ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~
第33話 おやつを食らえ
サリトールにある魔導飛空船発着場の一角にヴィクトリアは居る。足を曲げ腹を地面につけ、首を伸ばして翼をたたんだ楽な姿勢で彼女は休んでいる。
穏やかな陽気と爽やかな風ヴィクトリア、気持ちようさそうな風に吹かれた彼女は、ウトウトとして眠そうに目に涙をため軽くあくびをする。
「(ふわぁ。はっ!? あら!? ちっちゃーい)」
ヴィクトリアの顔の横に、五歳くらいの少年が立ち彼女を見上げていた。少年はおかっぱでどこかの貴族なのか、きらびやかな服を着ている。彼はドラゴンを見るのが初めてのようで、物珍しそうにヴィクトリアを眺めている。
「(かわいいわねぇ。ロックもこのくらい頃はかわいかったのよねぇ)」
ヴィクトリアが少年を優しく見た。少年はヴィクトリアが眠っていると思っていたのに急に目覚め、かつ自分よりも遥かに大きいヴィクトリアに見られて恐怖で顔を引きつらせた。
そのまま怯えた顔で少年は、即座に振り向いて走って行ってしまった。
「(行っちゃった…… あの顔…… 恥ずかしがってるのかしら! やっぱり私のかわいさは種族を超えるのね! フフー!」
ヴィクトリアは少し興奮気味に、ブフーと大きな息を吐いた。激しい音と風が、ヴィクトリアの周囲の草木を揺らす。
近くに居た発着場の掃除係のステッフェリア族が、何事かと心配そうに彼女を見つめていた。そこへ……
「おねえちゃーん! 口を開けて」
両手を振りながらアイリスが、ヴィクトリアに向かって走ってくる。
「(アイリス? どうしたの? 儀式は今日の夜でしょ? まだ出航には早いんじゃないかしら?)」
「違うの! 怪我人が居るのよ」
振り向くアイリス、ヴィクトリアが彼女の背後に視線を向けた。アイリスの少し後ろにコロンと、少女を背負ったポロンが見えた。
「(まぁ!? 大変! ほら早く入りなさい)」
「ありがとう! コロン! ポロン! こっちだよ」
口を開け舌をアイリスに向かって、舌を伸ばすヴィクトリアだった。三人が舌に乗るとヴィクトリアは、舌を自分の顎の下へと移動させた。
アイリス達は少女を連れ、ヴィクトリア号の内部へと入っていった。
「(あの子…… どこかで……)」
口を閉じたヴィクトリアがつぶやく。彼女はポロンが背負っていた少女の横顔に見覚えがあった……
アイリスはポロンに指示をして、自分の船室に少女を運ばせた。ベッドに乗せて傷薬で体に治療した。
それから時間が過ぎ、日は傾いてヴィクトリアが、夕日に照らされる時刻になった……
「うっうん……」
少女が目を覚ました。目の前にアイリスの部屋に置かれた天蓋ベッドの天井が目に入る。体を起こした少女にアイリスの頭が視線に入る。驚いた彼女は視線を向けると、アイリスがベッドに突っ伏したまま寝ている姿が見えた。
アイリスは治療の途中で疲れて寝てしまったようだ。少女はアイリスの肩に手をかけ揺すって起こす。
「ふにゃ…… あれ!? よかった目が覚めたのね」
顔をあげ眠気眼で少女を見たアイリス、すぐに少女が目を覚めたことを彼女は喜び微笑む。
少女は少し恥ずかしそうに、頬を赤くしてアイリスに尋ねる。
「ここはどこ? あんたは誰?」
「輸送船の中よ。私はアイリスよ。あなたのお名前は?」
名前を尋ねられた少女はうつむいて答える。
「べっベリーチェ……」
少女は二度ロック達を襲ったベリーチェだった。ベリーチェとの面識はロックしかないため、彼女の正体をアイリス達は知らない。
ベリーチェはロックに放置された後、紫海を漂流したが運良くサリトールの近くに漂着した。フラフラと町を歩き腹が減った彼女は、食べ物を盗もうとし男達に捕まったのだ。
「私はどうしてここに? 確か…… 路地の広場で男に襲われて……」
自分の身に起きたことを思い出しながら、ベリーチェはなぜここに居るのかたずねる。
アイリスは起き上がってサイドテーブルにあった、水挿してコップに水を注ぎながら彼女の質問に答える。
「そうよ。男たちは私達がとっちめいといたわ」
「でっでも…… あたし…… もう…… ヒック…… 帰るとこが……」
