ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~
第22話 格の違い
シロップの体が紫色へと変わり、巨大化し二メートルを超える大男に変わった。体つきも代わり太く筋肉が盛り上がり、シャツの袖や足の裾が破り弾けた。
「ふぅ…… 力だ! 力が湧き上がってくる」
シロップが軽く息をはいた。彼が吐き出していた紫の息が一瞬濃くなってすぐに止まる。変化した自分の体を見つめ、シロップは満足そうに声をあげていた。
怯えた表情をするクローネ、ミリンも動揺し腰が抜け尻もちをついている。アイリスとロックは真顔でシロップを見つめている。
「はっ! でかくなったってミノタウロスの半分くらいじゃねえか」
ロックは鼻で笑い走り出した。周囲に浮かんでいた武器もロックについて動く。
走りながらロックは左腕を前につきだす。ロックの周囲に浮かんでいた斧や剣など武器が、彼を勢いよくシロップへと向かって飛んでいく。
「体のサイズの問題じゃないんだよ」
右手を開いて前に出すシロップ、ロックが飛ばした武器が彼の直前でブレーキがかかった車のように前のめりなって止まった。
ロックは驚いて立ち止まった。
「なっ!? 俺から武器を奪っただと!?」
シロップが右手を引き、もう一度前に突き出した。止まっていた武器が反転し今度はロックの前に飛んでいく。
「チッ!」
ロックは意識を集中させ杖を自分の体の前へと持ってくる。
杖の前に四角いオレンジ色の障壁が彼を覆うように現れた。武器はロックが展開した魔法障壁にあたり止まる。
「終わりじゃないぞ!」
シロップは両手を高く突き上げた。地下神殿に散らばっていた武器のすべてが彼の手に反応して浮かび上がった。武器達は飛んでシロップの手の上へと集まっていく。剣、斧、槍、矢など数百はあろうかとう武器がシロップの手の上に並んだ。
数百の武器の刃先が並ぶ姿にクローネとミリンは圧倒され言葉を失っていた。
「いくらでも来い! お前の魔力じゃ俺の障壁は破れない」
口元を緩ませロックは静かに右手を上げ、中指と人差し指を前後に動かして挑発した。
「フッ! どうかな」
シロップの口元がにやける。ロックはチラッと横目で後ろに居る三人を見た。ロックとアイリスの目があった。
「ミリンさん。こっちへ」
「へっ!?」
アイリスはミリンを手招きして呼ぶ。しかし、アイリスがなぜ自分を呼んだのか理解できずに、動けないミリンだった。
「いいからこっちに来てください」
すぐにあり椅子はミリンの元へかけていき、強引に手を引っ張ってクローネの元へと連れて行く。
「はああああ!!!」
シロップが両手を下ろした、武器が一斉にロックに向かって飛んでいく。ロックは杖を強く握り意識を集中させる。
だが…… ロックの横や上を武器達が通り過ぎていいく。武器は一直線にクローネへと向かっていくのだった。
迫ってくる武器にクローネは、腰を抜かしてしまい立ち上がれなくなった。それでも逃げようと手を使い後退りしようとする。
しかし、クローネの肩を後ろから誰かが押さえて止めた。勢いよくクローネは後ろを向く。クローネの目に背後に居たアイリスが優しく微笑んでいる姿が見えた。
「動かないで! 大丈夫だから」
「へっ!?」
顔を上げ前に目を向けるアイリスに釣られクローネが正面を向いた。床に刺さっていたロックの剣が、ぼんやりと青く薄く光り、勝手に床から抜けて飛び上がった。剣は回転しながら一瞬で移動し、次々と飛んでくる武器をはたき落とす。
飛ばされた武器は天井や床や柱に刺さっていく。クローネは目の前で起きたことが信じらずに小さく言葉をつぶやくしかなかった。
「すごい……」
「ねぇ。大丈夫だってでしょ?」
クローネのつぶやきに、アイリスは誇らしげにうなずくのだった。
