ガチャ転生!~異世界でFラン冒険者ですが、ガチャを引いてチートになります

武蔵野純平

第25話 ハゲール無双(ただし力ではなく口である)

 ホーンラビット狩りが終わって、ダンジョンを出たところで、ニューヨークファミリーのケインにからまれたが、ウソとハッタリで切り抜けた。


 俺とセレーネはギルドへ来て、受付のジュリさんにケイン達の事を報告した。
 転生者と寿命の話をジュリさんから聞き終わると、ニューヨークファミリーのケインが仲間を引き連れてギルドへ乗り込んで来た。


 俺を見る目に殺気がこもってる。
 ケインの目を見てわかった。


 まずい!
 俺のハッタリ、ウソがばれた。


「このガキー!」


 ケインは拳を握りしめて、真っ直ぐ俺の方に走って来た。
 やばい!
 突然で……、体が……、動かない……、まずい……。


 ゴン!


 ケインの拳が、俺の頬に直撃した。
 俺は椅子から転げ落ちた。


「何が弟子だバカ野郎! ダグはこの街にいないじゃねーか! このクソが! コケにしてんじゃねーよ!」


 ケインは怒鳴りながら、床に転がった俺を上から蹴り続けている。
 俺は体を丸め、頭を手でかばった。
 ジュリさんの声が聞こえる。


「やめなさい! 誰か止めて!」


 冒険者はロビーに2、3人しかいなかったはずだ。
 ケインの仲間は5人。
 クソ! 誰も止めてくれそうにない。


 ケインの蹴りが容赦なく俺の体を痛めつける。
 まずい、腕に力が入らなくなって来た。
 頭をかばうのは、限界かもしれない。


「止めろ! 何をしている!」


 声が聞こえる。
 あ、蹴りが止まった。


 何か怒鳴り声が聞こえるけど、はっきり聞き取れない。
 頭がガンガンする。


「……くん! ヒロト君! これ飲んで!」


 これ? 飲む?
 俺の口に、何かが押し付けられている。
 冷たい液体が口の中に流れ込んで来た。


 う! なんだこれ? 苦い!


「飲んで! ポーションだから! 飲んで!」


 ん? この声はジュリさん?
 ポーション? ああ、回復するポーション?


 俺は口の中の苦い液体を、無理矢理飲み込んだ。
 胃のあたりから、暖かい柔らかな熱が体中に伝わって来た。


 続いて口の中に苦い液体が、また流し込まれる。
 頭の中がすっきりして来た。
 俺は状況がやっとわかった。
 これはジュリさんが、ポーションを飲ませてくれているんだ。


 口の中の液体を、また飲んだ。
 飲むと次の液体が流し込まれる。
 それも飲んだ。
 だんだん周りの怒鳴り声が聞こえて来た。


 この声は……。ハゲールだ!
 ケインとハゲールが、やり合っている。


「……だコラ! こっちは、王都のクラン、ニューヨークファミリーだぞ!」


「それがどうした! ここはルドルだ! 冒険者なら、ルドルのギルドマスターの私の指示に従え!」


 目を開けるとケインがハゲールを胸倉をつかんでいた。
 だが、ハゲールは一歩も引かない。
 鋭い目でケインを、にらみ続けている。


「俺は王都の第1冒険者ギルド所属だ! オマエの命令に従う義務はねえ!」


「そうか! なら王都へ帰れ!」


「俺はルドルに仕事で来たんだ!」


「ほう~。子供を殴るのが仕事かね?」


 ハゲールの指摘に、ケインが言葉を詰まらせた。
 ケインが俺の方を指さし、わめき散らした。


「このガキが神速のダグの弟子だとか、俺を騙したんだよ! これはその報復だ!」


「この子は、本当に神速のダグの弟子だぞ」


「あー! ふかしくれてんじゃねーぞ!」


「本当だ! 他の冒険者にも、聞いてみるんだな。ダグ先輩は王都に用事で出かけている。ダグ先輩が帰って来た時が見ものだな!」


「なにを……」


 ハゲールがケインの腕を握って、投げ捨てるように振りほどいた。
 ケインは、顔色が悪くなっている。


「オマエの頭が胴体に別れを告げるのは、ダグ先輩がルドルに帰って来てから、何分後かな? そうだ! ギルド主催で賭けを開催するか。君は、何分後に賭ける? 5分後? 10分後?」


「この……」


「あー、それからな! お前たちの仕事は潰しておいた。ホーンラビットを買い占めて、商人ギルドに高く売りつけるつもりだったのだろう?」


「ク……」


「たった今! 商人ギルドと話して来た! 今日、我々が納品する分で、充分足りるそうだよ。残念だったな!」


「クソ……」


 ハゲールが、ケインが首から下げているギルドカードを引きちぎった。


「おい! 何をする!」


「このギルドカードは没収する。君たちは! ルドルでの! 活動! 禁止だ! 文句があるなら、王都のギルドに申し出るんだな。さあ、出て行け!!」


「テメー! 俺達ニューヨークファミリーのバックには、侯爵家がついているんだぞ!」


「そうか、それはすごいな。ところで、出口はあっちだよ」


「この! 覚えてやがれ!」


 足音が遠ざかっていく。
 ハゲールすごいな……。


 あいつら出入り禁止だな。
 ざまあみろ。

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