ドラゴンシップ麗しのヴィクトリア号の記録 ~美少女船長はギャンブル狂の最強魔法剣士を使役する~
第19話 助けてやりますか
ミノタウロスの左肩を白い光が貫いた。同時に泉の温水に温められ、かつミノタウロスと遭遇し興奮気味だったはずの、クローネの体に寒風が吹付け凍える。
地下神殿に冷気が一気に広がっていっていく。肩からミノタウロスは徐々に白く凍りついていく。顔ゆがませてミノタウロスは苦しんでいるように見えた。クローネはミノタウロスから視線が外せずにいた。
「今のは…… いったい…… ボウガンの矢が…… 光りだして」
何が起きたのかわからず驚いてつぶやくクローネだった。
「アイスキャノンです! 水の上位魔法ですね」
「えっ!? アイリスさんも魔法が使えるんですか?」
「使えませんよ」
困惑した表情を浮かべるクローネ、ボウガンを右手に持って上にむけ、得意げな顔のアイリスが答える。
「私がつくった。魔弾ボウガンです。ボルトの刃の部分が魔石で出来てて魔法が込められてるんです」
「はぁ……」
アイリスが使うボウガンは魔弾ボウガンという名前の特殊なボウガンだ。魔弾ボウガンの専用のボルトには、先端に魔法が埋め込められた魔石が使用されており、ボルトを撃つと魔法が発動するのだ。
ボウガンの仕様が、魔法を使えなくても、魔法をはなてる便利な武器だ。今は攻撃用のボルトしか持っていないが、攻撃の他に回復やスピードや力などをあげるボルトもある。
ちなみに本体は魔法に耐えるために、神樹という鉄より硬い木で出来ており、また、弦は魔力を使って砂を泳ぐ、デザートクジラの髭を使っている。この髭を材料にすることで、発射するさいに魔力を一時的に増幅させ威力を増している。
「これで少しは時間が稼げるな」
ロックはミノタウロスの姿を見てつぶやいた。左手に持っていた杖から、手をはなしアイリスの方を向く、彼の杖は背中に勝手におさまった。
「アイリス! すぐに逃げるぞ。準備しろ!」
「わかったわ」
うなずいたアイリスはボウガンを右肩にかける。二人はクローネの元へと向かった。アイリスはクローネのすぐ横に倒れていた、ミリンの右腕を肩にかけ起こそうとする。
「クローネさん。そっちの肩を持ってください!」
「えっ!?」
「早く!!」
ミリンの肩をモテと言われて、戸惑った様子のクローネ、アイリスは厳しい口調で催促する。クローネは彼女の指示に従い、ミリンの左腕を持って自分の肩にかける。
「でも、ミノタウロスはもう……」
不思議そうにつぶやくクローネ。アイリスのはなったボウガンで、ミノタウロスが凍りつくと思っているようだ。
だが、ロックは首を大きく横に振り、彼女の考えを即座に否定する。
「いや。あいつにとっちゃ、あんなの蚊に指されたみてえなもんだ。さっさと行くぞ!」
「えっ!?」
ロックがアイリスの右手をつかんだ。直後にクローネの視界が変わった。ロックの魔法で、四人は地下神殿の扉の前に移動していた。閉じていた扉をロックが急いで開けた。ロックはミリンをアイリスに声をかける
「そこで鍵をかけとけよ。十分でかたつけてやるからな」
「うん。ミリンさんを起こしたら手助けするからね」
ニッコリと笑って答えるアイリス、ロックは不服そうにつぶやく。
「好きにしろ……」
大きくうなずくアイリスだった。ロックは黙って真顔で扉を閉めた。音がして扉が閉じられると、すぐにアイリスはクローネを呼ぶ。
「クローネさん! 扉に鍵をかけて」
「えっ!? はっはい!」
アイリスの指示でクローネは、一旦ミリンの腕を外して巫女からもらった、神殿の鍵で扉を閉めた。
音がして鍵穴に指した鍵をもつ彼女の手にかすかな振動が伝わる。鍵を抜いたクローネは両手で鍵を持って扉を見つめる。
「ロックさん…… いいんでしょうか? 彼一人にまかせて」
振り向いてアイリスに問いかけるクローネだった。
「大丈夫ですよ。ロックは強いですからね!」
クローネの問にアイリスは即座に胸を張って答えた。アイリスの言葉には迷いなく力がこもり、その言葉からロックに対する強い信頼がうかがえる。
「でも…… 少しだけいつもより余裕がないみたいですね。だからすぐにミリンさんを起こして助けに行ってやりますか」
