【追放29回からの最強宣言!】ギルドで便利屋と呼ばれている私。~嫌われ者同士パーティーを組んだら、なぜか『最強無敵』になれました~

夕姫

30. エルン=アクセルロッド 目を付けられる

第3章 最強無敵の英雄譚 ~ロデンブルグ防衛戦~



30. エルン=アクセルロッド 目を付けられる



 こんにちは。私はエルン=アクセルロッド。最強無敵のギルド冒険者の美少女。ライゼンバッハ帝国第三皇女の捜索依頼から一週間。私たちはいつものようにギルドの依頼をこなしている。

 まさかミーユがライゼンバッハ帝国第三皇女のミーフィルユ様だとは思わなかったし、しかも21歳で年上だったのも驚きだった。ミーユも私のパーティーを抜けることもなく自由に生きていくことを認めてもらえたし良かった。

 今、私はブレイドさんと共にギルドでミーユとアティの依頼が終わるのを待っている。ブレイドさんは相変わらずお酒ばかり飲んでるけどさ……。

「ああ?なんだまた文句か?可愛くねぇ女だなお前は」

「ブレイドさん眼鏡かけたほうがいいですよ。見えてないです。」

「ハッキリ見えてるが?」

 うるさい!また失礼極まりないんだけどこのおじさんは!でもこの人がいなかったら私はどうなっていたか分からないからそこまで強くも言えないんだけどね……。そんな時、ブレイドさんのお酒のおかわりをサリアさんが持ってくる。

「お二人は仲が良いのですね。ミーユさんにもこのように素敵な男性が現れるといいですけど」

「素敵って……ただの呑んだくれのおじさんですよ?サリアさん?」

「ああ?誰が呑んだくれだって?」

 いや、あんただよ。なに都合の悪いことは聞こえなくなるスキルとか持ってんのか?

「まぁミーユさんのことよろしくお願いしますね」

 サリアさんはそう言って仕事に戻る。ずっとミーユの侍女として仕えていたサリアさんには色々思うところがあるみたいだけど……。それでもやっぱり優しい人だと思う。

 そんなことを考えていると突然ギルドの入り口のドアが開かれる。あの鎧はローゼンシャリオの騎士団?どうしてここに?すると一番前にいた青い長い髪の女性が話し始める。

「私はローゼンシャリオ騎士団の団長ルーベット=フラウ。このギルドに『壊し屋』と呼ばれるギルド冒険者がいると聞いた。いるなら話をしたい!」

 その騎士団の団長ルーベットを見て凛とした立ち振る舞いに目を奪われる。こんな状況じゃなかったら見惚れてしまっていたかも……。じゃない。なんか私のこと探してる!?私なんかしたっけ!?

「あの……」

「エルン」

「ブレイドさん?」

「静かにしていろ。騎士団には関わるな。ろくなことがないからな。」

 そう言ってブレイドさんは私を止める。するとギルドの受付にいるルナレットさんがルーベット隊長に向かって言う。

「あの申し訳ございません。このローゼンシャリオのギルドには『壊し屋』という名前の冒険者は登録されてませんので。お引き取りください」

 それを聞いた騎士団の隊員たちは騒ぎ出す。

「おい!貴様隊長になんて口の聞き方を!」

「ふざけてるのか女!今すぐ『壊し屋』を呼べ」

「いないものはいないので。お引き取りを」

 凛とした態度で話すルナレットさん。するとルーベット隊長は隊員たちを止める。

「やめろ。すまなかった。こちらも良く確認せずに来てしまった。また来ることにしよう。行くぞ」

 そう言って騎士たちが出ていく。そして残された私はルナレットさんのほうを見る。なんか……格好いい。私のこと守ってくれたんだよね。

「ありがとうルナレットさん」

「ううん。これもギルド受付嬢の仕事だから気にしないでエルンちゃん。それにしても直接エルンちゃんに用事ってなんだろうね?心当たりとかある?」

 うーん。考えても全然思い当たらない。もしかしたら……私の最強無敵のギルド冒険者の美少女が騎士団の中で浸透してたりして!とか考えていると、ブレイドさんはいつものようにバカにしたような目で見てくる。

「……なんですか?」

「何がだ?何も言ってないが?」

「いや、絶対馬鹿にしてますよね?」

「ああ?また得意の被害妄想か?それとも自意識過剰か?」

 くそぅ……。ほんっとムカつく!この人絶対私のこと嫌いだよ!私はブレイドさんを睨みつける。

「どうでもいいが。エルン。変に騎士団の奴らを信用するなよ?お前は危なっかしいからな?」

「どこがですか!?私は超絶可愛いし最強無敵なんですよ!」

「……そういうところがだよ」

 ブレイドさんはため息をつく。本当に失礼過ぎるよこのおじさんは!私は不機嫌になりながらミーユたちの依頼が終わるまで待って、その日は解散になった。

 そして帰り道。私はいつものように家に帰るための近道を歩く。そこは薄暗い路地裏だけど、私は慣れた足取りで歩いていく。ショートカットをして家の近くの通りに出ると、そこに見たことのある長い青い髪の女性が立っていることに気づく。

「……ルーベット隊長?」

「ん?もしかして貴殿が『壊し屋』か?まさかこんな少女だとは思わなかったぞ」

 私の家の近くで待ち伏せされてるなんて、よほど私に重要な話があるのだろう。ブレイドさんには関わらないように言われたしルナレットさんには守ってもらったけど、こうなっては無理だよね。私は諦めることにする。

「あの……私が『壊し屋』って呼ばれてるギルド冒険者のエルン=アクセルロッドですけど……私に何の用ですか?」

「そう警戒しなくてもいい。エリン殿少し貴殿に頼みたいことがあってな」

「エルンです。頼みたいこと?」

「ああ。実は北にあるロデンブルグの街で原因不明の魔物の大量発生が起きているのだ。ローゼンシャリオ騎士団としてはそれの制圧の為に、エルル殿。貴殿のパーティーに力を貸してほしいと思ってな」

 エルンなんだけどね。この人、わざと私の名前間違ってない?すごく失礼だし。大量の魔物の発生?そんなの聞いたこともないんだけど……。しかも原因不明なんだよね?危険すぎる……。

「この件は正式に騎士団から『王国特級任務』としてギルドに依頼をさせてもらうつもりだ。返事は一週間後で構わない。いい返事を待っているぞエマ殿」

 そう言ってルーベット隊長は帰っていく。というかもう二文字になってるしさ……絶対わざと名前を間違えてるよね……。

『王国特級任務』それは国王陛下直々の任務であり、騎士団からの正式な要請である。まさかそんな事を直接依頼されるとは……。私の活躍が認められてるのかな?なんかそう思ったら少し嬉しいかもね。

 こうして私はローゼンシャリオの騎士団から『王国特級任務』を依頼されるのだった。

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