ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~
第27話 橋が架かる町
紫海からヴィクトリアは翼をゆっくりと出てくる。雄大に空を飛ぶ彼女に穏やかな日差しが降り注ぎ、眼下には果てしなく続く緑の絨毯が広がっている。ヴィクトリアが出てきたのは、リオティネシア平原の西の帝国との国境近くだ。
翼を広げたヴィクトリアの真下に彼女の影を映す石畳の大きな街道がある、これはリオティネシア平原を東西に横断するグリーンロードだ。グリーンロードは交通の要で、農民や商人、貴族や冒険者など様々な人が街道を行き交っている。
明るい挨拶が街道から聞こえる平原は、どこか牧歌的で穏やかな雰囲気がだたよっている。
ただ、リオティネシア平原の気候は穏やかで雨量も多く、作物がよく育つ豊かな大地だった、肥沃なこの平原を巡っては争いは絶えなかった。
紫海から出たヴィクトリアが平原を一時間ほど飛ぶと、平原を蛇行しながら進む幅二キロはありそうな巨大な川が見えてきた。川に大きな橋がかかり、東西に別れた町が見える。ここが目的地、平原都市サリトールだった。
サリトールの西側と東側は、川にかかるサリトール大橋で結ばれていた。
町を分かつ大河はクロスオーバー川という、この川は南北にリオティネシア西部を縦断し、リオティネシア王国とゲオボルト帝国との国境となっている。
対岸にある町の西側はリオティネシア王国で、唯一のクロスオーバー川を超えた領地なのだ。大河に掛かるサリトール大橋は平原を横断する、リオティネシア街道の始点だ。サリトールはリオティネシアの西方にあり、西方における防衛、貿易、農業の中心の都市である。
町の外れの平原にある、魔導飛空船発着場にヴィクトリアは下りた。口を開け地面へと下を伸ばす。
舌にはアイリス、クローネ、ポロン、コロン、ロックと五人全員が乗っていた。
「到着っと」
アイリスが真っ先に地面へと下りた。すぐクローネがアイリの次に地面へ下り、ロック達は二人に続いて下りる。
魔導飛空船発着場とはいうが、だだっ広い平原に等間隔に、魔導飛空船が係留されているだけだった。
「「キャッ!」」
ロックが下りた直後に強烈な風が吹き抜けた。風はアイリス達のスカートまくりあげた。
スカートの前を押さえる二人、背後に居たロックからは下着が丸見えである。アイリスは飾り気のない白い下着で、クローネはピンク色で透けていた。
「クローネはスケスケだったのだ!!」
「こら! ポロン! だめですよ」
「大きな声で言わないでください……」
舌の上でクローネの下着の形状を叫ぶポロン、慌ててコロンが叱る。クローネは恥ずかしそうにうつむいている。
ロックにも見えていたのか彼の顔は緩んでいた。
「何ニヤニヤしてるのよ! この!」
「いてえ! お前…… っとに!」
「べー!」
「はっ! お前のしか見てねえよ…… あっ!! 知らねえ」
しまったという顔をし、恥ずかしそうに腕を組むロック、アイリスは彼の言葉に顔を真っ赤にしていた。
クローネはなぜかロックを睨みつけている。
ポロンは首をかしげ、コロンの横に立つコロンは三人を見て、ニヤニヤと笑っていた。コロンの顔を見たアイリスは、気をとりなそうと咳払いをする。
「コホン…… 私とクローネさんは他に仕事があるから後をよろしくね。宿はいつものとこよ」
「かしこまりました」
「わかったのだ」
コロンとポロンはアイリスの指示に返事をする。彼らの後ろに居た大きな影がすっと横に移動した。
「じゃあ俺は……」
「ダメ! 私と一緒に来なさい」
ロックが何かをいいかけようとするが、素早くアイリスは彼の上着を捕ま黙らせる。
「まだ何も言ってねえだろう!」
「ここにリオティネシアで一番大きいレース場があるの知ってるんだからね。言うことくらい分かるわよ。だからダメ」
厳しい表情をするアイリス、彼女の言う通りこの町はリオティネシア王国で最大の魔物レース場がある。この事を知ってれば、ロックが去ってどこへ行こうと思ってるのか、アイリスでなくても予想は容易である。
