第4話　あなたの街のお助け機関　-02-

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　担当の女性は、ユウを連れてエレベーターに乗ると、職員カードをかざした。
　すると、階下へと動き始めたが、最下階である地下二階を通過し、地下五階へとたどり着いた。
　その先を案内したのは、頭にＶＲゴーグルをつけた青年だった。白い壁かべ、床ゆか、天井てんじょうに囲まれながら進むと、ガラスでできた大きな部屋へやへ案内された。

「では、今からアヤカシの存在証明のテストを受けていただきます。手順としては、この大きな部屋へやに入っていただき、出現したアヤカシの居場所をこのポインターで示してください」

　そう言って、ペンライトのボタンを何度か押おし、赤い光を出して見せる。

「正解するとピンポンと音が鳴ります。ポインターを誤ったところに指すと不正解の音がなり、二回失敗すると失格です。アヤカシは全部で五体出現しますのですべてのアヤカシの居場所を示してください」


「……うまくできるかな？」

　部屋へやに入って待っている間、渡わたされたペンライトをまじまじと見るユウ。緊張きんちょうからか手に力が入ってしまった。

　ッブ――――――――――――――！

　不正解音が警報の如ごとく鳴なり響ひびく。
　すぐにボタンから手を放したが、音はすぐには止やまなかった。

「……始める前からボタンを押おさないでください」
　審査官しんさかんの青年がジトーッと睨にらむ。
「……すいません」

「申し訳ないですが、既すでに機器がスタンバイ状態なので、今のは不正解として一回カウントされています。次に間違まちがえると失格ですのでご注意ください」

「ええー!?」
「やる前から自分追おい込こんでんな～、ユウどん……」

　付つき添そい席で待つみっちゃんは、自分のことさながら、ハラハラしながら見ていた。

「それでは、始めます」
「はいっ！」

　ブゥ……ンと機械が始動音を出し、ユウはすぐにぞわっと背中を震ふるわせる。

　青年がかけたＶＲゴーグルには、ユウの背後にアヤカシが映っていた。

　ピンポーン

　一体目のアヤカシをポイントできたようだ。

「黒い影かげだ」
　ユウは、おぞましい姿のアヤカシを想像していたのか、ただの黒い影かげを見た一瞬いっしゅん、キョトンとした。

「アヤカシって、全部黒い影かげなんですか？」
　思わず試験官に訊たずねたユウに、試験官は肯うなずいただけだった。

　その返事にユウはホッとする。
「なら、そんなに怖こわくないや！」

　俄然がぜんやる気になったユウは、二体目、三体目とすんなりクリアした。

　しかし四体目となると、さすがに動きが素早すばやくなり、捉とらえたと思いポインターを当てるが、アヤカシは急に向きを反転させた。
　反応しきれなかったユウは、
「げっ！」
　失敗に変な声をあげてしまった。だが、運よくアヤカシに当たっていたようで、ピンポーンとクリア音が鳴った。
「あ、危なかったー……」

「ちなみに、魔法士まほうしのライセンスは永久ライセンスになります。
　一度受けたら合否にかかわらず二回目の受験はできませんので頑張がんばってください」

「ウッソ!?　つか、今ココでそれを言うっ!?」

「検査官の言うてることはホントやで～」
「好不調の波はありますが、魔力まりょくを持つ人は生きている限り、少なからずその力が存在することが過去のデータから解析かいせきされています。ですので受験者の方は皆みな、万全ばんぜんの態勢で挑いどまれてます」

　それを聞いて、ユウはみっちゃんを見る。
「そんな切なそうな顔で見んといてっ！
　ユ、ユウどんなら大丈夫だいじょうぶやて！　ファイトやっ！」

　とにもかくにも、最後の一体である。

　五体目は、姿を現あらわしたり消したり、動きもさらに素早すばやくなかなか照準が定まらない。

　間違まちがえれば不合格。

「あれ？　この動き方……」
　ユウは、以前ネズミのようなアヤカシと出くわした時の事を思い出す。

　チョロチョロと動き回って止まらない。しかも時間がたつほど数が増えていく。
　早く倒たおさないと、そのうち近隣きんりんの街にまで被害ひがいが及およんでしまう。
　その時、兄は無駄むだに動くことをせず、じっとアヤカシの動きを肌はだで感じ取っていた、ようにユウは思っていた。
　勝負は一瞬いっしゅんだった。
　背後からくると見せかけて、正面を横切る刹那せつな、兄はアヤカシを鷲掴わしづかみして捕つかまえてしまったのだ。
　増え続けたアヤカシは分身だったらしく、本体が捕つかまるとすぐに消えてしまった。

　その後、アヤカシをどうしたのかまでは覚えていなかったが、今、ユウの前にあるアヤカシも動きがそれに似ていた。

　何度か動きを目で追い、やがて右を向いてポインターを構える。

「……今っ！」

　赤い光は、黒い影かげを捕とらえ、正解音が響ひびいた。

「クリアです」
「やったあ！」

「お疲つかれさまでした。こちらで一旦いったん休憩きゅうけいなさってください。この次は、別室にて魔力まりょくの測定、数値化を行います」
　促うながされた椅子いすに倒たおれるように座すわり込こむユウ。それをみっちゃんが手でパタパタと疲つかれきった顔を扇あおぐ。

「お疲つかれや～ん。大丈夫だいじょうぶかあ？」
「だって……もう二度と受験できないんでしょ？　そりゃ、本気……出さなきゃ……！」

「落ち着かれましたら、こちらから次のお部屋へやへどうぞ」
　検査官は機器類を片付けるとどこかへ行ってしまった。