【大賢者の弟子?相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたので、とりあえず貴族令嬢を最強にする事に決めました。

夕姫

20. 大賢者の相棒?

20. 大賢者の相棒?



 魔女の森の奥でロザリアと名乗る魔女に出会ったサーシャとクレア。そしてサーシャとクレアはロザリアに今までの経緯を説明する。

「……という訳で、ここに来たんです。もしかしたらすごい魔道具かも知れないと思って」

「私も聞こえたんです。そして、あの至高の神聖魔法の『ブリューナク』を使うことができた。きっと何か秘密があると思います!」

「……ほう。その剣が精霊が宿る『アイアンソード』か?」

「はい。たぶん……なんですけど……」

「ふむ。どれ見せてみよ」

 サーシャはロザリアに私を手渡す。するとロザリアはしばらくじっと見つめてから一言だけ呟いた。

「……ただの鉄じゃな。魔力もまったく感じられん。こいつは魔道具でも何でもない。ただの『アイアンソード』じゃ」

「えっ?でも確かに私は今まで何度も剣の精霊様のアイリス様に助けてもらいました!それなら……一体……」

「私が聞いた声だって間違いなんかじゃないですよね!?」

「そもそも魔法はイメージじゃ。その精霊の声を聞けたというお主達のイメージ力がこの剣にも伝わったのかも知れんのう。だが、何度見てもこいつからはなんの力も感じられぬぞ?」

 そうサーシャとクレアに言うロザリア。まぁ間違いではない。私はただの『アイアンソード』だから。

「ところでサーシャと言ったな?良くワシの結界を解除できたのう?見たところお主は剣士のように見えるが?」

「え?あの私は結界なんか解除してませんよ?」

「……どういうことじゃ?そんなわけなかろう。中には強力なものもあったはずじゃぞ?」

「えっと……私とクレアさんはここまで真っ直ぐ歩いてきました。初めは迷ったんですけど、途中からは一本道だったので……」

 ロザリアの言葉にサーシャとクレアは首を傾げている。そりゃそうよね。私がサーシャの魔力を使って勝手に結界を解除したんだから。

「……まぁ良い。今日はここに泊まって行くがよい。特にサーシャ、お主は大分疲弊しておるようじゃ」

「どうしますかクレアさん?」

「せっかくなのでお言葉に甘えましょう。ロザリア様は怖い魔女じゃなさそうですし!」

 こうしてサーシャとクレアはロザリアの家に一晩世話になることになった。夕食を食べた後、ロザリアの言うとおり疲れていたのだろう2人はすぐに眠ってしまったようだ。

 そして夜も更けたころ、扉が開き誰かが家の中に入ってきた。

「……寝ているときまでそいつを握っておるのか。余程大事な物なのじゃな。」

 ロザリア?まだ起きてたのね。まったく子供はもう寝る時間でしょうに。早く寝た方がいいわよ。って魔女だから年齢は不詳か。とか下らないことを考えているとロザリアはサーシャが握りしめている私を奪い取る。は?ちょっと何?

「少し借りるぞ」

 そう言って私をそのまま持っていく。いやーん。誘拐事件発生よ!私は必死に抵抗するが全く効果はない。そのまま家の外に出るロザリア。

 うぅ……こんなことになるなんて……。サーシャごめんなさい……。私は諦めて大人しくする。あぁ……私の剣生は短かったわね……。

「さすがにここでいいじゃろ」

 そこは家から少し離れたところにある森の中だった。そこで立ち止まるロザリア。まさかこのまま放置されるんじゃ……と思ったその時、ロザリアが私に向かって話しかけてきた。

「さて……久しぶりに面白いものを見せてもらった礼じゃ。少し話をしようではないか。お主は何者だ?」

 やっぱりバレてるわね……。仕方がないわ。ここは正直に話すしかない。ロザリア相手に黙秘をしても無駄だろうし……そんなことを思っているとロザリアが続けて話す。

「……無様じゃの。まさかこんな変哲もない『アイアンソード』などに転生するとは、大賢者が聞いて呆れる」

 ……はい?今なんとおっしゃいました?

「まだ分からぬのか?ワシじゃワシ。1000年前に一緒に旅をしたじゃろ?」

 《は?ええ!?……ワシって……心当たりは1人しかいないけど、もしかしてマーリン!?》

「そうじゃ」

 《でもあなたロザリアって……》

「ロザリアはワシの師匠の名じゃ。正体を隠すために名を借りておる。」

 《でも!それにあなたなんか小さくない!?》

「剣のお主に言われたくないがの。小さくなったのは、お主らと別れてからその反動……あの時の戦いで魔力を消耗したからじゃ。今はこの森で魔力が戻るまでひっそりと暮らしておる」

 マーリン。彼女は1000年前に私と共に魔王を倒し、魔物の恐怖から世界を救った英雄と呼ばれる人物の1人。その魔法能力は大賢者の私と遜色ないレベルだったわ……まぁ私の方が上だけどさ。

 それにしても、マジですか……まさかこの子がマーリンだとは……。全然気付かなかった。確かに言われてみると面影はある。でもあの時の凛々しい姿と比べるとかなり幼い感じになっている。ピンク髪ツインテールだし。

《でも、良く私だと分かったわね?》

「そりゃそうじゃろ。あのクレアが言っておった『ブリューナク』。あれはアイリスの得意魔法じゃろうに。それに、お主ならワシの結界を解除できたのも納得じゃしな。」

 《あら?今度はもっと強力なものを張ることをおすすめするわよ?》

「そんなことせんでも、お主くらいじゃワシの結界を解除できるのは」

 なんか懐かしいような気持ちになる。マーリンはあれからずっと生きていたのね。それだけで少し嬉しい。

「それでアイリスよ。お主はなぜこの時代に転生したのじゃ?しかも剣に宿ったままでは満足に動けまい」

 《さあね?それは神様にでも聞いてちょうだい。私だって好きで『アイアンソード』になった訳じゃないから》

「ふむ。まぁそのことは後で聞くとして、お主はこれからどうするつもりなのじゃ?」

 《どうするも何も、私はサーシャを守るだけよ。彼女を世界最強にする。そのためならなんだってやるわ!》

「ふっ……相変わらずじゃのう。大賢者の弟子か。いや相棒か?」

 相棒か……サーシャは私のこと相棒だと思っているものね。悪い気はしない。むしろ嬉しいくらい。サーシャの一番のパートナーになれるように頑張らなくちゃね!

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