【天下布武!】名前を奪いに来た転校生

はゆ

402 Update

 トンネルルーター認証にんしょうもちいるマイナンバーユーザーアカウント、パスワードともにadminが設定せっていされていた。
 これは、説明書マニュアル記載きさいされている、初期値しょきち文字列もじれつ。同じ製造元メーカーの、全てのトンネルルーターに同じ文字列もじれつ設定せっていされている。

 初期値しょきち文字列もじれつは、製造元メーカーによりことなる。

 Logitecロジテック屋。
 マイナンバーユーザーアカウントはadmin、パスワードもadmin。

 I-O DATAアイオーデータ屋。
 マイナンバーユーザーアカウントはadmin、パスワードは空白くうはく

 BUFFALOバッファロー屋。
 マイナンバーユーザーアカウントはroot、パスワードは空白くうはく

 という感じで、設定せっていされている。

 困ったことに、初期値しょきちのままになっているのは、特別とくべつなことではない。
 アンケート調査ちょうさによると、四割は初期値しょきちのまま利用りようし、一割は認証にんしょう機能きのう存在そんざいを知らない。そして四割は把握していない。
 おどろくことに、意図的いとてき変更へんこうしている割合わりあいは、一割にとどまる。

 初期値しょきち利用りようしている割合わりあいを、最大値さいだいちの九割と仮定かていする。この場合ばあい製造元メーカーごとの初期値しょきちをリスト化し、順番じゅんばん試行しこうするだけで、十中八九じっちゅうはっく照合しょうごう成功せいこうすることになる。
 あくまで仮定かていの話。とはいえ、照合しょうごう成功せいこう確率かくりつが高いことは事実じじつ侵入しんにゅうすることを目的もくてきとする乱波らっぱが、試行しこうしない理由りゆう存在そんざいしない。
 当然とうぜんさき試行しこうする。

 照合しょうごう試行しこうは、単調たんちょう作業さぎょう延々えんえんと繰り返すだけ。手作業てさぎょうおこなわなければならない理由りゆうは無い。
 自動化じどうかすれば、試行しこう手間てま一切いっさいからない。ほうっておけば、照合しょうごう成功せいこうした一覧いちらん自動的じどうてき生成せいせいされ、侵入しんにゅう放題ほうだいになる。

 初期値しょきちから変更へんこうしない行為こういは、玄関げんかんかぎんだ状態じょうたい放置ほうちしているのとおなじ。と、説明せつめいしたところで放置ほうちされるのがオチ。
 帰蝶きちょう変更へんこうし、設定せっていした文字列もじれつ印字いんじしておく。

 乱波らっぱ攻撃こうげき仕掛しかけるさいくのは不具合脆弱性
 トンネルルーターファームウェア制御機構バージョンを確認かくにんすると1.00いちだった。予想よそうはしていたけれど、一度いちど更新こうしんされていない。
 最新さいしん状態じょうたい更新こうしんし、すべての修理キット修正パッチ適用てきようする。待っているだけで終わるのだから、えて更新こうしんしない合理的ごうりてき理由りゆう存在そんざいしない。

 現在げんざいまでにトンネルルーター管制室コントロールパネルに入る機会きかいがあったのであれば、ファームウェア制御機構更新こうしんおこなっているはず。
 何年なんねんものあいだはい必要ひつようが無かったのであれば、認証時にんしょうじ入力にゅうりょく文字列もじれつを、複雑ふくざつながいものに変更へんこうすることによりしょうじる影響えいきょうは無いと確信かくしんする。

 もしも簡単かんたん文字列もじれつ設定せっていする場合ばあい、二〇二二年一〇月ジュウガツ一七日に東海国立こくりつ大学機構がサーバに侵入しんにゅうされた手法しゅほう総当たり攻撃ブルートフォースアタック成功率せいこうりつが高まる。短時間たんじかんやぶれる認証にんしょう機構きこうは、無いのと同じ。

 〇から九の数字が一〇種、aからzまでの小文字英字が二六種にじゅうろくしゅ。AからZまでの大文字英字も同数の二六種にじゅうろくしゅ桁数けたすうが増えるたび、組み合わせパターン数は累乗るいじょうされていく。大文字小文字英字と数字を組み合わせた六二字を用いた、六桁の文字列もじれつの組み合わせパターンは五六八億ゴヒャクロクジュウハチオクとおり、八桁で二一八兆にひゃくじゅうはっちょうとおりある。
 たった一桁増やすだけでも、組み合わせパターンすうふくれ上がる。
 記号きごうを使えるのであれば、合致がっちするまでに要する時間を、大幅おおはばに長く出来る。記号きごうふくめて試行しこうされなければやぶられることは無いのだから、安全性あんぜんせい格段かくだんす。

 複数種ふくすうしゅ文字列もじれつを使えば、安全性あんぜんせいが増すのは事実。でも、それは組み合わせを考えるがわの話。
 問題もんだいは、阿呆あほう製造元メーカー存在そんざいすること。安全性あんぜんせいを増すためという名目めいもくで、複数種ふくすうしゅ文字列もじれつを『必ず』ふくめなければならないという規則きそくもうけている。
 では、それのどこが阿呆あほうなのか。
 みずか率先そっせんし、組み合わせパターンを減らしている。結果、合致がっちするまでに要する時間じかん短縮たんしゅくさせている。そのことに気付いてすらいない。
 乱波側らっぱがわ視点してん欠落けつらくしていることが、大きな問題もんだい
 全て数字、全て小文字英字、全て大文字英字の可能性かのうせい否定ひていすることにより、試行しこうする組み合わせパターンを大幅おおはば削減さくげん出来る。
 製造元メーカー文字列もじれつの組み合わせに、制約せいやくくわえる行為こういは、骨頂こっちょう入力可能文字種にゅうりょくかのうもじしゅやし、複数ふくすう文字種もじしゅを用いることを推奨すいしょうするだけで十分じゅうぶん

 安全性あんぜんせい犠牲ぎせいにし、面倒めんどうさをすことを組織そしき総意そういとして、判断はんだんする製造元メーカー構築こうちくしたシステムには、当然とうぜん欠陥けっかんがある。
 欠陥品けっかんひん見極みきわめ、適切てきせつ取捨選択しゅしゃせんたくすることは、リスクを排除はいじょし、安全性あんぜんせいを高める手段しゅだんの一つ。とはいえ、住民じゅうみん判断はんだんゆだねるのはこく。だから今回こんかいは、その役目やくめ帰蝶きちょうになう。

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