「えっ!?」
ニッコリと微笑んだアイリスはミリンの腕を肩から外し床に寝かせた。横たわったミリンの顔の近くに座った、アイリスは肩から鞄に手を突っ込んだ。
「気絶してる人には…… やっぱ! これよ!」
鞄から手をだしたアイリス、彼女の手には細長い小さな瓶が握られている。小さな瓶の中身は液体で、燃えるような、真っ赤な色をして泡立っている。アイリスが蓋を開けると泡立つ瓶の液体から、わずかな煙が立ちのぼっていく。クローネはアイリスが持っている瓶を見て若干ひいていた。
「なんか…… すごい色してますけど…… しかも煙が……」
「大丈夫ですよ。ロック特製の気付け薬です。彼女の口を開けてもらっていいですか?」
「はっはぁ……」
クローネは少し躊躇したが、アイリスの指示通りミリンの口を開き鼻に手をあてた。
ちなみにこの瓶の中身は気付け薬として名高い、カエン草、イワシミズダケ、ファイン花をすりつぶしたものに、辛い辛いスペシャルペッパーと水をまぜたものだ。
開いた口にアイリスはどこか嬉しそうに、にっこりと微笑ながら瓶の中身を注ぎこむのだった。瓶の口から、少しとろみのついた液体が、ミリンの口に注がれた。口に薬が注がれてすぐ……
「がっ!?」
目を見開いてミリンが体を起こした。慌ててアイリスは瓶を口から遠ざけて、クローネはびっくりして押さえていた手をはなす。
ミリンは苦しそうに喉を押さえ、口をパクパクさせている。どうやら声がうまくでないようだ。彼女は顔をアイリス達に向ける。
「ほら目覚めたでしょ」
得意げな表情でクローネに話しかけるアイリスだった。クローネはミリンを見ながら心配そうにしている。
「でも…… すごく苦しそうですよ……」
「大丈夫。水を飲ませば落ち着きます。しばらく目と鼻は痛いですけね」
「はぁ……」
呆れた表情をするクローネ、アイリスは鞄から水筒を取り出してミリンの前に差し出すのだった。
神殿の中ではロックが、ミノタウロスに向かって歩いていく。
ミノタウロスはアイリスのボウガンを腕、左肩から左腕の先まで凍りついていた。歩きながら両手を開いて、両腕の肘から前だけを軽く横に開くロック。背負っていた剣と杖が浮かびあがり、右手に剣、左手に杖がおさまる。
「うがああああああああああああああああああああああああ!」
近づくロックを見たミノタウロスが叫び声をあげた。ミノタウロスの左手にまとわりついてた氷が砕けた。
ロックの目の前を砕けた氷が宙を舞い、キラキラと光りを放っている。その向こうでミノタウロスが見せつけるように左腕を曲げている。
「やっぱりあの程度じゃあ死なねえよな」
笑ってロックは足を曲げて腰を落とし、左手を前にだし杖の先端を、ミノタウロスに向け構えるのだった。ミノタウロスは右手に持った、棍棒を左手に軽く打ち付けながら横に動いていく。息をする度にミノタウロスの口の端から紫の霧が漏れている。
ロックはミノタウロスの動きに、合わせて体の向きを変えていく。ミノタウロスの棍棒の動きが止まった。一瞬の静寂が地下神殿に訪れ、ミノタウロスとロックの間の空気が張り詰める。
「うがああ!!」
叫び声をあげ走り出すミノタウロス、大きな腕を振り上げミノタウロスだった。ロックにめがけて勢いよく棍棒が振り下ろされる。
ロックは杖の先端を棍棒に向けた。棍棒はロックの魔法障壁に阻まれた。ミノタウロスの振り下ろされた棍棒の衝撃で、ロックの周囲の地面が直径一メートルほどドーム状に数十センチ沈む。
「チッ!」
薄いオレンジの光の魔法衝撃が棍棒を中心にひび割れていく。ロックが意識を杖に集中させ魔力を魔法障壁へと送り込むと、ひび割れがゆっくりと消えていく。
「……」
真顔のロックが視線を自身の右上に移動させる。ミノタウロスは左手の拳を握ってロックに向けて突き出した。音がしてロックが居た場所の床にミノタウロスの拳がめり込んだ。衝撃で地下神殿が少し揺れ砂埃が天井から落ちる。ミノタウロスは首をかしげる。
「惜しかったな!」
ロックの声がした。ミノタウロスの背中に後ろにロックは浮かんでいた。持っていた剣でミノタウロスの背中を切りつけた。ロックの剣はミノタウロスの背中を斜めに切りつけた。
