【最強のパン屋爆誕!?】~すべてを程よく焼きつくす私の炎魔法が周りから『パン魔法』と呼ばれてなぜかバズっていた件~
25. どこも人手不足なの
25. どこも人手不足なの
ニルバの街の北西。旅人が立ち入るとたちまち迷ってしまうという森が、その方角にある。日当たりの悪いせいか、鬱蒼とした木立のせいで薄暗いし、昼間だというのに妙に肌寒く感じられる。
「ここに『奇跡の花』があるのね……」
「あのリンネ様……なんか不気味じゃないですか?その……出そうっていうか」
「なにエド怖いの?さっきはやる気まんまんじゃなかった?」
「そっそれはそうなんですけど、ほら、なんていうか、やっぱりこういうのって……」
エドはそう言いかけてふとルチアのほうを見ると、ルチアもちょっと怯えたような顔をしていた。無理もない。ただ花を採りに行くだけなのに、こんなにも不気味な場所なんだから。
「とか言ってみたりして!まぁボクの魔法があれば大丈夫ですよ!」
「そう。なら先頭お願いねエド。男の子でしょ?」
「え。あ……はい」
しぶしぶ先頭を歩くことになったエドは、すっかり意気消沈した様子だった。自分で言ったことは守るようにしないと。
私たちはそのまま森の中へ入っていく。森の中は予想以上に暗かった。木々の葉の間からはわずかに光が差し込んでいるものの、それでも空はひどく曇っているみたいだ。それに地面を覆う草は背が高く、足を踏み入れるたびに私の膝くらいまで伸びた葉っぱが邪魔をする。
「歩きづらいです~歩きながら潰しちゃいますか?この草?」
「フィーナお姉ちゃん気をつけて。この葉っぱには少し毒があって、時々皮膚病になったりするの。あまり触れないほうがいいよ」
「そうなんですか!?ひゃあっ!」
足元に注意していなかったのか、フィーナは木の根っこにつまずいて転んでしまった。おい。どこが森はエルフの家だ。私は慌てて駆け寄るとフィーナを抱き起こす。幸い怪我はないようだけれど、少し服が汚れてしまった。
「大丈夫フィーナ?」
「はい~……お胸がクッションになって助かりました~リンネ様なら顔を擦りむいてますよね~」
私は無言でフィーナの両肩を握りつぶすように掴んだ。
「いたたたた!!冗談ですってば~!!」
「まったくもう。それより気をつけなさいよ」
「はい~」
それにしても……不思議なことにこの森に入ってからというもの、私たち以外の生き物の気配はまったく感じられない。鳥の声ひとつ聞こえないし、風さえも吹かないのだ。
まるで時の流れに取り残されたかのような静寂の中、私たち四人は黙々と歩き続けた。そしてしばらくすると、前方からかすかに水の流れる音が聞こえてきた。
「水の音ですね……」
「近くに川でもあるのかもしれないわね。でも油断しないで。この森ではどこにどんな危険があるかわからないから」
やがて視界が大きく開けると、そこには澄みきった水がこんこんと湧き出る泉があった。辺り一面に色とりどりの花々が咲き誇り、その中央には小さな祠のようなものが建っている。
「綺麗なところですね~。エルフの里の近くにもこんな感じの湖がありましたっけ……」
フィーナは少し俯きながら言う。それはきっと故郷を思い浮かべているのだろう。
「とりあえずここで一度休憩にしましょう。エド石窯を魔法でお願いね。そのあとはルチアと水を汲んできて。私はフィーナとパンを焼くから」
「わかりました。行きましょうルチアさん」
「はーい!」
二人は元気よく返事を返すと、それぞれ言われたことを始めた。そしてそれを見ていたフィーナがニヤニヤしながら話しかけてくる。
「ふふリンネ様は優しいです」
「なにが?」
「二人きりにしてあげたんじゃないですかエド君とルチアちゃんを?」
「そんなんじゃないわよ。つまらないこと言ってないで、パン生地こねてくれない?」
私がそう言うと、フィーナは少し不満げながらも手際良く作業を始める。そしてそれを石窯に入れ、待つことにする。
「リンネ様。聞いてもいいですか?」
「なにフィーナ?」
「私……看板娘になれますかね?ちょっとだけ不安なんです。迷惑じゃないかって。エルフだし、人間はやっぱり怖いですし……」
正直、人間の中にも他の種族を毛嫌いしている人もいる。けれどフィーナは少なくとも私の前ではいつも笑顔を絶やさない。それどころかこうして旅にもついてきてくれてる。不安なのは分かる、だから……。
「フィーナ。なってくれないと困るわよ。今さら新しい従業員なんか探せないもの。どこも人手不足なの。」
「リンネ様……」
「それに……あなたは、エドやルチアときちんと話せているじゃない。大丈夫。フィーナはきっと素晴らしい看板娘になれるわ。私が保証してあげる」
「……ありがとうございます」
それからしばらくして、エドたちが戻ってきた。私たちは出来上がったばかりのパンを頬張り、『奇跡の花』を見つけるために再び出発することにしたのだった。
