ガチャ転生!~異世界でFラン冒険者ですが、ガチャを引いてチートになります

武蔵野純平

第54話 アカオオトカゲのポーションは、やめて下さい(地図アリ)

 朝食を食べた後、俺はチアキママと話しをした。


 セレーネ、サクラと続けて居候が増えた。
 だが、最近、俺はチアキママにお金を渡していない。


 そこで、これからは定期的にお金を渡す。
 セレーネ、サクラとも話して、3人でお金を出すとチアキママに提案した。


 ところが、チアキママには、やんわり断られた。


「ちょっと前に、臨時収入があったから大丈夫!」


 ……だそうだ。


 チアキママの仕事は、ポーション作り。
 魔法薬師だ。


 売り先の冒険者ギルドに納品するポーションは、いつも一定量のはずなのだが……。
 臨時収入って、何だろう?


 まあ、気にしてもしょうがないので、チアキママのお言葉に甘える事にした。
 今度、3人で何かプレゼントをしよう。


*


 俺達は、冒険者ギルドに向かった。
 俺、セレーネ、サクラの3人が、ギルドに入ると拍手が起きた。


「おお! ヒロトが来たぞ!」
「新ルート! 良く見つけた!」


 お祭りお騒ぎだ!
 どうやら新ルート発見が、もう伝わっているらしい。


 ギルドマスターのハゲールが、飛んで来た。
 いきなり俺の手を握りしめて来た。


「良くやった! 良くやってくれた! ありがとう! ありがとう……」


 この人、泣いているよ。
 ジュリさんが、耳打ちして教えてくれた。


「お姫様の覚えめでたく、王都のギルドへ、栄転出来そうなんだって!」


 なんだよ!
 ハゲールは、自分の出世が嬉しくて泣いていたのかよ!


 ホールの奥の方では、エリス姫が待っていた。


「おお! ヒロト! 昨日は、ありがとうのう! セレーネも、サクラも、ありがとうのう!」


 俺達がエリス姫とガッチリ握手をすると、ギルド内のボルテージは更に上がった。
 ハゲールが両手を上げて、ギルド内を静まらせた。


 ハゲールが、大きな声で話し始めた。


「昨日! こちらにおわすエリス姫と、ヒロトのパーティーが、共同でダンジョン探索を行った」


 ギルド内は、静まり返っている。
 ハゲールの言葉に、みんな耳を傾けている。


「1階層奥に、新たな階段を発見した。つまり新しいルートの発見だ!」


 おおっ! と、冒険者達が声を上げた。
 ハゲールは、冒険者達を見回しながら、一人一人に話しかけるように演説を続けた。


「新ルートは、5階層に転移魔方陣が設置されている。転移先は地上の転移部屋だ」


 ゴクリと誰かが生唾を飲み込む音が聞こえた。
 異様な緊張感だ……。


「地上の転移部屋は、ルドルの街西側の丘の中にある。私も、朝一番で確認をして来た」


 ハゲールは、ゆっくりと溜めを作ってから、大きな声で宣言した。


「よって! ルドルの冒険者ギルドでは、新ルートの存在を認め! 数日中に冒険者に開放する!」


 冒険者達が、大騒ぎをし出した。


「うおーーー!」
「スゲー!」


 ギルド職員も目をキラキラさせて、興奮している。
 しばらくして、ハゲールが、また両手を上げて、騒ぎをしずめた。


「もう一つ話がある。昨晩、エリス姫は、探索の帰り道に襲撃を受けた。賊は、10名以上だった」


 この事は、知らされていなかったみたいだ。
 冒険者もギルド職員も驚いた顔をして、ザワつき出した。
 ハゲールは、かまわず続ける。


「だが! 姫の護衛騎士と、ヒロト、セレーネ、サクラの活躍により、襲撃者は撃退された!」


 みんなの視線が、俺達3人に集まった。
 驚き、敬意、好奇心、そんな気持ちを視線から、感じ取った。
 俺は前を向き平静を装う。
 話しを続けるハゲールの言葉を聞いた。


