ガチャ転生!~異世界でFラン冒険者ですが、ガチャを引いてチートになります

武蔵野純平

第48話 行先不明の転移魔方陣にダイブ したら、女の子に怒られました(地図アリ)

 ヒロトルート4階層のボス、レッドリザードは息絶えた。


 俺は、まだ興奮している。
 自分自身でわかる。
 気持ちが、まだ戦闘モードに入ったままだ。
 アドレナリンやら何やらが出まくっているよ。


「ヒロト! やったね! すごかったね!」


 セレーネが、駆け寄って来た。
 俺は返事になっていない返事を、セレーネに返す。


「ああ、ああ」


 今回は、ひどくやられた。
 魔物との戦闘で、あそこまで大きなダメージを受けたのは初めてだ。


 セレーネが、優しい声を俺にかけてくれた。
 背中をゆっくりと、上下にさすってくれる。


「大丈夫? 平気?」


 俺は、深く息を吸って、吐いた。


「うん。大丈夫だよ。ありがとう」


 サクラも、そばに来た。


「ヒロトさん、お疲れ様でした。宝箱出てますよ。銅箱です!」


「銅箱か……、金箱が良かった」


「4階層のボスですからね。銅箱で我慢してください」


「はい」


 レッドリザードをマジックバッグに収納して、宝箱を開けた。
 中には革鎧が入っていた。


 俺は鑑定を後回して、ドロップ品の鎧をマジックバッグに収納した。
 今の戦いで、かなり消耗している。


「とりあえず、5階をのぞいてから帰ろうか」


「うん」
「了解です」


 レッドリザードのいた4階層のボス部屋の奥に、下へ続く階段があった。
 俺達は、階段を下りて5階層に到着した。


 5階層の造りは、他の階層と同じだ。
 階段を降りた所に、広場の様な広いスペースがある。
 そこから、左、正面、右に、石造りの通路が続いている。


 だが、1つだけ、他の階層と違う箇所があった。
 階段の左右に、魔方陣が配置されているのだ。


 左の魔方陣は、青色に光輝いている。
 右の魔方陣は、白色だ。


 サクラとセレーネが、魔方陣を見つめたまま、話し始めた。


「転移魔方陣?」


「これが?」


 俺も見た事はないが、サクラの言う通り、これは転移魔方陣だと思う。
 ルドルのダンジョンには、『転移魔方陣がない』と言われて来た。


 だが、目の前にある。
 問題は……。


「問題は、どこに転移させられるかだね?」


「えっ? 地上じゃないの? ダンジョンの入り口じゃないの?」


「セレーネちゃん、ダンジョンの入り口で、魔方陣を見た事ある?」


「……ない」


「そうなんだよね……」


 2人は、考え込んでしまった。
 俺は、かまわず2人に提案する。


「魔方陣にのってみようよ」


「え!?」
「え!?」


「俺もこの魔方陣は転移魔方陣だと思う。こっちの青く光っているのが地上行きの魔方陣、白いのは地上から来る時に使う魔法陣じゃないかな」


「それは……、その可能性が高いと……、わたしも思います。けど……」


「何の保証もないよな。なら、のってみれば良い」


「危険ですよ! 下の階層に飛ばされる可能性もあるんですよ!」


「じゃあ、俺1人で行って来る。しばらくたって、俺が戻らなかったら、ここから離脱しろ」


「ちょ!」
「ヒロト!」


 そう言い残して、俺は魔方陣に飛びのった。
 目の前から風景が消えた。


 次の瞬間、俺は暗い空間にいた。
 足元の魔方陣だけが、青く光っている。
 周囲に魔物や人の気配はない。


「あ……、天井が明るくなって来た……」


 ダンジョンと同じ石造りの部屋だった。
 10畳程度の大きさの魔方陣が、2つ床に描かれている。
 転移して来た階段の横と、同じ魔方陣に見える。


 2つの魔方陣の正面には、扉がある。
 両開きの大きな扉で、閉じられている。


「扉……、か。鬼が出るか、蛇が出るか、だっけな……」


 俺は扉の取っ手に、手をかけた。
 ちょっと引くと、扉は自動でゆっくりと開いた。


 扉の先には、階段があった。
 階段は、暗い。


 警戒しながら、階段を一歩づつ上がる。
 スキル【夜目】がなければ、良く見えなかっただろう。


 足元には、土が積もっている。
 ここが、長らく使われていない階段だとわかる。


 階段を上がると、洞窟の中に出た。
 薄っすらとだが、光が差し込んでいる。


 光の指す方へ進む。
 洞窟は途中で、カーブしていた。


 カーブを曲がると、洞窟の出口が見えた。




 *




 俺は、転移魔方陣を使って5階層に戻った。
 セレーネとサクラを連れて、転移して洞窟に来た。


 洞窟の出口は、やぶの中だった。
 低木と背の高い草をかき分けて、3人で進む。


 サクラがご立腹だ。


「とにかくですよ! いきなり転移魔方陣に飛び込むなんて無茶は、これっきりにして下さい!」


 セレーネも続く。


「そうだよ! ヒロトが転移してから、心配で仕方がなかったんだからね! 今日のヒロトは、ちょっとおかしいよ!」


 確かに、おかしいかもしれない。
 レッドリザート戦での興奮が、まだ収まっていない。


 全能感が俺を満たしている。
 自分なら何だって出来る、俺は神だ! と言った感覚だ。


 俺は素直に、2人に謝った。


「ごめん。ちょっとレッドリザード戦で……、ひどかったろ? アレで興奮して、まだ、ちょっと冷静じゃないんだ」


 やぶを抜けた。
 その先には、見慣れた風景が広がっていた。


「あ!」
「あ!」
「あ!」


 3人とも、ポカンと口を開けてしまった。
 転移魔方陣のある部屋は、丘の中腹のやぶの中にあった。


 その丘からは、ルドルの街、街道、そして俺の家が見えた。
 俺の家の裏の丘に、ヒロトルート5階層からの転移部屋があったのだ。


 夕方の6の鐘が鳴っている。
 夏なので、まだ明るい。
 俺達は丘の上から、ルドルの街を無言で眺めていた。


 いや、だってさ。
 家の裏に、こんな重要なモノがあったなんて思わなかった。


<a href="//23561.mitemin.net/i303035/" target="_blank"><img src="//23561.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i303035/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>


 サクラが、真剣な表情で話し始めた。


「これは……、街の形が変わりますよ」


「街の形が?」


「ええ。ヒロトルートの4階層ボスを突破すれば、今の魔方陣が使えるようになりますよね」


「そうだな」


「そうすると、5階層からの探索は、洞窟の転移部屋を使う事になります」


「うん」


「洞窟からダンジョンに潜る人の流れが、新しく出来る訳です。お店やひょっとしたら冒険者ギルドも支所をこの近辺に作るかもしれません」


「そんな大掛かりな話になるのかよ!」


 でも、言われてみれは、そうかもしれない。
 ヒロトルートの方は、実質新しいダンジョン発見と同じだ。


 お宝目当てに、全国から冒険者が押し寄せて来る。
 この辺りは街外れだが、しばらくすれば冒険者向けの店が増えるだろう。


「1人の冒険者、1つのパーティーの手には余る話になってきましたね」


 サクラの言葉が胸に響いた。
 これは、もう、独り占めしないで、早めに公開しなければならないな。

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