怯えた顔で体を震わせる泣き出したベリーチェ。アイリスは慌てた様子で水差しをおき、ベッドに膝をつくいて彼女を抱きしめた。
「大丈夫。心配ないわ。あいつはもう居ないかからどこにも」
アイリスはベリーチェの体を抱きしめながら耳元で優しくこ声をかける。
安心したのか徐々に、ベリーチェの体の震えがおさまっていく。ベリーチェの震えがおさまるまでアイリスは彼女を抱きしめ続けたのだった。
震えが止まるとアイリスは、ベリーチェから手を離し彼女の頭を優しく撫でる。キュルキュルという間抜けな音が部屋に響く。同時にベリーチェは頬を赤くしてうつむいた。彼女の腹の虫が鳴ったのだ。
「お腹空いたよね。ほら行こう」
「えっ!? まっ待って……」
アイリスはベリーチェの手をとって強引に立たせると彼女を食堂へと連れて行くために部屋を出て行く。
「おぉ! 元気になったのだ?」
廊下に出て食堂に向かおうとした二人に、貨物室の方からポロンが近づいてきて声をかけてくる。
ポロンを見たベリーチェは、アイリスの後ろに隠れた。アイリスはベリーチェに向かって微笑む。
「ベリーチェ、こちらはポロン。ポロン、ベリーチェよ」
アイリスはそっと一歩横にそれて、ベリーチェをポロンに見せるようにした。ベリーチェの近くでポロンは頭をさげた。
「ポロンなのだ。よろしくなのだ」
「よっよろしく。ベリーチェよ」
恥ずかしそうに名乗るベリーチェだった。二人の挨拶が終わるとアイリスが口を開く。
「ポロンが町からあなたを運んだのよ」
「そっそうなの? ありがとう」
「任せるのだ!」
歯をだしてニカっと笑って、ポロンは得意げに自分の胸を叩くのだった。ベリーチェはポロンを見て少しだけ表情が緩んだ。
「アイリス。どこか行くのだ?」
「ベリーチェがお腹空いたみたいで食堂に連れて行くのよ」
「そうなのか? 良かったのだ。ちょうど料理ができたから迎えに来たのだ」
「よかったわ。じゃあ行きましょう」
ベリーチェとあり椅子はポロンと一緒に食堂へと向かうのだった。
楽しそうに歩くポロンとアイリスの後ろで、物珍しそうにベリーチェはヴィクトリアの船内を見渡している。彼女は狭く変な船だと思っているが、ここがエンシェントドラゴンの体内だとは思わなかった。通炎管廊下を進むと縦長の食堂が見えてきた。
「ここが食堂よ」
アイリスは食堂の扉を開け、先に入って扉を押さえベリーチェを中へ招き入れた。ベリーチェに続いて最後にコロンが食堂に入った。食堂の中ではコロンが付近でテーブルを拭いていた。コロンを見たベリーチェが驚いた顔をする。
「あれ!? ポロン…… いつの間に着替え……」
「私はここに居るのだよ」
横に立つポロンを見て唖然とするベリーチェ、それを見たアイリスは吹き出しそうになるのをこらえている。コロンはテーブルを吹く手を止めて、背を伸ばして自分を手で指しベリーチェに頭を下げる。
「わたくしはコロンと申します」
「驚いた? 二人は双子なんだよ」
「あぁ…… そうなんだ……」
真相を聞いて少し安心した顔をするベリーチェだった。アイリスはベリーチェを見て我慢できずに吹き出した。
「ふふふ」
「なっなによ? なんで笑うのよ!」
「ごめんね。だってついこの間も二人を見てあなたと同じこと言った人が居てさ……」
「もう……」
口を尖らせて不満そうにするベリーチェ、ポロンとコロンは二人を見て微笑んでいた。扉を閉めてアイリスは、少し前に出てコロンに声をかける。
「コロン。ベリーチェはお腹すいてるみたいなの。お願いしていい?」
「はい。準備はできておりますよ」
キッチンに向かっていくコロン、アイリス達は近くの席に座る。
ベリーチェとアイリスが並び、ポロンはコロン用に席を一つ空けて向かいに座る。コロンはキッチンに向かってすぐにトレイを持ってアイリス達の元に戻ってくる。
「はい。どうぞ」
笑顔でコロンがアイリス達のテーブルにトレイを置いた。
トレイにはぶどうやオレンジやベリーやイチゴなどの、フルーツがたくさん盛られた巨大なタルトケーキと、脇に取り分けるようにナイフと小皿が置かれていた。
