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いつでも側に〜一途な両片想い〜

せいとも

両片想いの行方②

「他には?仕事以外では何かしたいことはないの?」

「……」今度は、鈴が切ない表情になる。

「どうした?言いづらい事か?」

 少しの沈黙の後、真剣な声で話し出す。

「……。直人お兄ちゃん、直人さんって呼んでいい?」

「あ、ああ」

「直人さん、私の初恋はあなたです。この気持ちに気づいた時から今日まで、ずっと変わらず好きです。辛い日々も直人さんを思い出し乗り越えて来れました。女優ではなく、一人の畑中鈴として、あなたを愛しています」

 自分が言いたくても言えなかったこと、世間体を気にして突破できなかった気持ち、見守ると綺麗事で押し殺していた気持ちを、十歳も年下の女の子が告白してくれた。

 直人は無意識に鈴を抱きしめていた。

「鈴、俺は狡いんだ。赤ちゃんの時に、鈴を見た瞬間、気持ちを持っていかれた。でも、俺は十歳で鈴は赤ちゃん、可愛い赤ちゃんを見たからだと誤魔化していた。それから、成長するたびに可愛く美しくなる鈴しか見えていなかったんだ。だけど、人には言えなくてずっとずっと見守ると綺麗事で、気持ちを抑えていたんだ」

「直人さん……」

「俺は親父の跡を継ぎ、鈴の所属する事務所の社長になった。社長が事務所の女優とスキャンダルを起こすなんて言語道断だと、理由をつけては自分を偽ってきた。鈴に言わせてしまう不甲斐なさに自分が情けないよ」

「情けなくなんてないです。私の中で直人さんは、ずっとずっとヒーローなんですから」

「鈴……」



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