「うがあああ!!」
身をのけぞり鳴き声をあげるミノタウロス、すぐに背後を向いて棍棒でロックを叩こうする。だが、ロックの体はすぐに消えた。ブンと音がして棍棒が空を切った。
悔しそうな表情でミノタウロスは、棍棒を持つ手に力を込めた。
ロックは神殿の奥にあった祭壇の手前に移動していた。ミノタウロスが必死に自分を探す背中を見つめている。
「強いな…… 少し想定外だ。あれを使うか…… でもその前に」
つぶやいたロックは大きく息を吸い込んだ。
「おい! こっちだ」
ロックがミノタウロスに叫んだ。ミノタウロスが彼の声に反応した。大きな巨体がゆっくりとロックの方に向く。ロックは笑って右手を前に出した。
「ほらほら!」
「ブフーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
右手を横にして、人差し指を前後に動かし来いよとアピールするロック、挑発されたミノタウロスはロックを睨みつけて鼻息が荒い。直後にミノタウロスが走り出した。ロックはミノタウロスが走り出すと笑う。彼はアイリスがいる扉から少しでも遠くにミノタウロスを誘導したかったのだ。
走って向かってくるミノタウロスが神殿の中ほどに差し掛かる。真ん中で倒れているシロップとクプをミノタウロスがまたいで超える。
「ちょっと! 開けなさいよ! グス!」
入り口の扉が叩かれミリンの声が響く。泣いているのか何かをすするような音が途中ではさまる。
「バカが…… てっいうか起きるの早くねえか…… あっ! そうか! アイリスめ。あの薬を使いやがったな」
ロックは首をかしげて眉間にシワを寄せる。ミノタウロスがミリンの声に反応して止まった。
「わっ!? ダメです!」
「うるさいわね。中にはシロップが居るのよ! グス!」
「やめてください」
「クローネまで! グスグス! 裏切り者! しかもあんな薬を……」
かすかにクローネの声が部屋に届くと、ミノタウロス反転し今度は入り口に向かって駆け出した。
「チッ!」
舌打ちをしたロックは全身に魔力が込める。空間転移魔法の力で、ロックの体は消え直後に彼は、ミノタウロスの目の前に姿を現したのだった。
地下神殿に冷気が一気に広がっていっていく。肩からミノタウロスは徐々に白く凍りついていく。顔ゆがませてミノタウロスは苦しんでいるように見えた。クローネはミノタウロスから視線が外せずにいた。
「今のは…… いったい…… ボウガンの矢が…… 光りだして」
何が起きたのかわからず驚いてつぶやくクローネだった。
「アイスキャノンです! 水の上位魔法ですね」
「えっ!? アイリスさんも魔法が使えるんですか?」
「使えませんよ」
困惑した表情を浮かべるクローネ、ボウガンを右手に持って上にむけ、得意げな顔のアイリスが答える。
「私がつくった。魔弾ボウガンです。ボルトの刃の部分が魔石で出来てて魔法が込められてるんです」
「はぁ……」
アイリスが使うボウガンは魔弾ボウガンという名前の特殊なボウガンだ。魔弾ボウガンの専用のボルトには、先端に魔法が埋め込められた魔石が使用されており、ボルトを撃つと魔法が発動するのだ。
ボウガンの仕様が、魔法を使えなくても、魔法をはなてる便利な武器だ。今は攻撃用のボルトしか持っていないが、攻撃の他に回復やスピードや力などをあげるボルトもある。
ちなみに本体は魔法に耐えるために、神樹という鉄より硬い木で出来ており、また、弦は魔力を使って砂を泳ぐ、デザートクジラの髭を使っている。この髭を材料にすることで、発射するさいに魔力を一時的に増幅させ威力を増している。
「これで少しは時間が稼げるな」
ロックはミノタウロスの姿を見てつぶやいた。左手に持っていた杖から、手をはなしアイリスの方を向く、彼の杖は背中に勝手におさまった。
「アイリス! すぐに逃げるぞ。準備しろ!」
「わかったわ」
うなずいたアイリスはボウガンを右肩にかける。二人はクローネの元へと向かった。アイリスはクローネのすぐ横に倒れていた、ミリンの右腕を肩にかけ起こそうとする。
「クローネさん。そっちの肩を持ってください!」