アイリスは右手を上に向けロックの前に差し出した。
「まぁ。サウザーで勝った分を私に差し出すっていうなら行ってもいいわよ」
「クソ! わかったよ……」
サウザーで勝った金を元手にレースに興じようとしたロック、種銭を没収されてレース場に行っても意味はない。
ロックは悔しそうにして、渋々と二人に付いていくのだった。
町は入り口から、リオティネシア街道を中心に放射状に綺麗に整備され、白い壁に色とりどりの屋根を持つ木造の建物の綺麗な街並みが続く。
特に町の中心にあるリオティネシア街道は、脇には街路樹が整備され、大きな馬車二台が並んで通れるほど広く、宿屋や商店が並んでおりたくさんの人が行き交っていた。
「どうせ…… ここも俺達はしきたりでダメだとかで追い出されるんだろ…… だったら行かなくても……」
歩きながら不満をいうロックに、前を歩くアイリスは呆れた顔をする。
「うるさいわね。さっきからブツブツ! 往生際が悪いわね!」
アイリスが振り向いてロックを叱りつけた。ロックは発着場から町の中に入るまでグチグチいっており、町に入ってもまだ言っているので、アイリスは彼のしつこさにうんざりとしていた。
子供のように口を尖らせて不満そうにするロックだった。ロックを見たアイリスの横に並んでいたクローネが、思わず二人のやり取りに口をはさむ。
「アイリスさんはロックさんに少し厳しいのでは?」
「さすがお姫様はわかってるな」
クローネの言葉に即座に反応し、嬉しそうにうなずくロック。アイリスはクローネに向かって首を大きく横を振る。
「ううん。ロックはこれくらい厳しくしないとすぐに仕事をサボるんですからダメです」
「でっでも…… もう少し彼のことを考えてあげても……」
「そうだ! そうだ! 考えろ!」
ロックは右手を突き上げ、クローネに同調した彼をアイリスがにらみつける。アイリスに睨まれてロックは、まずいと思ったのかすぐに手を下ろした。
「クローネさん。余計なことを言わないでくれますか! ロックが調子に乗るんで」
「よっ余計って…… 私はそんなるもりは…… ただ彼に…… もっと……」
珍しくクローネに向かって、アイリスは少し強めに注意した。クローネは目をうるませて、ロックの顔を見つめる。彼女の目から慈しみのような感情がロックに向けられている。
アイリスはロックを見る、クローネの目に言いようもない不安とざわつきを覚えていた。
「だいたいロックの事をよく知りもしないで…… 私の苦労とかわかってます? あなたみたいにお金になんの心配もないお気楽な立場と違うんです」
「おっおい! さすがに言い過ぎだろ」
クローネはアイリスの言葉にうつむいて黙っている。アイリスはクローネに向かって、さらに罵倒するような言葉を続けようとした。ロックは見かねて彼女を止めた。
「なによ! とにかくこれはヴィクトリア号のクルーの問題なので! 部外者は黙っててください」
「だから……」
「べー!」
ロックに向かって舌を出してアイリスは離れた。数メートル先に行き、アイリスは口を尖らせ不満そうにしている。
「チッ! すまねえな。クローネ……」
「いえ……」
慌ててロックはクローネに、謝罪してアイリスを追いかけていった。取り残されたクローネは名残惜しそうにロックに手を伸ばしすぐに引っ込めた。
「悪かったよ。アイリス。機嫌直せよ」
「つーん…… いいわよ。もう…… さっさと行きなさいよ。レース場に!」
腕を組んで悔しそうにロックに叫ぶアイリス。ロックはアイリスのそばから、離れず首を大きく横に振った。
「いいよ。もう行く気なくした。お前と一緒に行くよ」
「なによ…… 今さら」
「ちげえよ。お前に怒られてまで行きたくねえってことだよ。ったく」
恥ずかしさをごまかすように頭をかくロックだった。
「ふん。じゃあ行くわよ」
「ありがとうな」
少し不満そうにアイリスが答えるとロックは笑った。ロックはすぐに振り返った。
「おい! クローネ! 行くぞ。早く来い!」
「はっはい!」
ロックに呼ばれてクローネは二人の後を追いかける。
並んで歩くロックとアイリス、すぐ後ろを歩くクローネだった。
