ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~
第37話 紫海に沈め
草原を一隻の魔導飛空船がもうスピードで飛んで行き。王都リオポリスへと続く紫海の中へと入っていった。
くすんだ赤い色の流線型の船体に、鎖型の模様が入った翼をもつ全長五十メートルほどの中型の飛空船だ。船首は金属製で三角形の口を閉じた蛇の頭の形になっている。この魔導飛空船は砂蛇が使う強襲型魔導飛空船ヴァイパーだ。
ヴァイパー内部の一室。入り口の扉には、革の鎧を着た髭面の中年二人が見張りに立っている。部屋は中は広く奥の壁には、一面に大きな窓が設置され、床に刺繍の施された高そうな絨毯が敷かれていた。
絨毯の上に木製の机と、右手の壁の前には高級そうな棚と、左手の壁には大きな地図がはられていた。入り口の扉が開き、人が一人すっぽりと入りそうな、大きな薄茶色の頭陀袋を担いでクロウが入ってきた。この部屋は砂蛇の頭領が使う部屋だった。
扉を開いたままでクロウは、担いでいた頭陀袋を乱雑に絨毯の上に置き乱暴に袋を外す
「うーうー!」
頭陀袋の中から後ろ手で両手を縛られ、さるぐつわを付けられたアイリスが姿を現した。クロウはアイリスの前にしゃがんで、彼女の体を見て少し不満そうにうなずく。
「まぁまぁだな…… グは!」
アイリスは狙いすましてクロウの胸を蹴った。バランスを崩したクロウのスキをついたアイリスは、立ち上がって部屋から逃げようとする。
「チッ! 待ちやがれ!」
「うー!」
慌てて舌打ちをして、立ち上がったクロウは必死に手を伸ばす。彼女の左に伸びている
「うー!!!」
居たがり声をあげるアイリスを強引に自分の方に引き寄せるクロウ。
「はははっ。頭領! 嫌われてますねぇ」
「女の扱いかた教えましょうか?」
開け放たれたままの扉の脇で、中の様子を見ていた部下二人が笑いながらクロウをからかう。
「うるせえ!」
部下を怒鳴りつけクロウは、アイリスを引きずっていき扉を勢いよく閉めた。
「てめえ! 自分の立場わかってんのかよ!!!」
「うー!」
クロウはアイリスの髪をひねり上げ怒鳴りつける。
髪をひっぱられた痛みで、アイリスの目に涙が浮かぶ、しかし彼女はクロウに屈することなく、毅然とした顔で彼を見つめていた。
「ふふ。強情な女は嫌いじゃない。征服された時の表情がたまらねえんだよ」
笑ってクロウはアイリスの顎に、手を置いて強引に自分の方を向かせようとした。
しかし…… アイリスは近づくクロウ顔に向かって頭突きをした。ガンと言う良い音がする。背の低いアイリスが、飛び上がるようにした頭突きはクロウの顎にヒットした。
衝撃と痛みでクロウはアイリスの髪から手を離す。アイリスにもダメージがあったようで彼女の足がふらつく。
「いって! てめえ!」
顎を押さえてクロウは、激昂しふらついているアイリスを平手打ちした。音がして彼女の頭は大きく振られてメガネが飛び、絨毯に倒れ込んでしまった。
「うー!」
体をなんとか起こして、アイリスはクロウをにらみつける。彼女の叩かれた頬は真っ赤に腫れ上がって痛々しい。
殴られたアイリスは恐怖で泣きそうになったが必死に耐えていた。クロウには屈さないというせめてもの彼女の抵抗だった。クロウは彼女の表情を見て満足そうに笑い。舌なめずりをしたクロウはアイリスに向かってゆっくりと近づく。
彼は近づきながら股間を触り、その手でアイリスをつかもうと伸ばす。身を縮こませてアイリスは、目をつむるのだった。
「おっと」
船体が少し揺れバランスを崩しかけるクロウ。直後……
「うわああああ!!!」
「きゃあああああああ!!!!」
扉の向こうから叫び声がした。眉間にシワを寄せアイリスの伸ばした、手を引っ込めたクロウは振り向いて部屋の扉へと向かう。
「うるせえ! 何を騒いでやがる! なっ!? なんだこりゃ!?」
扉を開けたクロウが叫び声をあげた。同時に白い冷気が頭領の部屋へ流れ込んでいく。アイリスは流れ込んでくる冷気に笑う。冷気を受けたはずの彼女の心と体は、逆にほっこりと温まっていくのだった。