「ヒロトは5人、セレーネは2人を倒し、サクラは2人を睡眠魔法で眠らせて捕縛した。この2人は、現在、衛兵が取り調べ中だ」


「これらの実績をもって、3人をCランクに昇格させる!」


 えっ!?
 俺は、昇格について、まったく聞いていなかったので、驚いた。


 Cランクは、銅のギルドカードだ。
 ベテランや堅実な冒険者が、多いランクだ。


 俺たちはハゲールから、Cランクの銅のギルドカードを受け取った。
 大きな拍手が起こる。


「今回の褒賞として……ヒロトのパーティーは、ルドルのギルド利用料を今後無料とする!」


 これは、ありがたいな!
 解体費は魔物1体1000ゴルドだから、数が多いとバカにならない。


 セレーネは、少しがっかりした顔をしていた。
 スキル【解体】があるから、魔物の解体も自分でやりたいのだろうな。


「また、今後の新ルートの階層構造によって、ギルドから別途報奨金が支払われる。以上だ!」


 最後のは、良くわからなかった。
 横にいるジュリさんに、そっと聞いてみた。


「ジュリさん、最後の報奨金と言うのは?」


「あれね。新ルートに素材が高く売れる魔物がいたり、階層が深かったりすれば、お金を出すって事よ。新ルートも、10階層までかもしれないでしょ」


「なるほど。了解です」


 ジュリさんと話し終わると、エリス姫が、話しかけて来た。


「すまんのう、ヒロト。私はギルド長にAランクにしろと言うたのだが、他の冒険者とのバランスもあってのう」


 なんか、呼び捨てになっているな。
 どうしたんだろ?


「いえ。ありがたいです。Cランクで十分嬉しいです」


 エリス姫は、ニッコリ笑って腕を組んで来た。
 俺を出口へ引っ張っていく。


「さあ、ヒロト、ダンジョンにゆこうぞ! 出発じゃ!」


*


 エリス姫側からの希望で、俺達はルドルのダンジョン1階層からヒロトルートの階段を下って、5階層の転移魔方陣まで行く事になった。
 昨日は、丘にある転移部屋から5階層に行ったので、ダンジョン経由でも一度行っておきたいのだろう。


 問題は、メンバーだ。
 人が多い。


 まず、いつもの3人。
 俺、セレーネ、サクラだ。


 そして、エリス姫側から、なんと 8人!
 エリス姫、執事セバスチャン、メイド2人、護衛騎士4人だ。


 ダンジョン探索に、メイドを連れて行くなんて、聞いた事がない。
 これには、セレーネもサクラも呆れていた。


 メイドについては、セバスチャン曰く。


「戦闘訓練を受けていて、遅れは取りません。下手な冒険者より、強いですよ」


 だそうだ。
 なので、拒否せず受け入れた。


 それから、冒険者ギルドから4人。
 ダンジョン内の地図を書くギルドの担当者と護衛役の冒険者3人だ。


 なんと! 合計15人の大名行列になっている!
 1パーティーには、収まらないので、ヒロト、エリス姫、冒険者ギルドの3パーティーに分かれた。


 ダンジョン内は、マーキングが出来ない。
 壁に塗料で目印を付けても無駄だ。
 釘を打ち付けても無駄、布などを落して行っても無駄だ。
 30分もすれば、全てダンジョンに吸いこまれてしまう。


