次世代型ゲームのアルバイトに行ったら異世界に跳ばされたようです

ブラックベリィ

第15話水の精霊と契約? その2

 自分の置かれている状況を正確に理解した和也は、今、何をしたら良いかわかっているだけに重い溜め息をこぼれ落とす。

 「はぁ~‥‥ここで、グズッてもしょうがないですよねぇ‥‥とりあえず、水の精霊さんとの契約は、基本、恋歌のようですから‥‥‥って、何を歌えばイイんでしょうねぇ‥‥‥‥」

 そう呟いた和也は、自分にこのアルバイトを紹介してくれた相沢センパイのコトを思い出した。

 そういえば、この前の大会の祝勝会に、カラオケに部員全員で行ったっけ。

 その時のコトを思い出し、和也はちょっと遠い目をする。

 ふっ‥相沢センパイの暴走に、唯一対抗できる土谷センパイが、疲労のあまり、店に入った途端ソファーでぐっすりと眠ってしまったから‥‥‥‥。
 相沢センパイのやりたいほうだいだったよなぁー‥‥‥‥。
 お陰で、勝手に失恋の歌をガンガン入れられて‥‥‥‥。
 みんなで、交代で歌ったっけ‥‥‥‥。
 ふふふふふ‥‥‥点数が低いと、振り付けありで、キューティーハ○ーを歌わせられましたねぇ‥‥‥‥。
 まっ、AK○48とか歌って踊るよりマシだったけど‥‥。
 だって、180超えどころか190超えの高校生、しかも、バスケ少年の? 可愛い? キモイ? 踊りはちょっと‥‥‥。
 はぁーこんな逃げに入ってもしょうがありませんよね。
 ふむ‥‥‥‥最近歌ったモノだから、まだ歌詞も覚えているし、あの歌でも、歌いますか。
 一応、恋歌ですし‥‥‥切ないと言えば、切ないモノですけど‥‥‥‥。
 水の精霊さんを呼び出す為にも、頑張るしかないですからね。

 和也は諦めを滲ませた深呼吸を何度も繰り返して、アカペラの為に呼吸を整える。
 そして、和也は、瞳を閉じて、相沢センパイの暴走でつらかった時を思い出し、切々と歌いはじめる。

 あの日 あの時 君と同じ月を見ていたのに‥‥‥‥。
 あの日と 同じ月がのぼっても 君は居ない‥‥‥‥。
 どうして 僕は あの日 君の手を離したんだろう。
 朝日がのぼる前に 届いた知らせは‥‥‥‥。
 君との永遠の別れを告げる‥‥‥‥。
 君は あの日のまま 時をとめて。
 僕は ひとり 時の河 流されている。
 もう一度 許されるのなら‥‥‥‥。
 君を 君を 抱きしめたい‥‥‥‥。

 あの日 あの時 同じ星を見ていたのに‥‥‥‥。
 星の輝きは そのままなのに 君は居ない‥‥‥‥。
 それなのに 僕は 今日も 手を握りしめる。
 なんども 月を見ても 星を見ても
 君は 戻らない‥‥‥‥。
 あの日のままに 君は微笑む。
 僕のなかで永遠に‥‥‥‥。
 もう一度 会えるのなら 
 なにを捨てても かまわない
 会いたい 君に‥‥‥‥。
 もう一度 君に‥‥‥‥。

 [※注意・文中の歌詞は適当に書いたオリジナルです。もしも、似たようなフレーズがあってもスルーして下さい]

 とりあえずの1曲を歌いながら、どれくらい歌えば、水の精霊が現れて、契約へとこぎつけることが出来るかわからないまま、内心で悶絶していた。

 あー‥‥もう‥‥恥ずかしい‥ったら‥‥ありゃしない‥。
 カラオケの時は、部屋が暗めだし、演奏の音がガンガン響いているから、ちょっと恥ずかしいで済むけど‥‥‥‥。
 真昼間に、姿の見えない水の精霊さんに向かって歌うのは‥‥‥‥。
 かなりキツイですねぇ‥‥‥‥。
 さて、水の精霊さんの反応は‥‥‥‥。