部屋の外は甲板で至る所が白く氷に覆われ、扉の両脇に立っていた彼の部下たちは、武器に手をかけたし姿で顔以外が真っ白に凍りついていた。クロウは真っ白に凍った船の状況に、慌てすぐに扉の横にいた部下に口を開く。
「なっ何があった!?」
「ばっ化け物…… 化け物だ……」
目を大きく見開き前を見つめてうわ言のようにつぶやく自分の部下だった。
クロウは視線を甲板へと向ける。獲物の船に船体をぶつけて停止させるために、ヴァイパーの甲板は魔物骨で組んだ屋根に覆われているが、その屋根は大きく左右に引き裂かれ穴からヴィクトリアがのぞいていた。瞳孔が開いた感情のない爬虫類のような目が船内を冷たく照らす。
ヴィクトリアのちょうど真下、真っ白に凍りついた甲板の中央に、左手に杖、右手に剣を持ったロックた黙って立っていた。
ロックは真顔でずっとクロウの方を見つめている。ロックの視線にクロウが気づく。
「お前がロックか!?」
クロウは部屋から少し前にでてロックに向かって叫ぶ。
ロックは彼の言葉に反応せずに黙ったまま立っている。クロウは慌てて後ろを向く、彼の視線に倒れたアイリスが目に入った。
急いでクロウはアイリスの元に戻ろろうとかけだした。
しかし…… 視界が急に暗くなった。真っ黒な服で彼の視界が覆われる。
「なっ!?」
目の前に空間転移でロックが現れたのだ。ロックは黙ったままクロウを見つめている。
「クソ!」
右手を前にだしたクロウ、同時に彼の手に黒い柄で、刃先の根本にサメのような刃がついた槍が握られた。黙ったまま反応しない、ロックの胸に向かって槍の刃先が伸びていく。クロウはニヤリと笑った……
「いっ!?」
槍がロックの胸に届く直前に彼は消えた。クロウは槍でロックを突こうと右腕を伸ばした姿勢になっている。直後にクロウの槍の真横に左手の杖を振り上げた姿勢のロックが現れる。
ロックは目の前にある槍を上から叩きつけた。刃先が下を向き、クロウは姿勢が前のめりのなった。ロックの目の前に槍を握ったクロウの右腕が見えてくる。
即座にロックは持っていた剣をクロウの右腕に向かって振り上げた。すぐに音がしてロックの剣が天に向けられる。
同時にクロウの槍が回転しながら飛んでいき、彼の一メートルほど後方の甲板に突き刺さった。
突き刺さった槍にはしっかりと槍を握る、クロウの右腕の肘と肩の真ん中くらいから先の部分があった。
「うぎゃああああああーーーーーーーーー! 腕が!? 腕がああああ!!!???」
顔を上にあげ腕を切られた泣き叫ぶ、クロウにロックは反応もせず顔を横に向けた。ロックの視線は船長室にいる倒れたアイリスに向けられている。アイリスの頬は叩かれて赤くなり髪は振り乱されていた。視線をクロウに戻すロック。
「お前か? あいつを傷つけたのは?」
「なっ!? ちが!? あれは……」
ロックは右手に握った剣を勢いよく振り、クロウの血を払うと、右手を上に掲げ力を込め、クロウを冷たい目で見つめていた。
「やっやめろーーーーー!!!」
クロウの声が響く。ロックの剣が振り下ろされてた。剣はクロウの左腕を肩の根本から切り落とした。
即座の剣を返して、今度は左足と右足を太ももの少し先から同時に切り落とす。四肢を失ったクロウは地面に転がって仰向けになる。ロックは終わったかの合図のように床を杖で叩く。
「あっああああ……」
床に転がって声をあげるクロウだったが、彼の体は痛みがなく意識もはっきりしている。不思議な表情をし、自分の体をよく見ると僅かに残った四肢の部分が、流れた血ごと凍りついていた。
「そう簡単に死ねると思うなよ。残った手足とお前の自慢のイチモツもやがって腐ってくずれ落ちる。這いつくばったまま紫の海に沈むがいい!」
ロックに向かって何かを言おうとしたクロウ、だが彼の口は開いたままで動けない。
「あがあがあが」
「そうだった。口を動かせないように凍らせたんだっけ…… お前の言葉なんて世の中で一番無駄な言葉だからな」