「えっ!?」
「早く!!」
ミリンの肩をモテと言われて、戸惑った様子のクローネ、アイリスは厳しい口調で催促する。クローネは彼女の指示に従い、ミリンの左腕を持って自分の肩にかける。
「でも、ミノタウロスはもう……」
不思議そうにつぶやくクローネ。アイリスのはなったボウガンで、ミノタウロスが凍りつくと思っているようだ。
だが、ロックは首を大きく横に振り、彼女の考えを即座に否定する。
「いや。あいつにとっちゃ、あんなの蚊に指されたみてえなもんだ。さっさと行くぞ!」
「えっ!?」
ロックがアイリスの右手をつかんだ。直後にクローネの視界が変わった。ロックの魔法で、四人は地下神殿の扉の前に移動していた。閉じていた扉をロックが急いで開けた。ロックはミリンをアイリスに声をかける
「そこで鍵をかけとけよ。十分でかたつけてやるからな」
「うん。ミリンさんを起こしたら手助けするからね」
ニッコリと笑って答えるアイリス、ロックは不服そうにつぶやく。
「好きにしろ……」
大きくうなずくアイリスだった。ロックは黙って真顔で扉を閉めた。音がして扉が閉じられると、すぐにアイリスはクローネを呼ぶ。
「クローネさん! 扉に鍵をかけて」
「えっ!? はっはい!」
アイリスの指示でクローネは、一旦ミリンの腕を外して巫女からもらった、神殿の鍵で扉を閉めた。
音がして鍵穴に指した鍵をもつ彼女の手にかすかな振動が伝わる。鍵を抜いたクローネは両手で鍵を持って扉を見つめる。
「ロックさん…… いいんでしょうか? 彼一人にまかせて」
振り向いてアイリスに問いかけるクローネだった。
「大丈夫ですよ。ロックは強いですからね!」
クローネの問にアイリスは即座に胸を張って答えた。アイリスの言葉には迷いなく力がこもり、その言葉からロックに対する強い信頼がうかがえる。
「でも…… 少しだけいつもより余裕がないみたいですね。だからすぐにミリンさんを起こして助けに行ってやりますか」
「えっ!?」
ニッコリと微笑んだアイリスはミリンの腕を肩から外し床に寝かせた。横たわったミリンの顔の近くに座った、アイリスは肩から鞄に手を突っ込んだ。
「気絶してる人には…… やっぱ! これよ!」
鞄から手をだしたアイリス、彼女の手には細長い小さな瓶が握られている。小さな瓶の中身は液体で、燃えるような、真っ赤な色をして泡立っている。アイリスが蓋を開けると泡立つ瓶の液体から、わずかな煙が立ちのぼっていく。クローネはアイリスが持っている瓶を見て若干ひいていた。
「なんか…… すごい色してますけど…… しかも煙が……」
「大丈夫ですよ。ロック特製の気付け薬です。彼女の口を開けてもらっていいですか?」
「はっはぁ……」
クローネは少し躊躇したが、アイリスの指示通りミリンの口を開き鼻に手をあてた。
ちなみにこの瓶の中身は気付け薬として名高い、カエン草、イワシミズダケ、ファイン花をすりつぶしたものに、辛い辛いスペシャルペッパーと水をまぜたものだ。
開いた口にアイリスはどこか嬉しそうに、にっこりと微笑ながら瓶の中身を注ぎこむのだった。瓶の口から、少しとろみのついた液体が、ミリンの口に注がれた。口に薬が注がれてすぐ……
「がっ!?」
目を見開いてミリンが体を起こした。慌ててアイリスは瓶を口から遠ざけて、クローネはびっくりして押さえていた手をはなす。
ミリンは苦しそうに喉を押さえ、口をパクパクさせている。どうやら声がうまくでないようだ。彼女は顔をアイリス達に向ける。
「ほら目覚めたでしょ」
得意げな表情でクローネに話しかけるアイリスだった。クローネはミリンを見ながら心配そうにしている。
「でも…… すごく苦しそうですよ……」
「大丈夫。水を飲ませば落ち着きます。しばらく目と鼻は痛いですけね」
「はぁ……」
呆れた表情をするクローネ、アイリスは鞄から水筒を取り出してミリンの前に差し出すのだった。
神殿の中ではロックが、ミノタウロスに向かって歩いていく。
ミノタウロスはアイリスのボウガンを腕、左肩から左腕の先まで凍りついていた。歩きながら両手を開いて、両腕の肘から前だけを軽く横に開くロック。背負っていた剣と杖が浮かびあがり、右手に剣、左手に杖がおさまる。