ニルバの街の北西。旅人が立ち入るとたちまち迷ってしまうという森が、その方角にある。日当たりの悪いせいか、鬱蒼とした木立のせいで薄暗いし、昼間だというのに妙に肌寒く感じられる。
「ここに『奇跡の花』があるのね……」
「あのリンネ様……なんか不気味じゃないですか?その……出そうっていうか」
「なにエド怖いの?さっきはやる気まんまんじゃなかった?」
「そっそれはそうなんですけど、ほら、なんていうか、やっぱりこういうのって……」
エドはそう言いかけてふとルチアのほうを見ると、ルチアもちょっと怯えたような顔をしていた。無理もない。ただ花を採りに行くだけなのに、こんなにも不気味な場所なんだから。
「とか言ってみたりして!まぁボクの魔法があれば大丈夫ですよ!」
「そう。なら先頭お願いねエド。男の子でしょ?」
「え。あ……はい」
しぶしぶ先頭を歩くことになったエドは、すっかり意気消沈した様子だった。自分で言ったことは守るようにしないと。
私たちはそのまま森の中へ入っていく。森の中は予想以上に暗かった。木々の葉の間からはわずかに光が差し込んでいるものの、それでも空はひどく曇っているみたいだ。それに地面を覆う草は背が高く、足を踏み入れるたびに私の膝くらいまで伸びた葉っぱが邪魔をする。
「歩きづらいです~歩きながら潰しちゃいますか?この草?」
「フィーナお姉ちゃん気をつけて。この葉っぱには少し毒があって、時々皮膚病になったりするの。あまり触れないほうがいいよ」
「そうなんですか!?ひゃあっ!」
足元に注意していなかったのか、フィーナは木の根っこにつまずいて転んでしまった。おい。どこが森はエルフの家だ。私は慌てて駆け寄るとフィーナを抱き起こす。幸い怪我はないようだけれど、少し服が汚れてしまった。
「大丈夫フィーナ?」
「はい~……お胸がクッションになって助かりました~リンネ様なら顔を擦りむいてますよね~」
私は無言でフィーナの両肩を握りつぶすように掴んだ。
「いたたたた!!冗談ですってば~!!」
「まったくもう。それより気をつけなさいよ」
「はい~」
それにしても……不思議なことにこの森に入ってからというもの、私たち以外の生き物の気配はまったく感じられない。鳥の声ひとつ聞こえないし、風さえも吹かないのだ。
まるで時の流れに取り残されたかのような静寂の中、私たち四人は黙々と歩き続けた。そしてしばらくすると、前方からかすかに水の流れる音が聞こえてきた。
「水の音ですね……」
「近くに川でもあるのかもしれないわね。でも油断しないで。この森ではどこにどんな危険があるかわからないから」
やがて視界が大きく開けると、そこには澄みきった水がこんこんと湧き出る泉があった。辺り一面に色とりどりの花々が咲き誇り、その中央には小さな祠のようなものが建っている。
「綺麗なところですね~。エルフの里の近くにもこんな感じの湖がありましたっけ……」
フィーナは少し俯きながら言う。それはきっと故郷を思い浮かべているのだろう。
「とりあえずここで一度休憩にしましょう。エド石窯を魔法でお願いね。そのあとはルチアと水を汲んできて。私はフィーナとパンを焼くから」
「わかりました。行きましょうルチアさん」
「はーい!」
二人は元気よく返事を返すと、それぞれ言われたことを始めた。そしてそれを見ていたフィーナがニヤニヤしながら話しかけてくる。
「ふふリンネ様は優しいです」
「なにが?」
「二人きりにしてあげたんじゃないですかエド君とルチアちゃんを?」
「そんなんじゃないわよ。つまらないこと言ってないで、パン生地こねてくれない?」
私がそう言うと、フィーナは少し不満げながらも手際良く作業を始める。そしてそれを石窯に入れ、待つことにする。
「リンネ様。聞いてもいいですか?」
「なにフィーナ?」
「私……看板娘になれますかね?ちょっとだけ不安なんです。迷惑じゃないかって。エルフだし、人間はやっぱり怖いですし……」
正直、人間の中にも他の種族を毛嫌いしている人もいる。けれどフィーナは少なくとも私の前ではいつも笑顔を絶やさない。それどころかこうして旅にもついてきてくれてる。不安なのは分かる、だから……。
「フィーナ。なってくれないと困るわよ。今さら新しい従業員なんか探せないもの。どこも人手不足なの。」
「リンネ様……」
「それに……あなたは、エドやルチアときちんと話せているじゃない。大丈夫。フィーナはきっと素晴らしい看板娘になれるわ。私が保証してあげる」
「……ありがとうございます」
それからしばらくして、エドたちが戻ってきた。私たちは出来上がったばかりのパンを頬張り、『奇跡の花』を見つけるために再び出発することにしたのだった。
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