【最強知識の聖女様】私はただの聖女なのです。本の知識は優秀なのです! ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

10. 大聖女の素質

10. 大聖女の素質



 魔女ロゼッタ=ロズウェルに招かれ、私とミルディは家の中に入る。ミルディはロゼッタに頼まれた魔道具を修理し始める。私は目の前の美味しそうな料理を見てお腹が鳴るのです。うぅ…拷問なのです。そしてロゼッタは椅子に腰かけると私を見て言うのです。

「食べても良いぞ?どうせ1人じゃ食べきれん。」

「!?いただきますなのです!」

 そう言ってテーブルに置かれた料理を食べ始める。見た目も味も完璧なのです! ミルディの分も取っておくのです!私が夢中で食べる姿をロゼッタが微笑んで見ている。ふと気になり質問してみることにしました。

「あのなんでしょうか?」

「さっきまで毒とか言っておったのに、警戒もせず良く食べるのぉ?」

「あっ。はわっ…そんな…」

「毒など入っておらん。いつの時代の魔女じゃそんなことをするのは?」

 呆れた様子で言われてしまいました……。でも確かにその通りなのです。今はもう魔法や薬などがある時代に毒を作る人は居ないですよね…。そしてロゼッタが私に質問をしてくる。

「アリーゼと言ったな?お主、聖女なのか?」

「そうなのです。でも「聖痕」が消えてしまって教会を追い出されてしまったのです!だけど私は聖女なのです。」

 私の答えを聞いてロゼッタは難しい顔をしています。何かまずいことでもあるのですか? しばらく考え込むように腕を組み目をつむりました。しばらくして目を開ける。

「ワシはかつて「聖痕」が消えた聖女に1人だけあったことがあるのじゃ…。」

「えっ「聖痕」が消えた聖女!?」

「その前に聖女という存在がなぜ生まれたのかを教えておいてやろう。」

 驚いている私に対してロゼッタは真剣な表情をして語り始めました。

 ―――約500年前、この世界には4人の勇者が魔王を倒し世界を救った。しかし倒したはずの魔王はまだ生きていたのだ。それが邪神である。

 邪神は4人の勇者を殺し世界を闇で覆いつくそうとした。だがそれを止めたのは女神だった。

 女神は自身の命と引き換えに邪神の魂を封印したのだ。その時、女神の力の一部が世界中に散らばったと言われている。

 散っていった力の一部は自然物へと姿を変えていった。そして時が流れ、女神の力の一部を宿した者達が現れた。その者たちのことを人々はいつしかこう呼ぶようになった。

【聖女】と―――――

 そこまで話してロゼッタは紅茶を一口飲み、一息ついた後また話し出した。

 ――その後世界に平和が訪れたかと思われたのだが、突如として空から黒い光の柱が立ち上りその中から魔物が現れ始めた。それを見た人々は絶望する。このままではいつか滅ぶのではないかと思ったからだ。

 しかしそんな中、立ち上がった者がいた。

 それは後に世界の奇跡と呼ばれる大聖女ディアナ。彼女は人々を救うため立ち上がり、魔物を倒すため様々な手段を模索した。

 その中の一つが身体のどこかに魔力を刻む「聖痕」を宿し、聖女が唯一使うことのできるもの。『聖魔法』。その力で世界を救ったと――

 ロゼッタの話を聞き終えると私は感心してしまった。まさかこんな歴史があったなんて知らなかったのです。本の知識以上のことを聞いて凄く勉強になったのです!

「ロゼッタありがとうなのです!為になったのです!」

「お主は本題を聞いておったのか?「聖痕」が消えた聖女それは今の話の大聖女ディアナの事なのじゃ。」

「ええ!?」

 私は驚きすぎて声が出ませんでした。

 だってそんなことがあり得るんですか?世界の教会に在籍している聖職者なら誰もが崇めている大聖女ディアナ様が!?

 混乱する頭を整理しようと努力するのです。つまり今の話が本当だとすると……その答えをロゼッタがすぐに私にくれたのです。

「お主はもしかしたら大聖女の素質があるのかもしれぬな。あくまでも可能性じゃがな。」

「私が大聖女…?」

 でももしそうだとしたら私はどうすればいいんですかね。私はもう教会の人間ではありませんし……。それに……。大聖女になるつもりなんてなかったのです……。

 私はチラッとミルディの方を見ます。ミルディは魔道具を一生懸命直しているのです。邪魔はできないのです。でもその姿を見て思ったのです。

「それなら私は世界の大聖女になるのです!決めたのです!ミルディ、私にも夢が出来たのです!」

「ゴメンなんの話?魔道具直すのに夢中であたし話聞いてなかったんだけど?」

「ふむ。面白いのう、お主は。」

「でもなぜそれをロゼッタが知ってるのです?」

「ワシは昔、大聖女ディアナと共に魔物を倒したからじゃ。その時の壮絶な戦いでにワシは魔力を失い、ディアナは「聖痕」が消えたのじゃよ。その場におったのでな。」

 はい?ロゼッタと大聖女ディアナ様が?よくわからないのです。でもロゼッタが嘘を言う理由もないですし……。

 でもロゼッタが嘘を言う理由もないですし……。ん?でもそうなるとおかしいのです。ロゼッタはいくつなのです?

「あのロゼッタっていくつなのです?」

「もう200年は生きておる。ここで魔力が戻るのを待っておるのじゃ。失った魔力はおそらくこの世界のどこかに散らばっておるからの。」

「ええ!?」

 思わず叫んでしまいました。魔女なので長生きなのは知ってましたが200歳を超えているとは思ってませんでした……。とてもじゃないけど信じられないのです……。ちなみに今は見た目は10代前半くらいにしか見えないのです。

 私にふと疑問が生まれる。私はロゼッタに聞くことにするのです。

「ロゼッタの魔力はあとどのくらいで戻るのです?」

「そうじゃのぉ……あと200年はかかるじゃろうな…。まぁもう慣れた。」

 そう話すロゼッタは寂しそうな顔をしていました。ずっと1人でここに…。私は今決めたはずなのです。だからロゼッタに言うのです!

「それなら私がロゼッタの魔力を戻すのを手伝うのです!」

「?何を言っておる。そんなこと当てもないじゃろ…。」

「ないのです。でもここにいるよりは可能性はあるのです!大聖女ディアナ様の親友ならば私が何とかするのです!ロゼッタ私と一緒に来るのです!私がロゼッタを救うのです!」

 私の発言にロゼッタはキョトンとしていたが直ぐに笑いながら話してくる。

「親友…か。アリーゼ。ワシは頑固だしワガママじゃぞ?それでも良いのか?」

「構わないのです。頑固な人やワガママな人の扱い方は本に書いてあったのです!問題ないのです!」

「お主も相当頑固じゃな。まぁここでの生活も飽きてきたころだしのぉ……。ふむ。ある程度の魔法は使える。頼るが良い。魔法鍛冶の娘もよろしくな」

「えっ!?ゴメン全然話し聞いてなかったんだけど!?」

 こうして私とミルディは極悪非道(?)の伝説の魔女ロゼッタ=ロズウェル様を仲間に加えて、今度こそ海鮮のために北の港町クレスタを目指して行くことにするのです!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品