床に無造作に転がったクロウを、見ること無くロックはアイリスの元へ向かう。アイリスは絨毯の上にすわったままロックを見つめている。涙で彼女の目は潤んでいた。
ロックは杖をしまって剣で、彼女の手を縛る縄を切る。続いて剣をしまってアイリスの背後に回り込み両手で、彼女の口につけられたさるぐつわを外した。
「ぷはー! もう遅いじゃない! もう少しで私の大事な貞操が……」
アイリスは口を尖らせ不満そうに声をあげた。ロックは黙ってうつむいて彼女に両手を伸ばした。
「よかった……」
「えっ!? ロッロック……」
力強くロックの方へと引き寄せられ、アイリスは一瞬で全身を彼の匂いと温もりに包まれた。ロックはアイリスを強く抱きしめていた。
「ごめん…… ごめんな…… 俺が離れたから……」
泣いているのかロックはアイリスの耳元で謝っている。ロックの背中に手を回した、アイリスは静かに彼の背中を撫でる。
「いいのよ。ありがとう…… 来てくれて嬉しかった…… ロック…… だ…… す…… きだよ」
「あぁ! 俺も……」
「「えっ!?」」
ロックろアイリスは二人ほぼ同時に体を離した。数十センチの距離で見つめ合う二人の顔はお互い真っ赤になっていた。
アイリスはすぐに優しく微笑む。
「さぁ帰りましょう」
「あぁ。姐さん! こっちだ!」
ロックは天井から顔を覗かせている、ヴィクトリアに声をかけた。
「あっ! ちょっと待って!」
なにかを思い出したアイリスはロックから離れてかけていく。
彼女はクロウの槍の元へと行き、慣れた手付きでクロウの右手を槍から外していく。ロックはアイリスの行動に首をかしげていた。外したクロウの手を投げ捨て槍を抜いて上に掲げる。
「この槍は持って帰らないと!」
「はぁ。なんでそんなのいるんだよ? きたねえ槍じゃねえか」
「何を言ってるの? これはおそらく高価なものよ。見たでしょ? 持ち主の意志によって出たり消えたりするのよ」
「お前…… 俺のこと心配しないでそんなとこ見てたのか?」
悲しい顔をするロック、アイリスは彼の顔を見て気まずくなっていく。
「とっとにかく持って帰るからね!」
ごまかすように叫ぶアイリスだった。二人はヴィクトリア号へと戻るのだった。
くすんだ赤い色の流線型の船体に、鎖型の模様が入った翼をもつ全長五十メートルほどの中型の飛空船だ。船首は金属製で三角形の口を閉じた蛇の頭の形になっている。この魔導飛空船は砂蛇が使う強襲型魔導飛空船ヴァイパーだ。
ヴァイパー内部の一室。入り口の扉には、革の鎧を着た髭面の中年二人が見張りに立っている。部屋は中は広く奥の壁には、一面に大きな窓が設置され、床に刺繍の施された高そうな絨毯が敷かれていた。
絨毯の上に木製の机と、右手の壁の前には高級そうな棚と、左手の壁には大きな地図がはられていた。入り口の扉が開き、人が一人すっぽりと入りそうな、大きな薄茶色の頭陀袋を担いでクロウが入ってきた。この部屋は砂蛇の頭領が使う部屋だった。
扉を開いたままでクロウは、担いでいた頭陀袋を乱雑に絨毯の上に置き乱暴に袋を外す
「うーうー!」
頭陀袋の中から後ろ手で両手を縛られ、さるぐつわを付けられたアイリスが姿を現した。クロウはアイリスの前にしゃがんで、彼女の体を見て少し不満そうにうなずく。
「まぁまぁだな…… グは!」
アイリスは狙いすましてクロウの胸を蹴った。バランスを崩したクロウのスキをついたアイリスは、立ち上がって部屋から逃げようとする。
「チッ! 待ちやがれ!」
「うー!」
慌てて舌打ちをして、立ち上がったクロウは必死に手を伸ばす。彼女の左に伸びている
「うー!!!」
居たがり声をあげるアイリスを強引に自分の方に引き寄せるクロウ。
「はははっ。頭領! 嫌われてますねぇ」
「女の扱いかた教えましょうか?」
開け放たれたままの扉の脇で、中の様子を見ていた部下二人が笑いながらクロウをからかう。
「うるせえ!」
部下を怒鳴りつけクロウは、アイリスを引きずっていき扉を勢いよく閉めた。
「てめえ! 自分の立場わかってんのかよ!!!」
「うー!」
クロウはアイリスの髪をひねり上げ怒鳴りつける。
