【最強のパン屋爆誕!?】~すべてを程よく焼きつくす私の炎魔法が周りから『パン魔法』と呼ばれてなぜかバズっていた件~
23. 飼い主に似るって本当ね
23. 飼い主に似るって本当ね
私たちの初めてパンの手売りをした翌日。朝、いつもより早く目が覚めてしまった私は、窓を開けると心地よい風が吹いてくる。
「んー……気持ちいいわね」
昨日はあれだけ忙しかったし、あんなにパンを焼いたこともなかった。身体は疲れているはずなのに、妙に気分が高揚しているせいか、すぐに眠気が吹き飛んでしまった。
「……よし!」
せっかく早起きしたんだから、朝の散歩でもしてこようかな?まだフィーナとエドは寝ているし起こすのも悪いわね。そう思った私は、手早く着替えて、厨房を借りて朝ごはんのバゲットを焼く。そしてナイフで食べやすいサイズに切ってバスケットに入れて宿屋を出ることにする。
「ピーッ」
「あら。おはようピー助。あなたも一緒に散歩に行く?」
「ピィ~」
すると私の肩に乗ってきたピー助が頬ずりしてくる。どうやら私と一緒に行きたいみたいだ。最近私にも懐いてきたなこのピー助。
「じゃあ行くわよ。しっかり掴まってるのよ?」
「ピッ!!」
こうして私はピー助と共に、早朝の街へと繰り出すことにした。
「ふぅ~やっぱりこの街もいい街よね……」
私が今いるニルバはエラドールほど賑やかな街並みではないけど、それでも十分に活気のある街の通りを歩いていく。
そして私は近くの公園まで来ると、ベンチに座って一休みすることにした。
「うーん……たまには朝早くから動くのもいいわね」
「ピィー」
隣でお座りをしているピー助は欠伸をしながら首を傾げている。そんな姿を見ながら、私はつい笑みを浮かべてしまう。
「ふふ。……あなたってば本当に可愛いわね」
「ピーッ!」
頭を撫でると嬉しそうな鳴き声を上げるピー助。可愛くて仕方ない。それからしばらく休んでいると……。
「ん?あの子は確か……」
少し離れた場所にある噴水広場に見覚えのある女の子がいた。それは昨日フィーナがパンをあげた少女だった。
「……」
何やら俯きながら落ち込んでいる様子の少女。こんな時間に1人で何をしているのかしら?気になった私はその少女の元へと向かうことにした。
「ねぇあなた。昨日私のパン屋に来てた子よね?こんなところでどうしたの?」
「えっ……魔女のパン屋さん?」
「ええ。そうよ」
「あっ……ごめんなさい!私お金ないです!ひどいことしないで!あとお姉ちゃんを怒らないで!うぅ……」
私が声をかけるとその少女はビクッとして慌て始める。そしてすぐに泣き出してしまった。
「ちょ、ちょっと待って!?別に何もしないわよ!!ほら、泣かないの。大丈夫だから落ち着いて?」
慌てて慰めようとするけれど中々上手くいかない。何とか泣き止んでもらおうと色々と試してみる。
「そうだわ!はいこれあげるから元気出して?」
そう言って私は持っていたバスケットの中から焼きたてのバゲットを取り出す。
「……パン?」
「ええ。さっき焼いたばかりなんだけど良かったら食べてみて?」
「……うん!」
私が差し出したバゲットを見て涙目になりながらも笑顔を見せる少女。とりあえずこれで一安心ね。私はホッと胸を撫で下ろす。そして私たちは並んでベンチに座ったまま、仲良くバゲットを食べ始めた。
「美味しい……」
「ありがとう。それならよかったわ」
「ピーッ!ピーッ!」
「ピー助にはバゲットは固いわよ?これで我慢しなさい」
「ピィ……」
悲しげな表情を浮かべるピー助を横目に、私はバスケットに入っていたパンくずを手に取るとそれをピー助に与える。するとピー助はすぐに飛びついて食べていた。……フィーナみたいに単純な子ねピー助も。飼い主に似るってよく言うけど本当だわ。
「私はリンネ=フルール。あなたの名前は?」
「私はルチア」
「ルチアか。可愛い名前ね?」
「うん!お母様がつけてくれたの!」
