【最強のパン屋爆誕!?】~すべてを程よく焼きつくす私の炎魔法が周りから『パン魔法』と呼ばれてなぜかバズっていた件~
36. 悔しいときもパン
36. 悔しいときもパン
静寂が辺りを包むこむ。もう朝日も上り始めている。私が言った言葉を聞いたシャノンは少し目を見開いて驚いたような表情をしたかと思うと急に大声で笑い出した。
「アハハッ!面白いことを言うのね!でも安心して。私はそんなことはしないですよ。それにしても……ふぅ~。面白い、リンネって」
「え?」
「ごめんなさい。まさかそこまで言うと思ってなかったから。……私は最初からあなたを捕まえようなんて思ってないですよ。」
どういうことだろ。よくわからない。シャノンはリーベル=アイル騎士団で赤い髪の『パン魔法』の女こと私を捕まえに来たんじゃないのかしら?
「リンネ。私はね、騎士団は目の前で困っている人を助ける存在だと思うんです。それに私は憧れている。でも今の騎士団は赤い髪の『パン魔法』の女を優先している。だから、救援依頼のあったこのミゼットを後回しにしたんです。それが許せない」
「でも、あなたは来ているじゃない?」
「それは勝手な単独行動です。団長からの命令ではありませんから。だから罰を受けると思います。私はただの団員。上司の命令には逆らえない立場ですから。悔しいです……」
そう私に話すシャノン。どことなく悲しそうで、とても悔しそうな表情をしている。そして私にこうも言ってくれる。
「でも……良かった。リンネあなたがいてくれて、そのおかげでミゼットを守ることが出来た。ありがとうございます。騎士団として感謝します。」
深々とお辞儀をするシャノン。騎士団はまだまだ男社会。彼女なりの精一杯の反抗なのね。やっぱりこの子は悪い子じゃないわ。私はシャノンの肩をポンッと叩いて笑顔で言うことにする。
「あなたは素晴らしい騎士だと思うわ。だから顔を上げて!そしてこれからもリーベル=アイル騎士団として頑張ってほしいわ。私も応援するから。」
「リンネ……」
「パン食べる?悔しいときはパンでしょ?とびきり美味しいの作ってあげるわ!せっかくだからミゼットの街のみんなにも配ってあげましょ。資金に余裕があるし、不安な気持ちを抱えてると思うから。シャノンあなたも手伝って?」
「リンネ……はい!」
こうして私とシャノンはミゼットの街に戻り住民を元気づけるためにパンを作ることになった。
それからしばらくして、私はみんなと合流して事情を話したあと、街の広場にいた。
勝手に本日限りの『魔女のパン屋』を開くことにしたのだ。あのフィーナが描いてくれた看板も出してある。もちろんシャノンも一緒だ。意外にエプロン姿も似合っていて可愛い。フィーナはさすがに人間なれしてないので、私と共にパンを焼く。
そこには多くの住民が集まり、そしてその中心にあるのは私の作った大量のパンたち。
「はい!焼きたてよ!今日はこのパンを食べて元気出しなさい!不安なんかすぐに吹っ飛ぶわよ!ほらシャノン渡してあげて」
「あっはい」
「ボクもルチアさんも一緒に配りますから。」
「頑張ってシャノンお姉ちゃん!」
私は大きめのバスケットに入ったパンをシャノンに手渡すと、それを次々と渡し住民が受け取っていく。
「うわぁー!!なんだこれ!?めちゃくちゃうまいぞ!」
「こんなの食べたことがない!それに見た目も綺麗だし、なんて甘い匂いがするんだ!」
「ほんとね!すごく柔らかいわ!それにこの黄色いのは何!?」
住民たちが口々に感想を言うのを聞きながら私は次から次にパンを渡していく。すると、一人の女性がシャノンに声をかける。
「あ、あの……」
「どうかしましたか?」
女性は少し言いづらそうにしている。
「私と息子は小麦アレルギーで……そのすいません」
「そうだったんですね……ちょっとこちらで待っててください」
