異世界トレイン ~通勤電車が未知の世界に転移した!2500人の乗客と異世界サバイバル~
第14話 町を探して探索の旅4~新しい神殿の調査
新たに発見した神殿に到着したのは、七日目の午前中だ。
俺たちは、昼メシを食べると神殿内の調査に乗り出した。
暗い通路の中を注意して歩くとリクが足を止めた。
「部屋があるな……」
「部屋? 入り口は見当たらないぞ」
リクは部屋があると言うが、俺の目には石造りの通路が続く単調な風景が映っている。
部屋などない。
「柴山さん。光源をこの辺りに移動させてくれ」
「わかった」
リクの依頼で柴山さんが光球を壁際に移動させる。
スキルで作り出した光球なので、柴山さんが指をスイっと動かせば、光球も指の動きに合わせて移動する。
「ん~? どこだ? ドアはない……。じゃあ、スイッチは……あった!」
「リク! 何か見つけたのか?」
「ここを見てくれ!」
リクが指さした箇所を、俺、マリンさん、柴山さんがのぞき込む。
白いツルッとしたタイルのような材質の石壁だが、リクが指さした箇所は青色をしている。
「周りと色が違うな!」
「ああ、たぶん、これがスイッチじゃないか?」
「押してみろよ!」
「いや……」
リクが気の進まない顔をした。
リクは心配性だ。
スイッチを押したら神殿が爆発するんじゃないかと心配しているのだろう。
しょうがないので、俺は某上島さんの真似をしてみた。
「押すなよ!」
「え?」
「いいか! 押すなよ! 絶対に押すなよ!」
「いや、待てよ! ミッツ! 真面目にやれよ!」
何だと!
空気の読めないヤツだ!
ここは押すところだろう。
リクはのってくれなかったが、マリンさんがのってくれた。
笑顔で青いタイルを押す。
「くるりんパッ!」
「あっ!」
リクが悲しそうな声を上げたが、もう、遅い。
マリンさんよくやった!
マリンさんが壁の青い部分を押すと、石壁の一部が虹色に光った。
そして、石壁の一部が消えた。
「おっ! 部屋だな!」
石壁の消えた先は、十畳ほどのきれいな部屋だった。
部屋は明るく窓からは日が差し込んでいる。
ベッド、机、イス、書棚、ソファーがあり、どれも木製で品のよいデザインだ。
「文明の匂いがしますね!」
柴山さんが嬉しそうに声を上げると、書棚の本を手にした。
「すごい……。違う言語、違う文字なのに読めます!」
そういうと柴山さんは夢中で本を読み出した。
リクに目をやると、窓を軽く叩いて頭をひねっている。
「リク、どうした?」
「これってガラスじゃないよな?」
俺も窓を軽く叩いてみる。
ガラスとは違う固い感触が返ってきた。
素材がわからない。
ガラスではないが、屋外の景色が見えるし、太陽光が室内に降り注いでいる。
一体なんだろう?
「これ壁だな……」
「えっ!? これが壁!?」
「ここを見ろよ」
リクが指さした先を見る。
壁と窓の境目部分だ。
境目には何もない。
ガラス窓やアクリル板をはめこんだのなら、ゴムであるとか、金具であるとか、何らかの固定器具があるはずだ。
壁と窓の境目部分を触ってみる。
なめらかでスッと手が滑ってしまう。
「これ……映像なのか?」
「いや、日の光が射しているから映像ではないだろう。何らかの技術で壁を透過しているんだろうな」
リクが腕を組んで感心する。
俺は信じられない気持ちで、窓や壁をペタペタと触る。
原理が全くわからない……。
「何らかの技術って何だろう?」
「魔法とか……」
あり得るな。
俺は魔力で攻撃できるし、柴山さんはライトの魔法が使えるし、マリンさんは水魔法が使える。
室内に魔法を利用した道具を設置しているってことか。
「リク。ひょっとして、日本より進んでいるじゃないか?」
「そうだな……技術体系が根本的に違うのかもしれないな……」
技術体系……?
