異世界トレイン ~通勤電車が未知の世界に転移した!2500人の乗客と異世界サバイバル~
第40話 再びのジョン・マクレーン
食料品を調理担当グループに渡す。
調理担当グループは、早速晩ご飯の支度に入った。
オーク肉を下ごしらえして、キャベツのような野菜を千切りにする。
そして、現地で水麦と呼ばれる米を大きな鍋で炊き始めると、ご飯を炊く美味しそうな匂いがあたりに立ち込めた。
無気力に座り込んでいた人、昼間から寝転がっていた人が立ち上がり、匂いに釣られてフラフラと調理場に集まってきた。
「おい……この香りは……」
「えっ……ごはん?」
「おう! 晩メシは、なんと! ソースカツ丼だぜ! 待ってな~。旨いのを食わしてやるぜ!」
鋼鉄の料理人津田さんが、味を請け負った。
調理場には、人がどんどん集まってくる。
中には大声を出すヤカラが現れ始めた。
「オイ! 早く食わせろよ!」
「まだかよ!」
「二千五百人分を作ってるんだ! すぐに出来るわけがないだろう! 待ってろ!」
鋼鉄の料理人津田さんが、やり返すが数人のマナーが悪い人のせいで空気が悪くなった。
俺とリクは、荷さばき作業を中断した。
「なあ、リク。あれ、不味いよな……」
「ミッツ! あいつら暴れるぞ……」
スーツ姿の男が五人、鋼鉄の料理人津田さんに凄んでいる。今にも殴りかかりそうな雰囲気だ。
顔つきや服装から想像すると、日本にいた頃はちゃんとした会社に勤めていただろうに……。
過酷な環境が人柄を変えてしまうのか、それとも――。
「まあ、きっと元々悪党なんだろう」
「ミッツ! また、ダイハードごっこか? いきなり撃つなよ! 絶対に撃つなよ!」
俺がブルース・ウィリス演じるジョン・マクレーンよろしくニヒルに決めると、すかさずリクからツッコミが入った。
さすがの俺でも、同胞に向けていきなりぶっ放したりはしない。
鋼鉄の料理人津田さんとの間に入って、『順番に配るから待ってくれ』と言うだけだ。
本当だ。
それだけだ。
俺は井利口さんにも声を掛けた。
「井利口さん、止めに行きましょう!」
「チッ! また、あいつらか……。行こう!」
井利口さんの口調からすると、もめ事の常連らしい。
井利口さんは、忌々しそうな顔をしている。
「ウチらも行くニャ。もめ事の仲裁は慣れているニャ」
「頼みます!」
猫獣人ココさんたち現地人四人組も加勢してくれることになった。
これから暴れそうなヤツを止めに入るのだが、連中のジョブもスキルもわからない。
戦闘に向いたジョブかもしれないし、強力な戦闘スキルを持っているかもしれないのだ。
こちらの人数が多い方が良い。
荷さばきをマリンさんと柴山さんに任せて、俺、リク、井利口さんたち四人、猫獣人ココさんたち現地人四人組の合計十人で止めに入った。
俺は、鋼鉄の料理人津田さんにからんでいる男五人に、大きめのアクションで声を掛けた。
「ちょっといいか? 」
「誰だ? オマエ?」
「ジョン・マクレーン」
「……オマエ頭大丈夫か?」
「ニューヨーク市警のジョン・マクレーンだ」
「ベタベタの日本人顔じゃねえか! ニューヨーク市警のわけがないだろう!」
いかん!
ジョークで和ませようとしたら、かえって怒らせてしまった。
横でリクが頭を抱えている。
「こいつの頭がおかしいのは気にしないでくれ。それで、何をモメてるんだ? 津田さんは、二千五百人分の料理を作るので忙しい。俺たちが相手をするぜ……」
リクがイケメン・アイをギンとひんむいて決めてくれた。
五人組はリクとにらみ合っている。
しかし、俺は『バカ』から、『頭がおかしい』に進化してしまった。
こうなったら、どこまでも突き抜けてしまおう。
さてと……。
俺は引き続きジョン・マクレーンCV野沢那智になりきって、五人に相対した。
「なあ、あんたら。俺たちは、そこの食い物を調達してきたんだ。ちゃんと全員に配るから、食事が出来上がるのを、お行儀良―く、待っていてくれ」
「だから、先に食わせろと言ってるんだ!」
「順番て言葉を知ってるか? 列を作って順番に並ぶのは日本人の美徳ってヤツだ! あんたらも、日本人ならわかるよな?」
「わからねえな! 先に食わせろよ! 腹が減ってるんだ!」
「そうか……、そんなに腹が減ってるのか……。それならこれでも食いな!」
俺はリーダー格の男の横っ面に右ストレートをお見舞いした。
そいつの横にいた男は、ポカンと突っ立っていやがったので、返しの左フックを土手っ腹に突き刺した。
「グエッ!」
「ゲー!」
俺に殴られた二人が血を吐いて倒れた。
あれ?