それからルチアは自分ことを色々話してくれた。この子はスラムに住んでいる孤児で、母親は数年前に病気で亡くなったらしい。今は何とかその日暮らしをしているけど、最近は食べる物もなくて困っていたとのこと。
「そっか……」
この子の事情を聞いて思わず暗い気持ちになってしまう。この歳で母親を失ってしまったなんて辛いだろうな……。
「ねぇリンネ様。魔女ならすご~い魔法使えるの?」
「すご~い魔法かは分からないけど、使えるわよ」
「私も……魔法が使えたならなぁ……」
そう言ってルチアは一枚のボロボロになった紙切れを取り出す。それを横目で見るとギルドの依頼書のようだ。
「北西にある迷いの森で『奇跡の花』の採取……」
「……私ね、お花屋さんになりたいの。こんな素敵な花を採取できたら夢が叶うような気がするんだぁ。それにお母様もお花が好きだったから……絶対お花屋さんになりたい」
この子は本気で花屋さんを目指している。パン屋になりたいと言う夢を持つ私と同じ。そう……こんなにも素直に生きている。どんなに苦しくても一生懸命に。だからこそ、私はこの子に何かしてあげたいと思った。でもそれとこの子のように素直に生きたいと言う気持ちにもなった。
「よし!ルチア、その『奇跡の花』を取りに行きましょ?」
「え?」
「私に任せなさい!こう見えても私は凄腕の魔女なんだから!」
「でも私……お金持ってないよ?」
「いいわよ別に。これは私が勝手にやってることだし、お礼とかはいらないわ。その代わり約束して欲しいことがあるの」
「約束?」
私はルチアの目を真っ直ぐ見て伝える。お節介かもしれないけど、私もあなたから教えてもらったから。
「絶対に諦めないこと。そして最後まで希望を捨てずに頑張ること。それが出来るなら、私はあなたの力になるわ。あなたの夢への一歩を私にお手伝いさせて?」
「……リンネ様ありがとう!私絶対諦めない!頑張ってお花を見つける!!」
こうして私はルチアと一緒に『奇跡の花』を探すことになったのだった。
私たちの初めてパンの手売りをした翌日。朝、いつもより早く目が覚めてしまった私は、窓を開けると心地よい風が吹いてくる。
「んー……気持ちいいわね」
昨日はあれだけ忙しかったし、あんなにパンを焼いたこともなかった。身体は疲れているはずなのに、妙に気分が高揚しているせいか、すぐに眠気が吹き飛んでしまった。
「……よし!」
せっかく早起きしたんだから、朝の散歩でもしてこようかな?まだフィーナとエドは寝ているし起こすのも悪いわね。そう思った私は、手早く着替えて、厨房を借りて朝ごはんのバゲットを焼く。そしてナイフで食べやすいサイズに切ってバスケットに入れて宿屋を出ることにする。
「ピーッ」
「あら。おはようピー助。あなたも一緒に散歩に行く?」
「ピィ~」
すると私の肩に乗ってきたピー助が頬ずりしてくる。どうやら私と一緒に行きたいみたいだ。最近私にも懐いてきたなこのピー助。
「じゃあ行くわよ。しっかり掴まってるのよ?」
「ピッ!!」
こうして私はピー助と共に、早朝の街へと繰り出すことにした。
「ふぅ~やっぱりこの街もいい街よね……」
私が今いるニルバはエラドールほど賑やかな街並みではないけど、それでも十分に活気のある街の通りを歩いていく。
そして私は近くの公園まで来ると、ベンチに座って一休みすることにした。
「うーん……たまには朝早くから動くのもいいわね」
「ピィー」
隣でお座りをしているピー助は欠伸をしながら首を傾げている。そんな姿を見ながら、私はつい笑みを浮かべてしまう。
「ふふ。……あなたってば本当に可愛いわね」
「ピーッ!」
頭を撫でると嬉しそうな鳴き声を上げるピー助。可愛くて仕方ない。それからしばらく休んでいると……。
「ん?あの子は確か……」
少し離れた場所にある噴水広場に見覚えのある女の子がいた。それは昨日フィーナがパンをあげた少女だった。
「……」
