30.　探し出しますわ　～王宮side～

30.　探し出しますわ　～王宮side～




　フローレンス王宮の自室。クリスティーナはアイリーン捜索の報告を今日もいつものように待っている。

　正直、あの元宮廷魔法士のクズ貴族たちには期待はしていないが、一向に連絡がない。もしかしたらそこらへんで野垂れ死んでいるのかもしれないが、それはそれで自分たちが招いた結果なので構わないところではあるのだが。

「…………」

　クリスティーナはふと机の上に置かれた一枚の写真立てに目を向けた。そこにはかつて自分の王立学園時代の時のアイリーンとの写真がある。

　アイリーンは天才。そしてこの私を対等に見てくれていた数少ない理解者だ。だが、今となってはそのアイリーンもいない。本当にアイリーンは死んだのか？ そんなことを考えている時だった。

　コンコンと扉をノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

「失礼します。クリスティーナ様。夜は冷えます。何か羽織ってください」

「えぇ。そうするわオリビア」

　侍女長のオリビアがくる。彼女はいつも私に嫌な顔せず仕えてくれている。オリビアも数少ないクリスティーナの理解者だ。

「せっかくだから、就寝前にハーブティーをお飲みになりますか？心が落ち着きますよ？」

「ありがとう」

「では準備いたしますね」

　オリビアは手際よく紅茶の準備を始める。その間にクリスティーナは写真立てを手に取り、またそれを眺める。

「アイリーンですか？」

「こんなに探しているのに……なぜアイリーンは見つからないの……もしかしたら、もう……」

「まだ諦めるのは早いですよ。きっと見つかりますから」

「そうよね……。でも、もし見つからなかったら私は……」

「大丈夫です！私がついています！」

「ありがとうオリビア」

　そうして二人は静かに紅茶を飲む。

「……おいしいわね」

「お口に合ってよかったです」

　本当にオリビアといると、心が休まる。そしてふとクリスティーナは思う。このまま待つだけでいいのか、と。

「ねぇ、オリビア。少しお願いしたいことがあるのだけれど……」

「なんでしょうか？」

「その……アイリーン捜索隊を結成しようと思うの。私の身近にいる信頼できる人に声をかけてもらってもいいかしら？」

「もちろんです。ただ、あまり大人数だと逆に目立つかもしれませんので少数精鋭にしましょうか。」

「わかったわ！じゃあ、お願いできるかしら！」

「ふふっ。元気が出たみたいですね？」

「当たり前じゃない。この国には優秀な人材が多いはずよ！必ず見つかるわ！」

　クリスティーナは自信を取り戻したように笑顔を見せる。その顔はどこか吹っ切れたような感じであった。

「本当は私が直接探しに行ければいいのだけど。一応魔法だって使えますのに……」

「それはダメです。万が一があったら大変ですから。それに陛下や王妃殿下にも言われているでしょう？クリスティーナ様は昔から迷惑ばかりかけて困りますよ？」

「わかっているわ……。でも……」

「ご安心ください。私もできるだけ情報を集めてみますから。あっ。」

「どうかしたのかしら？」

「そう言えばこの国のどこかに『なんでも屋』と呼ばれる人たちがいると聞いたことがあります。」

「『なんでも屋』！？それなら、そこに頼めばなんとかなるかもしれないわね……。なら『なんでも屋』を探し出してほしいわ」

「わかりました。早速明日あたりに情報収集をしてきます」

「よろしく頼むわね」

「はい。任せてください。さぁ、そろそろ寝ないと明日に響きますよ？」

「そうね。待ってなさいアイリーン。私が必ず見つけて救いだしてあげるから！」

　こうして二人の密かな計画は動き出す。自分を救ってくれた親友を、今度は自分が救いだす。クリスティーナたちはアイリーン捜索のため動き出す。

　こうしてクリスティーナの夜は更けていくのであった。