「じゃーん。各町のフルーツを使ったタルトよ。やっぱり女子には甘いものが必要よね! 早く切り分けて!」
「はーい」
ナイフを持ってコロンは、フルーツタルトを切り分け始めた。ベリーチェは驚いた様子で、フルーツタルトを眺めている。切り分けられたフルーツタルトが乗った皿が、自分の前に置かれるとベリーチェはすぐに口を開いた。
「ねえ! これって…… どうやって作ったの? オレンジなんて今の季節は手に入らないのに……」
ベリーチェの言葉に三人の視線が向かう。
フルーツタルトつかわれている果物達は、今の季節にはなかなか手に入らないものも盛られている。
「それは去年のオレンジよ」
「えっ!? 去年の?」
ベリーチェの言葉にアイリスは得意げな顔をする。
「うちの船にはね。何でも凍らせて保存できる良い冷凍庫があるのよ」
「あるのだ!」
「はは…… そういう風に言ったらかわいそうですよ」
コロンにたしなめられて、いたずらに笑って舌をだすアイリスとポロンだった。ちなみに冷凍庫とはロックのことで、ヴィクトリア号では彼の魔法によって野菜や果物などを凍らせて保存している。
楽しそうな三人、ただベリーチェはフルーツの盛り合わせを見て、うつむいたまま黙っている。
「どうしたの? フルーツとかダメだった?」
「ううん…… ごめん…… なんか嬉しくて…… あたしこんな楽しく食事したことなくて……」
首を横に振って声を震わせるベリーチェ、アイリスは彼女の言葉に寂しそうにうなずく。
「そう…… ほら! いっぱい食べて」
「うん」
笑顔のアイリスに促されたベリーチェは大きくうなずく。フルーツタルトの上にあったイチゴをフォークでさして口へ運ぶ。
うすく甘く味付けされたフルーツタルトのソースとイチゴ本来の香りと味がまざりう絶妙な味わいが口に広がる。
ベリーチェの目から自然と涙が溢れる。
「美味しい…… 美味しいよ……」
「もう泣きながら食べたらしょっぱくなっちゃうよ」
「だっだって~……」
ベリーチェは泣きながらフルーツタルトを頬張っている。アイリスはハンカチで彼女の涙を拭いてあげるのだった。コロンがハーブティを淹れる。四人の楽しいお茶の時間を満喫するのだった……
穏やかな陽気と爽やかな風ヴィクトリア、気持ちようさそうな風に吹かれた彼女は、ウトウトとして眠そうに目に涙をため軽くあくびをする。
「(ふわぁ。はっ!? あら!? ちっちゃーい)」
ヴィクトリアの顔の横に、五歳くらいの少年が立ち彼女を見上げていた。少年はおかっぱでどこかの貴族なのか、きらびやかな服を着ている。彼はドラゴンを見るのが初めてのようで、物珍しそうにヴィクトリアを眺めている。
「(かわいいわねぇ。ロックもこのくらい頃はかわいかったのよねぇ)」
ヴィクトリアが少年を優しく見た。少年はヴィクトリアが眠っていると思っていたのに急に目覚め、かつ自分よりも遥かに大きいヴィクトリアに見られて恐怖で顔を引きつらせた。
そのまま怯えた顔で少年は、即座に振り向いて走って行ってしまった。
「(行っちゃった…… あの顔…… 恥ずかしがってるのかしら! やっぱり私のかわいさは種族を超えるのね! フフー!」
ヴィクトリアは少し興奮気味に、ブフーと大きな息を吐いた。激しい音と風が、ヴィクトリアの周囲の草木を揺らす。
近くに居た発着場の掃除係のステッフェリア族が、何事かと心配そうに彼女を見つめていた。そこへ……
「おねえちゃーん! 口を開けて」
両手を振りながらアイリスが、ヴィクトリアに向かって走ってくる。
「(アイリス? どうしたの? 儀式は今日の夜でしょ? まだ出航には早いんじゃないかしら?)」
「違うの! 怪我人が居るのよ」
振り向くアイリス、ヴィクトリアが彼女の背後に視線を向けた。アイリスの少し後ろにコロンと、少女を背負ったポロンが見えた。
「(まぁ!? 大変! ほら早く入りなさい)」
「ありがとう! コロン! ポロン! こっちだよ」
口を開け舌をアイリスに向かって、舌を伸ばすヴィクトリアだった。三人が舌に乗るとヴィクトリアは、舌を自分の顎の下へと移動させた。
アイリス達は少女を連れ、ヴィクトリア号の内部へと入っていった。
「(あの子…… どこかで……)」