 和也が、恥ずかしさを堪えて歌い終わると、パッシャンパシャパシャという涼やかな水音がした。
 和也が、閉じていた瞳を開けると、チャップンという音と大きな魚の尾びれ?らしきモノが、ちょうど水中に消えるところだった。
 どうやら水の精霊は、一度は和也の前に姿を現したのに、再び水中に戻ってしまったらしい。

 はぁー‥‥もしかして‥‥‥不合格?
 まだ‥っていうか1曲じゃ‥ダメ‥‥なんでしょうか?
 もの足りないってところなんでしょうか?
 それとも、ボクの歌は気に入らなかったのかなぁ~。
 オンチではないと思うんですけど‥‥‥‥。

 和也は、水の精霊の反応を確認する為に、銀嶺から流れ込んだ知識を意識して、過去に見聞きしたモノを調べることにした。

 えーとぉ‥‥水の精霊さんは‥‥‥‥。
 そのチカラと能力により、人間に呪術と呪陣と呪具などを使用されて、捕らえられ使役されることが多い。
 その為、かなり人間に対して、警戒心、不信感も強い。
 マジで‥‥これで‥‥無事に‥‥契約‥‥出来るのかな?

 出て来た知識に、和也はちょっと不安になり、更に知識を覗き込む。

 しかし、好奇心がかなり強く、人間の歌や踊り、人間の作る酒をかなり好む‥‥‥か。
 ‥‥‥っても、ボクは、お酒なんて持ってない‥‥‥‥。
 うーん‥‥そうだ‥切ない系だけど‥会いたいって‥‥言ってる歌にしてみようかな?
 ボクも水の精霊さんに会いたいから‥‥‥‥。

 砂漠を旅する必需品の水を手に入れる為に、和也は、呼吸を再度整えて瞳を閉じて歌いはじめる。

 いま さよならしたのに 君の姿が
 ボクの前から消えた瞬間 もうさびしくなる
 会いたい 会いたいよ 君に
 明日も会えるかな? 君に
 できるなら 家族も友達も全部捨てて
 君とふたりだけで どこかに行きたい
 君の笑顔を思うだけで
 僕はしあわせになる だけど
 やっぱり 君に会いたい
 今 会いたい すぐ 会いたい
 いつでも 一緒にいたい
 君と 君とぉ~
  
 はぁー‥‥恥ずかしい‥‥‥‥。
 いいかげん‥出てきて欲しいんですけどねぇー‥‥‥これで‥。

 そんな和也の苦悩が天に通じたのか?
 パッシャンという水音と水の精霊の気配がした。
 和也は思い切って精霊に声を掛ける。

 「麗しき水の女神の眷属たる水の精霊よ‥‥その‥お姿を‥目にする栄誉をボクに‥‥‥‥」

 ドキドキしながらの和也の問い掛けに、水の精霊が答える。

 『くすくす‥‥‥‥いいわよぉぉ‥‥‥‥』

 水の精霊達の楽しそうで、とぉーっても、かるぅ~い応えに、和也はほっとした。

 よっ‥良かったぁー‥‥‥。
 もっと‥‥恥ずかしい歌を‥‥歌わなくてすんで‥‥。
 水の精霊さん達ってば、姿は人魚姫なんですねぇー。
 ボンキュボンって感じだし、綺麗な人達ですねぇー。
 瞳の保養って思います‥‥‥‥。
 でも、こんなにいるんだったら‥‥。
 ほんとぉーに、さっさと出てきて欲しかったなぁー‥‥‥‥。
 ボクのイメージと違って、話しやすいかも?
 普通の問いかけをしてもイイかな?

 色々と考えていた為に、黙っていた和也に水の精霊達が話し掛ける。

 『ねぇー‥貴方はだぁれ? 何を私達に望むのぉ?』





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