シロップが飛ばした武器はあっという間に全てロックの剣に弾かれ、ミリン、アイリス、クローネの三人は傷の一つもつけられなかった。剣は静かにクローネの前へと戻り、彼女を守るように剣先をシロップに向け浮かんでいる。
「なっ!? なぜだ……」
「当たり前だ! 俺とお前じゃ格が違うんだよ」
眉間にシワを寄せロックを睨みつけシロップ、悔しそうに肩を震わせてうつむいた。ロックは杖を握りしめ、ゆっくりと前に一歩踏みだした。しかし、その直後……
「クソがああああああああああああああああ!!!」
叫び声をあげたシロップ! 両手を突き上げた。弾き返された武器達がまた浮かび上がる。さらに今度はミノタウロスが破壊した壁の瓦礫も一緒に浮かび上がる
「しねええええええええええええええええええ!!!」
両手を勢いよく振り下ろすシロップ、一斉に瓦礫と武器がロックへと向かっていく。
「チッ!」
飛んでくる武器や瓦礫をロックは、障壁で弾いたり体をそらしてかわし防ぐ。しかし、ひっきりなしに飛んでくる武器や瓦礫をかわす、ロックに余裕はなく、彼はシロップの攻撃に明らかに押されていた。
「シロップ…… ねぇ。ロックは大丈夫なの?」
押されているロックを見た、ミリンはアイリスに声をかける。
「そうですねぇ。さっきグレイトグレイシアを使ったから少し疲れてるかも知れませんね」
「何をのんきなこと言ってるの! 助けないと!」
首をかしげて答えるアイリスにミリンが激しく叫ぶ。だが、必死なミリンと違いアイリスは特に心配はしていないようだった。
彼女は顎を右手の親指と、人差し指でつまみようしてに少し考える。
「うーん。ロックー! なんか必要なのある?」
いいアイディアが浮かばなかったのかアイリスは、ロックに声をかけた。必死な様子の彼にのんきに声をかける、アイリスの行動にミリンは口を開いて唖然とする。
「えっ!? あぁ!! じゃあ、あれをあれであれしてくれ! おっと!」
飛んできた瓦礫を、杖の障壁で防ぐ、ロックの横を剣が通りすぎ頬が少し切れた。ロックは必死なのかもしれないが、アイリスに送った指示の内容はほとんどあれとしか言っていない。
だが……
「わかったー」
笑顔で返事をしたアイリスは鞄を開けて手をつっこむ。彼女の行動にミリンが思わず声をあげた。
「はぁ!? あなた今のでわかるの?」
「えっ!? はい。なんとなく理解ですけどね。まぁあいつとは長い付き合いだからねぇ」
そう言うとアイリスは、鞄からボルト入った筒を取り出した。
クローネの元へと駆けていき、剣の鍔の部分にボルトが入った、筒のベルトをかける。
「ロックー! 用意したよー」
両手を振ってロックに声をかけるアイリス。彼は武器や瓦礫を防いでおり余裕がなく、前をむきながら小さくうなずき返事はしなかった。右手を前に出す。剣が飛んでいき、同時に筒に入っていた二十本のボルトが飛び出し、剣の周りを一緒に飛ぶ。ロックに近づくと剣とボルトが離れ、剣は回転しながらロックの周囲の武器を弾く。ボルトはロックの周囲を漂っている。
剣でロックの周囲の武器や瓦礫はなくなったが、数百はある武器や瓦礫は次々にロックを襲ってくる。襲いかかる武器に向かって、ロックの周囲に漂っていたボルトの一本が飛んでいった。
ボルトの先端が青く強く輝く。地下神殿にコールドテンペストが放たれ、大きな風が巻き起こった。風は渦を巻き、徐々に大きくなり、冷たい空気をロックに襲いかかってきてた武器に吹き付けた。
武器や瓦礫は白く氷つき地面に次々に落ちていった。目の前が白く積もった瓦礫と武器を見て、ロックは小さく息を吐く。
「ふぅ…… アイリス! 助かった。ありがとうな」
「いいのよ」
振り向いて笑顔を見せるロックに、アイリスは嬉しそうに答える。
「馬鹿な…… 僕の力が……」
氷ついた武器や瓦礫が落ち、雪原のようになった床を見て呆然とするシロップ。ロックは左手に持った杖を彼に向けた。
「さぁ。見せてやるよ。魔法使いとしての格の違いってやつを!」