口を閉じたヴィクトリアがつぶやく。彼女はポロンが背負っていた少女の横顔に見覚えがあった……
アイリスはポロンに指示をして、自分の船室に少女を運ばせた。ベッドに乗せて傷薬で体に治療した。
それから時間が過ぎ、日は傾いてヴィクトリアが、夕日に照らされる時刻になった……
「うっうん……」
少女が目を覚ました。目の前にアイリスの部屋に置かれた天蓋ベッドの天井が目に入る。体を起こした少女にアイリスの頭が視線に入る。驚いた彼女は視線を向けると、アイリスがベッドに突っ伏したまま寝ている姿が見えた。
アイリスは治療の途中で疲れて寝てしまったようだ。少女はアイリスの肩に手をかけ揺すって起こす。
「ふにゃ…… あれ!? よかった目が覚めたのね」
顔をあげ眠気眼で少女を見たアイリス、すぐに少女が目を覚めたことを彼女は喜び微笑む。
少女は少し恥ずかしそうに、頬を赤くしてアイリスに尋ねる。
「ここはどこ? あんたは誰?」
「輸送船の中よ。私はアイリスよ。あなたのお名前は?」
名前を尋ねられた少女はうつむいて答える。
「べっベリーチェ……」
少女は二度ロック達を襲ったベリーチェだった。ベリーチェとの面識はロックしかないため、彼女の正体をアイリス達は知らない。
ベリーチェはロックに放置された後、紫海を漂流したが運良くサリトールの近くに漂着した。フラフラと町を歩き腹が減った彼女は、食べ物を盗もうとし男達に捕まったのだ。
「私はどうしてここに? 確か…… 路地の広場で男に襲われて……」
自分の身に起きたことを思い出しながら、ベリーチェはなぜここに居るのかたずねる。
アイリスは起き上がってサイドテーブルにあった、水挿してコップに水を注ぎながら彼女の質問に答える。
「そうよ。男たちは私達がとっちめいといたわ」
「でっでも…… あたし…… もう…… ヒック…… 帰るとこが……」
怯えた顔で体を震わせる泣き出したベリーチェ。アイリスは慌てた様子で水差しをおき、ベッドに膝をつくいて彼女を抱きしめた。
「大丈夫。心配ないわ。あいつはもう居ないかからどこにも」
アイリスはベリーチェの体を抱きしめながら耳元で優しくこ声をかける。
安心したのか徐々に、ベリーチェの体の震えがおさまっていく。ベリーチェの震えがおさまるまでアイリスは彼女を抱きしめ続けたのだった。
震えが止まるとアイリスは、ベリーチェから手を離し彼女の頭を優しく撫でる。キュルキュルという間抜けな音が部屋に響く。同時にベリーチェは頬を赤くしてうつむいた。彼女の腹の虫が鳴ったのだ。
「お腹空いたよね。ほら行こう」
「えっ!? まっ待って……」
アイリスはベリーチェの手をとって強引に立たせると彼女を食堂へと連れて行くために部屋を出て行く。
「おぉ! 元気になったのだ?」
廊下に出て食堂に向かおうとした二人に、貨物室の方からポロンが近づいてきて声をかけてくる。
ポロンを見たベリーチェは、アイリスの後ろに隠れた。アイリスはベリーチェに向かって微笑む。
「ベリーチェ、こちらはポロン。ポロン、ベリーチェよ」
アイリスはそっと一歩横にそれて、ベリーチェをポロンに見せるようにした。ベリーチェの近くでポロンは頭をさげた。
「ポロンなのだ。よろしくなのだ」
「よっよろしく。ベリーチェよ」
恥ずかしそうに名乗るベリーチェだった。二人の挨拶が終わるとアイリスが口を開く。
「ポロンが町からあなたを運んだのよ」
「そっそうなの? ありがとう」
「任せるのだ!」
歯をだしてニカっと笑って、ポロンは得意げに自分の胸を叩くのだった。ベリーチェはポロンを見て少しだけ表情が緩んだ。
「アイリス。どこか行くのだ?」
「ベリーチェがお腹空いたみたいで食堂に連れて行くのよ」
「そうなのか? 良かったのだ。ちょうど料理ができたから迎えに来たのだ」
「よかったわ。じゃあ行きましょう」
ベリーチェとあり椅子はポロンと一緒に食堂へと向かうのだった。
楽しそうに歩くポロンとアイリスの後ろで、物珍しそうにベリーチェはヴィクトリアの船内を見渡している。彼女は狭く変な船だと思っているが、ここがエンシェントドラゴンの体内だとは思わなかった。通炎管廊下を進むと縦長の食堂が見えてきた。
