【追放29回からの最強宣言!】ギルドで便利屋と呼ばれている私。~嫌われ者同士パーティーを組んだら、なぜか『最強無敵』になれました~

夕姫

12. 作戦会議 ~クロス視点~

12. 作戦会議 ~クロス視点~



 エルン=アクセルロッドにオレたちが負ける?面白い冗談を言われたな。あの『死神』に。オレたちはギルド掲示板に依頼内容を貼り付け、いつもの酒場で作戦会議をおこなうことにする。

 ただのハッタリ……には見えないな。

 一体あの自信はなんなんだ。考えるだけで頭が痛くなる。エルン=アクセルロッドは確かにオレたちのパーティーでほんの少しは役に立っていたかもしれない。もちろんそれはオレたちをシルバーランクへ昇格させるだけの『便利屋』としてだがな。

 あいつはゴブリンやスライムを一人で倒せない。このお荷物をいつまでもパーティーに入れておくわけにはいかない。というかギルド冒険者としてやっていくのは不可能だろう。早めに切ってやるのが優しさでもある。そうこれはオレの優しさだ。

 しかしエルン=アクセルロッドがグリムドラゴンを討伐したと聞いた。オレたちがパーティーを組んで唯一ドラゴン討伐だけは危険で避けていたが、あいつは高難易度の依頼を達成したのだ。リーナやグラッドは不正だと言い続けているが、一体どんな方法を使ったんだ?

 オレは一つの答えを出す。おそらくあの『死神』、そして最近ギルド冒険者になったというあのピンク髪の女。あいつらがグリムドラゴンを討伐したのだろう。

 それにしても自分のギルド冒険証が剥奪されるのに、よくエルンとパーティーを組めたものだ。

 勝負する依頼は一応万が一の事も考えてあいつらと戦わない内容でオレたちに利があるもの。そう依頼物収集だ。人数が多いオレたちならこの依頼で負けるはずはない。足が遅いアティも追放したことだしな。

 更にオレたちは新たに僧侶のアリシア、盾役のオリバーをパーティーにいれたばかりだ。

 オレはクロス=セントクレア。生まれた時から光の女神に祝福されている。幼き頃から光の魔法剣を使え周りからは神童と呼ばれていた。魔物は邪悪なるものが多い、オレの光の魔法剣が効かない魔物にはいまだかつて出会ったことはない。

「『死神』のやつ……私たちをバカにして……ねぇクロス!あいつらをどうやって泣きべそかかせようか?腕がなるわね!私をバカにした事を後悔させてやるわ!」

 そんな時、オレを呼ぶのは強気な赤髪の女、リーナ。格闘家だ。持って生まれた運動神経で敵を翻弄し素早い打撃で相手を仕留めるパーティーの特攻役だ。

「依頼の内容確認した。オレたちが負ける要素が見つからんな。確かにクロスの判断は正しい。」

 戦士のグラッド。たくましい肉体を強化して戦う。振るう大剣は全てをなぎ倒すほどの威力で、オレと共にパーティーの前衛の主軸で頼りになる男だ。

「ま、どうでもいいけど。さっさとエルンには消えてもらえばいいよ。ボクは面倒なことは嫌いだからさ。」

 魔法使いのロード。やる気はなさそうに見えるが魔力量が高く、高位魔法を連続で使うことができる。数の多い魔物を一掃できる優秀なパーティーの後衛だ。

 そして新たにパーティーに加入した2人。

「そのエルン=アクセルロッドでしたか?クロスさんたちをバカにするやつは許せねぇっす!」

 こいつは盾役のオリバー。だいぶ前から目をつけていた。こいつは素直で潔いところがいい。体力も高く、正にオレたちを守る盾役だ。

「あの私も一生懸命頑張ります。」

 僧侶のアリシア。エルンとアティの代わりの回復役だ。少し臆病者だが回復魔法はあの二人とは比べ物にならない優秀な人材だ。今オレたちは6人いる。噂ではエルンがオレたちが追放したアティをパーティーにいれたようだが数では圧倒的に有利だ。

「ねぇクロス。依頼物の場所は分かってるの?」

「ああ。『月光水』『ムーラン花』は西の遺跡群にあるワーロック古城に、『フレイムドレイクの爪』は東の呪いの洞窟にある。もう調べているよ。」

「それでは方向が真逆にあるな。それなら別れていくべきか?戦力が減るのはいささか気になるが」

「えー……面倒なのはボクは嫌なんだけど。楽したいな」

 いつもの3人がそう言ってくる。焦るな焦るなちゃんと作戦は考えてある。

「まぁ待て。まず東の呪いの洞窟だが、爪を手に入れるためにはフレイムドレイクを狩る必要がある。ここはオレが1人で行く。」

「クロスさん一人で行くっすか!!?オレの守りはいらねぇっすか?」

「あの危険なんじゃ……クロス様は。回復魔法使えないですし……」

 新たに加入したオリバーとアリシアが心配してくれている。だが安心しろ。フレイムドレイクくらいの小物クラスの魔物はオレ単独でも狩ることができる。それはもちろんこの光の女神に祝福されたオレの光の魔法剣があってこそだがな。

「いいか?エルンたちは人数も少ない、普通に考えれば分散しては来ないだろう。それなら西の遺跡群のほうが難易度が高いことからあいつらは全員で西の遺跡群に行くことが予想される。オレたちは5人、あいつらは4人。数で勝てるだろう?」

「さすがはクロス!分かってるじゃない、数の暴力ってやつ?」

「確かにな。クロスがいないのは痛いが、数で勝り、しかもあの『便利屋』エルンと鈍足のアティが相手ならオレたちが負けることはないな」

 我ながらいい作戦だ。リーナ達が西の遺跡群に行くことであいつらは依頼物を手に入れることはできない。それに手に入れられたとしても東の洞窟に行っている時間はない。結果オレたちの勝ちになる。

「しかも西の遺跡群は建物も少なく相手の動きを確認もしやすい。遺跡の中に入れなければ尚いい。それにだ、アティがいる以上お前たちが遅れを取ることはない。必ず先に遺跡群へたどり着く、そして配置をすればいい。」

 そうだあいつらで警戒しなきゃいけないのはあの『死神』とピンク髪の女だけだ。ダメだオレたちが負ける姿が思いつかない。自然と笑いがこみ上げる。さぁ覚悟しろエルン=アクセルロッド。オレたちをバカにした罪を償うんだ!

 作戦は抜かりない。オレたちが引導を渡してやる。そして依頼当日を迎えるのだった。

コメント

  • ward8

    冒頭から引き込まれます

    1
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