【究極の押し掛けラブコメ】後輩ちゃんは先輩と付き合ってます!!?

夕姫

76. 一番欲しくて嬉しいもの

76. 一番欲しくて嬉しいもの



「ねぇ先輩?そろそろ誕生日ですよね?」

「ん?ああそうだな。」

「プレゼントは私でいいですよね?」

「だからお前はいらんって言ってんだろ。」

「本当にいいんですか?チャンスですよ?今ならまだ間に合いますよ?」

 こいつは面倒くさいやつだ。こうやって絡んでオレの反応を楽しんでくる。まぁそれがこいつなりの愛情表現なんだろうけど。

「あーもううるせぇな!もう帰れ!」

「えーそんなに邪険にしなくてもいいじゃないですか。」

 そう言って夏帆は口を尖らせた。その仕草がまたウザい。

「じゃあ何が欲しいんですか?教えてくださいよ。」

「別に何も要らねえよ。ただいつも通り一緒にいて、くだらない話して、たまには一緒に買い物とか行って、それだけだけで十分だよ。」

 オレの言葉を聞いた夏帆は少し驚いた顔をしていた。

「それは……熟練カップルがやることじゃないですか!やっぱり私と先輩は付き合ってるんですよね!」

「だから違うっての……。」

 オレは溜息をつくしかなかった。このやり取りも一体何回目だろうか。そろそろ疲れてきた。

「とにかく私は諦めませんからね!いつか絶対私のことを好きにさせてみせます!」

「はいはい頑張れ頑張れ。」

「うわっ適当すぎです!もっと真剣に考えて下さいよ!」

 そう言いながら夏帆は頬を膨らませた。こんな風に素直な感情を見せてくる時が一番可愛いと思う。だけどそれを口に出すと調子に乗るから言わない。これは男としての意地みたいなものだ。

「まぁとりあえず、誕生日楽しみにしてて下さいね!先輩の大好きな物たくさん作っちゃいますから!」

「はいはい分かった分かった。」

 オレは適当にあしらう。でもさっき言ったことはオレの本心だ。特別何かが欲しい訳じゃない。

 ただいつも通りの日常を、ウザいこいつと過ごすことが今一番欲しくて、一番嬉しいものだとオレは思うのだった。

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