【大賢者の弟子?相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたので、とりあえず貴族令嬢を最強にする事に決めました。

夕姫

41. 踏み出した一歩

41. 踏み出した一歩



 シャルドール防壁の防衛戦から1週間がたつ。あのあとサーシャは魔力を使い果たしたようで、そのまま眠ってしまった。

 まぁ無理もない。全盛期の私でも相当な魔力量が必要な魔法だったしね。とりあえず今は体調も魔力も戻り元気になったから良かった。

 マーリンは各種族の長にこれからの対応やら魔族との戦いなどの事を教えて回っていた。さすがに六魔将が復活したとなれば、見過ごせるような状況でもないしね。

 ちなみに本来の目的の『ミスリル』だけど、もうすでにバルムンド公国の鉱山では発掘できないことがわかった。なんでも坑道内にいた魔物たちがミスリル鉱石を食い尽くしてしまったらしい。それを知ったサーシャはかなり落ち込んでいたけど、仕方がない。

「色々世話をかけたな。礼を言うぞサーシャ様。マーリン様」

「あなたたちが救ってくれたこのシャルドール防壁は必ず守り続けますから」

「オイラも勇敢な戦士になるから!また会いに来てよね!」

「いえ。これからも頑張ってくださいね!皆さんなら大丈夫だと信じてますから!」

 今は別れの時。サーシャとマーリンはシャルドール防壁の国境に来ている。次の目的地はとりあえず南にあるフランガラン帝国にするようだ。

 フランガラン帝国はここからさらに南下し、海を渡ったところにある国で、そこはこの大陸一大きな市場がある商業都市。いろんな物が集まりやすくて情報も集まりやすいから、今後の事も考えて行くみたい。

 みんなに別れを告げサーシャとマーリンは旅立つ。サーシャは私を手に取り、マーリンと一緒に振り向かずに歩いて行く。

「まだまだだなぁ……もっと強くならないとアイリス様に迷惑かけちゃうし」

「あの魔法を放って、何事もなく生きておるのじゃ。そんなに卑下することもなかろう」

 確かにあれだけの魔法を放ったのにサーシャは今はピンピンしている。むしろ前より魔力量がどんどん上がっているし、本当に凄い成長よね。

「サーシャ。ひとつ言っておくぞ。六魔将を倒すと言うことは世界を救う事と同義じゃ。そんな簡単なものではない。覚悟を決めるんじゃよ。……いいな?」

「……もちろんです。私はその為にあの時剣を取ったんですから。むしろ目的がハッキリして良かったかもです」

 サーシャはマーリンの言葉に躊躇せずに笑顔で答える。きっとこれがサーシャの強さの答えなのかもしれない。

「そうか。とりあえず『ミスリル』がまだじゃし、六魔将が復活したとなれば……ワシもしばらく同行するぞい。よろしく頼むのサーシャ」

「はい。よろしくお願いしますマーリン様」

「うむ。……ん?」

 マーリンは自分の名前を呼ばれて一瞬戸惑う。その様子を見てサーシャはそのまま話を続ける

「もういいですよ隠さなくても。大魔女マーリン様なんですよね?六魔将の常闇のレヴィも言ってましたし……というよりかなり前から分かってましたけど、マーリン様は隠し事ヘタですね?」

「うっうむ。そうじゃが……バレておったか……」

 サーシャの言葉にマーリンは観念したように話す。まぁ……あんなんじゃ無理もないけどね。

「あのマーリン様。聞いてもいいですか?レヴィが言っていた『大罪』を集めるって一体なんですか?」

「その言葉通りじゃ。サーシャは七つの大罪を知っておるか?傲慢・憤怒・嫉妬・怠惰・強欲・暴食・色欲の7つじゃ。奴らの糧はその大罪。常闇のレヴィは七つの大罪の『嫉妬』を司る。1000年かけて蓄積されレヴィは復活したと言うことじゃろうな。」

「えっと……つまり魔物を使って人々を襲い、その大罪を集めていると言うことですか?」

「そういう事じゃ。じゃが、しばらくレヴィの奴も動かんじゃろうな。まずは六魔将を復活させて、力を蓄えてから再び動き出すつもりじゃろ。だから今のうちに『ミスリル』を探すべきじゃな」

「あっでも大罪は七つで六魔将じゃ数が合わないですよ?」

 サーシャの疑問はごもっともね。しかしこれには理由がある。マーリンはそのままその質問に答える。

「ふむ。それは最後に復活したものが魔王になるからじゃ。簡単に言えば六魔将+魔王と言うことじゃ。そして六魔将も魔王と同じくらい強いと言うことじゃ」

「なるほど。分かりました!なら止めないとですね。頑張りましょうマーリン様!」

「うむ。とりあえず南の港に向かうぞい」

 サーシャとマーリンはこれからの事を考えながら歩き続ける。そして少しだけ歩みを止め、後ろを振り向きシャルドール防壁を見る。

「また来ます。絶対に。私たちが守り抜いたこのシャルドール防壁を見に必ず」

 サーシャは小さく呟く。その姿をマーリンは微笑みながら見つめていた。そして2人はまた歩を進める。それは、この先の平和を守るための一歩であった。

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