ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~
第35話 止まれ
サリトール大橋を渡り切って交差する、大きな通りの向かいに石畳の地面の広場がある。
広場の奥に大きな四角い三階建ての大きな邸宅が見え、真ん中には長方形の台の上に、一本の石柱が立っていた。
柱にはたくさんの文字が刻まれている。広場の奥にあるのが、サリトールを支配していたグゴーズの邸宅で、今はステッフェリア族が管理し西側の拠点として運用している。
また、広場はグゴーズ邸の庭で現在は町の人に解放され、石柱はグゴーズによって犠牲になった町の人々の名前が刻まれた戦勝記念碑である。ロック達はサリトール大橋を駆け抜けた直後で、ゆっくりと馬を旧グゴーズ邸へと向かって進めていた。
「大変です! グレゴリウス様!」
鎧に身を包んだステッフェリア族の男が慌てた様子で走って来てロック達に声をかける。グレゴリウスは立ち止まり、振り向いて男に声をかける。グレゴリウスの少し前を行くロック達は、馬を止めずにゆっくりと歩かせていた。
「どうした? 儀式の途中だぞ」
「ハァハァ」
ステッフェリア族の男は必死に走って、来たようで息をととえてから、姿勢を正してグレゴリウスに答える。
「橋の真ん中に突如紫の巨大な魔物が現れて人々を襲っています!」
「なんだと!? 橋にはアイリス達が! クローネ! 馬を止めてくれ」
男の声を聞いたロックは、クローネに向かって馬を止めるように指示をした。だが…… クローネは馬を止めずに進める。
「アイリス! おい! クローネ! 馬を止めてくれって! 俺はアイリス達を……」
「ダメ……」
必死に訴えるロック、クローネが小声でダメといったのが聞こえず彼女の肩を強くつかんだ。
「おい! 早く止めろよ! ふざけてる場合か!」
「行かないでよ!!!」
クローネがうつむいて大きな声で叫ぶ。彼女は目をうるませながら体を震わせている。馬の後ろでクローネの背中しか見えない、ロックは呆れた顔して彼女に向かって口を開く。
「はぁ!? 行くなってお前は自分が何を言ってるのかわかってんのか?」
「わかってます! あなたの仕事はわたくしを守ることですよね。だから…… どこにも行かないでわたくしのそばにいてよ!!」
目に涙をためうつむいて体を震わせるクローネ、ロックが握る手綱の上から彼の手を必死につかむ。
「ふざけるな。はなせ!」
「わかりました…… じゃあお金を払います。ここにいてください」
「金って!? 冗談は……」
「冗談じゃありません!!!!」
叫びながらロックへ顔を向けるクローネ、ロックの目に映った彼女は真剣な表情でまっすぐな瞳をしている。その表情からロックの側から、離れたくないという彼女の強い意志が伝わってくる。
「お金を払うんですからそばに…… えっ!? なんで……」
震えるクローネの手をロックは優しく外した。目をうるませてロックを見つめるクローネに、彼は冷たく首を横に振った。
「悪いな。俺の仕事は……」
魔法で体を浮かび上がらせて、馬から下りて地面に立ったロックはクローネに背を向けた。
「俺の仕事はアイリスを守ることだ! 俺はあいつ…… あいつだけの護衛だ。お前はあいつの仕事相手なだけだ」
前を向いたまま冷たくロックはクローネに言い放ち、彼は右手を服にすべらせように胸の前で横に動かした。ロックの右手に動きに合わせて、服装が変わっていき普段の彼の格好に戻る。
クローネに視線を向けること無く前を向いたままロックは左手の親指を立て後ろに向け雑に彼女を指差す。
「おい! グレゴリウス! 姫様を頼むぜ。俺は橋に現れたやつをぶっ倒してくる」
「はい。すぐに私の部下も橋へ行かせます」
ロックは地面を蹴って浮かび上がると、猛スピードで橋に向かって飛んでいってしまった。夜空に消えたロックをクローネは黙って見つめていた。グレゴリウスが神妙な顔で彼女の横に立つ。クローネはうつむいたまま体を震わていた。
「バカ…… 私のバカ…… なんてことを……」
