【大賢者の弟子?相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたので、とりあえず貴族令嬢を最強にする事に決めました。

夕姫

29. 光の勇者

29. 光の勇者



 エルフの族長のセシリアの言うことが正しければ人間がエルフの里を襲ったと言うこと。それの事実確認をするため一度バルムンド公国に戻ることにしたサーシャとマーリン。

「……な、なんですかこれは!?」

「酷いのう……」

 バルムンド公国に戻るとそこはまるで戦場のような光景が広がっていた。すでに鎮火されているが、ところどころでまだ煙が上がっている。その周りでは怪我をした兵士や住人たちがうめき声を上げながら横たわっている。

 ……仕方ないわね。まずは話を聞かないと。私はそのままサーシャに魔法で話しかけることにする。

 《サーシャ。聞こえるかしら?》

「ん?アイリス様!?」

 《良かった。私をそのまま天に掲げてくれるかしら?そして詠唱してくれる?》

 サーシャは小さく頷いて、そのまま私を天に掲げる。ここは不公平が出ないように一気に回復してあげないと。

 《我想う。救世の女神の加護において、今ここに癒しの力を与えたまえ!『エリアヒール』!!》

「我想う。救世の女神の加護において、今ここに癒しの力を与えたまえ!『エリアヒール』!!」

 掲げられた私から光が降り注ぐ。その光を受けた人々は瞬く間に傷が治っていく。これは大賢者が使える広域回復魔法。でも効果は絶大だったみたい。

「おおっ!!」

「体が軽いぞ!」

「痛みがなくなった!」

 そんなサーシャに対してそこにいた全員が驚愕した表情を浮かべている。ふふん。こんなものよ!私の力を見せ付けるにはもってこいじゃない!さあもっと崇めなさい!そう思いながらサーシャの手の中でドヤ顔を決める。……どうせ見えないけどね。

 するとそんな様子を見ていた1人の女騎士が慌てた様子で駆け寄ってくる。

「あ、あの!!あなたは一体何者なのですか!?この魔法は大賢者様しか使えないはず……いや、もしかして光の勇者様!?」

「え?え?え?ど、どういうことですか?違いますよ。私たちはただの通りすがりの冒険者です」

「いえそんなはずありません!私と一緒に城に来てください!お連れ様も一緒に!」

「あっちょっと!」

 その女騎士はサーシャの手を強引に引っ張っていく。……ちょっとやりすぎたかしら。まあいいわ。なんにせよ城に入れるみたいだし、とりあえず今は大人しくついていきましょ。

 とか自分を養護してみる。あれは仕方ないわよ?人の命がかかってるんだから。私は悪くないわ。

 城に入りそのままとすぐに玉座の間に案内された。

「ドルマン国王!伝説の光の勇者様が現れました!」

「いきなり何事だ?シャノン騎士団長?それに勇者とは?」

「はい!実は……」

 サーシャが事情を説明するとその場にいた人たち全員驚いた表情をしている。

「それは本当なのか!?」

「間違いありません!現に目の前でその光景を見ております!」

「そうか……貴殿が勇者なのか?」

「あの私はただの冒険者で……」

 サーシャはおどおどしている。なんか面白いわよねサーシャって。いつもの凛々しい姿とのギャップがあってすごく可愛いんだけど!

「ふむ……。ではそちらの方々は何用でこちらに来たのだ?」

 来たと言うより無理に連れてこられたと言う方が正しいけどね。でもせっかくのチャンスよね。それはサーシャも分かっているのかそのまま話し始める。

「その前に私はサーシャ=グレイスと申します。私がエルフの里にいたときに聞いた話なんですが、人間族による襲撃があったと聞きまして真偽の確認のために来ました」

「我がバルムンド公国が?バカなそんなわけないだろ。むしろエルフには協力を要請しようと思っていたところ……」

 そのドルマン国王の言葉を遮り、ルークはフードを取り激昂して言い放つ。

「協力だと?ふざけるな!貴様たちのせいで我が同胞は死んだのだぞ!それをよくもぬけぬけと協力などとほざけたものだな!」

「落ち着くのじゃバカ者」

 怒りをあらわにするルークにマーリンは頭をチョップする。その衝撃で我を取り戻したルークはそのまま黙り込む。

「すみません。それで話を戻しますが、私たちも最初は信じられませんでした。しかしエルフの族長セシリア様の話を聞いて嘘を言っているようには思えませんでした。」

「我がバルムンド公国が平和の誓いを破ることは決してない。それに先ほど襲われたばかりだ……魔物を引き連れたドワーフにな」

 ドルマン国王の話を聞くと、なんとセシリアと同じようなことを言っていた。となるとドワーフの部族にも話を聞く必要があるわよね?

「なるほどのう。一つ提案があるのじゃがドルマン国王」

「貴殿は?」

「ワシは大魔女マーリン。1000年前にこの世界を魔物の恐怖から救った英雄の1人じゃ。ドワーフの部族の元に行くのじゃろ?それならその役目をワシたちに任せるのはどうじゃ?」

「えぇ!?ロザリア様!?というかここでもその大魔女マーリンで押し通すんですね……」

 サーシャが呆れたような声を出す。それを聞いたドルマン国王は少し考え込んでいる。

「ふむ。先ほどのシャノンの報告から、その言葉信じるに足るものはあるのだろうが……」

「ワシらが信用できぬと言うならば、そこの優秀な騎士団長を同行させると良い」

「ふむ……。ではそうさせてもらうとしよう。すまないが頼めるだろうか?」

「任せるのじゃ。さてサーシャよ。準備をして向かうとするのじゃ。ドワーフの部族にも話を聞く。ルークもそれで良いな?」

「……分かった」

 こうして私たちはドワーフの部族の元に向かうことになったのでした。

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