 俺は後ろが付いて来ているか、確認しながら進んだので、結構気疲れした。
 携帯電話や無線がないと、こう言う時不便だ。


 セレーネ、サクラ、エリス姫は、すっかり仲良くなった。
 移動中もワイワイ、キャッキャッと賑やかだ。


 1階層から、ヒロトルートの2階層へ。
 そして、階層を下って4階層まで休憩なしで、一気に降りた。


 4階層の階段前の広場で、昼休憩を挟む。
 そして、レッドリザードのいる4階ボス部屋を目指す。


 移動始めると、すぐにアカオオトカゲに出会う。
 冒険者ギルドの連中が驚きの声を上げた。


「ダンジョンボアじゃないんだ!」
「ホントに違う魔物がいるよ……」


 ギルド側の希望で、4階層の道中戦闘はギルドパーティーの担当になった。
 同行している回復役の人が、理由を教えてくれた。


「アカオオトカゲは、肝がポーションの材料になるから売れる。俺達にも、ちょっと稼がせてくれ」


「え!? ポーションは、薬草が材料じゃ?」


「薬草からも作れるし、アカオオトカゲや他の魔物からも作れるぞ。まあ、味は……、生臭いけどな」


 ちょっと、ぞっとするな。
 アカオオトカゲから作ったポーションは、飲みたくないな。


 そのまま順調に進んで、レッドリザードの待つボス部屋に着いた。
 ボスは、エリス姫のパーティーが、担当する事になった。


「では、いくかの」


 エリス姫と4人の護衛騎士が、ボス部屋に突入した。
 俺達は邪魔にならないように、部屋の外から戦闘の様子を眺める。


 護衛の騎士は、2人がミスリルの盾装備の前衛だ。
 この2人が盾を使って、レッドリザードを力で押し込む。


 レッドリザードは、火炎を吐くが、火炎攻撃はミスリルの盾を通らない。
 盾に炎が当たった瞬間に、霧散してしまう。


 残り2人の騎士は槍装備で、横合からレッドリザードに槍を突き出す。
 レッドリザードは、前衛の騎士と槍騎士に気を取られている。


 その隙に、エリス姫が、ミスリルの剣でレッドリザードの首を刎ねた。
 5人の流れるような連携攻撃に、レッドリザードは3分ともたなかった。


「さて、5階層に降りるかの」


 一団は、5階層に降り、転移魔方陣を使って地上に帰還した。
 転移部屋のある洞窟の中は、多数の作業者がいて、もう作業が始まっていた。


 エリス姫は、昨晩の内に各種工事の手配を行ったらしい。


「崩れると危ないからの」


 洞窟内は鉱山みたいに、木の柱や梁を組んでいる最中だった。
 所々にカンテラが吊るされ、作業担当者が忙しく働いていた。


 洞窟の外のやぶは刈り取られていて、道路工事が始まっていた。
 数十名の作業者が、工事をしている。


 俺は、見知った顔を見つけた。


「レッドさん!」


「おお! ヒロトか~!」


 以前、肉を運んでもらった、スケアクロウのレッドさんだ。
 ブルーさん達、他のメンバーも道路工事に参加していた。


 Eランク、Fランク冒険者には、冒険者ギルドから道路工事の依頼があったそうだ。
 スケアクロウは、依頼を受けて、しばらは道路工事をやるらしい。


「まあ、俺達はダンジョンで、あんまり稼げてないからな……。工事は……、本業じゃないけれど……。まあ、安定して確実に金が貰えるからな。冒険者としては、ちょっと恥ずかしいけれどな……」


「何言ってるんですか! 恥ずかしくないですよ! 街の皆が助かりますよ!」


「そ、そうか……」


 俺は、レッドさん達を励ましてみた。
 だが、反応は微妙だった。


 俺は12才で、レッドさんたちよりも年下だ。
 レッドさんたちとしては、年下の俺に追い抜かれた訳で、あまり面白くないのだろう。


 自分たちは、冒険者本来の仕事――ダンジョン探索では稼げず道路工事。
 一方で、年下のヒロトは大手柄を立てる。


 夢を持って田舎から出て来たレッドさんたちとしては、悔しい思いがあるのだろう。
 俺はレッドさんたちの表情を見て、早々に話しを切り上げる事にした。


 道路工事は、真っ直ぐ俺の家の横に伸びていた。
 エリス姫の手配だ。


「わたしから、母御殿への気持ちじゃ。このように道を作れば、ヒロトの家は一等地じゃからな」


 確かにそうだ。
 ルドルの街から街道を来て、俺の家を右に曲がると転移部屋になる。


<a href="//23561.mitemin.net/i303629/" target="_blank"><img src="//23561.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i303629/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>


*


 そして、俺の家にも工事が入っていた。
 家には、看板が!


「なんか、看板が付いてる……」


 看板にはこう書いてあった。


『ポーションあります! 魔法薬師チアキ』


 どうやら、チアキママは、ここでポーションの直売をやるらしい。


 それから数日後。
 俺は、チアキママが試作した、アカオオトカゲのポーションを、飲むハメになった。


 生臭さに、失神しそうだった。

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