そんなに強く殴ってないのに?
「よせ! ミッツ! 殺すな!」
リクが、俺と二人の間に割って入った。
リクの顔が真っ青だ。
様子を見ていた柴山さんが、飛んできて二人にヒールをかけて治療している。
俺は頭をひねって、リクに質問する。
「いや……軽く殴っただけなんだけど……。えっと……手加減したよ。こいつら、なんでこんなに弱いの?」
「あのなあ! オマエは旅の間に嫌というほど魔物を倒してレベルアップしただろう? 身体強化スキルも上がっただろう? 下手に殴ったら、人が死ぬぞ!」
「えー! じゃあ、何か? この偉そうにふんぞり返っていたヤツラは、大したレベルアップもしてない弱っち君のくせに、ケンカを売ってたの? バカなのか?」
俺は心底呆れてしまった。
こいつらは鋼鉄の料理人津田さんたちが、自分たちより弱そうだから無理な要求をしていただけなのだろう。
とんでもない下衆野郎だ!
そうとわかったら、また、腹が立ってきた。
「もう、一発……」
「ミッツ! ダメだからな! 当たり所が悪かったら死ぬからな! 殺しは不味いからな! 本当にやるなよ!」
殺気を放った俺を、リクが真剣に止める。
すると、悪さをしていた五人の表情がみるみるうちに悪くなってきた。
ひとりは、ズボンにシミが出来ている。
まあ、武士の情けだ。
見なかったことにしてやろう。
そばで様子を見ていた井利口さんと猫獣人ココさんが、一歩前へ出て五人に話し出した。
「まあ、あんたらもミッツさんたちとは争わない方が良いよ。ハンパなく強いから。少なくとも俺たちでは、止められない。ミッツさんともめる時は、自分たちで何とかしてくれ」
「ウチは領都ノースポールから来た冒険者ニャ。そこで料理している食材は、ウチらの町ノースポールで用意したニャ。窓口になっているのは、ミッツニャ。ミッツと敵対するなら、あんたらに食料は売らないニャ」
井利口さんに突き放され、猫獣人ココさんに脅されて、五人は口ごもった。
「い、いや……。俺たちは……。クソ! 覚えてろぉぉぉぉぉ~!」
五人は、お約束の捨て台詞を残して調理場から去って行った。
俺とリクは、去って行く五人を笑顔で見送る。
「でもさ。あいつら、ソースカツ丼が出来たら、列に並ぶだろう?」
「ああ、絶対に並ぶな!」
「ふふふふ……」
「ハハハ!」
俺たちの笑い声が調理場に響いた。
調理担当グループは、早速晩ご飯の支度に入った。
オーク肉を下ごしらえして、キャベツのような野菜を千切りにする。
そして、現地で水麦と呼ばれる米を大きな鍋で炊き始めると、ご飯を炊く美味しそうな匂いがあたりに立ち込めた。
無気力に座り込んでいた人、昼間から寝転がっていた人が立ち上がり、匂いに釣られてフラフラと調理場に集まってきた。
「おい……この香りは……」
「えっ……ごはん?」
「おう! 晩メシは、なんと! ソースカツ丼だぜ! 待ってな~。旨いのを食わしてやるぜ!」
鋼鉄の料理人津田さんが、味を請け負った。
調理場には、人がどんどん集まってくる。
中には大声を出すヤカラが現れ始めた。
「オイ! 早く食わせろよ!」
「まだかよ!」
「二千五百人分を作ってるんだ! すぐに出来るわけがないだろう! 待ってろ!」
鋼鉄の料理人津田さんが、やり返すが数人のマナーが悪い人のせいで空気が悪くなった。
俺とリクは、荷さばき作業を中断した。
「なあ、リク。あれ、不味いよな……」
「ミッツ! あいつら暴れるぞ……」
スーツ姿の男が五人、鋼鉄の料理人津田さんに凄んでいる。今にも殴りかかりそうな雰囲気だ。
顔つきや服装から想像すると、日本にいた頃はちゃんとした会社に勤めていただろうに……。
過酷な環境が人柄を変えてしまうのか、それとも――。
「まあ、きっと元々悪党なんだろう」
「ミッツ! また、ダイハードごっこか? いきなり撃つなよ! 絶対に撃つなよ!」
俺がブルース・ウィリス演じるジョン・マクレーンよろしくニヒルに決めると、すかさずリクからツッコミが入った。
さすがの俺でも、同胞に向けていきなりぶっ放したりはしない。
鋼鉄の料理人津田さんとの間に入って、『順番に配るから待ってくれ』と言うだけだ。
本当だ。
それだけだ。
俺は井利口さんにも声を掛けた。
「井利口さん、止めに行きましょう!」
「チッ! また、あいつらか……。行こう!」
井利口さんの口調からすると、もめ事の常連らしい。
井利口さんは、忌々しそうな顔をしている。
「ウチらも行くニャ。もめ事の仲裁は慣れているニャ」
「頼みます!」
猫獣人ココさんたち現地人四人組も加勢してくれることになった。
これから暴れそうなヤツを止めに入るのだが、連中のジョブもスキルもわからない。
戦闘に向いたジョブかもしれないし、強力な戦闘スキルを持っているかもしれないのだ。
こちらの人数が多い方が良い。
荷さばきをマリンさんと柴山さんに任せて、俺、リク、井利口さんたち四人、猫獣人ココさんたち現地人四人組の合計十人で止めに入った。
俺は、鋼鉄の料理人津田さんにからんでいる男五人に、大きめのアクションで声を掛けた。
「ちょっといいか? 」
「誰だ? オマエ?」
「ジョン・マクレーン」
「……オマエ頭大丈夫か?」
「ニューヨーク市警のジョン・マクレーンだ」
「ベタベタの日本人顔じゃねえか! ニューヨーク市警のわけがないだろう!」
いかん!