「うっ!? クソがああああああああああああああああ!!!」
叫びながらロックに向かってシロップが走り出した。走りながらシロップは、拳を握り振り上げる。シロップに向かってボルトが一斉に向かっていく。シロップは飛んでくるボルトを見て笑って立ち止まった。
「馬鹿だな! ロックよ!」
握っていた拳を開いて飛んでくるボルトに向かって突き出した。
彼はボルトの操作をロックから奪おうとしたのだ。だが……
「なっなぜだ!? なぜ僕の言う通りに……」
武器と違ってボルトは一直線にシロップへと向かってきた。驚き泳ぐ視線で、飛んでくるボルトを見るシロップ、その姿を見たロックは静かに笑う。
「俺が作った物を他の魔法使いが操作できるわけないだろ?」
ロックは右手で流れる頬の血を拭う。飛んでいった全てのボルトが青く光る。右手をつきだしたままのシロップをボルトが囲んだ。
しかし、シロップは天井に向かって飛び上がった。彼の周りにボルトはあるが上空にはない。
「ははっ! 囲んだくらいで勝てると思ったか!」
笑いながら拳を握って振り上げたシロップ、ロックの右手を顔の横に持っていき、人指し指を立ててシロップが飛んだ方へ向けた。
「そうですか…… 残念だったな」
余裕の笑みを浮かべるロック、ひんやりとした冷たい空気がシロップに吹き付ける。慌ててシロップが顔を上にむけた、彼の表情が青ざめ生気が抜けていく。シロップの視界に青く力強く光るボルトが見えた。ロックはわざと上を空けたように見せ、タイミングをずらしてボルトを上に飛ばしたのだった。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
コールドテンペストがはなたれた。上から冷気を吹き付けられたシロップは床に叩き付けられた。直後に残っていたボルトが彼へ向かって飛んでいき、同じようにコールドテンペストの解き放つ。
「クッ」
倒れたままで何重にも白く凍りついていくシロップ、その光景にミリンは思わず目を背けた。敵対していたといえやはり姉弟が、無惨な姿をさらすのに耐えきれなかったようだ。
数分後…… コールドテンペストの起こした風がおさまり地下神殿は静寂を取り戻した。ロックはシロップに向かっていく。
「あれだけコールドテンペストをくらっても生きてるのか。あの宝石の力は本物なのか」
うつ伏せに倒れたまま、白く凍りついていたシロップの指先がかすかに動いた。何重にも白く凍りつかせた、シロップの体が端から少しずつ紫色へと戻っていく。ロックは静かにシロップに近づきながら、右手を開く彼の手に剣が握られる。
「なっなんで…… 僕は…… 僕は…… グルドジア族の族長になって…… この町を……」
意識が戻ったのか、顔をあげたシロップが、悔しそうにつぶやく。ロックはシロップを見下ろしながら彼に声をかける。
「良いことを教えてやる。リーダーになれるやつってのは自然と人から慕われるもんだ」
「うっ……」
首を横にわずかに動かし、悔しそうな声をあげるシロップ。
「俺と違ってな……」
ロックはそう言って笑う、右腕をひきシロップの背中に剣先を向けた。
「待って! ダメ!!」
ミリンがかけてきて滑り込むようにしてシロップに覆いかぶさり庇う。
「どうして止める。お前や俺を殺そうとしたんだぞ。まさか弟だから許してとか言わないよな?」
ロックの言葉に彼をみながらミリンが叫ぶ。
「違うわ。ここはあたし達の町! 彼はあたし達のルールで裁かれるべきよ」
ミリンの訴えを聞いたロックは困った顔をし振り返った。クローネとロックが顔を合わせる。彼は依頼人であるクローネに、シロップをどうするか判断を委ねたのだ。
「ロックさん。お願いします。彼女の言う通りに……」
クローネは静かに頭をさげた。ロックはミリンに顔を向け剣から手をはなす。彼の剣が背中におさまる。
「ふん。わかったよ。お前の好きにしろ。ただし拘束はさせてもらって次に抵抗したら容赦しない」