リクは難しいこと言うな。
俺は大塚明夫の真似をして、映画の台詞をアレンジした。
「オマエ難しいこと知ってるな! 脳みそ詰まってるな!」
「今度は『パルプフィクション』かよ! ハンバーガーが食いたくなるから止めろ!」
「今や『栄養満点の朝メシ』は、夢の彼方だな……」
俺はハンバーガーが食べられないことにちょっとへこみながら、部屋の中を探す。
ベッドや机は木製で、上品な蔦のレリーフが彫り込まれていた。
使い込まれているが、物自体は良い物と思われる。
俺は机の引き出しを開けてみると、巾着袋が入っていて、コインが何枚か入っていた。
恐らく財布だろう。
ベッドには布団や枕がキチンとセットされていて、布団カバーには丁寧に刺繍がされている。
マリンさんが、刺繍の部分を触って軽くため息をついた。
「この刺繍は手製じゃないかなぁ。日本で買ったら高いですよ」
「職人の手作りっぽいですよね」
部屋の隅に美しい布がかけられている。
マリンさんは、布に興味を示した。
「あっ!」
「どうした!」
「見てください! この向こうはお風呂がありますよ!」
「えっ!? マジですか!?」
美しい布は『のれん』になっていて、布の向こうにバスタブがあった。
マリンさんが、真剣な表情でお風呂をあちこち調べている。
「ここを……あれ? 違う……。じゃあ……ここを……やった! お湯が出た! 見て! 見て! お湯が出てますよ!」
「「うおーーーーー!」」
俺たちは大興奮!
今夜は風呂に入れると思うと、これまでの疲れも吹き飛んだし、人がいないと落ち込んでいた気持ちも上向いた。
ただ、不思議なことにお風呂に周りには、石けんもシャンプーもなかった。
この部屋の主は、風呂に入っても体を洗わなかったのか?
その後、俺たちは神殿の中をくまなく捜索した。
個人の住居と思われる部屋が三十室。
会議室のような大きい部屋が一つ。
食堂らしき部屋が一つ。
倉庫が一つ。
倉庫の中は宝の山で、魔力に反応してあかるくなるランプ、何かわからない道具、何かの油、酒と思われる瓶、塩、砂糖、紅茶っぽい乾燥した葉、ビスケットっぽい食べ物、小麦粉らしき物など、道具と食料品を多数発見した。
ただ、リクが『悪くなっている可能性があるから食べるな!』と注意したので、大丈夫そうな塩だけ利用することにした。
それでも、晩ご飯の味は断然違っていた。
肉を焼いただけの物から、塩味のステーキにランクアップしたのだ!
食事に満足して、温かい風呂にゆっくりつかる。
そして、安全の確保された部屋の中にある、やわらかいベッドで横になる。
俺たちは、満足して眠りについた。
――だが、ここの住人たちは、どこへ行ったのだろう?
俺たちは、昼メシを食べると神殿内の調査に乗り出した。
暗い通路の中を注意して歩くとリクが足を止めた。
「部屋があるな……」
「部屋? 入り口は見当たらないぞ」
リクは部屋があると言うが、俺の目には石造りの通路が続く単調な風景が映っている。
部屋などない。
「柴山さん。光源をこの辺りに移動させてくれ」
「わかった」
リクの依頼で柴山さんが光球を壁際に移動させる。
スキルで作り出した光球なので、柴山さんが指をスイっと動かせば、光球も指の動きに合わせて移動する。
「ん~? どこだ? ドアはない……。じゃあ、スイッチは……あった!」
「リク! 何か見つけたのか?」
「ここを見てくれ!」
リクが指さした箇所を、俺、マリンさん、柴山さんがのぞき込む。
白いツルッとしたタイルのような材質の石壁だが、リクが指さした箇所は青色をしている。
「周りと色が違うな!」
「ああ、たぶん、これがスイッチじゃないか?」
「押してみろよ!」
「いや……」
リクが気の進まない顔をした。
リクは心配性だ。
スイッチを押したら神殿が爆発するんじゃないかと心配しているのだろう。
しょうがないので、俺は某上島さんの真似をしてみた。
「押すなよ!」
「え?」
「いいか! 押すなよ! 絶対に押すなよ!」
「いや、待てよ! ミッツ! 真面目にやれよ!」
何だと!
空気の読めないヤツだ!
ここは押すところだろう。
リクはのってくれなかったが、マリンさんがのってくれた。
笑顔で青いタイルを押す。
「くるりんパッ!」
「あっ!」
リクが悲しそうな声を上げたが、もう、遅い。
マリンさんよくやった!
