【最強のパン屋爆誕!?】~すべてを程よく焼きつくす私の炎魔法が周りから『パン魔法』と呼ばれてなぜかバズっていた件~

夕姫

5. 悲しいときはパン

5. 悲しいときはパン



 そして翌朝。私はギルドに向かうことにする。まずは資金を稼がないと。フィーナはまだ寝てるけど、置き手紙とホワイトウルフのバーガーを5個をおいておいたから問題はないでしょ。

 それに人間嫌いのフィーナが外に出るとは思えないし。私が宿屋の入り口に来ると店主のお婆さんに声をかけられる。

「おや早いね」

「おはよう。ギルドで仕事もらってくるわ。あとしばらくここに住んでもいいかしら?フィーナには街中は難しいと思うし」

「宿賃を払ってくれるなら構わないさ。それと庭を貸してやるよ。部屋でパンを焼かれても困るさね。煙くて仕方ない」

 バレてた。まぁ……仕方ない。でも庭を貸してくれるなら助かる。私特製の石窯を作ろうかしらね。

「ありがとうお婆さん。後で私のパン食べさせてあげるわね」

「あいよ。気をつけて行くんだよ」

 そうして私は街に出た。とりあえずお金を稼ぎたい。あと昨日はフィーナがいたからこの街を良く見てなかったからね。せっかくだから観光もしたいかな。

「まずは冒険者ギルドね」

 私はギルドに向かって歩き出した。ギルドに着いた私は受付嬢に話しかける。

「すいません。仕事をもらいたいんですが?」

「はい!クエストですね!」

 元気な子だこと。さてどんな依頼があるのかしらね。

「この辺りでできる依頼ってあるかしら?魔物討伐以外で」

 この前みたいな芋虫とか出てきたら私泣いて動けなくなるし。それに魔物って怖いし。

「それでしたらこちらになります」

 ふむふむ。街の清掃や荷物運び、薬草採取なんかもあるのね。んーどれも微妙ね。私は依頼書を見ていると奥のほうで音がする。あっちはパーティー専用のスペースよね。

「痛っ……」

「おい!エドワード!オレはお前に何を頼んだ?言ってみろ!」

 怒鳴り声とともに何かを殴るような音まで聞こえてきた。

「あの……あれはいいんですか?」

「はい。あのパーティーはいつものことですから気にしないでください。それよりもご用件はなんでしょうか?」

 慣れてるみたいだし放っておくしかないか……。それじゃあ一番報酬が高い依頼にしましょうかね。私は依頼書を手に取る。

「これお願いします」

 そして私はそのまま薬草採取の依頼を受けてギルドを出た。

 依頼を無事に終えて、街をある程度探索してから部屋に戻ると布団にくるまってるフィーナがいた。

「ただいまフィーナ」

「……お帰りなさいリンネ様」

 なんか拗ねてるのかしら?テーブルを見ると朝用意したホワイトウルフのバーガーは1個も残ってないけど……ちゃんとご飯は食べたのね。

「なんで私を置いていくんですかリンネ様」

「ごめんごめん。今日は少し街を見たかったから。フィーナ、嫌でしょ人が大勢いるところは?」

「それは……そうですけど……1人も嫌です。だから明日は一緒に連れていって下さい。」

「ええ。ごめんねフィーナ。1人にして」

 私はフィーナの頭を撫でると気持ち良さそうに耳をピクピクさせている。やっぱり可愛いわねこの子。

「それでどうだったのですか?」

「んー。あんまり良い依頼はなかったかしらね。魔物討伐依頼は多かった印象かしらね」

「え?それなら魔物討伐依頼を受ければいいです。リンネ様の魔法は最強です!」

「無理よ。私は武器とか扱えないんだから。それに私はパン屋になりたいんだからそんな危険なことしなくてもいいでしょ?」

 私がそう言うとフィーナは少し不満そうか顔をしているので無視する。まったく分かってないわねこの食いしん坊エルフは。

「とりあえずしばらくはこの宿を拠点にして、資金を貯めようと思ってるわ」

「分かりました。では私もお手伝いいたしますね」

「ありがとうフィーナ」

 こうして私たちはしばらくこの宿で生活することにした。それから数日がたち私とフィーナはギルドに向かい中に入ると、この前と同じく怒号が聞こえてくる。

「エドワード!またかお前。雑用くらいまともにやれねぇのかよ!」

「言われた通り……」

「うるせぇ!雑用しかできねぇ無能が口答えすんじゃねえ!」

 相変わらず荒れてんわねあいつら。さて依頼依頼っと。ああいうのには関わらないほうがいい。

「あぁ!?なんだ小娘?」

「あの……可哀想です……やめてあげてください」

 ん?なんか聞いたことある声ね。私がふと見ると、なんてすごく震えながらもその男の前に立つフィーナがいた。

「なんだテメェは?女は引っ込んでろ」

 男はフィーナを突き飛ばす。

「キャッ……」

 フィーナはそのまま床に倒れてしまう。そしてローブのフードが外れその尖った耳があらわになる。

「おいおい!まさかエルフかよ。見世物小屋にでも売り飛ばすか?それとも奴隷小屋でもいいか?」

 まったく何してんのよあの子。私はすぐにフィーナに駆け寄る。

「大丈夫フィーナ?」

「リンネ様……怖がっだでず……でも見でられなぐで……」

 涙と鼻水を垂らしてひどい顔のフィーナ。それでも嫌いな人間のために行動をしたフィーナを誉めてあげたい。

 私はフィーナを抱き締めながら私は男を見る。すると男は私を見て笑っていた。

「ハッ!エルフが人間様に楯突くとはな!」

 私はその言葉を聞いてその男の胸ぐらを掴み、壁に押し当てて睨み付ける。

「ちょっと黙りなさいよ。フィーナが怯えてるでしょ!よくもウチの看板娘を泣かせてくれたわね!?」

「なんだてめえは?」

「私はパン屋よ文句ある?」

「パン屋だぁ?くだらねぇ。もういい。エドワード。お前は今日でクビだ」

 男は私の手を強引に振り払うとギルドから出ていった。そのあと私はフィーナを抱き締めてあげる。泣き止む気配はないけど、これで大丈夫だろう。そこにエドワードと呼ばれている少年が話しかけてくる。

「あの……助けてくれてありがとうございます。」

「それは私じゃなくてこの子に言うのね?」

「はい。エルフのお姉さんありがとうございます」

「ううん。私もごめんなさい。あなたを庇えなかったです」

「いいんです。ボクは弱いから仕方ないんです。パーティーにいても雑用ばっかりだったし……冒険者をやめて、おとなしく婆ちゃんの手伝いをします」

 寂しそうな顔をしているエドワード。……まったく。なんか放っておけない子ばかりね。私はフィーナから離れ、エドワードの肩に手を置く。

「こういう時はパンでしょ!美味しいの食べさせてあげるわ!」

「え?パン?」

「リンネ様のパンは最高なんです!きっと悲しい気持ちもぶっ飛びます!」

 今まで泣いていたフィーナの笑顔にエドワードもつられて笑う。

「そうですね。ありがとうございます。」

 私が求めるパン屋はこれよ!みんなが幸せになれるパン屋!ふふ。また一歩近づいたかしら夢のパン屋にね。

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