「もちろんよ。任せて」
うなずいたミリン、彼女はシロップを縄で縛って拘束するのだった。ロック達のミノタウロス討伐は終わりを迎えた。
「ふぅ…… 力だ! 力が湧き上がってくる」
シロップが軽く息をはいた。彼が吐き出していた紫の息が一瞬濃くなってすぐに止まる。変化した自分の体を見つめ、シロップは満足そうに声をあげていた。
怯えた表情をするクローネ、ミリンも動揺し腰が抜け尻もちをついている。アイリスとロックは真顔でシロップを見つめている。
「はっ! でかくなったってミノタウロスの半分くらいじゃねえか」
ロックは鼻で笑い走り出した。周囲に浮かんでいた武器もロックについて動く。
走りながらロックは左腕を前につきだす。ロックの周囲に浮かんでいた斧や剣など武器が、彼を勢いよくシロップへと向かって飛んでいく。
「体のサイズの問題じゃないんだよ」
右手を開いて前に出すシロップ、ロックが飛ばした武器が彼の直前でブレーキがかかった車のように前のめりなって止まった。
ロックは驚いて立ち止まった。
「なっ!? 俺から武器を奪っただと!?」
シロップが右手を引き、もう一度前に突き出した。止まっていた武器が反転し今度はロックの前に飛んでいく。
「チッ!」
ロックは意識を集中させ杖を自分の体の前へと持ってくる。
杖の前に四角いオレンジ色の障壁が彼を覆うように現れた。武器はロックが展開した魔法障壁にあたり止まる。
「終わりじゃないぞ!」
シロップは両手を高く突き上げた。地下神殿に散らばっていた武器のすべてが彼の手に反応して浮かび上がった。武器達は飛んでシロップの手の上へと集まっていく。剣、斧、槍、矢など数百はあろうかとう武器がシロップの手の上に並んだ。
数百の武器の刃先が並ぶ姿にクローネとミリンは圧倒され言葉を失っていた。
「いくらでも来い! お前の魔力じゃ俺の障壁は破れない」
口元を緩ませロックは静かに右手を上げ、中指と人差し指を前後に動かして挑発した。
「フッ! どうかな」
シロップの口元がにやける。ロックはチラッと横目で後ろに居る三人を見た。ロックとアイリスの目があった。
「ミリンさん。こっちへ」
「へっ!?」
アイリスはミリンを手招きして呼ぶ。しかし、アイリスがなぜ自分を呼んだのか理解できずに、動けないミリンだった。
「いいからこっちに来てください」
すぐにあり椅子はミリンの元へかけていき、強引に手を引っ張ってクローネの元へと連れて行く。
「はああああ!!!」
シロップが両手を下ろした、武器が一斉にロックに向かって飛んでいく。ロックは杖を強く握り意識を集中させる。
だが…… ロックの横や上を武器達が通り過ぎていいく。武器は一直線にクローネへと向かっていくのだった。
迫ってくる武器にクローネは、腰を抜かしてしまい立ち上がれなくなった。それでも逃げようと手を使い後退りしようとする。
しかし、クローネの肩を後ろから誰かが押さえて止めた。勢いよくクローネは後ろを向く。クローネの目に背後に居たアイリスが優しく微笑んでいる姿が見えた。
「動かないで! 大丈夫だから」
「へっ!?」
顔を上げ前に目を向けるアイリスに釣られクローネが正面を向いた。床に刺さっていたロックの剣が、ぼんやりと青く薄く光り、勝手に床から抜けて飛び上がった。剣は回転しながら一瞬で移動し、次々と飛んでくる武器をはたき落とす。
飛ばされた武器は天井や床や柱に刺さっていく。クローネは目の前で起きたことが信じらずに小さく言葉をつぶやくしかなかった。
「すごい……」
「ねぇ。大丈夫だってでしょ?」
クローネのつぶやきに、アイリスは誇らしげにうなずくのだった。
シロップが飛ばした武器はあっという間に全てロックの剣に弾かれ、ミリン、アイリス、クローネの三人は傷の一つもつけられなかった。剣は静かにクローネの前へと戻り、彼女を守るように剣先をシロップに向け浮かんでいる。
