【大賢者の弟子?相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたので、とりあえず貴族令嬢を最強にする事に決めました。

夕姫

15. あなたを信じますよ

15. あなたを信じますよ



 西の洞窟を攻略中に、大きな揺れと共に岩石が落ちてくるというトラブルに巻き込まれたサーシャとクレア。とりあえず何とかしないと2人が危ないわ。

「くぅっ……!クレアさん危ないので逃げて下さい!」

「サーシャさんは!?」

「私は大丈夫ですから早く行ってください!!」

「でっ……でもサーシャさんを置いて逃げるなんて……」

「お願いします!急いでください!」

 サーシャは懸命に落ちてくる岩を弾いているが、あまりの量に弾ききれていない。このままでは押しつぶされてしまうだろう。その時、更に大量の岩が上から落ちてくる。

 《サーシャ!上よ!!》

 私は咄嵯に叫ぶ。ダメだわ。間に合わない。そう思った瞬間だった。サーシャの前にクレアが立ち塞がり両手を広げる。

「プロテクション!!」

 その言葉と同時にサーシャたちの周りを囲むように結界が現れた。

「くぅ……っ……」

「クレアさん!?」

「サーシャさん……逃げ……て……このままじゃ2人とも潰れちゃいます」

 クレアは苦しそうにしながらサーシャに逃げるように促すが、サーシャは動こうとはしない。むしろサーシャはそのまま私を握り締め構える。

「クレアさん……安心してください。必ず私が守ります」

「さ……サーシャ……さん……」

「お願い……アイリス様!力を貸して!」

 サーシャは叫びながら私を握り締める。仕方ない。状況が状況だし。この岩を吹き飛ばさないと2人は死んじゃうしね。

 《……サーシャ。私を天井に向けて構えなさい!》

「あっアイリス様!?」

 《早く!時間がないわよ!》

 私はサーシャに指示を出す。するとサーシャはすぐに行動に移す。クレアの防御魔法がいつまで持つか分からない。『ブリューナク』の件もあるから本当は軽い魔法を使いたいけど、そんなことを言ってられる状況じゃない。

「わかりました!アイリス様を信じます!!」

 《我風の精霊に願う。全てを巻き込み消し飛ばす聖なる嵐よ巻き起これ『テンペスト』!!》

「我風の精霊に願う。全てを巻き込み消し飛ばす聖なる嵐よ巻き起これ『テンペスト』!!」

 そしてそのままサーシャは私を天井に向け、私が詠唱を唱えると、私の刃の部分から風が巻き起こる。強力な魔力が集まり、それを一気に解放する。竜巻のような暴風が吹き荒れ、落ちてきた岩石を全て弾き飛ばした。そしてそのまま天井を貫き、その広い空間に光が差し込む。……むしろ天井に大きな穴まで開けてしまったわ。やり過ぎたかしら。

「え?魔法……?」

「よしっ!これで大丈夫です!ありがとうございますアイリス様!」

「えっと……サーシャさんって魔法も使えるんですか!?今のは上級魔法ですよ!?しかも風の精霊魔法と神聖魔法の混合魔法ですし!?」

「あー……えっと……まぁ……はい?」

 サーシャが少し困った表情で返事をする。まぁ普通はそうなるかしらね……。

「あのクレアさん。今のはアイリス様のおかげで……」

「アイリス様!?大賢者アイリス=フォン=アスタータ様ですか!?」

「あっいや、剣の精霊様で名前が同じなんですけど……」

 サーシャがそう言うとクレアは驚き、サーシャに詰め寄る。そして私を睨み付けるように見る。怖い。なんか別人よクレア……。

「サーシャさん!その『アイアンソード』を貸してください!」

「えっ!?あっはいどうぞ」

 サーシャは戸惑いながらもクレアに『アイアンソード』を渡す。クレアはそれを手に取ると、隅々まで確認する。いやーん。そんなところまで見ないで!

「……普通の『アイアンソード』ですね。特別な魔力も感じられません。」

「だから信じてもらえないかもしれないんですけど、本当に剣の精霊様なんです。アイリス様は。私がピンチの時に助けてくれるんです」

 クレアの言っていることは正しい。私はなんもないそこら辺に売っているただの『アイアンソード』。魔法はサーシャの魔力で発動しているだけだから、私自身には魔力はない。

 いわば私は教科書みたいな物だ、サーシャは私に言われたことを実施してるだけ。彼女は自分で魔法を使っているわけじゃない。

「サーシャさん……本当にこの剣の精霊様とお話しできるんですか?」

「はい。できますよ。と言っても私がピンチの時しか話せないんですけどね」

「……そうですか。分かりました。サーシャさんは嘘をつくような人ではないと思うので、その話は信じることにします。」

「ありがとうございます。クレアさん」

「いえ。こちらこそ疑ってしまい申し訳ありませんでした。それと先ほどは助けていただいてありがとうございました。おかげさまで命拾いしました」

 クレアは深々と頭を下げる。その姿はとても美しく見えた。この子も素直でいい子ね。今回はクレアがいなかったら助からなかったわ、サーシャにもいい経験ができたわね。

「それでは奥へと向かいましょう!クレアさん!」

「はい!サーシャさん!」

 そう言って2人は洞窟の奥へと進んでいくのでした。

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