髪をひっぱられた痛みで、アイリスの目に涙が浮かぶ、しかし彼女はクロウに屈することなく、毅然とした顔で彼を見つめていた。
「ふふ。強情な女は嫌いじゃない。征服された時の表情がたまらねえんだよ」
笑ってクロウはアイリスの顎に、手を置いて強引に自分の方を向かせようとした。
しかし…… アイリスは近づくクロウ顔に向かって頭突きをした。ガンと言う良い音がする。背の低いアイリスが、飛び上がるようにした頭突きはクロウの顎にヒットした。
衝撃と痛みでクロウはアイリスの髪から手を離す。アイリスにもダメージがあったようで彼女の足がふらつく。
「いって! てめえ!」
顎を押さえてクロウは、激昂しふらついているアイリスを平手打ちした。音がして彼女の頭は大きく振られてメガネが飛び、絨毯に倒れ込んでしまった。
「うー!」
体をなんとか起こして、アイリスはクロウをにらみつける。彼女の叩かれた頬は真っ赤に腫れ上がって痛々しい。
殴られたアイリスは恐怖で泣きそうになったが必死に耐えていた。クロウには屈さないというせめてもの彼女の抵抗だった。クロウは彼女の表情を見て満足そうに笑い。舌なめずりをしたクロウはアイリスに向かってゆっくりと近づく。
彼は近づきながら股間を触り、その手でアイリスをつかもうと伸ばす。身を縮こませてアイリスは、目をつむるのだった。
「おっと」
船体が少し揺れバランスを崩しかけるクロウ。直後……
「うわああああ!!!」
「きゃあああああああ!!!!」
扉の向こうから叫び声がした。眉間にシワを寄せアイリスの伸ばした、手を引っ込めたクロウは振り向いて部屋の扉へと向かう。
「うるせえ! 何を騒いでやがる! なっ!? なんだこりゃ!?」
扉を開けたクロウが叫び声をあげた。同時に白い冷気が頭領の部屋へ流れ込んでいく。アイリスは流れ込んでくる冷気に笑う。冷気を受けたはずの彼女の心と体は、逆にほっこりと温まっていくのだった。
部屋の外は甲板で至る所が白く氷に覆われ、扉の両脇に立っていた彼の部下たちは、武器に手をかけたし姿で顔以外が真っ白に凍りついていた。クロウは真っ白に凍った船の状況に、慌てすぐに扉の横にいた部下に口を開く。
「なっ何があった!?」
「ばっ化け物…… 化け物だ……」
目を大きく見開き前を見つめてうわ言のようにつぶやく自分の部下だった。
クロウは視線を甲板へと向ける。獲物の船に船体をぶつけて停止させるために、ヴァイパーの甲板は魔物骨で組んだ屋根に覆われているが、その屋根は大きく左右に引き裂かれ穴からヴィクトリアがのぞいていた。瞳孔が開いた感情のない爬虫類のような目が船内を冷たく照らす。
ヴィクトリアのちょうど真下、真っ白に凍りついた甲板の中央に、左手に杖、右手に剣を持ったロックた黙って立っていた。
ロックは真顔でずっとクロウの方を見つめている。ロックの視線にクロウが気づく。
「お前がロックか!?」
クロウは部屋から少し前にでてロックに向かって叫ぶ。
ロックは彼の言葉に反応せずに黙ったまま立っている。クロウは慌てて後ろを向く、彼の視線に倒れたアイリスが目に入った。
急いでクロウはアイリスの元に戻ろろうとかけだした。
しかし…… 視界が急に暗くなった。真っ黒な服で彼の視界が覆われる。
「なっ!?」
目の前に空間転移でロックが現れたのだ。ロックは黙ったままクロウを見つめている。
「クソ!」
右手を前にだしたクロウ、同時に彼の手に黒い柄で、刃先の根本にサメのような刃がついた槍が握られた。黙ったまま反応しない、ロックの胸に向かって槍の刃先が伸びていく。クロウはニヤリと笑った……
「いっ!?」
槍がロックの胸に届く直前に彼は消えた。クロウは槍でロックを突こうと右腕を伸ばした姿勢になっている。直後にクロウの槍の真横に左手の杖を振り上げた姿勢のロックが現れる。
ロックは目の前にある槍を上から叩きつけた。刃先が下を向き、クロウは姿勢が前のめりのなった。ロックの目の前に槍を握ったクロウの右腕が見えてくる。
即座にロックは持っていた剣をクロウの右腕に向かって振り上げた。すぐに音がしてロックの剣が天に向けられる。
