなさい」
目をうるませクローネは深々と頭を下げた。広場で彼を止めたことを彼女は一晩中後悔していようだ。
頭を下げるクローネを見ながら、ロックは気まずそうに頭をかく。横にいたアイリスが彼を肘で小突く。
ロックは頭をかきながら少し恥ずかしそうにクローネに声をかける。
「気にするな。俺は俺のすべきことをしたそれだけだ……」
「はい……」
頭をあげたクローネは、涙を脱ぐながらホッとした表情をするのだった。
「さぁて…… じゃあ始めますか」
ロックは首を横に動かすと氷ついたベリーチェの方を向く。顔だけがベリーチェの魔物が氷の中で静かに立っている。
クローネが彼の背中のすぐ後ろに立つ。
「彼女を元に戻せるんですか?」
「いやわからん。やれるだけのことはやる」
「そうですか……」
不安そうにするクローネ、彼女からしてみたらベリーチェは自分を狙った傭兵の一人だ。
ロックは彼女の気持ちに気づいた。
「悪いな。俺はこいつに借りが出来たんだ。貸したまんまってわけにはいかねえんだな」
小さくうなずくクローネ、彼女の横にいたグレゴリウスが口を開く。
「ロックさん」
「なんだ? お前も文句があるのか?」
「いえ。何かお手伝いできることがあればいってください」
首を横にふったグレゴリウス、ロックは彼の提案に即座に答える。
「かなりの時間が必要だ。この橋の通行っていつまでだ?」
「大丈夫ですよ。ロックさんの頼みであればいつまでだって止めて置きます」
胸を叩くグレゴリウスにロックは満足そうに笑ってうなずく。
彼の態度にクローネは驚きすぐにたずねる。
「グレゴリウス様!? よっよろしいのですか?」
「えぇ。私達は彼に借りがあります。こんなことでは返したことにはなりませんが少しでも役に立てればそれで」
笑って答えると、グレゴリウスは東側の砦に向かって走っていく。
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