自分の行いを後悔するクローネ、彼女の頬を涙が伝って落ちていく。乗っている馬が心配そうにいななき彼女の方に顔を向けた。
「クローネ……」
グレゴリウスはそっとクローネの肩を抱くのだった。クローネはグレゴリウスの胸でずっと泣き続けた。クローネと別れたロックは猛スピードで橋へと迫っていた。ロックの眼下に巨大な橋が見えてきた。橋の上では儀式を見物に来た人々が、逃げ惑っている姿が見える。
「あれか!」
橋の真ん中に三メートルほどある、人型で紫色の皮膚をした、筋骨隆々の魔物が立っているのがロックに見えた。
「シロップと同じ…… うん!?」
魔物の前に小さな二人の人影がある。どうやら二人は魔物を食い止めようとしているようだ。
「ポロン、コロン!? なにやってんだよ! 馬鹿野郎! さっさと逃げろ」
人影はポロンとコロンだった。ロックは慌てて橋の上に向かって急降下しながら左手を開く、背負っていた杖が浮かび上がり瞬時に彼の左手におさまる。魔物はコロンとポロンに向かって拳を振り上げ突き出した。急降下しながらロックは杖の先端を魔物に向けた。
「鋭き氷の刃よ。悪しき者達を貫け! アイスダガーダンス!」
ロックの杖の前に白い光の円が現れる。杖の先端に出来た光の円から、次々に二十センチほど長さの尖った氷が飛び出し魔物へ向かっていく。アイスダガーダンスは水属性の中位攻撃魔法で、円形に圧縮された冷気から無数の氷の刃を作り出し敵を蹴散らす。
氷の刃が空気を切り裂きながら、魔物とコロンとポロンの間の飛んでいった。橋の上に突き刺さる氷の刃、その一部が魔物拳をかすめた。魔物はすぐに拳をひっこめて後退りする。
急に現れた氷の刃に驚くポロンとコロンは上に顔を向けた。急降下したロックは二人の三メートルほど上空に体を起こして見下ろしていた。
「おい。大丈夫か?」
「はい…… 助かりました」
コロンは笑顔でうなずく。ポロンをかばうようにして抱きしめていた、コロンは安堵の表情をうかべいてた。
二人の前にでたロックは、スーッと静かに降下していく。
「ロックなのだ!」
コロンからはなれロックを見上げながら、両手をあげて嬉しそうに笑うポロンだった。ロックは彼女に向かって小さくうなずいた。ロックはポロンとコロンの前に着地した。すぐに枯れは顔を横に向け口を開く。
「アイリスはどこだ?」
「わかりません。アイリスが私達とはぐれてすぐに魔物が現れたので…… きっと逃げたのかも知れません」
コロンは不安そうに首を横に振り、自信なさげにロックの問いかけに答える。ロックは不機嫌そうに舌打ちをして前をむく。
「チッ! じゃあさっさと倒して船長さんを探しますか。二人は下がってろ」
右手を広げ腕を斜め前にだすロック、彼が背負っている剣が浮かび上がり右手におさまる。ロックは魔物に向かってゆっくりと歩き出す。
「はい。行きますよ。ポロン」
「わかったのだ」
二人は寄り添うようにして、ロックから離れていくのだった。横目で二人が移動するのを確認したロックは視線を前に向けた。ロックは魔物の二メートルほど、手前で立ち止まり視線を上に向け目を合わせ対峙する。
魔物はギョロッとした目が真っ赤に充血し、頭髪なく額には一本角が生え、顎が出て下から牙が生えた鬼のような顔をしていた。体は大きく三メートルほどの大きなに、手足や体は筋骨隆々でたくましい。ただ頭の後ろかわいらしい赤い小さなリボンがつけたられている。
「うがあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ロックを見た魔物は大きな叫び声をあげた。激しく雄々しい鳴き声だが、どこか悲壮感が漂う。
「最初から本気で行かせてもらう…… 俺は…… あいつ……」
魔物を見てつぶやきながら、右手に持った剣を強く握りしめた、ロックは小さく首を横に動かし、顔を前に向け魔物を睨みつける。
「アイリスのとこへ行かなきゃいけねえからな!」
ロックは叫ぶと杖の先端で地面を軽く叩く。
