ガチャ転生!~異世界でFラン冒険者ですが、ガチャを引いてチートになります

武蔵野純平

第28話 ジョブはシーフ、エルフは狩人(ジョブ選択その2)

 俺とセレーネは、ジョブにつける事になった。
 ブルーカード――Dランク冒険者の特典だ。


 ギルド受付のジュリさんから、ジョブの説明を受けている流れで、俺のレベルがいまだにLv1である事を話した。


 するとジュリさんは、大当たりかもしれない、と言い出した。
 俺はジュリさんの言葉に、かなり困惑している。


「ジュリさん、その大当たりってどういう事ですか?」


「レベルアップって、人それぞれ違うのよ。すぐレベルアップする人もいれば、時間がかかる人もいるわ。それでね、レベルアップに時間がかかる人は、ステータスの上り幅が大きいと言われているの」


 そうなのか!
 俺は師匠と一緒にルドルのダンジョンに潜る様になってから、もう200以上の魔物を討伐している。


 俺がLv1のままなのは、異常だと思っていた。
 ひょっとしたら、このまま一生Lv1のままなのかと、心配もしていた。
 ジュリさんの話によれば、俺の様なケース、なかなかレベルアップしない冒険者もいるのだな。


 一定のペースでレベルアップして、一定割合でステータスが伸びていくのだと思っていたが……。
 どうやらそうでもないらしい。


「本当ですか?」


「本当よ。うーん……、成長タイプが人それぞれ違うって言えば、伝わるかな?」


「成長タイプ?」


 今一つジュリさんの言っている事が、俺にはわからなかった。
 成長タイプ?


 俺が、わからないと言った顔をすると、ジュリさんは、顎に手をあてて考えながらゆっくりと話した。


「例えばだけど……。1回のレベルアップでステータスの上り幅が小さいけれど、一定のペースでレベルアップしていく成長タイプの人がいるわ。安定型の成長タイプね」


「他にもあるんですよね?」


「そうよ。最初は急成長するけれど、すぐに成長が頭打ちしてしまう成長タイプの人もいるわ。スタートダッシュ型の成長タイプね。」


「じゃあ、俺の場合は、ゆっくり成長するタイプ?」


「たぶん、そうよ」


 俺の成長タイプに名前をつけると何だろう?


 スロースターター型?
 大器晩成型?


 とにかく、俺のレベルが上がらないのは、俺の成長タイプが理由らしい。
 なら……


「俺のレベルが上がらない事は、あまり気にしないでも良さそうですね」


 今のところ、装備、スキル【剣術(初級)】、裏スキル【カード】によるステータス上昇で、魔物との戦闘は何とかなっている。


 その辺も踏まえて、俺のジョブを考えると……。


「ジュリさん、俺のジョブはシーフにします」


 ジュリさんは、ちょっとびっくりした様な顔をした。


「いいの? 私がオススメしてておいて、何だけど……。正直、不人気ジョブだから……」


「はい。師匠にもシーフが向いてるって言われてましたし、ジュリさんの説明ももっともだったので」


「ありがとう!」


 師匠とジュリさん推薦もあるけれど、俺はシーフってジョブを高く評価している。


 もちろん、前衛の戦士系のジョブは力強くてカッコイイ。
 後衛の魔法系のジョブもスマートな印象だし、攻撃魔法の火力は凄い。


 けど、ダンジョン探索をするなら、シーフの探知系の能力は間違いなく役に立つ。
 火力不足は、ジュリさんの言う通り、これからパーティーメンバーを増やすことで、解消していけば良い。


「しかし、何でこのジョブの名前がシーフ――盗賊、何ですかね?」


「それも不人気の理由の一つね~。このジョブ名が伝統なのよね~。かぎを開錠するスキルがあるからかな~。シーフ――盗賊って呼び方は、強盗や野盗みたいで、イメージ悪いわよね~」


 俺とジュリさんは、苦笑いした。
 俺のジョブは決まったところで、パーティーメンバーのセレーネが話に入って来た。


「弓士系も不人気ジョブなんですね……。ちょっとショックです!」


「弓は……、お金がかかるし。後衛職だと魔法使いの方が、どうしても人気なのよね……」


 ジュリさんが言いづらそうに告げると、セレーネはかなりガックリと気落ちした。


 そう、弓はお金がかかる。
 まず、矢が高い。


 矢1本で1000ゴルド!
 高いが、手作りだから仕方がない。


 矢は戦闘が終わると回収しているが、何回か使うとダメになってしまう。
 矢の先端のやじりが壊れたり、矢が折れてしまったりする。


 壊れた矢も回収して、セレーネが夜に補修しているけれど、補修にも時間がかかる。
 矢は、ほぼ消耗品だ。


 弓も上位品は高い。
 セレーネが今使っている弓は、作りが単純な弓だから、手頃な値段だ。


 だが、コンポジットボウと言う、色々な素材を組み合わせたタイプの弓は高い。
 コンポジットボウは、複数の素材を張り合わせて作るので、弓のサイズが小さくても撃ち出す矢の威力は強力だ。


 コンポジットボウは、職人が時間をかけて作るので、量産が出来ない。
 どうしても値段が高くなる。


 ルドルでは見かけないが、クロスボウもあるらしい。
 クロスボウも複雑な構造だから量産出来ない。
 これも高い。


 弓士系のジョブは、弓矢に金がかかるので、稼ぎが少ない初心者冒険者には敬遠されがちなのだ。
 セレーネの様に矢を自分で作ったり、修理出来るのは、まれなケースだ。
 だから、ルドルの街では、元猟師や猟師の子供に限定されがちなジョブだ。


