34.　誤解？

第6章　私頑張ります！駆け出しクレリックのダンジョン攻略指南




34.　誤解？



　ギルド『フェアリーテイル』。初心者、初級冒険者大歓迎の王都でも珍しいギルド。

　そのギルドでは、ダンジョン攻略のマッピング地図の販売やクエストボードでの細かなアドバイス、在籍しているギルド冒険者の同行依頼など、サポートも充実している。王都で活動したい人は是非一度訪れてみてください！そんなキャッチフレーズが書かれたチラシを手にしてオレは店の前でチラシ配りをやっている。

「よろしくお願いします！」

　まだまだ頑張らないといけない。こう言った仕事を地道にやることでギルド経営は成り立っているのだ。そう思いながらオレはチラシを配っていた。すると、中からレイアと冒険者パーティーが出てくる。

「同行依頼ありがとな」

「う～回復役がいれば大丈夫かと思ったのは甘かったわ。ごめんねせっかく同行してくれたのに！」

「ボクたちもレベルを上げて頑張るから、君も頑張ってね」

「あっはい……。色々ありがとうございました……」

　どうやら同行依頼が終わったところらしいな。レイアもジェシカさんと同じで真面目な子だ。きちんと仕事をこなしてくれているようだな。

　そしてしばらくしてから店内に入り、クエストボードの管理や素材屋のドミニクさんへの受け渡しの準備、メルさんのアイテム屋へのリリスポーションの納品準備、お客さんへの対応、接客、店の掃除などをしていく。

「よしっ……そろそろかな……」

　時計を見て、オレは休憩室に行き、椅子に座って一息つく。

「ふぅ……」

　オレはコーヒーを飲みながら休憩する。そこにレイアがやってくる。

「お疲れ様。レイアもコーヒー飲むか？」

「あっマスターさん……はい。」

　ん？なんか元気がないぞ。どうしたんだろう。そのままコーヒーを注ぎカップをレイアに渡しながら話す。

「どうかしたのか？悩み事でもあるなら聞くけど。オレはギルドマスターだから。何でも言ってくれ」

　オレがそう言うと、レイアの目には涙が浮かぶ。

「えっ！？どうしたんだよ急に！！」

　オレが慌てるとレイアは口を開く。

「私……悔しくて……。」

「何があったんだ？」

「今日、同行依頼でダンジョンに行ったんです。でも強いモンスターに襲われて……それで私が怪我をしてしまって……。私はクレリックなのに、お仕事なのに、一番足手まといになってしまって……」

　さっきの入り口の会話はそういうことか。自分の不甲斐なさに悲しくなって泣いてしまったって感じだろうな。まぁ気持ちはよくわかる。

「なるほどな。確かにそれは辛いよな。オレは冒険者じゃないけど、気持ちはよく分かるよ。」

「はい……」

　レイアは涙を浮かべたまま下を向いていた。オレはレイアの頭を軽く頭を撫でてあげる。それからしばらく時間が経った頃、レイアは顔を上げる。少しだけだがスッキリとした表情になっていた。良かった。

「あの……ありがとうございますマスターさん。やっぱり優しいですね」

「あはは……これくらいしかできないからな。じゃあそろそろ仕事に戻ろうか」

　そんな時ジェシカさんが入って来る。

「は？マスター？」

「あっ……ジェシカさん。これは……その……誤解です！」

「……何が誤解なの？まさかレイアに手を出したの？」

「いえ！違います！！ちょっと慰めていただけです！！」

「でも誤解って、やましい気持ちがないとそんな言葉でませんけどね？もうジェシカちゃんかレイアちゃんか、もしくはアンナちゃんか1人に決めてくださいよエミルくん。別にそこまで良い男でもないんですから。勘違い野郎は痛いですよ？」

　なぜか通りかかったリリスさんにスマートに毒を吐かれる。勘違い野郎は酷くないか？傷つくんだけど。

　とりあえずレイアが元気になったのは良かったけど、でもこれで自信をなくさないか心配だよな……。