【天下布武!】名前を奪いに来た転校生

はゆ

207 LockBit

LockBitロックビット乱波らっぱは?」
「この流れやと2.0二世のことやおね。初代しょだいLockBitロックビット乱波らっぱ確認かくにんしたのは二〇一九年九月。2.0二世攻撃開始こうげきかいししたのは二〇二一年六月。LockBitロックビット2.0二世乱波らっぱ侵攻手法しんこうしゅほうは、管制権ドメインコントローラ奪取だっしゅし、内部ないぶから破壊はかいするというもの。誰よりも高速こうそく破壊はかいし、対処たいしょされる前に制圧せいあつしきる。敏捷びんしょう極振きょくふりやね。特徴的とくちょうてき機能きのうは、自己拡散じこかくさん履歴ログ消去しょうきょ、ネットワークプリンタで身代金みのしろきん要求ようきゅう紙切かみぎれになるまで印刷いんさつする機能きのう印刷いんさつたんなるいやがらせやね。無差別むさべつ攻撃こうげきするんやなくて、攻撃対象こうげきたいしょうしぼっとることが特徴とくちょう
「どうしぼっとるん?」
「命に関わるところへの攻撃は禁止しとる。製薬会社や歯科、形成外科なんかの医療機関への攻撃は許可するけど、心臓病や重篤な病気、産婦人科等、命に関わる医療機関への攻撃は禁止って規則きそくを、一応いちおうもうけてはおる」
「でも、二〇二二年一二月一八日にカナダトロントのSickKids小児科専門病院に攻撃しとるやん。どういうこと?」
「一二月三一日さんじゅういちにちに、規則きそくがあったことについて謝罪しゃざいして、復号鍵ふくごうかぎ無償むしょう提供ていきょうすると声明文せいめいぶんを出しとる」
「で? 二週間も診療しんりょう止めたやろ。復号ふくごうしたら、帳消ちょうけしになるんか? 自分で宣言せんげんしとる規則きそくまもらんようなやから信用しんよう出来んで斬首ざんしゅやろ」
「うちに怒られても知らん。他には、原則げんそくとして言語げんご識別子しきべつし1049 (0x419)ロシア語をはじめとする、ロシア語圏ごけんの者を攻撃対象こうげきたいしょうから除外じょがいするといった、暗黙あんもく規則きそくもうけとる」
「ロシア語圏ごけん除外じょがいするのは、定番ていばんなんやね」
「そう。規則きそく目的もくてき同士討どうしうちを抑止よくしすること。特別とくべつなことをせず、かなら判定はんてい出来るようにするには、標準機能ひょうじゅんきのうもちいる必要ひつようがある。となると言語圏げんごけん識別しきべつする手段しゅだんは、システムの言語設定げんごせっていかタイムゾーンにかぎられる。こういう基本的きほんてき機構きこうは、乱波らっぱわず共通きょうつうやお。攻撃対象こうげきたいしょうから除外じょがいさせる目的もくてきで変える設定せっていやないで、ったところで何のやくにも立たんけどね」

乱破らっぱのこと、なんとなくわかってきた」
「なんとなくやなくて、ちゃんとわかって?」
 胡蝶からの指摘してき帰蝶きちょう身体からだはビクッと反射的はんしゃてき萎縮いしゅくする。
「はい。ごめんなさい」
 先程さきほど吉乃きつのがした様式ようしき謝罪しゃざいをしようと、その場でくるくる回ると、両肩りょうかたつかまれ止められる。
「わからないことは、あやまることではありません」
 帰蝶きちょうの肩を掴み、制止せいししたのは、うつけだった。
「あー! うちもトラウマ植え付けてまったやん!」
 発狂はっきょうする胡蝶。
 吉乃きつのは、にせず説明せつめい再開さいかいする。
LockBitロックビット2.0二世乱波らっぱ面白おもしろいけど、今から解析かいせきするなら3.0三世がおすすめやよ。二〇二二年六月に出てきたばかり。バグ報奨金ほうしょうきんプログラムっていうのがあって、LockBitロックビット3.0三世乱波らっぱ不具合ふぐあい情報じょうほう提供ていきょうすると、一千ドルから一百万ドルまでの範囲はんい報奨金ほうしょうきん支払しはらわれる。アイデアも募集ぼしゅうしとるよ。最初さいしょ報奨金ほうしょうきん支払しはらわれたのは二〇二二年九月」
報奨金ほうしょうきんプログラムは、吉乃きつのの方がいとりそう」
「え……うちはかかわりたくない」
 冗談や巫山戯ふざけている雰囲気ふんいきではなく、本気ほんきでドンきしている様子ようす吉乃きつの
 帰蝶きちょう自身じしん危機意識ききいしきひくかったと自覚じかくしているし、反省はんせいもしているけど――。
かかわりたくないもん、うちにすすめんといて!」
すすめたのは解析かいせき報奨金ほうしょうきんプログラムについては、事実じじつべただけですすめてないよ? 勝手に勘違かんちがいしたあんたが間抜まぬけなだけや」
 最後の一言に、むねめ付けられる。
「うわっ。始まった……今日は、ここまでやな。吉乃きつのねむくなると、誰彼構だれかれかまわずおとしいれようとしてくるんやて」

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