97.　魔法職

97.　魔法職



　それから色々屋台を回っていると、お腹が空いてきた。何か適当に食べよう。そう言えば今日の料理当番も咲夜さんの担当だよな……うまく当番をかわしているよな。

「ねぇ颯太君！そろそろ何か食べましょう？」

「オレもそう思っていたから。何がいいかな……」

「私あれが食べたいわ！」

　咲夜さんはたこ焼き屋の前で止まった。確かに美味しそうだな。オレはたこ焼きを買い、近くのベンチで食べることにした。

「あちっ……」

　まだ出来立てのようで、かなり熱かった。だがそれがまたうまい。ソースや鰹節がかかってるいわゆるシンプルなものだが、この絶妙な外カリ感と中のトロリとした生地が何とも言えない味を出している。

「あの颯太君？」

「どうしたの咲夜さん？」

「その……食べさせてほしいわ。浴衣の袖がつきそうだから。ダメかしら？」

　マジ？これって所謂カップルがよくやる『はい、あーん』的なやつだよね！？

「えっと、わかった」

　オレはたこ焼きを食べやすい大きさにして口元へ運んだ。

「颯太君。私は熱いの苦手だから、ふーふーしてほしいわ」

　……恥ずかしいが咲夜さんのためだから、気にしちゃダメだ。しかし、人にふーふーなんて生まれて初めてするぞ？まぁやってみるか……。

　オレはたこ焼きを冷ましてから、咲夜さんの唇が触れるか触れないかの距離まで近づけると、咲夜さんはそのままパクッと口に含んだ。

「ふぅ……まだやっぱり熱いわね。でもとても美味しいわ！」

「そう……」

「今度は私がしてあげるわね？」

　そう言って咲夜さんはオレが掴んだたこ焼きをふーふーしてから、上目遣いで言った。

「はい、あーん」

　……もうこれはヤバい。可愛いすぎる。こんなのされたら誰でも惚れてしまうだろう。オレは言われるままに口を開けて、そのまま咲夜さんがふーふーした、たこ焼きを口に入れた。

　なんかさっきより美味しいような気がするんだけど気のせいだろうか？

「美味しいかしら？私のふーふーしたたこ焼きは？」

　……これは魔法だ。オレは咲夜さんの魔法でやられてしまったんだ。咲夜さんは、オレにとって本当に最強の魔法を使える魔法職だったんだ。

「最高に美味しいよ咲夜さん！」

「あら？それは良かったわ。それじゃ彩り輝く古代魔法を目に焼き付けに行きましょうか！」

　そう言って咲夜さんはオレの手を握る。屋台はどれもこれも楽しかったけど、一番嬉しかったのは、咲夜さんが笑顔だったことだ。ずっと見ていても飽きないくらい可愛くて綺麗だったから。やっぱりオレは咲夜さんが好きで好きで仕方ないのだった。