【毒舌系転職ライフ!】『フェアリーテイル』へようこそ!~リリスさんのパーフェクトマニュアル~ギルド冒険者を指南します!

夕姫

39. 何回分ですか?

第7章 勇敢な貴族子息の命懸けトレジャーハント



39. 何回分ですか?



 ギルド設立から4ヵ月。オレたちの冒険者ギルド『フェアリーテイル』は着々と実績を重ねていき、今では王都の冒険者ギルドでもそこそこ名の知られる存在になっていた。

 オレは今クエストボードに新しい依頼書をレイアと共に貼っている。最初はほとんど許可の降りなかった依頼書も今ではある程度の数が貰え、少し難易度の高い依頼書も許可が出るようになった。

「終わりましたマスターさん」

「ありがとうレイア。この後は悪いんだけどエドガーさんとドミニクさんへ素材の受け渡しと、メルさんのアイテム屋にリリスポーションを納品してきてくれないか?」

「分かりました!行ってきます!」

 レイアが元気よく返事をしてエドガーさんと共にギルドから出ていく。それを見送った後、受付の方を見るとリリスさんが話しかけてくる。

「最近はレイアちゃんも明るくなりましたね。よく働いてくれていますし。感心です。」

「そうですね。最近は同行依頼も上手くいってるみたいだし本当に良かった」

 そんなことを話しているとギルドの扉が開かれ見たことのない男性が1人やってくる。新しい冒険者かな?

 そしてその男性はクエストボードを確認しながら1枚の依頼書を剥ぎ取りカウンターにいるジェシカさんに持っていく。

「いらっしゃいませ。ご依頼ですか?」

「ああ。この依頼を受けたいのだが」

「……霧の谷の魔物討伐。これは中級者用の依頼です。失礼ですが冒険証を拝見してもよろしいですか?」

 霧の谷。最近魔物が活発化して危険な場所だよな。報酬額はかなり高めに設定されてるし、現在は谷の入り口に騎士団が配置していて許可がないと入れない場所になっている。ウチに中級者が来るのは珍しいな。とか考えているとその男性は驚くことを話す。

「……冒険証はない。でもこの依頼を受けさせてくれ!頼む!」

「え?」

 そう言って頭を下げる男性。ジェシカさんは困った顔をしてオレを呼ぶ。

「あのお客様。ウチは冒険者ギルドです。冒険者じゃない人は依頼をさせることは禁止しておりますので」

「それは知っている。でも……もう時間がないんだ!なんでもする!どうか!金だってここにある!」

 するとカウンターの上に金貨を置く男性。マジ?すごい金持ちじゃんかこの人……いやいかんいかん。

「あのそういう問題じゃ……」

 オレがそういうと横のカウンターにいるリリスさんが話しかけてくる。

「お兄さん。クエストボード見ましたか?この『フェアリーテイル』では同行依頼って言うのがありまして、そこに『世の男を虜にするスタイル抜群の銀髪美女お貸しします。金貨10枚~要相談』って書いてありますよ?どうですか?」

「本当か!?ならぜひ頼みたい!」

 あー。そんなのありましたね……クエストボードの端のほうに小さく貼ってあるからオレも忘れてたよ。するとジェシカさんが反論する。

「あのリリスさん。この人はそもそも冒険者じゃないよ。だから同行依頼は受けられないでしょ?」

「頭が固いですねジェシカちゃんは。そんなんだからモテないし陰キャなんですよ?それなら代行依頼で受けますよ」

「あのリリスさん。そんな勝手に……」

「はい?エミルくん。私がこの依頼を受けるとエドガーさんとアンナちゃんとレイアちゃんが同行依頼を受ける何回分稼げると思ってるんですか?まったく。ギルドマスターとして、経営者として利益管理できないのは論外ですよ?そこまで落ちぶれましたか?ガッカリです。本当にエミルくんもジェシカちゃんも子どもで困ります」

 いや……確かにそうなんだけどさ。リリスさんは絶対外に出たいだけのような気がするんだけどな……。

「あ。すいません。よろしくお願いしますね。私はリリス=エーテルツリー。最強の銀髪美人でSランクの冒険者です。さぁお話をお聞きしますよ。こちらへどうぞ。エミルくん。お茶の用意をお願いしますね!」

 そう言って嬉しそうにリリスさんはその男性を連れていく。はぁ。オレはため息をつきながらお茶の用意をする。また面倒なことにならないといいけど。そんなことを思うのだった。

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