「魔法使いの火魔法とかの方が、派手で良いんですかね~」


 俺が考え事をしている間に、ジュリさんとセレーネがジョブについて色々話していた様だ。
 セレーネの気弱な声が聞こえて来た。


「うーん。見た目よりも、魔法攻撃だと複数に攻撃出来るからかしら。弓矢だと、1体づつ攻撃する事になるから、後衛職だと魔法使いの方が上位に見られがちよね。上位職になると範囲攻撃も出来る様になるけどね」


「なんかエルフとしては、悔しいですね~」


 セレーネが、かなり落ち込んでいる。
 ここはフォローしておこう。


「弓矢の強味もあるよ。例えば、足を打ち抜いて、敵を足止めする様なピンポイントの攻撃は、弓矢の方が得意でしょ?」


 セレーネが顔を上げて、嬉しそうにコクコクとうなずいた。


「それに、魔法はMPが切れたら、そこでおしまい。弓矢はマジックバッグに矢を詰め込んでおけば、攻撃が途切れる事が無い。継戦能力も弓矢の方が上だよ」


 厳密には、MP回復薬を飲めば、魔法使いも継戦能力があるけれど。
 まあ、ここはセレーネを励ますためだから、多少のヒイキはOKだろう。


「ヒロト~! やさしい~!」


 セレーネが、嬉しそうに抱き着いて来た。
 ご機嫌が直ったみたいで良かった。


「じゃあ、私はジョブ狩人にする!」


 俺もセレーネは狩人が良いと思った。
 スキル【解体】も付いて来るしな。
 俺が苦手な魔物の解体が、楽になりそうだ。
 だが、この事は伏せておこう。


「セレーネは、スキル【弓術(初級)】を、もう持ってるからね。狩人で良いと思うよ」


「うん!」


「それじゃあ、ヒロト君はシーフで、セレーネちゃんは狩人ね」


 ジュリさんは、魔方陣の書いてある紙を2枚取り出した。
 片方を俺の方へ、もう片方をセレーネの方へ置いた。


「じゃあ、ここにサインして。そう。そしたら魔方陣に手を置いてね」


 俺達が魔方陣に手を置くと、魔方陣は一瞬光を放って消えた。
 ステータスを確認すると、項目ジョブが増えて、シーフになっていた。
 スキル【宝箱探知】と【隠し部屋探知】も、バッチリ追加された。


「この紙って、どういう仕組み何ですかね? 不思議です……」


「魔法よ。それ王都の第2冒険者ギルドで作ってるよ。凄いでしょ!」


「ええ!?」
「ええ!?」


 俺とセレーネは、同時に驚きの声を上げた。


「ジュリさん。ジョブって、人間が作った物なんですか?」


「うーんとね。厳密に言うと違うわ。ジョブはね。最初は勇者しか持ってなかったのよ」


「勇者? 伝説に残っている勇者ですか?」


 勇者の伝説は俺も知っている。
 子供の頃にチアキママに絵本を読んでもらった。




 むかーし、むかし、何千年も前の事。
 この世界には、魔王がいました。
 魔王は悪い事を沢山して、みんなを苦しめていました。
 そこに勇者が現れました。
 勇者は魔王をやっつけました。
 魔王がいなくなって、この世界は平和になりました。




 と、大雑把にこんな感じの話し。




「そう。その勇者を人工的に作り出そうと研究した過程で、ジョブを冒険者に与える魔方陣が出来たのよ。各国のギルドで、ジョブの魔方陣は管理、開発されているの」


「じゃあ、ジョブはギルドで、コントロールしているって事ですか?」


「それが、そうでもないのよ」


「え? でも、今の話しだと、ジョブは人が作った事になりますよね?」


「そうなんだけど……。ジョブ固有の特殊スキルやジョブによる成長への影響は、人が作った機能じゃないのよ」


「ええ!? じゃあ、そのジョブ機能は、誰が作ったんですか?」


「神様がジョブに機能を付け足した、と言われているわ。だからジョブは、神と人の合作と言われてるの。面白いでしょ?」


 はー。そうだったのか。
 HP30%アップとかステータスの数値上昇機能とジョブ名を人間が作って、後の機能は神様が作った訳だ。
 なら、未発見のスキルとか、知られていないジョブの特徴とかもありそうだよな。


「ちなみに~。勇者になりたいなら、500万ゴルドでなれるわよ~」


「えっ?」


 ジュリさんは、一枚のチラシを受付カウンターに置いた。
 そのチラシは、勇者シリーズと書いてある。


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 ◇◇勇者シリーズ◇◇


 真の勇者
 スーパー勇者
 影の勇者
 美しい勇者
 素敵な勇者
 すごく強い勇者
 マッチョな勇者
 陸の勇者
 空の勇者
 海の勇者
 山の勇者
 光の勇者
 闇の勇者
 黄金の勇者
 黄金のライター勇者
 紅の勇者
 夜の勇者
 昼も夜も勇者
 あなたの勇者
 ……(以下略)


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 なんだこりゃ?
 夜の勇者とか、絶対に意味が違っているだろう……。


「ジュリさん、これは?」


「昔、勇者ブームがあってね。勇者って付くジョブが沢山開発されたのよ~」


「500万ゴルドは、高くないですか?」


「これはユニーク。世界で一つだけのジョブだから、ちょっとお高いの。ヒロト君も、もっとお金稼いだらユニークを検討してね♪」


「ははは」


「じゃあ、これでDランク冒険者の特典はお終い。明日の朝ダンジョンに行く前に、ギルドに寄ってね。ヒロト君達にぴったりの依頼があるわよ」

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