ロックがそっと左手をアイリスに近づけ、すぐに引っ込め首を横に振っていた。
クローネは二人…… ロックの後ろ姿を寂しそうに見つめながら歩くのだった。
翼を広げたヴィクトリアの真下に彼女の影を映す石畳の大きな街道がある、これはリオティネシア平原を東西に横断するグリーンロードだ。グリーンロードは交通の要で、農民や商人、貴族や冒険者など様々な人が街道を行き交っている。
明るい挨拶が街道から聞こえる平原は、どこか牧歌的で穏やかな雰囲気がだたよっている。
ただ、リオティネシア平原の気候は穏やかで雨量も多く、作物がよく育つ豊かな大地だった、肥沃なこの平原を巡っては争いは絶えなかった。
紫海から出たヴィクトリアが平原を一時間ほど飛ぶと、平原を蛇行しながら進む幅二キロはありそうな巨大な川が見えてきた。川に大きな橋がかかり、東西に別れた町が見える。ここが目的地、平原都市サリトールだった。
サリトールの西側と東側は、川にかかるサリトール大橋で結ばれていた。
町を分かつ大河はクロスオーバー川という、この川は南北にリオティネシア西部を縦断し、リオティネシア王国とゲオボルト帝国との国境となっている。
対岸にある町の西側はリオティネシア王国で、唯一のクロスオーバー川を超えた領地なのだ。大河に掛かるサリトール大橋は平原を横断する、リオティネシア街道の始点だ。サリトールはリオティネシアの西方にあり、西方における防衛、貿易、農業の中心の都市である。
町の外れの平原にある、魔導飛空船発着場にヴィクトリアは下りた。口を開け地面へと下を伸ばす。
舌にはアイリス、クローネ、ポロン、コロン、ロックと五人全員が乗っていた。
「到着っと」
アイリスが真っ先に地面へと下りた。すぐクローネがアイリの次に地面へ下り、ロック達は二人に続いて下りる。
魔導飛空船発着場とはいうが、だだっ広い平原に等間隔に、魔導飛空船が係留されているだけだった。
「「キャッ!」」
ロックが下りた直後に強烈な風が吹き抜けた。風はアイリス達のスカートまくりあげた。
スカートの前を押さえる二人、背後に居たロックからは下着が丸見えである。アイリスは飾り気のない白い下着で、クローネはピンク色で透けていた。
「クローネはスケスケだったのだ!!」
「こら! ポロン! だめですよ」
「大きな声で言わないでください……」
舌の上でクローネの下着の形状を叫ぶポロン、慌ててコロンが叱る。クローネは恥ずかしそうにうつむいている。
ロックにも見えていたのか彼の顔は緩んでいた。
「何ニヤニヤしてるのよ! この!」
「いてえ! お前…… っとに!」
「べー!」
「はっ! お前のしか見てねえよ…… あっ!! 知らねえ」
しまったという顔をし、恥ずかしそうに腕を組むロック、アイリスは彼の言葉に顔を真っ赤にしていた。
クローネはなぜかロックを睨みつけている。
ポロンは首をかしげ、コロンの横に立つコロンは三人を見て、ニヤニヤと笑っていた。コロンの顔を見たアイリスは、気をとりなそうと咳払いをする。
「コホン…… 私とクローネさんは他に仕事があるから後をよろしくね。宿はいつものとこよ」
「かしこまりました」
「わかったのだ」
コロンとポロンはアイリスの指示に返事をする。彼らの後ろに居た大きな影がすっと横に移動した。
「じゃあ俺は……」
「ダメ! 私と一緒に来なさい」
ロックが何かをいいかけようとするが、素早くアイリスは彼の上着を捕ま黙らせる。
「まだ何も言ってねえだろう!」
「ここにリオティネシアで一番大きいレース場があるの知ってるんだからね。言うことくらい分かるわよ。だからダメ」
厳しい表情をするアイリス、彼女の言う通りこの町はリオティネシア王国で最大の魔物レース場がある。この事を知ってれば、ロックが去ってどこへ行こうと思ってるのか、アイリスでなくても予想は容易である。
アイリスは右手を上に向けロックの前に差し出した。
「まぁ。サウザーで勝った分を私に差し出すっていうなら行ってもいいわよ」
「クソ! わかったよ……」
サウザーで勝った金を元手にレースに興じようとしたロック、種銭を没収されてレース場に行っても意味はない。
