次世代型ゲームのアルバイトに行ったら異世界に跳ばされたようです

ブラックベリィ

第9話バイトの内容と記憶4

 旅人設定を確認し、何かの追加プログラムらしきモノを打ち込みながら、藤田主任は和也を見て思い出したように言う。

 『ああ‥そうそう、これだけは言っておかないと、黒沢君が混乱しちゃうわね‥‥‥』

 藤田主任のセリフに、和也はちょっと首を傾げて聞き返す。

 『えっ‥‥‥ゲーム内で、プレー中に混乱するようなことがあるんですかぁ?』

 僅かに困惑を浮かべた藤田主任は、和也が理解しやすい言葉で説明する。

 『ゲームに組み込まれたシステムの都合上、現実世界の記憶がデリートされた状態で、ゲーム内にログインするから大概は大丈夫なんだけどねぇ‥‥‥‥本当に極稀に、現実世界の記憶がデリートされていない状態で、ゲーム内にログインする人もいるらしいの‥‥‥‥』

 『えっ‥‥記憶のデリート‥‥それっていくら次世代型ゲームでもマズイんじゃないですか?』

 『えっ‥‥そこっ?‥‥黒沢君の突っ込みどころって最高ね‥‥‥クスクス‥‥‥』

 藤田主任の様子から、和也はついぼやいてしまう。

 『ふっ‥‥‥答える気なしですか?』

 和也の様子から、それ以上の追求をしてこないと感じた藤田主任は、強気でさらりと言う。

 『もちろんよ。企業秘密ですもの。ヒット商品には秘密がつきものよ』

 なんか、今のセリフって秘密じゃなくて、犠牲って聞こえたんですけどぉ‥‥‥。
 かなり、脳のデリケートな部分をいじられるっこと?
 ‥‥‥ここは、これ以上追求するのは止めよう。
 マジで犠牲者になるのはカンベンして欲しいです‥‥‥‥。
 なんか、軍事機密にでもかかわっているようで、イヤ。

 『そうですか‥‥‥それじゃ、説明の続きお願いします‥』

 ふっ‥鋭い子ねぇ~‥‥ほんと頭のイイ子で‥‥‥これはぁ‥‥‥とぉーっても、良いデーターが取れそうねぇ‥‥‥。
 黒沢君は、この中でどんなモノを創造してくれるかしら?
 とても楽しみだわぁ~‥‥‥‥。

 藤田主任の思考が見えそうなほどの微笑みに、和也は無意識に身体を震わせていた。

 が、説明途中にもかかわらず、スタッフがスイッチを次々と入れているセイだと思った藤田主任は、説明を続ける。

 『まだ‥なんで、記憶がデリートされないでログインするのかは原因不明で調査中なんだけど‥‥‥』

 『原因不明でも、続行するんですか?』

 ニュアンスてきに、それって危険じゃないですか?を含める和也に、藤田主任はきっぱりと言う。

 『当然、続行するわよ‥‥‥とにかく、基礎データーは必要だもの‥‥‥基礎があって初めて原因が追求できるんだから』

 『ちなみに、記憶がデリートされない時のメリットとデメリットってなんですか?』

 『そうねぇ‥‥‥この創作中のゲーム内には、色々なタイプの人が、同時にログインしているわ‥‥』

 『はぁー‥‥確かに、そうですね』

 『‥だから、ゲームの中で、たまに知り合いに会う事が有るかも知れないの‥‥‥』

 確かに、ここに入る前に、緋崎君や浅黄君に緑川君の三人に会いましたから、ゲーム内で出会う可能性はありますね。
 まっ‥‥‥同じ場所だし‥‥確率的には、同じ内容のバイトだと思うし‥‥‥‥。

 同じようにアルバイトに来た三人の顔を思い浮かべ、和也は無意識に頷く。

 『確かに、可能性はありますね』

 『でしょ‥‥‥‥それで、先に説明したように、ほぼ全員がシステムの都合で、記憶がデリートされているから、相手が覚えて無い状態になってるのよ‥‥‥』

 なるほど、知り合いがいても、記憶がデリートされているから、ゲーム内では、見知らぬ他人というわけですか‥‥‥。
 確かに、記憶があると色々な意味で困りますね。

 『はい、なんとなく理由は理解できました』

 頷く和也に、藤田主任は事務的に言う。

 『ログインの際に、黒沢君の記憶もきちんとデリートされて、自分の設定したキャラクターで、ゲーム内を冒険できると思うけど、もしもって事があるから‥‥‥そういう《バグ》も、ほんとうに極稀ではあるけど、あるって事は覚えておいてね‥‥とはいっても《バグ》らなきゃ、私の‥この説明も覚えて無いとは思うけど‥‥』

 藤田主任の説明に、和也は曖昧に頷いた頃、別のスタッフから声が掛かる。

 『藤田主任、黒沢君のセッティング終了しました、何時でもゲーム内にログイン出来ます』

 その声と共に、藤田主任はにっこり笑って、和也に言う。

 『一回三時間で自動的にゲーム内からログアウトされるようになっているから、安心してね‥‥‥それじゃ、次世代型体感ゲームを楽しんで来てね、黒沢君‥‥うふふふ‥‥貴方から、どんな内容のデーターが取れるか楽しみだわ‥‥じゃんじゃん創造してね‥‥‥それじゃカウントして‥‥‥‥』

 そこで、自分の意識がプッツリと途切れたことを思い出し、和也はげんなりとする。






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