【大賢者の弟子?相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたので、とりあえず貴族令嬢を最強にする事に決めました。

夕姫

16. 仲間だから

16. 仲間だから



 無事落石のトラップ(?)から私の魔法で抜け出したサーシャとクレアは目的のスケルトンナイトを討伐するために洞窟の奥へ進んでいく。

 私が見たところ。クレアはそこそこの魔力を持っているし、魔法も使える。サーシャは今まで魔法を使う人と依頼をしたり、行動したことがないから、戦闘なんかも勉強できるから私としては助かる。

「だんだん薄暗くなってきましたねクレアさん?」

「はっはい……怖いですね……」

「あの……服を引っ張られると動きづらいです」

「あぁ!ごめんなさい!」

「いえ大丈夫ですけど、魔物が来たら危ないので」

 サーシャはそう言いながら後ろを振り返る。そこには先ほどまでいなかったはずのゴーストが浮かんでいた。

「おっお化け!?」

「ひゃあ!!」

 驚きながらも体勢を整える2人。ゴーストに物理攻撃はほとんど効かない。ここはクレアの魔法で倒すしかないわよサーシャ。……と言っても私の声が聞こえているわけじゃない。サーシャはゴーストに向かって一閃を放つが、あっさりすり抜けて壁に激突してしまう。

「痛ったぁ~!」

「サーシャさん!?えっと……ホーリーボール!」

 クレアは光属性の魔法を放つと、それは見事に命中しゴーストは消滅した。まぁゴーストには光属性の攻撃が一番効果的だしね。相性が良かったわ。その後も何度かゴーストに遭遇したけど、なんとか撃破して奥へと進んで行く。

 しばらくすると、広い空間に出た。そこには多くの骨や装備品があった。おそらくこのダンジョンにあったものだろう。しかし、今はそんなことはどうでもよかった。何故なら目の前にいる大鎌を持った巨大な骸骨がこちらを見下ろしていたからだ。

「グオオォォッ!!」

「きゃあああっ!!ななななんですかあれ!?」

「落ちついて下さいクレアさん。あの魔物がスケルトンナイトじゃないんですか?」

「ちちちち違いますよ!?あんな大きいわけないじゃないですか!ここ初級冒険者が攻略する洞窟ですよ!」

「えっ!?じゃああれはなんですか!」

 あれは……『リッチ』ね……。まさかこんなところにいるなんて……。確かアンデッド系の上級モンスターだったはず。見た目通り、かなり強い部類に入る。

「グオアァッ!」

「ひっ!?」

 リッチは持っている大鎌を振り回し、サーシャたちを攻撃する。その威力はかなり高く、クレアとサーシャは吹き飛ばされてしまった。

「くぅ……うぅ……」

「いたた……クレアさん立てますか?」

「はいぃ……何とか……」

 2人は立ち上がり、再び武器を構える。それを見たリッチは再び攻撃をしてくるが、今度はサーシャが剣で防いだ。だが力が強く、サーシャは押されてしまい、また吹き飛ばされる。そして握っていた私を離してしまう。

 カランカランッと響く私。あ~!サーシャ!私だけは離しちゃダメ!サーシャは私を拾いに来ようとするが、リッチに闇魔法で拘束されてしまう。大ピンチ到来……。

「くっ……クレアさん。逃げてください!」

「だっだめです!サーシャさんを置いていけません!」

「いいから早く行ってください!」

「でっでもぉ……!」

 このままじゃ……リッチごとき私の魔法なら何とか出来るのに。でも今はサーシャが私を離してしまっている、これじゃ魔法が使えない。リッチはゆっくりとサーシャに近づく。まずいわよこれは……。そして大鎌を振り上げた瞬間。光の弾がリッチに直撃した。

「私は……逃げません!せっかく……せっかくこんな私にも仲間が出来たんですから!」

「クレアさん……」

 そう強い信念で話すクレア。身体が震えている、魔法の威力もすごいわけじゃない。それでもサーシャを、仲間を助けたいと言う気持ちが伝わってくる。その言葉を聞いてサーシャは涙ぐむ。

 そうよね。サーシャだって……没落貴族になった時、誰も助けてはくれなかった。私を買って、王都のギルドで仲間に出会った。その大切さはサーシャだって分かるはず。

「ごめんなさいクレアさん!私も!私も同じですから!お願いします、私の『アイアンソード』を拾ってください!」

「アイアンソード?あっはい!」

 サーシャの言葉を聞いたクレアはすぐに私を拾い上げるが、リッチの大鎌はもうすぐそこまで迫っている。時間がないわ!リッチはサーシャに向かって大鎌を振り下ろす。サーシャは覚悟を決めたのか目を閉じる。

「サーシャさん!!」

 こんなところで死なせないわ!あなたは私が必ず世界最強にするんだから!私は咄嗟に剣を持つクレアに叫ぶ。

 《クレア!急いで剣をリッチに向けて!時間がないわ早く!そして私に続いて詠唱して!》

「えっ!?声が!?」

 私はクレアの言葉を遮り、叫ぶように詠唱し始める。すると彼女は反射的に持っていたサーシャの剣をリッチに向ける。良かったわ……サーシャじゃなくても私の声は魔力があれば聞こえるのね?そして至高の神聖魔法を発動する。

 《光の精霊よ!我が呼びかけに応えよ!そして、我に力を与えよ!貫け……『ブリューナク』!》

「光の精霊よ!我が呼びかけに応えよ!そして、我に力を与えよ!貫け……『ブリューナク』!……へっブリューナク!!!?」

 すると剣先から強力な閃光の槍が現れ、その刹那リッチが振り下ろす大鎌より早くリッチを貫き一撃で絶命させる。

「うそ……そんな……『ブリューナク』は至高の神聖魔法で大賢者アイリス=フォン=アスタータ様しか使えないのに……どうして……」

「クレアさん!クレアさんのおかげです。ありがとうございます!」

「えっ?わわわわわ私何もしてないですよ!?」

 良かったわ……間に合った。でも……なんかいつもと違う……身体が疲れて……。もしかしたらサーシャじゃないと弊害があるのかしら?とか考える思考が……ダメ……もう寝るわ。こうしてサーシャたちを助けることができたが、私はそのまま眠りについてしまうのだった。

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