【最強のパン屋爆誕!?】~すべてを程よく焼きつくす私の炎魔法が周りから『パン魔法』と呼ばれてなぜかバズっていた件~

夕姫

20. 良い部下に巡り会えたわ

20. 良い部下に巡り会えたわ



 私たちは無事に山を下り、目の前には一面畑が広がっていた。どうやら近くに村か街があるようだ。その一面の畑を横に見ながら、私たちは街道に沿って歩き出した。

 しばらく歩くと遠くに門が見えてきた。その周りには大勢の人が行き交っているのが見える。

「あれが街みたいですね!」

「そうね、まずは宿を見つけて今日はゆっくり休みましょう」

「リンネ様。宿屋に着いたらボクは街を見てきてもいいですか?」

「えぇ、いいわよ。お店を見て回るのかしら?でもあまり遅くならないようにしなさいね」

 そう言ってエドは楽しそうだ。とりあえずこの街はニルバという名前で、王都から西にある都市でそこそこ栄えている。

 しかも街に入ると様々な種族の人々が歩いていた。エルフ、ドワーフ、獣人など多種多様である。ここでは人種差別的なのは行われてない共存地域といった感じだ。なのでフィーナはいつも被っているフードを取って堂々と楽しそうに歩いている。

 しばらく歩くと、私たちは街のはずれに一軒の宿を見つける。ここは人間以外の種族が多い地域らしい。早速部屋を取り荷物を置いて、エドはピー助と共に街に繰り出していく。そのまま私はベッドへ横になった。

「あー。疲れたわね……。でもこれからどうしようかしら。とりあえずまた資金集めをしないとだけど……ギルドに行くのは気が引けるわね」

「あのリンネ様。」

「どうしたのフィーナ?」

「あの……今度こそリンネ様のパンを手売りしませんか?本当にリンネ様のパン美味しいのでみんなに食べてもらいたいんです!」

 すごく真面目な顔をして私に言ってきた。もちろんたくさんの人に私のパンを食べてほしいと思っている。そしてそれが商売になればいいなとも思っているし。

「でもフィーナ。あなた接客できるの?人間嫌いは治らないでしょエルフなんだから」

「もちろんそんな簡単には治りません。でもこのニルバの街なら他にも色々な種族の人が多いし大丈夫かなって思うんです。ダメでしょうか?」

 フィーナが自主的に頑張ろうとしているなら、それを私が潰すわけにはいかない。部下の意見は聞くべきだからね。でもそれより他にフィーナに聞きたいことがあった。

「ねぇフィーナ。この街なら他にもエルフがいるし、色々な種族がいる。ここならあなたの住む場所があると思うわ」

「え?……そうですね……」

 当初の目的。フィーナは自分の住む場所を見つけること。そのために私と旅をしているだけだ。

「まぁ決めるのはあなただから。無理強いはできないけど」

 私がそう言うとフィーナは考える間もなく私に話す。

「いえ!決めました!やっぱりリンネ様についていきたいです。そしてリンネ様のパン屋さんも一緒にやりたいです!ずっと旅をしてきて、すごく楽しいから。まだ私は一緒にいたいです。リンネ様とエド君とデュランダルと」

「ふぅ……。フィーナって変わってるわね。私はもちろんあなたとパン屋をやるつもりだから反対はしないわよ?」

「リンネ様……」

 フィーナが一緒にパン屋をやりたいと思ってくれてたなんて、正直嬉しい。良い部下に巡り会えたものだわ。

「そうと決まればエドが戻ってきたら相談しましょ。きっとエドも賛成してくれるでしょ。」

「はい!ありがとうございますリンネ様!」

 それからしばらくしてエドが興奮気味で帰ってきた。どうやら安いお店を見つけたようだ。私はフィーナと共にもう1度パンを手売りしたいことを話した。エドも乗り気で色々と計画を組む。

 まず一つ目。条件として人間以外の種族が多いところで販売をする。まぁ当然と言えば当然だろう。フィーナがいきなり人間相手に接客できないだろうし。

 二つ目。販売するパンの種類は少なくする。これは売れ残っても損をしたくないから。まぁ残ったらフィーナが食べると思うけど。

 三つ目。値段設定を高くしない。これは当たり前のことだが安くても買わない人もいるからだ。高い方が売れるというわけでもないが。

 四つ目。場所に関しては宿の前でやる。これは立地条件的に最適だった。街の広場だと商業ギルドの許可が必要だからだ。もちろんこの後宿屋の店主には許可をとるけど。

「こんな感じですかね?どうですかリンネ様?」

「うん、いいんじゃないかしら。でも本当にいいの?結構大変な仕事だと思うんだけど……」

「はい!大丈夫ですよ!それにボクも頑張ってみたいんです。」

 そうエドは嬉しそうな笑顔を見せる。本当に良い部下に巡り会えたわ。すると今度はフィーナの方を見てエドは言った。

「フィーナさんも頑張りましょう!」

「はい、こちらこそお願いしますねエド君。もちろんデュランダルも」

「ピーッピーッ」

 こうして次の目標が決まった。次はいよいよ私のパンを売る。そのための準備をこのニルバの街で進めていくことになったのだった。

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