56.　出る杭は打たなくては

56.　出る杭は打たなくては



「先輩。お風呂あがりましたよ」

「っていうか……お前まさかオレが帰るまでここに泊まるつもりなの？」

「本当は駅の近くのホテルとかに泊まろうかなと思ってんですけど、先輩のご両親がせっかくだから泊まってきなって言ったんですよ？付き合ってるなら秋人の部屋で問題ないわよねって。」

「付き合ってねぇから問題なんだよ！」

「え？問題って？先輩……私に何かするつもりですか？いやーん。一応私も……その時のために準備はしてますけど……。」

「お前は何を言ってんだよ！？」

　うぜぇ……マジでこいつはうざい……。でもこんなこと言ってても別に白石のことを嫌じゃないと思うのは異常なのかも知れないが。

「あっそうだ！先輩に聞きたいことあったんですけど」

「なんだよ？」

「さっき話していた従妹の雛山千春ちゃんでしたっけ？どんな子なんですか？」

「は？何でそんなこと聞くんだ？」

「だって気になるじゃないですかぁ。さぞかし可愛いんでしょうね？」

「しばらく会ってねぇから分からんが、あいつは普通だと思うぞ……」

　お前と違ってな。と口に出しそうになったが、ギリギリのところで飲み込んだ。千春はオレの2つ下の妹みたいな存在だ。白石と違っておとなしく普通の女の子って印象なんだがなオレは。まぁ白石は異常だけど。

「へぇそうなんですか……きっと先輩も可愛がってきたんでしょうね？」

「なんだよその含みを持たせた言い方は？」

「いいえなんでもありませんよ？ただ、出る杭は打っておかないとと思って」

「千春はオレのことなんか好きじゃないと思うぞ？」

「そうかもしれませんね。こんな先輩を好きなのは私くらいですよ！自慢したり、喜んだりしていいですからね？」

　あっさり肯定しやがったなコイツ……。それはそれでムカつくんだが……。だからなおさらなんでこいつはオレのことが好きなのか理解できないんだよな。

「じゃあ私は寝ますね。お休みなさい」

「ああ、お休み」

「……先輩、遠慮せずに私の布団に入ってきてもいいんですよ？」

「入らねえよ！！」

　本当にこいつはうぜぇ。もう無視しよう。オレはそのままベッドに横になり眠りについた。