【絶対攻略不可?】~隣の席のクール系美少女を好きになったらなぜか『魔王』を倒すことになった件。でも本当に攻略するのは君の方だったようです。~

夕姫

88. 気絶耐性

88. 気絶耐性



 今日は咲夜さんと共に夏祭りに着ていく浴衣を買いに出掛けている。今まで何回か二人きりでデートらしきものはしたけど、付き合ってからは初めてだ。それに手もつないでいるし……緊張するなという方が無理である。

「うふふっ」

 咲夜さんが隣を歩きながら嬉しそうに笑みを浮かべる。

「どうした?」

「こうしてると私と颯太君。本当にカップルになったのねって思って」

「そ、そうだな……」

「……照れてる?」

「て、照れるよ!だって……恋人なんだしさ……」

 咲夜さんの問いかけに顔を赤くして答えるオレを見て咲夜さんがクスッと笑う。そしてそのまま腕に抱きついてきた。

「さ、咲夜さん!?」

「嬉しいからこうしたいの!」

「えっと……じゃあこのままでいいです……」

 恥ずかしくて思わず敬語になってしまう。こんなところを誰かに見られたら……と思うものの咲夜さんから離れたくないという気持ちもあり、結局されるがままになる。

「ねぇ。私のこと好き?」

「す、好きだよ……」

「ちゃんと言ってほしいなぁ~?そんなんじゃ魔王を倒せないわよ?」

 咲夜さんが悪戯っぽく言う。こうなった時の咲夜さんに勝てる気がしない……。

「咲夜さんのことが好きだよ」

「……」

 あれ?反応がないぞ?まさか引かれたとか?それだったらやばいんだけど……

「ごめんなさい。あまりの破壊力に気絶しちゃったみたい……恐ろしいわね颯太君の魔法」

 どんな魔法だよ……。そんな状態異常:気絶になるような魔法は使った覚えがない。

「もういっかい言ってもらってもいいかしら?耐性をつけなきゃ!せめて気絶耐性レベル3くらいまでは習得しないと」

「ええ~……」

「颯太君。私のこと好きでしょ?やっぱり好きな人に好きなところを言われるのは嬉しいものよ?」

 その笑顔は反則なんだよな咲夜さん……。それからしばらく咲夜さんの好きなところを言い続ける羽目になり、咲夜さんが満足するまで言わされた。途中何度も恥ずかしくなり逃げ出したくなったが、なんとか乗り切った。

 咲夜さんも最初は照れていたけれど、途中から耐性がついたのか余裕が出てきたらしく、「うんうん。私も颯太君のこと大好きだからねー」なんて言いながら笑顔で聞いていた。

 でも時々、思い出したように赤面していたり、胸を押さえたりしていたからやっぱりドキドキしてくれているようだった。

 改めて思うが、咲夜さんは本当に普通の女の子だ。オレはそんな咲夜さんを見て幸せを感じるのだった。

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