「うがああああああああああああああああああああああああ!」
近づくロックを見たミノタウロスが叫び声をあげた。ミノタウロスの左手にまとわりついてた氷が砕けた。
ロックの目の前を砕けた氷が宙を舞い、キラキラと光りを放っている。その向こうでミノタウロスが見せつけるように左腕を曲げている。
「やっぱりあの程度じゃあ死なねえよな」
笑ってロックは足を曲げて腰を落とし、左手を前にだし杖の先端を、ミノタウロスに向け構えるのだった。ミノタウロスは右手に持った、棍棒を左手に軽く打ち付けながら横に動いていく。息をする度にミノタウロスの口の端から紫の霧が漏れている。
ロックはミノタウロスの動きに、合わせて体の向きを変えていく。ミノタウロスの棍棒の動きが止まった。一瞬の静寂が地下神殿に訪れ、ミノタウロスとロックの間の空気が張り詰める。
「うがああ!!」
叫び声をあげ走り出すミノタウロス、大きな腕を振り上げミノタウロスだった。ロックにめがけて勢いよく棍棒が振り下ろされる。
ロックは杖の先端を棍棒に向けた。棍棒はロックの魔法障壁に阻まれた。ミノタウロスの振り下ろされた棍棒の衝撃で、ロックの周囲の地面が直径一メートルほどドーム状に数十センチ沈む。
「チッ!」
薄いオレンジの光の魔法衝撃が棍棒を中心にひび割れていく。ロックが意識を杖に集中させ魔力を魔法障壁へと送り込むと、ひび割れがゆっくりと消えていく。
「……」
真顔のロックが視線を自身の右上に移動させる。ミノタウロスは左手の拳を握ってロックに向けて突き出した。音がしてロックが居た場所の床にミノタウロスの拳がめり込んだ。衝撃で地下神殿が少し揺れ砂埃が天井から落ちる。ミノタウロスは首をかしげる。
「惜しかったな!」
ロックの声がした。ミノタウロスの背中に後ろにロックは浮かんでいた。持っていた剣でミノタウロスの背中を切りつけた。ロックの剣はミノタウロスの背中を斜めに切りつけた。
「うがあああ!!」
身をのけぞり鳴き声をあげるミノタウロス、すぐに背後を向いて棍棒でロックを叩こうする。だが、ロックの体はすぐに消えた。ブンと音がして棍棒が空を切った。
悔しそうな表情でミノタウロスは、棍棒を持つ手に力を込めた。
ロックは神殿の奥にあった祭壇の手前に移動していた。ミノタウロスが必死に自分を探す背中を見つめている。
「強いな…… 少し想定外だ。あれを使うか…… でもその前に」
つぶやいたロックは大きく息を吸い込んだ。
「おい! こっちだ」
ロックがミノタウロスに叫んだ。ミノタウロスが彼の声に反応した。大きな巨体がゆっくりとロックの方に向く。ロックは笑って右手を前に出した。
「ほらほら!」
「ブフーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
右手を横にして、人差し指を前後に動かし来いよとアピールするロック、挑発されたミノタウロスはロックを睨みつけて鼻息が荒い。直後にミノタウロスが走り出した。ロックはミノタウロスが走り出すと笑う。彼はアイリスがいる扉から少しでも遠くにミノタウロスを誘導したかったのだ。
走って向かってくるミノタウロスが神殿の中ほどに差し掛かる。真ん中で倒れているシロップとクプをミノタウロスがまたいで超える。
「ちょっと! 開けなさいよ! グス!」
入り口の扉が叩かれミリンの声が響く。泣いているのか何かをすするような音が途中ではさまる。
「バカが…… てっいうか起きるの早くねえか…… あっ! そうか! アイリスめ。あの薬を使いやがったな」
ロックは首をかしげて眉間にシワを寄せる。ミノタウロスがミリンの声に反応して止まった。
「わっ!? ダメです!」
「うるさいわね。中にはシロップが居るのよ! グス!」
「やめてください」
「クローネまで! グスグス! 裏切り者! しかもあんな薬を……」
かすかにクローネの声が部屋に届くと、ミノタウロス反転し今度は入り口に向かって駆け出した。
「チッ!」
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