「ここが食堂よ」
アイリスは食堂の扉を開け、先に入って扉を押さえベリーチェを中へ招き入れた。ベリーチェに続いて最後にコロンが食堂に入った。食堂の中ではコロンが付近でテーブルを拭いていた。コロンを見たベリーチェが驚いた顔をする。
「あれ!? ポロン…… いつの間に着替え……」
「私はここに居るのだよ」
横に立つポロンを見て唖然とするベリーチェ、それを見たアイリスは吹き出しそうになるのをこらえている。コロンはテーブルを吹く手を止めて、背を伸ばして自分を手で指しベリーチェに頭を下げる。
「わたくしはコロンと申します」
「驚いた? 二人は双子なんだよ」
「あぁ…… そうなんだ……」
真相を聞いて少し安心した顔をするベリーチェだった。アイリスはベリーチェを見て我慢できずに吹き出した。
「ふふふ」
「なっなによ? なんで笑うのよ!」
「ごめんね。だってついこの間も二人を見てあなたと同じこと言った人が居てさ……」
「もう……」
口を尖らせて不満そうにするベリーチェ、ポロンとコロンは二人を見て微笑んでいた。扉を閉めてアイリスは、少し前に出てコロンに声をかける。
「コロン。ベリーチェはお腹すいてるみたいなの。お願いしていい?」
「はい。準備はできておりますよ」
キッチンに向かっていくコロン、アイリス達は近くの席に座る。
ベリーチェとアイリスが並び、ポロンはコロン用に席を一つ空けて向かいに座る。コロンはキッチンに向かってすぐにトレイを持ってアイリス達の元に戻ってくる。
「はい。どうぞ」
笑顔でコロンがアイリス達のテーブルにトレイを置いた。
トレイにはぶどうやオレンジやベリーやイチゴなどの、フルーツがたくさん盛られた巨大なタルトケーキと、脇に取り分けるようにナイフと小皿が置かれていた。
「じゃーん。各町のフルーツを使ったタルトよ。やっぱり女子には甘いものが必要よね! 早く切り分けて!」
「はーい」
ナイフを持ってコロンは、フルーツタルトを切り分け始めた。ベリーチェは驚いた様子で、フルーツタルトを眺めている。切り分けられたフルーツタルトが乗った皿が、自分の前に置かれるとベリーチェはすぐに口を開いた。
「ねえ! これって…… どうやって作ったの? オレンジなんて今の季節は手に入らないのに……」
ベリーチェの言葉に三人の視線が向かう。
フルーツタルトつかわれている果物達は、今の季節にはなかなか手に入らないものも盛られている。
「それは去年のオレンジよ」
「えっ!? 去年の?」
ベリーチェの言葉にアイリスは得意げな顔をする。
「うちの船にはね。何でも凍らせて保存できる良い冷凍庫があるのよ」
「あるのだ!」
「はは…… そういう風に言ったらかわいそうですよ」
コロンにたしなめられて、いたずらに笑って舌をだすアイリスとポロンだった。ちなみに冷凍庫とはロックのことで、ヴィクトリア号では彼の魔法によって野菜や果物などを凍らせて保存している。
楽しそうな三人、ただベリーチェはフルーツの盛り合わせを見て、うつむいたまま黙っている。
「どうしたの? フルーツとかダメだった?」
「ううん…… ごめん…… なんか嬉しくて…… あたしこんな楽しく食事したことなくて……」
首を横に振って声を震わせるベリーチェ、アイリスは彼女の言葉に寂しそうにうなずく。
「そう…… ほら! いっぱい食べて」
「うん」
笑顔のアイリスに促されたベリーチェは大きくうなずく。フルーツタルトの上にあったイチゴをフォークでさして口へ運ぶ。
うすく甘く味付けされたフルーツタルトのソースとイチゴ本来の香りと味がまざりう絶妙な味わいが口に広がる。
ベリーチェの目から自然と涙が溢れる。
「美味しい…… 美味しいよ……」
「もう泣きながら食べたらしょっぱくなっちゃうよ」
「だっだって~……」
ベリーチェは泣きながらフルーツタルトを頬張っている。アイリスはハンカチで彼女の涙を拭いてあげるのだった。コロンがハーブティを淹れる。四人の楽しいお茶の時間を満喫するのだった……
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