「なっ!? なぜだ……」
「当たり前だ! 俺とお前じゃ格が違うんだよ」
眉間にシワを寄せロックを睨みつけシロップ、悔しそうに肩を震わせてうつむいた。ロックは杖を握りしめ、ゆっくりと前に一歩踏みだした。しかし、その直後……
「クソがああああああああああああああああ!!!」
叫び声をあげたシロップ! 両手を突き上げた。弾き返された武器達がまた浮かび上がる。さらに今度はミノタウロスが破壊した壁の瓦礫も一緒に浮かび上がる
「しねええええええええええええええええええ!!!」
両手を勢いよく振り下ろすシロップ、一斉に瓦礫と武器がロックへと向かっていく。
「チッ!」
飛んでくる武器や瓦礫をロックは、障壁で弾いたり体をそらしてかわし防ぐ。しかし、ひっきりなしに飛んでくる武器や瓦礫をかわす、ロックに余裕はなく、彼はシロップの攻撃に明らかに押されていた。
「シロップ…… ねぇ。ロックは大丈夫なの?」
押されているロックを見た、ミリンはアイリスに声をかける。
「そうですねぇ。さっきグレイトグレイシアを使ったから少し疲れてるかも知れませんね」
「何をのんきなこと言ってるの! 助けないと!」
首をかしげて答えるアイリスにミリンが激しく叫ぶ。だが、必死なミリンと違いアイリスは特に心配はしていないようだった。
彼女は顎を右手の親指と、人差し指でつまみようしてに少し考える。
「うーん。ロックー! なんか必要なのある?」
いいアイディアが浮かばなかったのかアイリスは、ロックに声をかけた。必死な様子の彼にのんきに声をかける、アイリスの行動にミリンは口を開いて唖然とする。
「えっ!? あぁ!! じゃあ、あれをあれであれしてくれ! おっと!」
飛んできた瓦礫を、杖の障壁で防ぐ、ロックの横を剣が通りすぎ頬が少し切れた。ロックは必死なのかもしれないが、アイリスに送った指示の内容はほとんどあれとしか言っていない。
だが……
「わかったー」
笑顔で返事をしたアイリスは鞄を開けて手をつっこむ。彼女の行動にミリンが思わず声をあげた。
「はぁ!? あなた今のでわかるの?」
「えっ!? はい。なんとなく理解ですけどね。まぁあいつとは長い付き合いだからねぇ」
そう言うとアイリスは、鞄からボルト入った筒を取り出した。
クローネの元へと駆けていき、剣の鍔の部分にボルトが入った、筒のベルトをかける。
「ロックー! 用意したよー」
両手を振ってロックに声をかけるアイリス。彼は武器や瓦礫を防いでおり余裕がなく、前をむきながら小さくうなずき返事はしなかった。右手を前に出す。剣が飛んでいき、同時に筒に入っていた二十本のボルトが飛び出し、剣の周りを一緒に飛ぶ。ロックに近づくと剣とボルトが離れ、剣は回転しながらロックの周囲の武器を弾く。ボルトはロックの周囲を漂っている。
剣でロックの周囲の武器や瓦礫はなくなったが、数百はある武器や瓦礫は次々にロックを襲ってくる。襲いかかる武器に向かって、ロックの周囲に漂っていたボルトの一本が飛んでいった。
ボルトの先端が青く強く輝く。地下神殿にコールドテンペストが放たれ、大きな風が巻き起こった。風は渦を巻き、徐々に大きくなり、冷たい空気をロックに襲いかかってきてた武器に吹き付けた。
武器や瓦礫は白く氷つき地面に次々に落ちていった。目の前が白く積もった瓦礫と武器を見て、ロックは小さく息を吐く。
「ふぅ…… アイリス! 助かった。ありがとうな」
「いいのよ」
振り向いて笑顔を見せるロックに、アイリスは嬉しそうに答える。
「馬鹿な…… 僕の力が……」
氷ついた武器や瓦礫が落ち、雪原のようになった床を見て呆然とするシロップ。ロックは左手に持った杖を彼に向けた。
「さぁ。見せてやるよ。魔法使いとしての格の違いってやつを!」
「うっ!? クソがああああああああああああああああ!!!」