何やら俯きながら落ち込んでいる様子の少女。こんな時間に1人で何をしているのかしら?気になった私はその少女の元へと向かうことにした。
「ねぇあなた。昨日私のパン屋に来てた子よね?こんなところでどうしたの?」
「えっ……魔女のパン屋さん?」
「ええ。そうよ」
「あっ……ごめんなさい!私お金ないです!ひどいことしないで!あとお姉ちゃんを怒らないで!うぅ……」
私が声をかけるとその少女はビクッとして慌て始める。そしてすぐに泣き出してしまった。
「ちょ、ちょっと待って!?別に何もしないわよ!!ほら、泣かないの。大丈夫だから落ち着いて?」
慌てて慰めようとするけれど中々上手くいかない。何とか泣き止んでもらおうと色々と試してみる。
「そうだわ!はいこれあげるから元気出して?」
そう言って私は持っていたバスケットの中から焼きたてのバゲットを取り出す。
「……パン?」
「ええ。さっき焼いたばかりなんだけど良かったら食べてみて?」
「……うん!」
私が差し出したバゲットを見て涙目になりながらも笑顔を見せる少女。とりあえずこれで一安心ね。私はホッと胸を撫で下ろす。そして私たちは並んでベンチに座ったまま、仲良くバゲットを食べ始めた。
「美味しい……」
「ありがとう。それならよかったわ」
「ピーッ!ピーッ!」
「ピー助にはバゲットは固いわよ?これで我慢しなさい」
「ピィ……」
悲しげな表情を浮かべるピー助を横目に、私はバスケットに入っていたパンくずを手に取るとそれをピー助に与える。するとピー助はすぐに飛びついて食べていた。……フィーナみたいに単純な子ねピー助も。飼い主に似るってよく言うけど本当だわ。
「私はリンネ=フルール。あなたの名前は?」
「私はルチア」
「ルチアか。可愛い名前ね?」
「うん!お母様がつけてくれたの!」
それからルチアは自分ことを色々話してくれた。この子はスラムに住んでいる孤児で、母親は数年前に病気で亡くなったらしい。今は何とかその日暮らしをしているけど、最近は食べる物もなくて困っていたとのこと。
「そっか……」
この子の事情を聞いて思わず暗い気持ちになってしまう。この歳で母親を失ってしまったなんて辛いだろうな……。
「ねぇリンネ様。魔女ならすご~い魔法使えるの?」
「すご~い魔法かは分からないけど、使えるわよ」
「私も……魔法が使えたならなぁ……」
そう言ってルチアは一枚のボロボロになった紙切れを取り出す。それを横目で見るとギルドの依頼書のようだ。
「北西にある迷いの森で『奇跡の花』の採取……」
「……私ね、お花屋さんになりたいの。こんな素敵な花を採取できたら夢が叶うような気がするんだぁ。それにお母様もお花が好きだったから……絶対お花屋さんになりたい」
この子は本気で花屋さんを目指している。パン屋になりたいと言う夢を持つ私と同じ。そう……こんなにも素直に生きている。どんなに苦しくても一生懸命に。だからこそ、私はこの子に何かしてあげたいと思った。でもそれとこの子のように素直に生きたいと言う気持ちにもなった。
「よし!ルチア、その『奇跡の花』を取りに行きましょ?」
「え?」
「私に任せなさい!こう見えても私は凄腕の魔女なんだから!」
「でも私……お金持ってないよ?」
「いいわよ別に。これは私が勝手にやってることだし、お礼とかはいらないわ。その代わり約束して欲しいことがあるの」
「約束?」
私はルチアの目を真っ直ぐ見て伝える。お節介かもしれないけど、私もあなたから教えてもらったから。
「絶対に諦めないこと。そして最後まで希望を捨てずに頑張ること。それが出来るなら、私はあなたの力になるわ。あなたの夢への一歩を私にお手伝いさせて?」
「……リンネ様ありがとう!私絶対諦めない!頑張ってお花を見つける!!」
こうして私はルチアと一緒に『奇跡の花』を探すことになったのだった。
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