次世代型ゲームのアルバイトに行ったら異世界に跳ばされたようです
第8話バイトの内容と記憶3
藤田主任の微笑みを見た和也は、ヘビに睨まれたカエルのように身を縮める。
『かなり当たりかしらね‥‥‥まぁー‥手に持って遊ぶような従来型のゲームと違って、リアルな体験型のゲームだから、こういう大掛かりな機械が必要なのよ‥‥‥』
『あのぉ~‥‥‥言葉にあらわすとしたら、どんな‥‥‥』
『ゲームの中の体験を刺激として感じるように作られているから、全てがリアルに実体験することになるわね‥‥‥だから、とても強い精神力と意思力と持続力の三つを必要とするのよ‥‥‥だから、高いポテンシャルを維持出来るスポーツマンタイプのクリエイターが必要なのよ‥‥まぁゲーム内容は、ド○クエとモ○ハンを融合させたようなファンタジー要素の濃いイベント型のゲーム、ようするにRPGよ。自分で、職業・性別・年齢が好きに選択出来るようになっているわ』
そう言いながら、藤田主任は和也の前にタッチ型のコンソールパネルを差し出す。
『黒沢君は、ロールプレーイングのゲームしたことあるかしら?』
藤田主任の質問に、一応ド○クエぐらいはしたことのある和也は何も考えずに頷く。
『一応、ド○クエならしたことありますけど‥‥‥』
藤田主任は真面目な表情で頷いて、説明を続ける。
『そう‥なら、問題ないわね』
和也は、妙な断言をする藤田主任に首を傾げる。
そんな和也に、藤田主任は苦笑いを浮かべて言う。
『たまにいるのよ‥‥本当のスポーツ馬鹿って‥‥‥ゲームなんてしたこと無いっていうね‥‥‥そういう人には向かないのよ‥‥説明するのも難しくなるしね‥‥適正が無いって事で帰ってもらってるわ‥‥‥わたしたちが欲しいのは、世間的にもきちんと適応力のあるスポーツ選手や極々普通の人なの‥‥ゲームするのは、一般人なんだから‥‥‥っと、こんなことを力説してもしょうがないわね‥‥‥取り敢えず、全部入力してくれる?‥‥性別・職業・年齢を好きに打ち込んで、黒沢君のキャラクターを作ってくれるかしら‥‥‥』
和也は、自分が欲しいような詳しい内容は教えてもらえないと判断し、顔の前に移動してきたパネルに入力していく。
それを別のパネルで確認しながら、藤田主任は、ゲーム内容の説明を始める。
『このゲームの基礎部分は、ファンタジー要素が強いから‥魔法や精霊使役なんかも可能よ‥‥どんなキャラクターでも、最初のレベルは1から始まるから‥‥‥ああ、それと‥ゲーム内に黒沢君の意識がインストールされる時に意識が飛んで記憶喪失になるけど、それはゲーム内のことで現実に記憶が失われる訳じゃないから安心してね。よりリアルに、ゲームを楽しめるようにって事で組み込まれているシステムだから‥‥‥』
えっとぉぉぉ‥‥‥もしもしぃ‥意識のインストールって?
さらりと、凄いこと言ってません?
それって、何世代先の技術の話しですか?
きっと、訊いても笑って答えてくれませんよねぇ‥‥‥。
下手したら、企業秘密とか言われて終わりそうだし‥‥‥。
どうりで、見た目からして医療機器らしいモノがいくつも揃っている筈だぁ‥‥‥‥。
訊いても答えないだろうなぁーという思いの視線を、和也は藤田主任に向ける。
当然、藤田主任は和也のモノ問いたげな視線を綺麗に無視して、更に説明を続ける。
『心身の負担も考えて、三時間の制限があるから‥‥‥どこまでゲーム内の時間を進められるかは、黒沢君の努力次第よ‥ジャンジャン戦ってレベルアップしても良いし、時間を掛けて魔術とかを編み出しても良いように、オールフリーになってるから‥‥どう?‥‥打ち込みは完了したかしら‥‥‥』
和也は、もう藤田主任の説明に嫌気が差してしまう。
自分のゲームキャラねぇー‥‥‥‥。
三時間、ぼーっと歩いていても、大丈夫な旅人にしよう。
体力をやたら使う戦士なんかは、めぇーいっぱい疲れそうだしね‥‥‥‥。
魔法使いなんていれたら、呪文は自分で考えてねとか。
精霊魔法は、一定の法則をいれてね‥‥‥‥なんて、頭の中に浮かんできそうでヤダな。
旅人だったら、標準装備がついてるままでOKだしね。
バイト代の分だけ、働きましょう。
普段の真面目な和也にしては、かなりなげやりなことを考えながら、設定していた。
もちろん、至極、マジメそうな表情だったのは確かである。
そこで考えるのが面倒になったので、とりあえず、自分まんまのキャラクター設定を入れ、職業を取り敢えず旅人に指定してみたというように、藤田主任には感じられた。
『ふーん‥もっともポピュラーな設定ね‥‥‥やっぱりそういうのが多いのかしら?』
藤田主任のセリフに、和也は苦笑する。
が、周りのスタッフはウンウンと頷いていた。
よほど、そういう設定が多いらしい。
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