同時にクロウの槍が回転しながら飛んでいき、彼の一メートルほど後方の甲板に突き刺さった。
突き刺さった槍にはしっかりと槍を握る、クロウの右腕の肘と肩の真ん中くらいから先の部分があった。
「うぎゃああああああーーーーーーーーー! 腕が!? 腕がああああ!!!???」
顔を上にあげ腕を切られた泣き叫ぶ、クロウにロックは反応もせず顔を横に向けた。ロックの視線は船長室にいる倒れたアイリスに向けられている。アイリスの頬は叩かれて赤くなり髪は振り乱されていた。視線をクロウに戻すロック。
「お前か? あいつを傷つけたのは?」
「なっ!? ちが!? あれは……」
ロックは右手に握った剣を勢いよく振り、クロウの血を払うと、右手を上に掲げ力を込め、クロウを冷たい目で見つめていた。
「やっやめろーーーーー!!!」
クロウの声が響く。ロックの剣が振り下ろされてた。剣はクロウの左腕を肩の根本から切り落とした。
即座の剣を返して、今度は左足と右足を太ももの少し先から同時に切り落とす。四肢を失ったクロウは地面に転がって仰向けになる。ロックは終わったかの合図のように床を杖で叩く。
「あっああああ……」
床に転がって声をあげるクロウだったが、彼の体は痛みがなく意識もはっきりしている。不思議な表情をし、自分の体をよく見ると僅かに残った四肢の部分が、流れた血ごと凍りついていた。
「そう簡単に死ねると思うなよ。残った手足とお前の自慢のイチモツもやがって腐ってくずれ落ちる。這いつくばったまま紫の海に沈むがいい!」
ロックに向かって何かを言おうとしたクロウ、だが彼の口は開いたままで動けない。
「あがあがあが」
「そうだった。口を動かせないように凍らせたんだっけ…… お前の言葉なんて世の中で一番無駄な言葉だからな」
床に無造作に転がったクロウを、見ること無くロックはアイリスの元へ向かう。アイリスは絨毯の上にすわったままロックを見つめている。涙で彼女の目は潤んでいた。
ロックは杖をしまって剣で、彼女の手を縛る縄を切る。続いて剣をしまってアイリスの背後に回り込み両手で、彼女の口につけられたさるぐつわを外した。
「ぷはー! もう遅いじゃない! もう少しで私の大事な貞操が……」
アイリスは口を尖らせ不満そうに声をあげた。ロックは黙ってうつむいて彼女に両手を伸ばした。
「よかった……」
「えっ!? ロッロック……」
力強くロックの方へと引き寄せられ、アイリスは一瞬で全身を彼の匂いと温もりに包まれた。ロックはアイリスを強く抱きしめていた。
「ごめん…… ごめんな…… 俺が離れたから……」
泣いているのかロックはアイリスの耳元で謝っている。ロックの背中に手を回した、アイリスは静かに彼の背中を撫でる。
「いいのよ。ありがとう…… 来てくれて嬉しかった…… ロック…… だ…… す…… きだよ」
「あぁ! 俺も……」
「「えっ!?」」
ロックろアイリスは二人ほぼ同時に体を離した。数十センチの距離で見つめ合う二人の顔はお互い真っ赤になっていた。
アイリスはすぐに優しく微笑む。
「さぁ帰りましょう」
「あぁ。姐さん! こっちだ!」
ロックは天井から顔を覗かせている、ヴィクトリアに声をかけた。
「あっ! ちょっと待って!」
なにかを思い出したアイリスはロックから離れてかけていく。
彼女はクロウの槍の元へと行き、慣れた手付きでクロウの右手を槍から外していく。ロックはアイリスの行動に首をかしげていた。外したクロウの手を投げ捨て槍を抜いて上に掲げる。
「この槍は持って帰らないと!」
「はぁ。なんでそんなのいるんだよ? きたねえ槍じゃねえか」
「何を言ってるの? これはおそらく高価なものよ。見たでしょ? 持ち主の意志によって出たり消えたりするのよ」
「お前…… 俺のこと心配しないでそんなとこ見てたのか?」
悲しい顔をするロック、アイリスは彼の顔を見て気まずくなっていく。
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