するとシャノンは女性とその息子を連れてくる。
「リンネ。パン以外に何かないですか?こちらの親子が小麦アレルギーらしくて。せっかく来てくれたのにミゼットの街のみんなには喜んでほしいから……お願い!」
「ええ。もちろんいいわ!じゃあ少し待っていて。フィーナこの前の残ってたわよね?」
「もちろんです~!」
私はこの前作った米粉のパンを焼き上げることにする。今回はそれの生地に野菜や果物の汁を練り込み焼く。そして焼き上がったそれを手渡す。
「これは小麦の入っていないパンよ。それにこの中に混ぜているのは栄養たっぷりの野菜や果物。だから大丈夫よ。試しに少しだけ口に含んでみて?」
「わ、わかりました。」
恐る恐るという感じで受け取るとゆっくりと口に入れる。するとどうだろう。その表情はとても柔らかく、そして優しい表情になっている。
「これは……とても甘くて、それにとても美味しい……!私、今までこんなの食べたことないわ!!」
「お母さんボクも欲しい!」
「はいはい!まだあるから。遠慮しないでどんどん食べて」
するとシャノンは私の隣に来て言う。
「ありがとう。リンネのおかげでミゼットのみんなの笑顔が見れたわ。本当にありがとう」
「お客様に満足してもらうのがパン屋としての務めだからね。というか、シャノンあなた接客向いてるんじゃない?騎士団辞めて私のパン屋で働く?」
「ふふ。それは考えておきます」
「あら残念ね」
私たちはお互いに笑いあう。そのあともパンを焼き続けてミゼットの街のみんなに笑顔が戻った。一時は魔物に襲われるかもしれないという不安もあったと思うけど、今は誰もがそんなことは微塵も感じさせないほどの笑顔だった。
「リンネ様~そろそろ閉めましょう~」
「それではみなさま、いつかまたご来店お待ちしております。本日限定の『魔女のパン屋』でした。」
こうして私たちの一日だけのパン屋は終わりを告げるのであった。
静寂が辺りを包むこむ。もう朝日も上り始めている。私が言った言葉を聞いたシャノンは少し目を見開いて驚いたような表情をしたかと思うと急に大声で笑い出した。
「アハハッ!面白いことを言うのね!でも安心して。私はそんなことはしないですよ。それにしても……ふぅ~。面白い、リンネって」
「え?」
「ごめんなさい。まさかそこまで言うと思ってなかったから。……私は最初からあなたを捕まえようなんて思ってないですよ。」
どういうことだろ。よくわからない。シャノンはリーベル=アイル騎士団で赤い髪の『パン魔法』の女こと私を捕まえに来たんじゃないのかしら?
「リンネ。私はね、騎士団は目の前で困っている人を助ける存在だと思うんです。それに私は憧れている。でも今の騎士団は赤い髪の『パン魔法』の女を優先している。だから、救援依頼のあったこのミゼットを後回しにしたんです。それが許せない」
「でも、あなたは来ているじゃない?」
「それは勝手な単独行動です。団長からの命令ではありませんから。だから罰を受けると思います。私はただの団員。上司の命令には逆らえない立場ですから。悔しいです……」
そう私に話すシャノン。どことなく悲しそうで、とても悔しそうな表情をしている。そして私にこうも言ってくれる。
「でも……良かった。リンネあなたがいてくれて、そのおかげでミゼットを守ることが出来た。ありがとうございます。騎士団として感謝します。」
深々とお辞儀をするシャノン。騎士団はまだまだ男社会。彼女なりの精一杯の反抗なのね。やっぱりこの子は悪い子じゃないわ。私はシャノンの肩をポンッと叩いて笑顔で言うことにする。
「あなたは素晴らしい騎士だと思うわ。だから顔を上げて!そしてこれからもリーベル=アイル騎士団として頑張ってほしいわ。私も応援するから。」
「リンネ……」