ロックは悔しそうにして、渋々と二人に付いていくのだった。
町は入り口から、リオティネシア街道を中心に放射状に綺麗に整備され、白い壁に色とりどりの屋根を持つ木造の建物の綺麗な街並みが続く。
特に町の中心にあるリオティネシア街道は、脇には街路樹が整備され、大きな馬車二台が並んで通れるほど広く、宿屋や商店が並んでおりたくさんの人が行き交っていた。
「どうせ…… ここも俺達はしきたりでダメだとかで追い出されるんだろ…… だったら行かなくても……」
歩きながら不満をいうロックに、前を歩くアイリスは呆れた顔をする。
「うるさいわね。さっきからブツブツ! 往生際が悪いわね!」
アイリスが振り向いてロックを叱りつけた。ロックは発着場から町の中に入るまでグチグチいっており、町に入ってもまだ言っているので、アイリスは彼のしつこさにうんざりとしていた。
子供のように口を尖らせて不満そうにするロックだった。ロックを見たアイリスの横に並んでいたクローネが、思わず二人のやり取りに口をはさむ。
「アイリスさんはロックさんに少し厳しいのでは?」
「さすがお姫様はわかってるな」
クローネの言葉に即座に反応し、嬉しそうにうなずくロック。アイリスはクローネに向かって首を大きく横を振る。
「ううん。ロックはこれくらい厳しくしないとすぐに仕事をサボるんですからダメです」
「でっでも…… もう少し彼のことを考えてあげても……」
「そうだ! そうだ! 考えろ!」
ロックは右手を突き上げ、クローネに同調した彼をアイリスがにらみつける。アイリスに睨まれてロックは、まずいと思ったのかすぐに手を下ろした。
「クローネさん。余計なことを言わないでくれますか! ロックが調子に乗るんで」
「よっ余計って…… 私はそんなるもりは…… ただ彼に…… もっと……」
珍しくクローネに向かって、アイリスは少し強めに注意した。クローネは目をうるませて、ロックの顔を見つめる。彼女の目から慈しみのような感情がロックに向けられている。
アイリスはロックを見る、クローネの目に言いようもない不安とざわつきを覚えていた。
「だいたいロックの事をよく知りもしないで…… 私の苦労とかわかってます? あなたみたいにお金になんの心配もないお気楽な立場と違うんです」
「おっおい! さすがに言い過ぎだろ」
クローネはアイリスの言葉にうつむいて黙っている。アイリスはクローネに向かって、さらに罵倒するような言葉を続けようとした。ロックは見かねて彼女を止めた。
「なによ! とにかくこれはヴィクトリア号のクルーの問題なので! 部外者は黙っててください」
「だから……」
「べー!」
ロックに向かって舌を出してアイリスは離れた。数メートル先に行き、アイリスは口を尖らせ不満そうにしている。
「チッ! すまねえな。クローネ……」
「いえ……」
慌ててロックはクローネに、謝罪してアイリスを追いかけていった。取り残されたクローネは名残惜しそうにロックに手を伸ばしすぐに引っ込めた。
「悪かったよ。アイリス。機嫌直せよ」
「つーん…… いいわよ。もう…… さっさと行きなさいよ。レース場に!」
腕を組んで悔しそうにロックに叫ぶアイリス。ロックはアイリスのそばから、離れず首を大きく横に振った。
「いいよ。もう行く気なくした。お前と一緒に行くよ」
「なによ…… 今さら」
「ちげえよ。お前に怒られてまで行きたくねえってことだよ。ったく」
恥ずかしさをごまかすように頭をかくロックだった。
「ふん。じゃあ行くわよ」
「ありがとうな」
少し不満そうにアイリスが答えるとロックは笑った。ロックはすぐに振り返った。
「おい! クローネ! 行くぞ。早く来い!」
「はっはい!」
ロックに呼ばれてクローネは二人の後を追いかける。
並んで歩くロックとアイリス、すぐ後ろを歩くクローネだった。
ロックがそっと左手をアイリスに近づけ、すぐに引っ込め首を横に振っていた。
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