叫びながらロックに向かってシロップが走り出した。走りながらシロップは、拳を握り振り上げる。シロップに向かってボルトが一斉に向かっていく。シロップは飛んでくるボルトを見て笑って立ち止まった。
「馬鹿だな! ロックよ!」
握っていた拳を開いて飛んでくるボルトに向かって突き出した。
彼はボルトの操作をロックから奪おうとしたのだ。だが……
「なっなぜだ!? なぜ僕の言う通りに……」
武器と違ってボルトは一直線にシロップへと向かってきた。驚き泳ぐ視線で、飛んでくるボルトを見るシロップ、その姿を見たロックは静かに笑う。
「俺が作った物を他の魔法使いが操作できるわけないだろ?」
ロックは右手で流れる頬の血を拭う。飛んでいった全てのボルトが青く光る。右手をつきだしたままのシロップをボルトが囲んだ。
しかし、シロップは天井に向かって飛び上がった。彼の周りにボルトはあるが上空にはない。
「ははっ! 囲んだくらいで勝てると思ったか!」
笑いながら拳を握って振り上げたシロップ、ロックの右手を顔の横に持っていき、人指し指を立ててシロップが飛んだ方へ向けた。
「そうですか…… 残念だったな」
余裕の笑みを浮かべるロック、ひんやりとした冷たい空気がシロップに吹き付ける。慌ててシロップが顔を上にむけた、彼の表情が青ざめ生気が抜けていく。シロップの視界に青く力強く光るボルトが見えた。ロックはわざと上を空けたように見せ、タイミングをずらしてボルトを上に飛ばしたのだった。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
コールドテンペストがはなたれた。上から冷気を吹き付けられたシロップは床に叩き付けられた。直後に残っていたボルトが彼へ向かって飛んでいき、同じようにコールドテンペストの解き放つ。
「クッ」
倒れたままで何重にも白く凍りついていくシロップ、その光景にミリンは思わず目を背けた。敵対していたといえやはり姉弟が、無惨な姿をさらすのに耐えきれなかったようだ。
数分後…… コールドテンペストの起こした風がおさまり地下神殿は静寂を取り戻した。ロックはシロップに向かっていく。
「あれだけコールドテンペストをくらっても生きてるのか。あの宝石の力は本物なのか」
うつ伏せに倒れたまま、白く凍りついていたシロップの指先がかすかに動いた。何重にも白く凍りつかせた、シロップの体が端から少しずつ紫色へと戻っていく。ロックは静かにシロップに近づきながら、右手を開く彼の手に剣が握られる。
「なっなんで…… 僕は…… 僕は…… グルドジア族の族長になって…… この町を……」
意識が戻ったのか、顔をあげたシロップが、悔しそうにつぶやく。ロックはシロップを見下ろしながら彼に声をかける。
「良いことを教えてやる。リーダーになれるやつってのは自然と人から慕われるもんだ」
「うっ……」
首を横にわずかに動かし、悔しそうな声をあげるシロップ。
「俺と違ってな……」
ロックはそう言って笑う、右腕をひきシロップの背中に剣先を向けた。
「待って! ダメ!!」
ミリンがかけてきて滑り込むようにしてシロップに覆いかぶさり庇う。
「どうして止める。お前や俺を殺そうとしたんだぞ。まさか弟だから許してとか言わないよな?」
ロックの言葉に彼をみながらミリンが叫ぶ。
「違うわ。ここはあたし達の町! 彼はあたし達のルールで裁かれるべきよ」
ミリンの訴えを聞いたロックは困った顔をし振り返った。クローネとロックが顔を合わせる。彼は依頼人であるクローネに、シロップをどうするか判断を委ねたのだ。
「ロックさん。お願いします。彼女の言う通りに……」
クローネは静かに頭をさげた。ロックはミリンに顔を向け剣から手をはなす。彼の剣が背中におさまる。
「ふん。わかったよ。お前の好きにしろ。ただし拘束はさせてもらって次に抵抗したら容赦しない」
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