杖の先端から、橋の上に白い冷気の円が広がっていき、橋の周囲を冷たい空気が吹き抜けて行くのだった。
広場の奥に大きな四角い三階建ての大きな邸宅が見え、真ん中には長方形の台の上に、一本の石柱が立っていた。
柱にはたくさんの文字が刻まれている。広場の奥にあるのが、サリトールを支配していたグゴーズの邸宅で、今はステッフェリア族が管理し西側の拠点として運用している。
また、広場はグゴーズ邸の庭で現在は町の人に解放され、石柱はグゴーズによって犠牲になった町の人々の名前が刻まれた戦勝記念碑である。ロック達はサリトール大橋を駆け抜けた直後で、ゆっくりと馬を旧グゴーズ邸へと向かって進めていた。
「大変です! グレゴリウス様!」
鎧に身を包んだステッフェリア族の男が慌てた様子で走って来てロック達に声をかける。グレゴリウスは立ち止まり、振り向いて男に声をかける。グレゴリウスの少し前を行くロック達は、馬を止めずにゆっくりと歩かせていた。
「どうした? 儀式の途中だぞ」
「ハァハァ」
ステッフェリア族の男は必死に走って、来たようで息をととえてから、姿勢を正してグレゴリウスに答える。
「橋の真ん中に突如紫の巨大な魔物が現れて人々を襲っています!」
「なんだと!? 橋にはアイリス達が! クローネ! 馬を止めてくれ」
男の声を聞いたロックは、クローネに向かって馬を止めるように指示をした。だが…… クローネは馬を止めずに進める。
「アイリス! おい! クローネ! 馬を止めてくれって! 俺はアイリス達を……」
「ダメ……」
必死に訴えるロック、クローネが小声でダメといったのが聞こえず彼女の肩を強くつかんだ。
「おい! 早く止めろよ! ふざけてる場合か!」
「行かないでよ!!!」
クローネがうつむいて大きな声で叫ぶ。彼女は目をうるませながら体を震わせている。馬の後ろでクローネの背中しか見えない、ロックは呆れた顔して彼女に向かって口を開く。
「はぁ!? 行くなってお前は自分が何を言ってるのかわかってんのか?」
「わかってます! あなたの仕事はわたくしを守ることですよね。だから…… どこにも行かないでわたくしのそばにいてよ!!」
目に涙をためうつむいて体を震わせるクローネ、ロックが握る手綱の上から彼の手を必死につかむ。
「ふざけるな。はなせ!」
「わかりました…… じゃあお金を払います。ここにいてください」
「金って!? 冗談は……」
「冗談じゃありません!!!!」
叫びながらロックへ顔を向けるクローネ、ロックの目に映った彼女は真剣な表情でまっすぐな瞳をしている。その表情からロックの側から、離れたくないという彼女の強い意志が伝わってくる。
「お金を払うんですからそばに…… えっ!? なんで……」
震えるクローネの手をロックは優しく外した。目をうるませてロックを見つめるクローネに、彼は冷たく首を横に振った。
「悪いな。俺の仕事は……」
魔法で体を浮かび上がらせて、馬から下りて地面に立ったロックはクローネに背を向けた。
「俺の仕事はアイリスを守ることだ! 俺はあいつ…… あいつだけの護衛だ。お前はあいつの仕事相手なだけだ」
前を向いたまま冷たくロックはクローネに言い放ち、彼は右手を服にすべらせように胸の前で横に動かした。ロックの右手に動きに合わせて、服装が変わっていき普段の彼の格好に戻る。
クローネに視線を向けること無く前を向いたままロックは左手の親指を立て後ろに向け雑に彼女を指差す。
「おい! グレゴリウス! 姫様を頼むぜ。俺は橋に現れたやつをぶっ倒してくる」
「はい。すぐに私の部下も橋へ行かせます」
ロックは地面を蹴って浮かび上がると、猛スピードで橋に向かって飛んでいってしまった。夜空に消えたロックをクローネは黙って見つめていた。グレゴリウスが神妙な顔で彼女の横に立つ。クローネはうつむいたまま体を震わていた。
「バカ…… 私のバカ…… なんてことを……」
自分の行いを後悔するクローネ、彼女の頬を涙が伝って落ちていく。乗っている馬が心配そうにいななき彼女の方に顔を向けた。
「クローネ……」