マリンさんが壁の青い部分を押すと、石壁の一部が虹色に光った。
そして、石壁の一部が消えた。
「おっ! 部屋だな!」
石壁の消えた先は、十畳ほどのきれいな部屋だった。
部屋は明るく窓からは日が差し込んでいる。
ベッド、机、イス、書棚、ソファーがあり、どれも木製で品のよいデザインだ。
「文明の匂いがしますね!」
柴山さんが嬉しそうに声を上げると、書棚の本を手にした。
「すごい……。違う言語、違う文字なのに読めます!」
そういうと柴山さんは夢中で本を読み出した。
リクに目をやると、窓を軽く叩いて頭をひねっている。
「リク、どうした?」
「これってガラスじゃないよな?」
俺も窓を軽く叩いてみる。
ガラスとは違う固い感触が返ってきた。
素材がわからない。
ガラスではないが、屋外の景色が見えるし、太陽光が室内に降り注いでいる。
一体なんだろう?
「これ壁だな……」
「えっ!? これが壁!?」
「ここを見ろよ」
リクが指さした先を見る。
壁と窓の境目部分だ。
境目には何もない。
ガラス窓やアクリル板をはめこんだのなら、ゴムであるとか、金具であるとか、何らかの固定器具があるはずだ。
壁と窓の境目部分を触ってみる。
なめらかでスッと手が滑ってしまう。
「これ……映像なのか?」
「いや、日の光が射しているから映像ではないだろう。何らかの技術で壁を透過しているんだろうな」
リクが腕を組んで感心する。
俺は信じられない気持ちで、窓や壁をペタペタと触る。
原理が全くわからない……。
「何らかの技術って何だろう?」
「魔法とか……」
あり得るな。
俺は魔力で攻撃できるし、柴山さんはライトの魔法が使えるし、マリンさんは水魔法が使える。
室内に魔法を利用した道具を設置しているってことか。
「リク。ひょっとして、日本より進んでいるじゃないか?」
「そうだな……技術体系が根本的に違うのかもしれないな……」
技術体系……?
リクは難しいこと言うな。
俺は大塚明夫の真似をして、映画の台詞をアレンジした。
「オマエ難しいこと知ってるな! 脳みそ詰まってるな!」
「今度は『パルプフィクション』かよ! ハンバーガーが食いたくなるから止めろ!」
「今や『栄養満点の朝メシ』は、夢の彼方だな……」
俺はハンバーガーが食べられないことにちょっとへこみながら、部屋の中を探す。
ベッドや机は木製で、上品な蔦のレリーフが彫り込まれていた。
使い込まれているが、物自体は良い物と思われる。
俺は机の引き出しを開けてみると、巾着袋が入っていて、コインが何枚か入っていた。
恐らく財布だろう。
ベッドには布団や枕がキチンとセットされていて、布団カバーには丁寧に刺繍がされている。
マリンさんが、刺繍の部分を触って軽くため息をついた。
「この刺繍は手製じゃないかなぁ。日本で買ったら高いですよ」
「職人の手作りっぽいですよね」
部屋の隅に美しい布がかけられている。
マリンさんは、布に興味を示した。
「あっ!」
「どうした!」
「見てください! この向こうはお風呂がありますよ!」
「えっ!? マジですか!?」
美しい布は『のれん』になっていて、布の向こうにバスタブがあった。
マリンさんが、真剣な表情でお風呂をあちこち調べている。
「ここを……あれ? 違う……。じゃあ……ここを……やった! お湯が出た! 見て! 見て! お湯が出てますよ!」
「「うおーーーーー!」」
俺たちは大興奮!
今夜は風呂に入れると思うと、これまでの疲れも吹き飛んだし、人がいないと落ち込んでいた気持ちも上向いた。
ただ、不思議なことにお風呂に周りには、石けんもシャンプーもなかった。
この部屋の主は、風呂に入っても体を洗わなかったのか?
その後、俺たちは神殿の中をくまなく捜索した。
個人の住居と思われる部屋が三十室。
会議室のような大きい部屋が一つ。
食堂らしき部屋が一つ。
倉庫が一つ。
倉庫の中は宝の山で、魔力に反応してあかるくなるランプ、何かわからない道具、何かの油、酒と思われる瓶、塩、砂糖、紅茶っぽい乾燥した葉、ビスケットっぽい食べ物、小麦粉らしき物など、道具と食料品を多数発見した。
ただ、リクが『悪くなっている可能性があるから食べるな!』と注意したので、大丈夫そうな塩だけ利用することにした。
それでも、晩ご飯の味は断然違っていた。
肉を焼いただけの物から、塩味のステーキにランクアップしたのだ!
食事に満足して、温かい風呂にゆっくりつかる。
そして、安全の確保された部屋の中にある、やわらかいベッドで横になる。
俺たちは、満足して眠りについた。
――だが、ここの住人たちは、どこへ行ったのだろう?
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