【最強のパン屋爆誕!?】~すべてを程よく焼きつくす私の炎魔法が周りから『パン魔法』と呼ばれてなぜかバズっていた件~

夕姫

35. 責任は上司が取ります

35. 責任は上司が取ります



 私とエドは鉱山の街ミゼットで大量発生した魔物を倒すために近くの鉱山に向かった。案の定、そこには魔物がひしめいていた。騎士団が向かっているけど、間に合わない。

 だから私がミゼットを救って、危険人物という誤解を解こうと決意した。

「じゃあパパッと焼き上げちゃいましょうかね。エドは万が一私が倒し損ねた魔物をお願いね」

「本当にあの数の魔物を倒すんですか?」

「あら?疑ってるの?」

「いえ、そういうわけじゃないんですけど……あの数ですよ?」

「まぁ見てなさい!」

 私はその大量の魔物の前に歩いていく。端から見ればただの自殺行為だろうけど、私にはただの大量注文だから。

 すると魔物たちは私に気づいたのか一斉に襲いかかってくる。まずはコボルトの軍勢だ。

「ふむ。体長1.7メートル、水分量74%~76%。シンプルバゲットにしようかしら。」

 私は右手を突きだし炎魔法を詠唱し発動する。

「炎の意志、我が手に集いて焼き払え!《フレアバレット》!」

 私の手から出た炎の弾丸は次々とコボルトたちを撃ち抜いていき一瞬にして焼き払う。次はオークたちの群れだ。私は左手を突きだす。

「体長1.9メートル、水分量72%~75%。質量多め、固めのカンパーニュね。炎の竜の怒り、我が手に集いて焼き尽くせ!《ドラゴンスレイヤー》!」

 今度は私の左手から大きな火柱が立ち上りそこから炎の龍が現れる。そしてそれはどんどん大きくなりながらオークたちを呑み込んでいった。

「おぉ……」

 後ろでエドが感嘆の声を上げる。ちょっと嬉しいかも……。次に現れたのは大きな牛型の魔物だった。

「あれはミノタウロスですよリンネ様!」

「へぇーそうなんだ。まぁ関係ないけど。」

 私は両手を前に突き出す。

「体長2.5メートル、水分量78%~80%。水分量が多いから、ハード系のパンにしましょう。炎の獣の怒り、我が手に集いて焼き払え!《フレイムビースト》!」

 今度は両手からそれぞれ一匹ずつの炎でできた狼が出てくる。二匹の炎の狼はミノタウロスに向かって走り出し、あっという間に丸焼きにする。

 そしてそのあとも様々な魔物が襲いかかってくるが、全て一撃で焼き上げていく。気づけばもう残りわずかになっていた。

「よし!これで最後ね!ご注文は……」

 最後の一体となったトロールを倒そうとしたその時、突然トロールの動きが変わった。なんと今まで攻撃していたはずの私たちを無視して街の方へと走っていったのだ。

「なっ!?待ちなさい!!」

「リンネ様!?追いかけないと!」

 私は急いで追いかける。往生際が悪いわよトロール!

「待てこらあああ!!!」

 私は全速力で走るが追いつけない。なんて速さなの!?それに体力も半端じゃないみたい。

「ヤバい!このままだと街に入っちゃうじゃない!」

 その時だった。目の前のトロールが一瞬ピタッと止まったと思ったら、その瞬間真っ二つになり倒れたのだ。そしてその視界の先には美しい青い髪を束ねている女性がいた。

「あ。」

「あれ?リンネ?」

「シャノン……」

 マジ?リーベル=アイル騎士団が来ちゃったんだけど!?どうする……どうやって誤魔化そう……。

「まさかこんなところで会うとは思わなかったわ!」

「そ、そうね。偶然よね!」

「というと思った?……リンネ。あなたが本当に赤い髪の『パン魔法』の女なのね。あの時私を騙したのね!」

 騙したつもりはない。あの時は芋虫の魔物がでてきたから。

「えっと……ほら!なんか変な噂が流れてるけど、私はただのパン屋だから!」

「へぇ~。じゃあその証拠はあるのかしら?この先の鉱山を見たら大量発生した魔物がこんがり焼かれてたりしない?」

「それは……」

「今ここには私だけが来ているわ。他の騎士団はいない。本当のことを話してリンネ」

 どうあがいても無理そうだ。私は深く溜め息をついてエドに話す。

「はぁ、ごめんエド。先にフィーナとルチアのところに戻っててくれない?」

「でもリンネ様……」

「私は大丈夫だから。あと街のみんなに魔物は倒したと伝えておいて」

 エドは辛そうな顔をしているが、私を信じてくれたのか渋々といった感じで街に帰って行った。本当にいい部下を持ったものだ。

 そして私とシャノンだけがそこに残る。とても真剣な顔をしている。

「さぁ聞かせてもらうわよリンネ。あなたのこと」

「わかったわ。だけどその前に一つだけ言わせて」

 私は深呼吸をして気持ちを整える。

「私はただのパン屋よ。それ以上でもそれ以下でもない。あの子達にはなにもしないで、これは私が巻き込んだだけだから。もしあの子達に何かあれば私はリーベル=アイル騎士団だって許さない!」

 私は、覚悟を持って真っ直ぐにシャノンの目を見て言った。

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