グレゴリウスはそっとクローネの肩を抱くのだった。クローネはグレゴリウスの胸でずっと泣き続けた。クローネと別れたロックは猛スピードで橋へと迫っていた。ロックの眼下に巨大な橋が見えてきた。橋の上では儀式を見物に来た人々が、逃げ惑っている姿が見える。
「あれか!」
橋の真ん中に三メートルほどある、人型で紫色の皮膚をした、筋骨隆々の魔物が立っているのがロックに見えた。
「シロップと同じ…… うん!?」
魔物の前に小さな二人の人影がある。どうやら二人は魔物を食い止めようとしているようだ。
「ポロン、コロン!? なにやってんだよ! 馬鹿野郎! さっさと逃げろ」
人影はポロンとコロンだった。ロックは慌てて橋の上に向かって急降下しながら左手を開く、背負っていた杖が浮かび上がり瞬時に彼の左手におさまる。魔物はコロンとポロンに向かって拳を振り上げ突き出した。急降下しながらロックは杖の先端を魔物に向けた。
「鋭き氷の刃よ。悪しき者達を貫け! アイスダガーダンス!」
ロックの杖の前に白い光の円が現れる。杖の先端に出来た光の円から、次々に二十センチほど長さの尖った氷が飛び出し魔物へ向かっていく。アイスダガーダンスは水属性の中位攻撃魔法で、円形に圧縮された冷気から無数の氷の刃を作り出し敵を蹴散らす。
氷の刃が空気を切り裂きながら、魔物とコロンとポロンの間の飛んでいった。橋の上に突き刺さる氷の刃、その一部が魔物拳をかすめた。魔物はすぐに拳をひっこめて後退りする。
急に現れた氷の刃に驚くポロンとコロンは上に顔を向けた。急降下したロックは二人の三メートルほど上空に体を起こして見下ろしていた。
「おい。大丈夫か?」
「はい…… 助かりました」
コロンは笑顔でうなずく。ポロンをかばうようにして抱きしめていた、コロンは安堵の表情をうかべいてた。
二人の前にでたロックは、スーッと静かに降下していく。
「ロックなのだ!」
コロンからはなれロックを見上げながら、両手をあげて嬉しそうに笑うポロンだった。ロックは彼女に向かって小さくうなずいた。ロックはポロンとコロンの前に着地した。すぐに枯れは顔を横に向け口を開く。
「アイリスはどこだ?」
「わかりません。アイリスが私達とはぐれてすぐに魔物が現れたので…… きっと逃げたのかも知れません」
コロンは不安そうに首を横に振り、自信なさげにロックの問いかけに答える。ロックは不機嫌そうに舌打ちをして前をむく。
「チッ! じゃあさっさと倒して船長さんを探しますか。二人は下がってろ」
右手を広げ腕を斜め前にだすロック、彼が背負っている剣が浮かび上がり右手におさまる。ロックは魔物に向かってゆっくりと歩き出す。
「はい。行きますよ。ポロン」
「わかったのだ」
二人は寄り添うようにして、ロックから離れていくのだった。横目で二人が移動するのを確認したロックは視線を前に向けた。ロックは魔物の二メートルほど、手前で立ち止まり視線を上に向け目を合わせ対峙する。
魔物はギョロッとした目が真っ赤に充血し、頭髪なく額には一本角が生え、顎が出て下から牙が生えた鬼のような顔をしていた。体は大きく三メートルほどの大きなに、手足や体は筋骨隆々でたくましい。ただ頭の後ろかわいらしい赤い小さなリボンがつけたられている。
「うがあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ロックを見た魔物は大きな叫び声をあげた。激しく雄々しい鳴き声だが、どこか悲壮感が漂う。
「最初から本気で行かせてもらう…… 俺は…… あいつ……」
魔物を見てつぶやきながら、右手に持った剣を強く握りしめた、ロックは小さく首を横に動かし、顔を前に向け魔物を睨みつける。
「アイリスのとこへ行かなきゃいけねえからな!」
ロックは叫ぶと杖の先端で地面を軽く叩く。
杖の先端から、橋の上に白い冷気の円が広がっていき、橋の周囲を冷たい空気が吹き抜けて行くのだった。
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