ジョークで和ませようとしたら、かえって怒らせてしまった。
横でリクが頭を抱えている。
「こいつの頭がおかしいのは気にしないでくれ。それで、何をモメてるんだ? 津田さんは、二千五百人分の料理を作るので忙しい。俺たちが相手をするぜ……」
リクがイケメン・アイをギンとひんむいて決めてくれた。
五人組はリクとにらみ合っている。
しかし、俺は『バカ』から、『頭がおかしい』に進化してしまった。
こうなったら、どこまでも突き抜けてしまおう。
さてと……。
俺は引き続きジョン・マクレーンCV野沢那智になりきって、五人に相対した。
「なあ、あんたら。俺たちは、そこの食い物を調達してきたんだ。ちゃんと全員に配るから、食事が出来上がるのを、お行儀良―く、待っていてくれ」
「だから、先に食わせろと言ってるんだ!」
「順番て言葉を知ってるか? 列を作って順番に並ぶのは日本人の美徳ってヤツだ! あんたらも、日本人ならわかるよな?」
「わからねえな! 先に食わせろよ! 腹が減ってるんだ!」
「そうか……、そんなに腹が減ってるのか……。それならこれでも食いな!」
俺はリーダー格の男の横っ面に右ストレートをお見舞いした。
そいつの横にいた男は、ポカンと突っ立っていやがったので、返しの左フックを土手っ腹に突き刺した。
「グエッ!」
「ゲー!」
俺に殴られた二人が血を吐いて倒れた。
あれ?
そんなに強く殴ってないのに?
「よせ! ミッツ! 殺すな!」
リクが、俺と二人の間に割って入った。
リクの顔が真っ青だ。
様子を見ていた柴山さんが、飛んできて二人にヒールをかけて治療している。
俺は頭をひねって、リクに質問する。
「いや……軽く殴っただけなんだけど……。えっと……手加減したよ。こいつら、なんでこんなに弱いの?」
「あのなあ! オマエは旅の間に嫌というほど魔物を倒してレベルアップしただろう? 身体強化スキルも上がっただろう? 下手に殴ったら、人が死ぬぞ!」
「えー! じゃあ、何か? この偉そうにふんぞり返っていたヤツラは、大したレベルアップもしてない弱っち君のくせに、ケンカを売ってたの? バカなのか?」
俺は心底呆れてしまった。
こいつらは鋼鉄の料理人津田さんたちが、自分たちより弱そうだから無理な要求をしていただけなのだろう。
とんでもない下衆野郎だ!
そうとわかったら、また、腹が立ってきた。
「もう、一発……」
「ミッツ! ダメだからな! 当たり所が悪かったら死ぬからな! 殺しは不味いからな! 本当にやるなよ!」
殺気を放った俺を、リクが真剣に止める。
すると、悪さをしていた五人の表情がみるみるうちに悪くなってきた。
ひとりは、ズボンにシミが出来ている。
まあ、武士の情けだ。
見なかったことにしてやろう。
そばで様子を見ていた井利口さんと猫獣人ココさんが、一歩前へ出て五人に話し出した。
「まあ、あんたらもミッツさんたちとは争わない方が良いよ。ハンパなく強いから。少なくとも俺たちでは、止められない。ミッツさんともめる時は、自分たちで何とかしてくれ」
「ウチは領都ノースポールから来た冒険者ニャ。そこで料理している食材は、ウチらの町ノースポールで用意したニャ。窓口になっているのは、ミッツニャ。ミッツと敵対するなら、あんたらに食料は売らないニャ」
井利口さんに突き放され、猫獣人ココさんに脅されて、五人は口ごもった。
「い、いや……。俺たちは……。クソ! 覚えてろぉぉぉぉぉ~!」
五人は、お約束の捨て台詞を残して調理場から去って行った。
俺とリクは、去って行く五人を笑顔で見送る。
「でもさ。あいつら、ソースカツ丼が出来たら、列に並ぶだろう?」
「ああ、絶対に並ぶな!」
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