「パン食べる?悔しいときはパンでしょ?とびきり美味しいの作ってあげるわ!せっかくだからミゼットの街のみんなにも配ってあげましょ。資金に余裕があるし、不安な気持ちを抱えてると思うから。シャノンあなたも手伝って?」
「リンネ……はい!」
こうして私とシャノンはミゼットの街に戻り住民を元気づけるためにパンを作ることになった。
それからしばらくして、私はみんなと合流して事情を話したあと、街の広場にいた。
勝手に本日限りの『魔女のパン屋』を開くことにしたのだ。あのフィーナが描いてくれた看板も出してある。もちろんシャノンも一緒だ。意外にエプロン姿も似合っていて可愛い。フィーナはさすがに人間なれしてないので、私と共にパンを焼く。
そこには多くの住民が集まり、そしてその中心にあるのは私の作った大量のパンたち。
「はい!焼きたてよ!今日はこのパンを食べて元気出しなさい!不安なんかすぐに吹っ飛ぶわよ!ほらシャノン渡してあげて」
「あっはい」
「ボクもルチアさんも一緒に配りますから。」
「頑張ってシャノンお姉ちゃん!」
私は大きめのバスケットに入ったパンをシャノンに手渡すと、それを次々と渡し住民が受け取っていく。
「うわぁー!!なんだこれ!?めちゃくちゃうまいぞ!」
「こんなの食べたことがない!それに見た目も綺麗だし、なんて甘い匂いがするんだ!」
「ほんとね!すごく柔らかいわ!それにこの黄色いのは何!?」
住民たちが口々に感想を言うのを聞きながら私は次から次にパンを渡していく。すると、一人の女性がシャノンに声をかける。
「あ、あの……」
「どうかしましたか?」
女性は少し言いづらそうにしている。
「私と息子は小麦アレルギーで……そのすいません」
「そうだったんですね……ちょっとこちらで待っててください」
するとシャノンは女性とその息子を連れてくる。
「リンネ。パン以外に何かないですか?こちらの親子が小麦アレルギーらしくて。せっかく来てくれたのにミゼットの街のみんなには喜んでほしいから……お願い!」
「ええ。もちろんいいわ!じゃあ少し待っていて。フィーナこの前の残ってたわよね?」
「もちろんです~!」
私はこの前作った米粉のパンを焼き上げることにする。今回はそれの生地に野菜や果物の汁を練り込み焼く。そして焼き上がったそれを手渡す。
「これは小麦の入っていないパンよ。それにこの中に混ぜているのは栄養たっぷりの野菜や果物。だから大丈夫よ。試しに少しだけ口に含んでみて?」
「わ、わかりました。」
恐る恐るという感じで受け取るとゆっくりと口に入れる。するとどうだろう。その表情はとても柔らかく、そして優しい表情になっている。
「これは……とても甘くて、それにとても美味しい……!私、今までこんなの食べたことないわ!!」
「お母さんボクも欲しい!」
「はいはい!まだあるから。遠慮しないでどんどん食べて」
するとシャノンは私の隣に来て言う。
「ありがとう。リンネのおかげでミゼットのみんなの笑顔が見れたわ。本当にありがとう」
「お客様に満足してもらうのがパン屋としての務めだからね。というか、シャノンあなた接客向いてるんじゃない?騎士団辞めて私のパン屋で働く?」
「ふふ。それは考えておきます」
「あら残念ね」
私たちはお互いに笑いあう。そのあともパンを焼き続けてミゼットの街のみんなに笑顔が戻った。一時は魔物に襲われるかもしれないという不安もあったと思うけど、今は誰もがそんなことは微塵も感じさせないほどの笑顔だった。
「リンネ様~そろそろ閉めましょう~」
「それではみなさま、いつかまたご来店お待ちしております。本日限定の『魔女のパン屋』でした。」
こうして私たちの一日だけのパン屋は終わりを告げるのであった。
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